殺し、ました、です、
あな、たの、ふたり、の、赤ちゃ、ん、
ゆえ、に、
私、は、あなた、を、殺す、しか、く、ない、です、
あな、たは、生き、て、どう、か、どこか、で、しあわ、
ふざけないでよ!!
その先は言わせない
何言ってんの?
竹刀ちゃん、冗談だよね?
子どもができた?そりゃまああれだけヤってればできてもおかしくないけど
それをガサツでズボラで面倒くさがりな割には、お節介で世話焼きで面倒見のいい君が殺した?
挙句、自分はさっさと死ぬから俺にどっかで一人で生きてけって?
いくらなんでも俺をナメてるのにも程があるでしょ…!!
一気に捲し立て息が上がるが口は勝手に回り続ける
ねえ、本当になんでだい?
まあ俺のことが大嫌いなのは知ってるから、別にあらゆる嫌がらせされても仕方ないで割り切るけど
いくらなんでもこんなの違うよ!
今まで散々我慢していた君を責める言葉が堰を切って止まらない
まず今、真剣勝負してたんだよね?
俺は君に敵わないのは承知で、殺される覚悟で闘ってたのに
それじゃ、まるで君は最初から俺に態と負けるつもりで俺が一人相撲してただけみたいじゃないか!!!
ごめん、なさい、です、
竹刀ちゃんは俯こうとしたが、俺は引き留めて顔を上げさせた
だめだよ
謝罪は聞かない
ねえ、ちゃんと聞くから話して、全部
何があったのか、君に関わる難しい事だって、俺はできる限りで抱えたいんだから…!
君はまた暫く黙ったあと、ゆっくりと口を開いた
う、そ、
嘘、なので、ござい、ます、です、
あな、た、との、じ、かん、すべ、てが、
わたし、わたし、は、死者、だか、ら、死者、は、生き、てない、者、
私、は、はじめ、から、死んで、る、
今、まで、した、い、が喋って、た、だけ、
あな、た、に、
嘘、つい、てた、だけ、
私、は、其処、に、ある、だけ、の、まぼ、ろし、
ゆえ、に、子ど、も、
死者、で、化け物、の、私、じゃ、産め、ない、から、殺し、た、です、
…一つだけ教えて
理解できないことだらけなのは相変わらずだったけれど、じゃあ君が実体のある幽霊か何かだとして――
いつも自分を「化け物」「化け物」って言ってたのは、それが理由なのかい?
君は首を振った
ち、がう、です、
私、は、前の、年、の、暮れ、に、死ん、だ、ばか、り、
組織、入っ、た、頃、とか、は、生き、てて、
でも、ずっ、と、変わ、らず、化け、物、でし、た、です、
其れ、は、あ、の、生まれ、つ、き、です、ゆえ、
そうなんだ
じゃあ、「子ども」って話の方をもう少し詳しく教えてくれる?
俺は君からゆっくりと話を聞いた
内容は懺悔そのものだった
竹刀ちゃんは出会った時点で初めから数え十一歳ではなくその前の年の暮れに死亡した享年十歳の死体だったらしい
せっかくできた可能性のある受精卵二人分を勝手に堕胎して、死者特有の「肉体の分離の発作」を抑える薬代わりに使ったんだって
この辺のいきさつとか、死者の発作とかはよくわからないけれど、聞いた限りでは、初めからその効果を期待してたわけでもなく、殺した後で結果として発作が治まったみたいだ
発作についても初めて知った
いや、確かに話していると思ってたら一瞬目にも止まらぬ速さで、時々物陰に隠れてしまうことはあった気がする
後は、なんか俺との会話を早々に打ち切りたがる時も多かった
俺が邪険にされていたってだけでも無かったのかもしれない
それで今回の勝負については、やっぱり勝つ気なんて無かったとのこと
前の晩に俺に力を相当な量明け渡していて、俺を勝手に強化して自分を倒させる算段だったらしい
なんでそんなことをしたかと言えば、結局、騙してる罪の意識しかなくて、それでも今度こそ自分ではない誰かと生きて、子どもでも作って温かい家庭を築いてほしいからこんな方法を使ったって
受け取った分だけの力さえあれば、今後恐らく羅刹としての食にも困らなければ、彼女の持つ神祷術も、例えば「記憶を手繰る」などの形で習得可能と思われるとのこと
それらすべての事実をちゃんと聞いた俺は、敢えて君に冷たく言い放つ
そんな内容を聞いてもさ
俺が大人しく従ってあげると思ったら大間違いなんだよね
俺は今、君にはあまり向けたことのない、氷のような表情をしているだろうけど、もはや構わない
知らないし、君の事情なんて
ただでさえ普通の人間とは違う特殊な存在なのに、何にも分かるわけないし
でも、せめて子どもができたんなら教えて欲しかったよ
そりゃ、えーと、死者だから?化け物だから?産むつもり無かったなら
結果的に殺すしかなかったんだろうけどさ
それって君一人の問題でもないことくらい、当然わかってたはずだよね?
俺は淡々と、言葉を氷の槍のように刺し続ける
死者って話もそうだけど
君はどうせ俺に知られなければいいと思っていたんだろう?
俺じゃあ何もできないから、状況なんて何も変えられっこないから
君は何も言い返さない
へー、そう、そうなんだ、やっぱり?
いつも君が言ってる言葉を敢えてお返しするけど、俺を「バカ」にするにも程があるでしょ!!
語気が荒くなったが、もう止まらない
変わりに君を強く強く抱き締める
腹に開いた穴から飛び出す血が俺の服にべたりと張り付いた
言ってほしかったよ
君が苦しんでるなら、俺だって少しは苦しむよ
初めから互いの死ありきの「契約」だから、そう長くいられるはずも無かったけどさ
けど、いくらなんでもこんな形は違うよ
ごめ、ん、な、さい、で、す、
謝ってほしいんじゃないんだよ
きっと、もうやり直しとかするには何もかも遅いけど
君のことだから、普段平気な顔してて、本当は散々苦しんだんでしょ
確かに、最期でもなきゃ、どれもこれも俺に言えるわけない内容だしね
私、は、あな、た、を、はじ、め、から、騙、そうと、して、ました、です、
どう、せ、一ヶ月、に、も、満た、ない、じ、かん、
ただ、殺す、時、ま、で、あざ、むけ、れば、いい、
私、は、悪、い、お、んな、に、なる、つも、り、で、おり、ました、です、
ふた、りめ、は、とも、か、く、さい、しょ、の、子、だっ、て、かな、り、軽、はず、み、な、き、もち、で、殺、して、
でも、
「悪い女」か、今こんなにボロボロ泣いてるんだからできるわけないだろうね
だって、君はそういう子じゃないもの
だからこそ背負いたかったよ、君の分まで、ううん、死んだ子たちの分まで
ごめ、な、さ、
(ああ、だめだ…)
どんどん身体が冷たくなっていく
もう本当に終わりなのか…?
こんなに俺の想いは溢れているのに、こんなに君が好きなのに、愛してるのに
ねえ、竹刀ちゃん
教えて
俺のこと好き?
あなた、なん、て、大、きら、い、で、ござ、い、ます、です、
そんな泣いた顔で言って欲しくなかったな
だって君の天邪鬼は、散々知ってるのに
君はそう言うと
目を閉じて今度こそ呼び掛けても反応が返ってこなくなった