アナウンサーは続ける
専門家によりますと、「鳥土里」という地名は存在せず、かなり古い物なのではないかとの見解です
また、崩落の危険もあるため、山中へ分け入らぬよう、自治体は地元警察との協力も進めると発表しております
では、次のニュースです――
(何ということだ…)
ネットのニュースなんて見てもいなかった
彼は箸を止め、手元の端末で先ほどアナウンサーが読み上げていた神社を検索する
出てくる、出てくる
今日一日だけだというのに、仕事や学校に行かぬ暇人達が記念画像や動画を頻繁に投稿していた
なるほど、そりゃあ出現初日で警戒網が敷かれるわけだ、と蒼衣は納得した
しかし、そんな事は至極どうでもいい
馬鹿なネットユーザーが場所については既に特定してくれていたが、そこは彼が昔、記憶の中の「彼女」に紹介された記憶と寸分違わぬ場所だった
今すぐ飛び出したい衝動を抑えるのに必死だったが、瞬間移動術は日に一度が限度
力が回復する明日までは待つしかない
しかし、気が逸り、どう考えても学校ですらいつものようにやり過ごせる気もしなかったので、彼は翌日、学校を欠席することに決めた
(鳥土里神社へ行こう)
翌朝、学校に行く振りをして、まず欠席の通知を出した
端末一つで済むから助かる
親へのなりすましなど術を使えば実にチョロかった
しかし肝心の瞬間移動できるだけの力、記憶の中にいる神社の巫女にして神通力持ちの少女、鳥土里竹刀の言う、「聖浄気」の回復には、まだまだ時間が掛かる
焦りは禁物とは言え、回復を今か今かと待っていた
いっそ公共交通機関を使う手段もあるとは言え、流石に東京から東北まで行くのはバカバカしすぎる
仕方ないのでドラッグストアで適当に飲み物と夜までの食糧を買っておいた
昼頃、聖浄気が回復してきたのが実感できた
往復には全く足りないとはいえ、別に今日くらい行方不明扱いにして泊まりがけでも構わないと思った
片道分だけで、十分だった
また左手で剣印を作る
目指すは記憶の中の場所
そして今は現実となった地点、東北の山奥に坐する鳥居
その場所だ
緊張して術に失敗しては、今日一日を棒に振る
とにかく慎重に、目的地の地点を示す端末を睨みつけながら術を繰り出した
一瞬、術が起こす黄緑の光の洪水により目を開けていられなくなり、彼は目を閉じる
そしてすぐさま目を開け、周囲の様子を伺いながらいつものようにGPSを確認した
…警察が張っているという情報もあるから、位置だけ確認したらすぐにOFFにした
狙い通り、自身は今、鳥居の箇所からは五百メートルほど離れた、木が鬱蒼と生い茂り、人が寄り付かなそうな原生林にいることが分かった
そのまま、後は頭に入れておいた地図を頼りに歩き出す
誰かと鉢合わせすると面倒なことになるので、なるべく気配を消しながら木から木へと飛び移って進んだ
やがて――
目的の赤い鳥居は彼の前に姿を現した