確かに「鳥土里神社」と書いてある
アナウンサーは「とりどり」と読み違えていたな、と蒼衣は思い返す
無理もない、地名として知られていないなら、読めないのは普通だ
(そうだよね…俺だけの鳥土里竹刀(とおどり しない)ちゃん)
鳥居を潜った瞬間、途端に大きな重力が自身に圧し掛かってくるのを感じた
そして――
間髪を入れず、上から降ってくる声もあった
羅刹の小僧、
あー、いや今はただの人の子じゃったか
随分遅かったのう
いい加減待ちくたびれたわ
頭上の声は続ける
最近はやれホットスポットの配信だとかでユーチューバーが現れて敵わぬ
神聖な祠なんぞを平気でベタベタ触ったり壊していきよってからに
まあ、お陰で過去から続くわらわが張った結界も、多少崩れたようじゃがな
声はため息を漏らす
ああ、まったく…
流れで我が愛娘の欠片を時間の間に取り敢えず封印したはいいが
いやあ、これだけ時間が下らぬと解けぬ結界とは
我ながらと言うか…流石はわらわときたらいかにも叡智にして万能なる女神様じゃな♪
脳天気な調子だった
薄い紫髪ツインテールの中学生くらいの、のじゃロリ口調全開の少女が鳥居の上に居座っていた
は?
蒼衣は反応に困った
小僧、何を呆けておる
汝の探し物なら向こうじゃが?
言って彼女が示した先には――
焦がれてやまない、こちらを振り向く黄緑色
瞬間、駆け出していた
全力疾走だ
神社の境内の古い石畳は、蒼衣が踏み出すたびに鈍い音を立てる
気づいた黄緑の瞳をした少女も手に持つ箒を放り出し、駆け寄ってくる
狩衣さん!
竹刀ちゃん!
互いに両手を広げ、抱き締め合う
その抱擁は、永遠に続く絆に見えた
ただいま、竹刀ちゃん
はい…
おかえりなさいませです、あなた、狩衣さん
互いに瞳から止めどない涙を流していた
ずっと探したよ、遅いよ
申し訳ございませんです
…あの、ちょっと、其の、死んじゃってまして、
えっと
(ちょっと詰めるとすぐ吃る癖、嗚呼、竹刀ちゃんなんだね…)
うん、いいよ、
ねえ、竹刀ちゃん
一つだけ約束してくれるかい?
はい、なんでございましょうかです
これからもずっと一緒だよ、ずっと、ずっと――
(あれっ?返事がない…?)
えーと、
其の、あの、お申し出は、其の、
嬉しくないわけじゃないんでございますですが
…え
ちょっとなんなの、
まさかこの期に及んで俺の事「大嫌い」とか言って突き放すつもり?
いえ、左様な殺生な事を申し上げるつもりもないのでございますですが、
あの、「一緒」ならですね、
二人でなく、四人…とか、なんなら神様も入れて五人とかじゃ、だめでございますですかね…?
五人…?
俺は目を丸くした
ええ、其の、此方の「比翼」と「連理」も一緒じゃ、だめでございますですかね?
おかえりー、お父さん
待ってたよ
ねえ、ほら!やっぱりまた会えたでしょ?
「「僕達の言った通り♪」」
俺はまた涙腺が緩むのが分かった――