「畜生ッ!なんで、こんなことに」
あたり一面、酷い有り様だった。栄華を誇った国としての面影はもはや無く、瓦礫の山と立ち登る嫌な匂いの煙、目につくほど鮮やかな赤色や黒ずんだ染みから目を背け、ただ進む。宙に浮く赤黒い正方形のブロックも相まって現実感がない。
こうなることはわかっていたはずなのに。どうすることもできなかった。いや、わかっていたからこそ、どうにもできなかった。
滅びようとしている。神のいない国が、地下の王国が。天理の命令によって集められた俗世の七執政によって。
太陽の如き一撃が国の一角を焦熱地獄へと変えた。絶え間なく雷鳴が轟いている。隕石が堕ち、人が石になった。吹き荒ぶ烈風が建物ごと人を肉塊に変える。全てを凍てつかせるような厳寒が氷像が乱立する極寒の世界を作り出す。国が、人が、文明がこわれていく。
男も女も老いも若いも、血の高貴さも関係なく、この地に生きる者を滅ぼさんと死が、襲い来る。その中を何度も死んで、再生しながら、赤い目の人造人間は唯、進む。友との約束を果たすために、必死に、最適なカタチに変形しながら、進む。
正義の国、フォンテーヌを目指して。
死んだ。死亡した、はずだ。
自分の体から血が抜けてただの肉の塊になる感覚の中、意識を失った。次に目が覚めた時、どういうわけか
幸い、転生者としての特異性か錬金術が使えたので、原作を回避するために錬金術を必死に学んだ。お父様に、国が抱える錬金術師に、在野の錬金術師に、果てにはホーエンハイムにも師事した。無論、そうなる前に何度か死ぬ羽目になったが。そうして賢者の石の錬成式をもとにした
『エネルギーを固体化して増幅器にする』錬成式を生み出し、人という存在の価値と、人を犠牲にして行われる神の錬成計画のデメリットを必死にプレゼンした。
.....正直、お父様よりプレゼンを聞いてる
最終的にアメストリスという国は錬金術の研究と発展の為に残されることになって、途中、暴走した上層部により末弟が生まれたり、ホーエンハイムの妻の流行病は解決策の目処が立った時には帰らぬ人になっていたし、原作の流れは、ある程度同じ道筋を辿った。そして比較的平和に発展した世界は宇宙に進出して文明圏を拡大し、勢力圏を伸ばしていくことになる。
そうした中、宇宙旅行が流行して流行りに乗ったこのエンヴィー様はーー
見知らぬ星に不時着していた。
コールドスリープ機能の解除によるぬるま湯のような温かな目覚めではなく、激しい衝撃と凄まじい音による熱烈なモーニングコールで目を醒ます。体が再生し、石が消費されていく感覚。人型になったところで石の消費が止まる。今すぐに人類が死ぬような環境ではないのだろう。
周囲を探索すると目当てのものを見つけた。原型をほぼ留めていない宇宙船だったモノ。ログもこの状態では閲覧できないのだろう。
どうしたものか、と頭を悩ませていると視線を感じ、
化け物を見たような表情をした青年が腰を抜かしていた。
「ひっ....。ま、待ってくれ、おれはおいしくない!肉とキノコしか食ってないんだぞ!?」
言語が理解できるのは共感覚ビーコンが働いているからだろうか?スターピースカンパニーの社員に接触できれば、なんとかなるかもしれないという期待は青年の方をよく見た瞬間、打ち砕かれた。
涙が浮かんでいる薄い星型の瞳と、青年の周囲に咲き誇る白い花。少女漫画ならここから恋が始まりそうなシチュエーションだ。しかし、記憶が正しければインテイワットという名を持つ白い花に思わず遠い目になる。
前世の記憶通りならばここは、幻想大陸テイワットににあるカーンルイアという国。滅びが確定している上に厄ネタのバーゲンセールのような国だったからだ。
これが、テイワット本来の正史を変えることになる人造人間と、フォンテーヌ人とカーンルイア貴族の子である変わり者とのファーストコンタクトであり、フォンテーヌの未来を大きく変えることとなる。
今後の構想は練ってありますが、私生活が忙しくなる為、不定期更新になります。期待しないで待っていてください。