転生ハンターがダンまちをモンハン世界だと間違っているまま黒竜を狩る話 作:シャリ
ランクアップを果たしたアリーゼ含むアストレア・ファミリア。
ギルドナイトごっこを楽しむハンター。
彼らは勢いづいて、次々にオラリオの闇を切り裂いていく。
情報提供もあってオラリオの地上に残っていた闇派閥の拠点を殲滅しきって、関係者をギルドに突き出しきったのだ。
ギルド内にも闇派閥が潜んでいたが……闇派閥に絆なんて明るい言葉は無い。
「俺だけ捕まるなんてムカつくぜェ。なぁオイ、俺が知ってる闇派閥のメンバーを教えるからそいつらも捕まえろよ! 道連れは多い方が愉快だしよぉ、ケケケ」
なので捕まった人間の中には、こういう不義理な者も当然いる。
一人一人が知ってる情報が少なくても、捕縛された数が多かったので、芋づる式にどんどん闇が明るみに出た。
それもあってギルド内の膿も取り除けたのだ。
オラリオの地下に広がっている人造迷宮クノッソス。
その入口の扉を少女アリーゼとハンターが眺める。
「情報提供者によると入り口を開けるには特別なアイテムが必要らしいけど……開けれそう?」
「そうだなぁ……竜撃砲なら壊せるだろ」
モンハン原作にて、ガンランスはオブジェクト破壊に秀でており、フィールド破壊もできた。
特定のクエストではオブジェクト破壊能力を目的に、パーティー内にガンランス使いを一人入れた方が良いと推奨されたこともある。
ガンランス『エンデ・デアヴェルト』の竜撃砲が入口を粉砕。
いくら頑丈でも、黒竜に通用した火力とオブジェクト破壊性能が相手では無力だった。
ハンターが開いた入口から先をに広がる空間を視認し、先の長さを感じた。
「すげー広いって話だっけ。数日以上はかかるかな」
執行対象にギルドナイトが勝つのは確定事項というイメージから、彼に勝ち負けの不安は一切ない。
「残りはこの地下だけだし焦らず行きましょ、ハンターさんっ」
何度もギルドナイトとして戦ってきたアリーゼも積み上げた実績と自信から過度な緊張感はない。
適度にリラックスして先を見据えた。
◆ ◆ ◆
時は少し遡り。
男神ディオニュソスは怒りを込めて作業机に拳を叩きつけた。
「ふざけるなぁああああああ! なんなんだアイツはァ! 進めていた計画が台無しだ!」
何度も机を叩きつけて、流れる金髪をかき乱す。
普段の高貴な貴族風の出で立ちをした貴公子の姿や、上品さや優雅さからは程遠い。
やがて拳を止めて、荒い息を吐く。
「ハァー……フゥー……外なる神ィ、ハンターなんてイレギュラーを寄越すとは不愉快だぞぉ。姿も見せない傍観者のくせしてなぁ」
彼は……簡単に言えば黒幕の男。
裏の顔では、神々の言葉で『都市の破壊者』を意味する【エニュオ】を名乗っている。
正体を隠しながらも闇派閥を動かしていた。
「目的のために私がどれだけ耐えてきたと思っている……」
私には大いなる目的がある。
それは私が楽しむための狂騒だ。
泣き叫び壊れていく子供達の光景『
恐怖と絶望から笑うしかない姿を見たい。
誰も信用できなくなった姿を見たい。
希望の欠片すら失った姿を見たい。
無様に命乞いする姿を見たい。
無意味に苦しむ姿を見たい。
嗚呼、我が夢の愛しき宴。
子供達の悲鳴と混乱と死が巻き起こる混沌を体現したかった。
確実に事を成すために長い準備期間が必要だった。
全てを成すために勢力を広げていたというのに、ハンターがオラリオに来てアストレア・ファミリアと一緒に暴れまわっているせいで使える人手も金づるも消えていく。
闇派閥以外の勢力とも繋がりはあるが……規模が違いすぎる。
首魁を通じて使える悪神も悪人も多い闇派閥こそが、一番の勢力だ。
だからこそ、冗談のような短期間で闇派閥が崩壊しかけている状況は苦しい。
「なにがギルドナイトだ……馬鹿馬鹿しい」
愚民どもはヤツらを正義と秩序の騎士と褒めちぎり、オラリオから闇と苦しみを減らしていると話す。
やつらのせいで、私が苦しんでいるのに酷いじゃないか。あんまりじゃないかぁ。
やつらは私が重ねてきた苦労を知らないのか?
表の私は自己暗示で上っ面を重ねて、裏では地道に活動している。
……振り返ると、必要があるとはいえ善神の振りしているという事実に反吐が出そうだ。
それほど嫌な気持ちを我慢して、時間をかけて慎重にコツコツ積み上げていたものを台無しにされている。
例えるなら、宴のために熟成させていたワインを勝手に捨てられているかのような蛮行を受けている。
「混沌という美酒の味を知らん野蛮人共がァ!」
腹立たしい相手は他にもいる。
勝手に諦めて、私の手の内から離れて投降する一部のバカ共だ。
人間だけならともかく、悪神すら天界送りを恐れて離れだしている。
エレボスに至っては「必要悪が必要じゃなくなったぜ」と訳が分からない言伝と共に去りやがった。
……いや、アイツは前からよく分からないヤツだったか。
なんにせよ、私をイラつかせる者ばかりだ。
現状に陥った原因……全ての元凶と言える相手はハッキリしている。
「殺してやる……絶対に殺してやるぞぉハンター」
ハンターさえ居なくなれば、厄介ファミリアの一つにまで成長したアストレア・ファミリアも崩せる。
宴の準備だって、いくらでも組みなおせる。
「外なる神のお気に入りだろうと知ったことか。もし、ヤツを殺したせいで外なる神の手で世界が消されたとしても構わない。私が自由に遊べない世界なんぞ消えてしまえばいい!」
まだ増産できていないから使いたくはなかったが……ゼウスやヘラ等のファミリアを壊滅させるのに使う予定だった物を先に喰らうといい。
◆ ◆ ◆
人造迷宮クノッソスの一日目の探索が終わった。
ハンターが迷宮内と入り口前に設置したキャンプ間でファストトラベルを繰り返して無力化した闇派閥とギルドナイトの面々を連れ出した。
引き渡しはガネーシャ・ファミリアに任せて解散。
帰り道の違いから、途中でアリーゼたちと別れてハンターは一人で歩く。
そこにディオニュソスの手先が話しかけた。
「ハンター殿……少し、よろしいでしょうか」
「なんだ?」
「私はディオニュソス様のしもべです。ディオニュソス様が貴殿にぜひ一度お会いしたいと申しております。日頃の治安維持活動の労をねぎらいたい、とのことで。いきなりの招待となってしまったのは申し訳ございませんが……お食事をご一緒にいかがでしょうか」
「へぇ、いいね。行くよ」
モンハンワイルズでは集落の人間から食事に誘われることがある。
彼は一つのハンター仕草として、疑いもせずについていった。
路地を幾つか曲がり、小さな私邸のような建物の中へ。
「ようこそ、ハンター殿。私はディオニュソス。しばしの間、共に食事を楽しもうじゃないか」
「おう、よろしくなー」
ハンターとディオニュソスと手先の者が同じ食事の席につく。
「本日は特別なスープをご用意いたしました。冷める前に、どうかお楽しみを」
スープの椀がハンターの前に置かれる。
深い琥珀色をした、香りの良いスープだった。
「そんじゃま、いただきます」
何も知らないハンターは、ありがたくスプーンを手に取った。
一口、二口と口に運ぶ。
眺めていたディオニュソスが口角を上げる。
ハンターが飲むスープには、強力な麻痺毒が仕込まれていた。
ディオニュソスが対高レベル冒険者対策として密かに開発させている特製の毒。
冒険者のステイタスを貫くほど強力で、たとえ発展スキルで耐異常を持っていようと一度体内に入れば強制的に麻痺させる。
麻痺毒の症状は、最初に身体の自由を失う。
次に、呼吸ができなくなる。
いくらステイタスが高く頑丈な相手でも、酸素が無ければ死ぬことを狙った結果だ。
そして苦しみながら死ぬ姿を見ることもできるように意識まで奪わない麻痺毒なのがミソだ。
毒性は理想的だが、問題点がある。
揮発性が極めて高く、武器や矢に塗ってもすぐに霧散するので使うことはできない点だ。毒に侵させるにはスープや飲み物のようなものに混ぜ、直接摂取させる以外に方法がない。
冒険者の戦闘で扱うには、武器に使えるようにするのが必要不可欠なので、まだ改良前の段階。
毒自体の生成も難しく増産もできていない。
実用性で言えば、完成には程遠い研究段階の品。
それでもハンターを騙して毒物を摂取させるくらいならできると目論んだのだ。
「うぐっ!?」
彼の目論見通り、ハンターは麻痺状態となって床に倒れた。
「私の勝ちだ」
席を離れて勝利宣言。
ワイングラスを片手に動けないハンターを見下す。
「なんでも解毒できる薬を扱えるようだが、麻痺して飲めなれば意味がないだろう? マヌケめ」
勝利の美酒としてワインを一口飲む。
「お前が迎える死を祝し、最期に教えてやろう。お前が潰してまわった闇派閥……その背後にいた黒幕のエニュオは私だ。よくも私が苦労して積み上げてきたものを壊してくれたな。だが、それも終わりだ」
思い通りにいった、とディオニュソスは我慢できず、笑いを漏らす。
「くひひひひっ……! 大人しく遊びまわっていれば死なずにすんだものを。正義の英雄気取りで、正義に深酔いしていたバカが!」
実際にはギルドナイト気取りのごっこ遊びをしていたと言った方が正しい。
「そろそろ息が苦しいだろう? うめき声を聞かせ」
なんてことが無いようにハンターが立ち上がる。
「は? え? ハァ!?」
不測の事態にディオニュソスは混乱!
ワイングラスが、指の力を失って滑り落ちる。
ガシャーン!
グラスが床に激突し、赤黒い液体が飛び散った。
床にぶちまけられたワインは、まるで血のように広がっていく。
──モンハンではプレイヤーが麻痺を受けると身体が痺れて全く動くことが出来ないが、一定時間で自然回復できる。
それと同じで、ディオニュソスがペラペラ喋ってる間の時間経過で回復したのだ。
ハンターがギルドナイトセーバーを抜刀。
澄んだ刃の表面を見て、混乱が解けたディオニュソスが声を荒げる。
「このッ……混沌どころか、毒の味もわからんような野蛮人がああぁぁぁ!」
彼の手先が一斉に襲い掛かる。
──ディオニュソスを含めた全員を斬り倒し、気絶させたハンターが呟く。
「うーん、ギルドで教えてもらった神々についての説明だと善神って聞いてたんだがな」
気絶したディオニュソスと手先たちを適当に縛り上げ、ハンターが唸った。
「良い人に見せかけて黒幕……しかも野蛮人とか言ってたし、まさかのエアプタシン枠だったか」
◆ ◆ ◆
黒幕【エニュオ】としてギルドに突き出されたディオニュソス。
大物なだけに強引な手段を含めて、あの手この手で情報を引き出された。
その後、
神会は神々だけの場だが……エニュオの捕獲者として特例で前回のようにハンターもヘスティアの横についている。
議論の余地なく、満場一致でディオニュソスの天界送りが決定。
納得いかないディオニュソスが拘束された姿のまま叫ぶ。
「私を天界に戻すだとッ! そんなことが許されるのかッ!」
ディオニュソスが神々を見渡す。
「思い出してくれッ! 天界から子供達を一方的に見下ろしていた頃を! かつて下界が、蓋の無いダンジョンから溢れるモンスターに蹂躙されていた、昔を! あの時代は良かった! 誰もが醜悪な怪物から逃げ惑い、表情を歪ませて泣いていた! それを眺めていた私は、いつも胸を高鳴らせていた! 私以外にも覚えがある者がいるだろう!」
いくつかの顔が気まずそうに視線をそらす。
「私が望んだ
さらに言葉を重ねようとした時……バチンと頬が打たれる音が鳴った。
彼が話している間に接近したロキがビンタをかまして続きを遮ったからだ。
「うっさいわボケ! もう見苦しすぎてイラつきを越えて悲しくなるわ」
ディオニュソスが心外だとばかりの表情で訴えかける。
「やめろよ、ロキぃ。お前も天界では好き放題やらかして名を馳せていたじゃないかぁ。お前だって下界の様子を酒の肴にしてなかったかぁ? 私と狂騒を楽しもうじゃないか」
「そっちこそ、やめーや。くだらない過去を掘り返すのはモテない男のやることやろ」
ロキは拳を腰に当て、冷ややかな目でディオニュソスを見据えた。
「うちも昔はな、天界から下界を眺めながら酒飲んでた時期があった。子供たちがモンスターに追われて泣き叫ぶのを見て、『おもしろいやん』とか思ってたこともある。それは否定せん」
少し間を置いて、ハッキリと意思表示する。
「でもな、今のうちが一番好きな酒の飲み方は、子供たちと一緒に飲むことや。それだけ子供たちが愛しいんや。子供たちには、いっぱい笑って欲しいし、幸せでいて欲しいと願っとる。狂騒なんぞ求めとらん。いつまでも昔のままとちゃうわ。うちだけやない。みんな下界に来て、子供たちと触れ合って変わっていったんや。そもそも、自分の感覚や趣味を押し付けんなやボケナス」
ディオニュソスが何か言い返そうと口を開く前に、他の神々からの低い声が重なった。
「ロキの言う通りじゃのう」
「もう、昔の感覚で語るな」
善神はもちろん、天界にいた頃は悪神だった神々ですらロキの言葉を肯定した。
それはディオニュソスの言葉に対する否定でもある。
若い神々からも非難が飛ぶ。
赤い短髪の若き男神は大きく肩をすくめる。
「俺、アイツ嫌いだわー! 土壇場で他の神を味方につける大逆転を狙ったんだろうがよぉ、子供たちを苦しめる主張がこの場で通るわけねぇだろ」
蒼い髪色でメガネをかけた若き女神が頷く。
「おこがましさが凄い方ですね。ああはなりたくないものです」
カールがかかった金髪の女神がベーッと舌を出した。
「ちょっと~、ウチらはそんな性格ワルくないんだけど~。昔もなにも、子供達が可哀そうなことすんのはダメっしょ。同じ性癖が前提なのマジ心外でキショいし」
満場一致の拒絶。
「ぐっ……」
せめてもの抵抗か、ディオニュソスの視線がヘスティアの隣に立つハンターに突き刺さる。
拘束されたままの身体をよじり、腐ったような笑みを浮かべて吐き捨てた。
「覚悟しておけ、ハンター……。いずれ天界にお前の魂が来た時……お前の魂が擦れ切って澱んで消え失せるほどの苦痛を与えてやる。私の宴を潰した罰だ。何度も、何度も、泣き叫ばせてやるぞ」
残虐な言葉に広間の空気が一瞬だけ凍りついた。
ヘスティアが静かに前へ出る。
「ボクがそんなことさせない」
小さな身体がハンターを半ば庇うように立つ。
青い瞳がディオニュソスを真正面から見据えた。
「ボクはハンター君に会うためだけに下界に来た。だからハンター君が天界に行く時が、ボクが天界に戻る時にもなる。ボクが誰よりも愛しているハンター君の魂は、ボクのものだよ」
言葉の端々に、強い想いと深い愛がそこにはあった。
「なにがあっても、誰であってもハンター君の魂を傷つけさせない。絶対に」
ディオニュソスからどす黒いヘイトを向けられた当人は……ディオニュソスではなくヘスティアの横顔を見ていた。
普段のヘスティアとは違う、真剣な表情に釘付けだ。
「……ヘスティア」
小さく名前を呼ばれたヘスティアは少しだけ視線を向け、柔らかな声色で答えた。
「大丈夫。ボクに任せて」
自分を不安にさせないために言ってくれたと理解したハンターが微笑む。
「ありがとな。信じるぜ」
ハンターは間違いなく……惚れ直していた。
自分を恐れなくなり、立ちはだかるようになったヘスティア。
愛する彼女を心から信じ、脅しても一切怖がらないハンター。
もはや、ディオニュソスは何も言えなくなってしまった。
彼のそばにいたロキが感心する。
「ドチビもえらい言うようになったやん。そんだけ好きになれる旦那を持ったのは羨ましいところやな」
続いて、ロキがパンパンと手を鳴らす。
「ほな、後は頼むでー」
ロキの合図を受けて、ディオニュソスの目の前にナイフを持って現れたのは男神エレボス。
彼がディオニュソスを天界に戻す執行者の役目を受け持ったのには理由がある。
天界に送還された神は縛りを受けて地上に二度と来れないが、存在が消えるわけではない。
いずれ執行者が天界に戻った時に、相手から恨みをぶつけられる可能性が高い。
その後々のリスクを考えて、執行者をやりたがる神は少ないのだ。
しかも、今回のディオニュソスは執念深く活動していた悪神。どう考えても厄介な相手だけに、積極的に手を挙げてまで、やりたがる神はいなかった。
かといって、人間に……子供たちの誰かにやらせるわけにもいかない。
そこで「どうにか出番ができたな」とエレボスが執行者に名乗りをあげたというわけだ。
「貴様ぁ……よくも私を裏切ってくれたな」
「さぁ? なんのことかな」
ディオニュソスが恨みがましく唇を噛むも、問いかける。
「闇派閥にいたのなら…………私と同じように、今すぐにでも子供たちは苦しみながら死んで欲しいと思わないか?」
エレボスはフッと笑う。
「俺は子供達が、大好きさ」
ナイフをディオニュソスの胸に突き刺す。
「こんなっ……ァァァ……」
「明るく楽しく、生きていて欲しいに決まっているじゃないか」
トドメとばかりにナイフを深く押し込み、捻った。
「ぐぎぃ……があああああああ……!」
断末魔を叫びながら、ディオニュソスの姿は強制送還の光に包まれて天界へと消えた。
◆ ◆ ◆
ギルドはエニュオの正体がディオニュソスであったことを公表し、彼が強制送還された事実を大々的に喧伝。
それをきっかけに、オラリオの闇は本格的に瓦解。
残された闇派閥や裏側の人間も、ガネーシャ・ファミリアをはじめとする討伐隊によって次々と捕縛されていった。
人造迷宮クノッソスへ籠城し、最後まで抵抗を続けようとした【イケロス・ファミリア】や、それに与した者たちも例外ではない。
ギルドナイトとなったアストレア・ファミリアとハンターによって無力化され、残らずギルドへと突き出されていった。
早めに投降せず……最後まで悪事を捨てようとしなかった悪神たち。
彼らは、最終的にはまとめて天界へと強制送還される結末を迎えた。
こうして──。
長きにわたりオラリオに巣食っていた闇は、完全な終焉を迎える。
ハンターがアリーゼから受けた依頼サイドクエスト『闇派閥を壊滅せよ!』も達成完了となった。
◆ ◆ ◆
オラリオの闇が完全に晴れてから、数日後。
女神アストレアにより、『神の宴』が開かれた。
「オラリオの深い闇を晴らし、正義を成し遂げた記念。皆でお祝いね」
アストレアの言葉に、団員たちは喜んで準備を進めた。
ギルドからも承認を得て、神々を招く規模の宴となった。
会場はホームの中庭を中心に設営され、長いテーブルには料理と酒が並ぶ。
オラリオ中から届いた差し入れも加わり、贅沢な光景になっている。
ギルドナイトの格好をしたアリーゼたちは会場の中央に立っていた。
赤い帽子に赤い防具。背中には双聖剣ギルドナイトに重ね着設定したギルドナイトセーバー。
ハンターから譲り受けた装備は、今や彼女たちの象徴となっていた。
「よぉーし、今日はちゃんと振る舞わないとね!」
アリーゼが帽子のつばを軽く触り、笑顔で気合いを入れる。
他の団員たちも同じ格好で並び、少し照れくさそうにしていた。
そして迎えた開始時刻。
参加する神々と連れ合いの眷属たちが姿を現す。
会場は一気に賑やかになる。
他の神々からアリーゼたちへ、次々と声が飛んだ。
「ギルドナイト姿ってさ、カッコいいよな。よく似合ってるぜ」
「まだ幼くとも、正義と秩序を貫く意思はデッカイのう!」
「んふふふ……どの子もいいねぇ……まばゆいねぇ……ういねぇ……ふへぇ」
若い神々も褒めたたえる。
「よぉ、アストレアの嬢ちゃんたち。見事な活躍だったぜ」
「私の子供たちも安心して活動できます。ありがとうございました」
「ウチもかんしゃ~。いっぱい頑張って、偉いね~」
アリーゼたちは素直に照れながらも、嬉しそうに受け止めた。
「ありがとうございます! 私たち、これからも頑張ります!」
ファンを名乗る神々の中から声が上がった。
「なぁなぁ、せっかくだから、カッコイイポーズ見せてくれよ!」
「そうだそうだ! 剣を構えて、決め顔で!」
アリーゼが少し困った顔をする。
「え、ポーズ……? そんなの急に言われても……」
その時、さっきのアリーゼ達と同じく声を掛けられまくっていたハンターがギルドナイト姿で現れた。
「こういうのは自分も楽しむノリでやればいいものさ。集会所でワチャワチャするのと一緒だ」
「ハンターさん……なんとなく言いたいことは分かったわ」
アリーゼは意を決して、ギルドナイトセーバーを抜いて構えを取る。
他の団員も倣い、剣を抜いて好き勝手にポーズを決める。
ハンターも双剣の抜刀状態の立ち姿になる。
「私たちが秩序を正す、ギルドナイトよ!」
ファンを名乗る神々から拍手が沸き起こった。
「おぉぉぉっ!」
「いいねぇ、カッコかわいい」
「もう一回! 今度は別のポーズで!」
アリーゼたちも笑いながら何度かポーズを繰り返した。
会場は和気あいあいで、闇が晴れたオラリオのように明るかった。
──宴が中盤を過ぎ、少し落ち着いた頃。
ハンターは重ね着をハンターシリーズの防具に変えて、ヘスティアとアルフィアと一緒に食事を取っていた。
そこにアリーゼがやってきた。
「ハンターさん、ちょっといい?」
「もちろん」
二人にちょっと離れると伝えて、ハンターとアリーゼは中庭の端、少し静かになった場所に移動する。
夜風が心地よく吹き、遠くではまだ神々の談笑が続いている。
アリーゼは帽子を取って、胸に抱いて聞いた。
「ハンターさんは、もうギルドナイトにならないの?」
「たっぷり堪能したから、しばらくはギルドナイトになる気はないなー」
「ふぅん……そっか……」
少し寂しげな少女の声に、彼はしゃがんで目線を合わせて続けた。
「あっ、でも、必要になったらいつでも呼んでくれ。そうじゃなくても、ギルドナイトになりたい気分になったら俺の方から押しかけるけどな!」
明るく、いつもの調子で言い放つ。
アリーゼは一瞬きょとんとした後、ふっと息を漏らして笑った。
「もう、なにそれ~」
軽く肩をすくめ、帽子のつばを指で弾く。
「……うん。その時はよろしくね」
「あっ、そうだ。忘れてた」
ハンターがアリーゼの頭に手を伸ばし、優しくなでる。
「一つ、アドバイスをしておこう」
「なになに?」
アリーゼは気持ちよさそうにされるがまま、続きを促す。
「さっきのポーズの時にも言ったのと同じようなものだが……自分が楽しむのも大事だってことを忘れないでいてくれ。主神の女神や人のために、正義や秩序を意識するのは良いことだ。団長として頑張るのは立派なことだ。でも、周りに合わせて義務感で続けていたら心がしんどくなる場合もあるからさ」
彼は、周りや最新に追いつくためにやりすぎて楽しめなくなってモンハンを辞めたリアルやオンライン状の友人を思い出していた。
「真剣でも、遊びでも、エンジョイ精神を忘れないことが一番だ! まぁ、もしも何かしんどくなったら周りを頼っていいし、気軽に俺に声をかけてもいい。俺はアリーゼの友達だからな」
「……わかった。まだ実感ないけど、大事な友達のハンターさんが私に言ってくれたこと覚えておくね」
ちょうど、アリーゼを呼ぶ声が聞こえてきた。
「行っておいで」
アリーゼは帽子を被り直し、少女らしい、太陽のような笑みを見せる。
「うん、行ってくる。……本当に色々とありがとう。ハンターさん!」
赤い少女が背筋を伸ばして歩き出す。
ハンターはそれを見送りながら、つぶやく。
「この時代のモンハン世界に来たおかげで、良き小さな友人ができたもんだ。それに元ネタという本物さん達とのギルドナイトごっこ……楽しかったな」
満足気のハンターが席に戻ろうとしたが。
「そういや、エアプネタの方とは言えモンハンワイルズのタシン枠がいたわけだし……」
ふと考えたことで立ち止まる。
「モンハンワイルズのナタのように、純粋で真っ直ぐな心とモンスターを気にかけるほどの優しさを持ちながらハンターに憧れを持って強くなることを選択し、見込みもありそうな名前二文字の少年がいつか俺の近くに現れたりして……なんてな」
ハンターは小さく笑い、ヘスティアとアルフィアの待つ席へ足を向けた。
◆アストレア・ファミリア
モンハン装備は自動的に体型に合わせてくれるので、今後もギルドナイト装備が制服として使われることになった。なので原作年齢まで成長した時点でも着ている。
後から加入した者でも、ハンターから装備を押し付けられる渡される。
◆エアプタシン
何故かイメージしやすいモンハンワイルズの幻想。
【後書き】
これにて
神がたくさん出るとダンまちっぽさ出ますね。ディオニュソスは出番あるとなんかカロリー高い、コッテリしている。
本編1話の後書きに書いている通り、この作品はアセンダンス発表が無ければのんびり書ききってから投稿開始の予定だったんですよね。
そういうわけで後日談もプロット自体は作成済みで…その中でもアリーゼ達がギルドナイトだという話は後日談枠の中では真っ先に出たものでした。
だって赤いし…似合うし…。当然の帰結っ!
ですが、ギルドナイト装備のアリーゼの画像が無いか探しましたが作者シャリが探した範囲では見つかりませんでした。
残念…!
次回は、また別の原作キャラが出る予定です。
因みに少女アリーゼもそうでしたが、ハンターの嫁枠は増えない予定です。
ヘスティア様が強すぎるし、余地はアルフィアで埋まりきっているよなって…。
『評価』、『感想』、『ここすき』など、ありがとうございました。
今回の更新を含めて、執筆の糧にしています。
アストレア・ファミリアはギルドナイト?
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はい
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いいえ
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わからない
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たぶんそう 部分的にそう
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たぶん違う そうでもない