転生ハンターがダンまちをモンハン世界だと間違っているまま黒竜を狩る話   作:シャリ

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最終話:クエストクリア

 

 黒竜が消える光景を遠くから見ていたゼウス・ヘラ連合討伐隊の面々は、完全に言葉を失っていた。

 

 信じがたい光景だった。世界の災厄と呼ばれた黒竜が、ただ一人の男によって狩られるなんて。

 誰かが膝をつき、誰かが武器を落とした。誰もが、ただ呆然と新たな伝説が歴史に刻まれた場面に飲まれていた。

 

 

 ザルドが感嘆する。

 

「一人で全てを成し遂げた英雄の誕生か、凄いものを見たな!」

 

 アルフィアが深く嘆息した。

 

「…………あぁ、思わず見惚れていた」

 

 オラリオ内の頂点にいると言われる彼女から見ても、黒竜とハンターの戦いと決着はまさに夢のような英雄譚だった。

 

「珍しい。誰かを素直に認めるなんて初めてみたぞ」

「うるさい」

 

 

 

 

 

 ハンターは素材と魔石をアイテムボックスに手早く回収しながら、独り言を漏らす。

 

「これで未来が変わっちまったな。今の古代モンハン世界が破壊されることはなく、人が沢山死ぬこともない。でも、代わりに俺が知るモンハン世界には繋がらない。……まぁ後悔はしてねぇけど、ちょっと寂しいわな」

 

 彼が勘違いをしているだけで、元から未来はモンハン世界ではない。正解なのは未来を変えた点だけである。

 

 

 

 

 

 遥か高みのはざまに浮かぶ影……黒龍ミラボレアスは結果に満足する。

 

『よくやった』

 

 短い誉め言葉をハンターの頭に直接伝えた。

 

 人間にとって龍から認められることこそが最大の褒美、というミラボレアスの尊大な考え方から来た報酬である。

 ついでの報酬として、貸し与えていた能力をハンターの魂に完全定着させた。ハンターの意思で能力の放棄や封印を考えない限り、能力を保ち続けられるようになったのだ。

 

 

 ミラボレアスは満足げに身を翻し、異界の向こう側へ飛翔する。

 

 去り際に、世界の繋がりを全て断ち切った。

 

 ダンまち世界とモンハン世界が直接交わることは……もう二度と無い。

 

 

 

 

 一方で、褒美として伝説の古龍からのお言葉を送られたハンターだが。

 

『よくやった』

 

「ん? なんだ今の声は。誰だ?」

 

 彼はミラボレアスから何も説明を受けていない。

 当然ながら、脳内に伝えられた褒め言葉も意味が分からない。

 

 ミラボレアスからすれば「自分が一人の人間にわざわざ伝えてやったことが重要であり、意味がある。理解できないなら受け取り側の問題」という傲慢さなので伝えた時点で終わっている話だ。

 簡単にいうと、ミラボレアスの感覚がやはり雑……あるいは理不尽。

 

 

「上から聞こえたような……なんもねぇな。気のせいか?」

 

 彼が疑問符を浮かべながら不思議そうに空を見上げる。

 まさにその時。

 

 

 目の前に、空から光の柱が落ちて来た。

 

 

「お次はなんだ?」

 

 光が晴れて現れたのは、女神ヘスティア。

 下界へ降りる踏ん切りがつかなかったはずの女神が地上に舞い降りた理由は……。

 

 

(あ、危なかった……。観戦に夢中になっていた間に、いつの間にかどこぞの眷属がワラワラ集まってきてたじゃないか! あんな歴戦っぽいのに囲い込まれたら、ボクのお気に入りの子が取られる! そうなる前に、ボクの初めての眷属にするんだからね!)

 

 自分好みの相手が他所に取られそうで焦ったからだ。

 

 

 ヘスティアは内心に反して、焦りの表情は見せていない。

 また、ずっと前から見ていて好きだった相手と対面する嬉しさからニヤけそうになるのも我慢した。

 

 こういう時こそ『第一印象が大事』だと分かっている。

 

 なので好感を持ってもらうためにも明るく、かつ、気さくに自己紹介を試みる。

 

 

 

「やぁ、ボクはヘ」

「白の禁忌ィ!?」

「へ?」

 

 俺は少女をよく観察する。

 

 汚れ知らずの真っ白な衣装。

 まさしく神々しい白毛のオマージュだな。

 

 

 特徴的なツインテール。

 頭部から生える角を想起させる。

 

 

 深い谷間を見せつける大きな胸。

 男なら思わず目を引く魅力がある。原作ゲームでも胸部分に雷を発生させてよく目立たせていた。それと同じだ。

 

 

 彼女は空から現れた。

 どこか神々しさも纏っている点も含めて、人間ではない。

 

 

 色々と考えてみても、白の禁忌に挑むクエストの説明文に書かれた少女を連想させる。

 

 つまり彼女の正体は。

 

 

 

 

「さては祖龍ミラボレアスだなオメー」

 

 エンデ・デアヴェルトを抜刀し、切っ先を向ける。

 

「もとい、ミラルーツ! まさか黒龍ミラボレアスを倒してすぐに会えるとはなぁ!」

 

「えっ。ちょちょちょ、待っ、うぇぇぇえ!? なにを言ってるんだい!? 違うよ! ボクの名前はヘスティア! ミラ某なんかじゃないやい!!」

 

 彼はヘスティアの反応に眉をひそめる。

 

「むぅ? ……あっ、なるほど。戦いの場になる塔への案内が先だったか。戦うのは塔の頂上にたどり着いた後だもんな」

 

 勝手に一人で納得し、武器を収めた。

 

「後も先もなにも、君とボクが戦う時なんて来ないよ!?」

 

 

 

 

 ミラルーツ認定を受けたヘスティアが騒いでいる場に近づく者が現れた。

 

「ハンターと彼の主神。少し、いいか」

 

 声をかけたのはアルフィア。

 彼女はヘスティアをハンターの主神だと勘違いしていた。彼女も光の柱を見たが、偉業を成し遂げた眷属を迎えるために天界送りされない程度に神の力を使用して駆けつけたと考えたのだ。

 この場、このタイミングで地上に降りて来たとは流石に思わなかったのである。

 

 武器を向けていた場面に関しては、オラリオでもたまに見る主神と眷属のふざけ合いの一環だと勘違いをしていた。

 

 

「おう、俺はいいぞー」

「まだボクの話が終わってないのに!?」

「ちゃんと後で聞くさ。求められる限り、俺は向き合うぜ! だから安心してくれ」

「…………本当にその気なんだね。じゃあボクも許す」

 

 神にウソは通じない。ヘスティアも彼が本気で言っていると理解し、話を譲ることにした。

 因みに彼が言った「向き合う」の意味は現時点だとバトル的な意味である。それでも会話が成り立ったので問題はない。

 

 

 

「待たせたな。誰だか知らんが、どんな用件だ?」

 

 初めてハンターとアルフィアの視線が合う。

 彼女はジッと彼の瞳を覗き込み、どことなく口元が緩む。

 

「……名乗りが遅れたな。私の名はアルフィア。そして、後ろの方にいるのはヘラとゼウスの眷属だ。私はヘラ側の人間だ」

 

 彼女の説明でヘスティアがウヘェ~と渋い顔をするも黙る。

 

「私たちはギルドから正式に『三大クエスト』を受けていた。黒竜討伐もそうだ。しかし、貴方が全てを終わらせてしまった」

 

 ハンターの眉がピクリと動く。

 

「え? ギルドから正式にクエスト受領してたってこと……?」

「そうだ。ベヒーモスにリヴァイアサン、それから黒竜。この三体を討伐することが、長年オラリオの二大ファミリアに課せられた至上命題だった。だが貴方に……全て先をこされてしまった」

 

 ハンターの脳内では、激しい警報が鳴り響いていた。

 

「単独で全ての三大クエストを達成する英雄……そんな存在が現れるとは、夢にも思わなかった」

 

 すでにアルフィアの言葉は、焦っているハンターの耳に届いていない。

 焦りから思考が加速している。

 

 

 おいおいおい、マジか。ええーっ!?

 

 三大クエストって、世界三大珍味とか日本の三大都市とかの称号的なもんだと認識してたのにマジのクエストだったのかよ!

 だって今のギルドってダンジョン関係というかオラリオ内のアレコレ的な管理以外はやってない認識だったし!

 

 とはいえ実態としては三大クエストが本当にクエストで、しかもギルド管轄。

 そんで俺はギルドと、先にクエスト受注していたアルフィア達から許可を取らずにクエストを勝手にやったハンターってわけだ。

 

 えっ、じゃあ、もしやギルドナイト的な案件?

 俺は執行対象なのでは!?

 本当にマズいッ!

 

 いや、でも、しかしだなぁ。俺は正式なクエストだとか先に受注者がいたとか知らなかったから仕方なくないか?

 

 ていうか、リヴァイアサンと黒龍ミラボレアスになる前の黒竜はともかくベヒーモスを討伐した覚えはないぞ。もしかして古代モンハン世界だと別のヤツが同じ名前だった感じか?

 この前の毒のヤツだろうか、もしくは今の大陸に戻る直前で倒した極彩色のヤツか、もしくは他のヤツか。

 なんか人々と神に認知されていないだけで、誰も住んでない地域とかに稀にいるんだよなG級に該当するモンスターって。今までそういうモンスターもだいぶ狩ってるから、どれがベヒーモスだったのかマジで分からん。

 素材名はリオレウスの鱗が『火竜の鱗』になるのと同じで漢字になってるからアイテム名みても名前は分からんしなぁ。図鑑は今の古代モンハン時代に対応してなかったし。

 

 まぁ、なんにせよアルフィア達の案内でギルドに出頭して三大クエストを勝手にクリアしたことに悪意はなかったと説明して謝罪すれば許してもらえ…………。

 

 

 ダメだ!

 今はムリだ!

 隣に祖龍いるし!

 あのミラルーツがいるし!

 

 流石にギルド行ったりするまで待ってくれるわけがないし、そんなことを言ったら隣にいるミラルーツが龍化して目の前にいるアルフィアや仲間たちをぶっ殺して「これでボク以外の用事は消えたよね?」とか言い出しかねない。龍は人間的な倫理観なんて無いか薄いか辺りな気がするし。

 

 

 つまり……俺がやるべきことは、処罰が軽くなるように悪印象を少しでも減らした上でミラルーツとこの場を離れることだな!

 

 悪印象を減らす良い方法をゲームで知っている。 

 

 それは詫び配布だ!

 モンハンだって運営からの詫びで消費アイテムを配布したことがある。

 

 同じことをしよう。そうしよう。

 

 

 

 

「…………おい、私の話を聞いていないのか?」

 

 アルフィアが反応しなくなったハンターを訝しげに見ると。

 

「そぉい!」

 

 彼が足元にモンハンの消費アイテムを大量にぶちまけた。それらは全てメニューの調合で作られたアイテムだ。

 

「ッ!?」

 

 アルフィアは咄嗟に後ろへ飛び退き、黒のドレスの裾を翻して構えを取った。銀色の長髪が揺れ、碧と白のオッドアイが鋭く細まる。

 

「……何のつもりだ、ハンター」

 

 声は低く、警戒に満ちていた。後方にいたゼウス・ヘラの精鋭たちもざわめき、武器に手をかける者までいる。

 黒竜を単独で討伐した男がいきなり地面に大量のアイテムをばらまいたら、そりゃそうなるだろう。

 

 対してハンターは、そんな緊迫感など微塵も感じていない様子で頭を下げた。

 

「勝手に三大クエストをクリアしてすまなかった。悪気はなかったんだ!」

「ハァ?」

 

 彼女からすると意味不明な謝罪すぎる。

 

 頭をあげたハンターは地面に置いた『回復薬グレート』や『解毒薬』や『いにしえの秘薬』などの消費アイテムを指差す。

 

「これは詫びの品だ。受け取ってくれ!」

「詫びだと……?」

 

 アルフィアはやはり理解できず、どう反応すべきか戸惑ってしまう。

 

 

「そんじゃま、行くぞミラルーツ!」

 

 その隙にハンターは隣にいるヘスティアの細い腰に腕を回して抱き寄せる。

 

「いやボクはヘぇ!? はわわ……」

 

 ヘスティアからしても突然の行動でビックリするも、好きな相手と密着できて嬉しくなってしまっている。

 そしてハンターの方は必死に頭の中で、自分に対して言い聞かせていた。

 

(コイツはサブ武器。コイツはサブ武器! コイツはサブ武器!! だから一緒に移動できる! そう思い込めばうまくいくはず! 多分!)

 

 思考を続けながらアイテムボックスからモドリ玉を取り出し、地面に叩きつけた。

 割れたモドリ玉から緑色の煙がブワっと立ち上る。

 

 

 アルフィアが止める間もなく、彼女の正面にいたハンターとヘスティアが姿を消す。

 モドリ玉の拠点に戻る効果でキャンプへの瞬間移動に成功したからだ。

 

 補足だが、本来なら使用者しか移動できないモドリ玉でヘスティアも移動できたのはハンターが考えた通りにサブ武器として判定されたから……ではない。

 ミラボレアスが能力をハンターの魂に定着させた影響で利便性が上がったから一緒に移動できたのだ。

 

 

 なんにせよ、この場には眉間にシワを寄せたアルフィアと困惑する精鋭たちと大量の消費アイテムだけが残されたのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 黒竜が討伐されてから一か月半後の夜。

 オラリオにあるへラ・ファミリアの拠点にて。

 

 

 夫となった相手とのデートから帰ってきたメーテリアが、荷造り中の姉……アルフィアに声をかける。

 

「もう行かれるのですね」

「遅かったくらいだ。明日の朝に発つ」

 

 話し出す二人の肌の血色は実に良好で、まさに健康そのもの。

 それこそ少し前の彼女たちからすると信じられない状態だ。

 

 というのも、アルフィアとメーテリアは生まれながらにして不治の病に冒されていた。

 

 あらゆる医療系のファミリアを頼っても完治させる薬が作れず、どれだけ時間を用意できているのかすら分からない延命や身体にかかる負荷の軽減が精一杯。

 

 どうあがいても、二人は病から解放されない運命にあった。

 

 

 ……本来ならそうだったのだが、そんな運命なんてクソくらえとばかりにハンターが残していったアイテムによって二人はあっさり病から解放された。

 

 ハンターがヘスティアを連れて逃げた後、アルフィアたちはアイテムを持ち帰って薬品を調べる力がある医療系ファミリアに調査を依頼。

 

 すると、体内から害ある毒素を一瞬で排除する『解毒薬』や、ありとあらゆるケガを治すどころかステイタスを一時的に上昇させる効果もある『いにしえの秘薬』などに彼らは驚いた。

 これらの薬と医療系ファミリアが持つ治療法などの技術を組み合わせることで、アルフィアとメーテリアは一か月程度で完治に成功していた。

 

 

 

 荷物の確認を終えたアルフィアは外を眺められる窓辺に立つ。

 メーテリアも隣に並んで外を見やる。

 

「長くは待たせない。なるべく早くに戻る」

「そんなに私のことを心配しなくても大丈夫ですよ。今は街中を歩き回っても平気なくらいに元気ですから。ハンター様と一緒に戻ってくるのをゆっくり待っておきますね」

「しかし…………いや、そうだな……。お互い、もう病人ではない」

 

 

 窓の外を見ながら、アルフィアは想いをはせる。

 

 

 ──私には夢があった。

 

 その夢は、身体を蝕む病気から妹を解放してやることだった。姉としての務めだと考えていた。

 

 私たちの病気を治す薬を作れる素材を求めて、ダンジョンの深い階層まで潜れるように私は強くなった。強さを活かして、ありとあらゆる素材をダンジョンから持ち帰ってみたが、どれも大した治療に繋がらなかった。

 そうして医療に関わる神どもは、ダンジョンにあるどんな素材を使ってみても完治は不可能だと判断した。

 

 神の癖に私たち姉妹の病気を解決できないことに腹立たしく思ったが、私も諦めてしまった。

 光明が見えず、避けられない運命だと夢を手放したのだ。我ながら弱い姉だな。

 

 

 捨てた夢の代わりに、目標を手にした。

 その目標こそが三大クエストの達成だった。

 

 ただ病気で死ぬためだけに姉妹が産まれたわけじゃないと、価値ある命だったと、姉である私が英雄の一人になることで証明したかった。

 そのためにもへラ・ファミリアの幹部なんて面倒くさいこともやって、三大クエストを攻略する計画を進めていた。

 

 

 だが、諦めて捨てた夢も……。

 諦めから取り組みだした目標も……。

 

 一人の男に……ハンターによって叶えられた。

 

 

 私たち姉妹はハンターの薬で忌々しい病魔から解放された。

 

 三大クエストは、私たちが足踏みしている間にハンターが一人で進めて終わらせた。

 黒竜だけはムリをすれば挑戦できたかもしれないが……できなかった。

 

 英雄になろうとしたキッカケが諦観なんて後ろ向きな理由から来た私には、楽しそうに黒竜と戦っているハンターがどこまでも前向きに見えて、眩しくも感じたからだ。

 そんな彼が、黒竜の単独討伐を成し遂げるところを見たいと思った。邪魔をしたくなかった。

 

 そうして胸の奥から熱くなれる、人と竜の一対一の戦いと決着を見せられた。

 目を閉じて思い返せば、いつでも正確に脳裏に浮かぶほどに焼けついている英雄と伝説の誕生だ。

 

 今の私は夢と目標だけでなく、心まで彼に奪われてしまった自覚がある。

 まさか、先に好きな男ができていた妹の気持ちを理解する時が来るとはな。

 

 

「ハンター……私から夢も目標も心も奪っておいて、いつまでも私から逃げられると思うな。必ず私の男にする……!」

 

 

 アルフィアがヘラのように血を煮えたぎらせる様子を見たメーテリアは……。

 

「いとこが楽しみですね、ベル」

 

 ニコニコと微笑みながら、まだ膨らんではいないが新しい命を確かに宿した自分のお腹を撫でていた。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 とある日の昼間。渓谷に立てた簡易キャンプにて。

 

 

 ハンターはモンハンワイルズにある『焚き火料理』の再現をしていた。

 魚の頭と尾を切り落として内臓と大きな骨を取り除き、スキレットで焼く。

 香ばしい香りを出しながら焼ける魚の身にチーズを垂らし、仕上げにハーブを散らす。

 

 先に提供されていた焼き魚をモグモグしながらヘスティアが言う。

 

「ハンター君の料理は相変わらずワイルドだよねぇ。たまにはもっと、こう……繊細な料理も食べさせておくれよ」

 

 発言を受けた彼は軽い調子で返す。

 

「ぐへへ、口ではそう言っているがカワイイおててと胃袋は正直のようだなァ!」

「く、くやしい……でも美味しく感じちゃう! おかわり!」

「あいよ~」

 

 ヘスティアとしても本気の抗議ではなく、この冗談交じりの会話をするための発言だった。ようは、今のおふざけをしたかっただけ。

 

 ハンターとヘスティアはすっかり打ち解けていた。

 

 

 

 ──アルフィア達から逃げて落ち着いた後のこと。

 

 ヘスティアは天界からずっと見守っていたことを伝えて、必死に味方アピールを行った。

 それから龍ではなく神だと証明するため、ハンターの背中にファルナを刻んだ……がコレはどさくさ紛れに眷属にしたようなものだったりする。

 その刻まれたばかりのステイタスだと数値は初期値でスキルも魔法もない。正真正銘のイチからのスタートだった。

 

 とにかく、そこまでやってミラルーツ認定という勘違いを解消しきった。

 

 

 肝心のこれから何をするのかに関しては、ハンターはあらかじめ決めていた。

 

 黒竜を討伐したことで、村のモンスター避けに使われていた黒竜の鱗が消えているはず。消えたそれの代わりにドロップ素材を分けるつもりだ。

 討伐して得たドロップ素材はレア度が高い分だけ、モンスター避けに使う分には小さくても問題ない。武器で砕いて、欠片をそれぞれの人里に譲っていく考えである。

 

 ハンターとしては目標だったエンデ・デアヴェルトはすでに完成しているので素材を分け与えることに惜しむ気持ちは特にない。あと、思っていたよりも黒竜のドロップ素材が多かったので、元から黒竜素材がなかった人里にも安全のために分け与えるつもりでもある。

 

 まずはファストトラベルで行ける人里を回って渡して行き、そのあとはファストトラベルができないまだ訪れたことがない人里をマップを埋めながら探すという流れの旅。

 

 

 彼はそんな旅の予定を伝えてからヘスティアを誘う。

 

「これまで俺のことずっと見守って、応援してくれてありがとうな。これからは一緒に旅をしよう!」

「うん! もちろん、そのつもりさ。だってボクはハンター君のそばにいたくて……キミの主神になりたくて……地上に来たんだからね!」

 

 補足しておくと彼は非戦闘員であるヘスティアを連れていくことに抵抗感は一切ない。

 ゲームのモンハンワイルズで非戦闘員のアルマという女性が仲間として、よくハンターのそばにいたので、それと同じノリだったりする。

 

 

 とはいえゲーム的な都合で無敵だったアルマと違って、ヘスティアは無敵ではない。モンスターにやられてしまう不安が発生する。

 その不安はヘスティアの全身に防御系のスキルでまとめたG級防具を着せることで、大まかにだが解決した。

 

 モンハンのG級防具……しかもG級の中でも最高レアの防具を惜しむことなく渡した。

 それらはダンまち基準だと神器の領域に入っているまである。付与される防御力は足のつま先から頭のてっぺんまで適用されるだけに、もはや並大抵のモンスターではまともにダメージが通らない。

 

 それほどの防御力をヘスティアは得たのだが、見た目は天界から降りて来た直後の服装と何も変わらない。

 というのも、重ね着はこれまでモンハン装備のいずれかにしかできなかったが、ミラボレアスのオマケ褒美により、入手した装備であれば何でも適用できるようになったからだ。

 まぁハンター本人はオマケ褒美の件を知らないので「なんか知らんけどミラボレアスを討伐してチート能力がパワーアップした!」と適当に受け入れていた。

 

 

 

 

 ──ハンターとヘスティアは昼食を済ませた後、まだ訪れていない村に繋がる渓谷を歩いていた。

 

 すると、ハンターたちの視線の先で大型モンスターが姿を現した。

 

 モンスターの名前は【ブラッドサウルス】。

 十メートルを超す巨躯を持つ恐竜種のモンスターだ。

 

 

 ブラッドサウルスの方はまだ気づいていないが、通り道にいるので避ける選択肢は無い。

 まぁそもそもハンターが狩る気満々なので、避けられても結果は変わらないが。

 

 

「よーし、願掛けをやっとくか」

 

 ハンターが身体をヘスティアに向けて両手を広げると、その胸に彼女が飛び込む。

 彼はまず抱きしめて、それから彼女の頭を優しくなでる。

 

「えへへ……ハンター君にこうされるの好き……」

 

 モンハンのガセネタというか願掛けに、狩りをする前にペット子豚のプーギーを上手になでて喜ばせると素材報酬が良くなるというものがある。

 それと同じで、たまにこうしてなでることで願掛けをするようになっていた。

 

「俺としても好きな時間だ」

 

 単に願掛けしたくて、こうなったわけではない。

 まだ男女の仲ではないがハンターの方もヘスティアを好ましく想っているからこその距離感。

 

 自分と同じくエンジョイ精神があるし、話のノリも合うし、見た目は文句なしの美少女。

 そんなヘスティアだからこそ、一緒に旅をして共に過ごす内に良いなと彼は考えていた。

 

 ハンターも前世は普通に一般人だし、男だ。そういうことである。

 

 

 

 お互いに身体を離す。

 

「行ってらっしゃい、ハンター君」

「おう、行ってくるぜ。しっかり見ていてくれよなヘスティア」

 

 白い歯が見える良い笑顔で応えた後、彼はブラッドサウルスに向かって駆けだす。

 

 

「一狩りいくぜ!」

 

 fin

 

 

 

 

【余談:ハンターが持つ能力の由来を聞いた際の話】

 

「俺は別の世界からやってきた転生者だ。なんか色々できるのは転生した際に付与された転生チート能力によるもの。あと、この世界は俺の前世にあった『モンスターハンター』というゲームの世界だ。つまり、創作物が元の世界なんだぜ」

 

「またまた、そんな冗談…………じゃない!? えええええーっ! 思ってもみなかった世界の真実まで急に聞かされてボクはビックリなんだけど!?」

 

 ウソを見抜く神の能力と心の底から勘違いしている者の組み合わせは危険。そういうことである。

 

 




【補足】

・女神ヘスティア
 ハンターが去る前に言った名前をアルフィアが報告したので『女神ミラルーツ』と記録されている状態。
 神々の会議で確認したが、どの神も知らなかったので自分たちが地上に降りたあとに天界で産まれた新しい神だと思われている。


【後書き】

 これにて本編完結ッ!(後日談の予定あり)

 前回のタイトル回収に続いて、あらすじを回収!
 このためにあらすじには"黒龍"ミラボレアスと書いていませんでした。

 ついでに触れると、ハンターが勘違いして現場を去ったのはクエストクリア後に拠点に戻る流れを再現する意図もあったりします。

 元々この作品は、ふとした時に「ダンまち知らんモンハン好きがヘスティアを見たらミラルーツを連想しそうだな」と思いついたのがキッカケで書き出しました。そのオチから逆算してプロットを組んだ形です。
 そんな最終話に、ちゃんとたどり着けたのも読者がいたからですね…。
 大きなエネルギーになってました。色々ありがとうございました!

 ぜひ、完結オメくらいの軽い気持ちでも構わないので、感想や評価をお願いします。貰えたら幸せいっぱいになります!
 作者というものは…感想や評価をニヤニヤしながら何度も見返してますからねー。作者シャリ以外もきっとそう。
 それに他の方にもこの作品を読んでもらえることにつながりますッ。

 評価済みの方は、完結記念なり完結補正なりで前より数値を上げてもらえたら嬉しいですッ!


 後日談はアルフィアに確保されたハンターがオラリオに来た話です。
 こちらも作品タグの通り、本編と同じく勘違いコメディなので悲劇は無い予定です。コメディ作に必要なのは喜劇の方ですしねー。
 多忙故、すぐには更新できないかもなので…気長に待っていてください。

 そんな感じで、本編完結までの読了に感謝!!
 ……今更だけどダンまち二次小説なのに、ダンジョンの出番が一度も無いまま完結したなコレ。

 あとは、気が向いたら作者の過去作品もよろしくお願いします。
 この作品を含めて13作品は全て完結しています。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽
◆  QUEST  ◆
◆  CLEAR  ◆
△▲△▲△▲△▲△▲△




祖△△
( #・д・) パーン!
  ⊂彡☆))Д´)黒

本編読了した貴方の原作知識は

  • ダンまちとモンハン両方を知っている
  • ダンまちだけ知っている
  • モンハンだけ知っている
  • どっちもよく知らない
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