七囚人『災厄の狐』(成り代わり転生者)   作:百合って良いよねって思う

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難産でした。次から書きたい所だけ書けば良いかなと思うくらいには、何もかもが上手くいってない話です。

そういえば、プロフの方にも掲載していますが、Twitterやってます。別に何か特別なことを呟くわけではないのですが、気になった方は見てみてください。
ID:@Yona_novel
https://x.com/Yona_novel


「――光よ!」

「……なるほど、大体把握できたよ。新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい……と。そういうことであれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね」

 

 モモイが朝一でヴェリタスへ依頼し、アリスの学生証を発行してからしばらく。ユズを除くゲーム開発部のメンバーとワカモは、アリスの銃を見繕ってもらうために、エンジニア部の作業室へと赴いていた。

 

「まぁ、それは良いとして……まさか、君達が彼女と知り合いだったとはね」

 

 そんな彼女達を前にしたエンジニア部の部長である白石ウタハは、モモイ達を後ろから引率の保護者のように穏やかに眺めている彼女――狐坂ワカモを見て、そんな言葉を零す。

 

「え?……えっと、ウタハ先輩も知り合いなの?」

 

 安易に指名手配犯たるワカモの名前を出せないために、若干濁しながらモモイはウタハへと疑問を投げかけた。ウタハはモモイの疑問に頷きながら、答えを返す。

 

「ああ、彼女……()()()()()は、よくうちに依頼をしてくれるお得意様なんだ」

 

 ワカモは普段からキヴォトス全土で情報収集を行うために、ドローンを始めとした機械を多用している。しかし彼女自身に機械を作る専門的な技術や知識はなく、他者に頼らざるをえない状況だった。

 そこで目を付けたのが、ミレニアムのエンジニア部である。ミレニアムの中でも、彼女達の技術力は高い。その技術力を変な方向へと走らせることもしばしばだが、その実力は本物なのだ。その技術力に目を付けたワカモは、ちょうど作成していた『藻女(みずくめ)()()()』という偽名と偽造した百鬼夜行の学生証を用いて、定期的にエンジニア部へと依頼を行うようになった。

 

「…………っ!」

 

 ウタハの口から出たその名前を聞いたアリスは、嬉しそうな笑みを浮かべている。その理由は、『ユウヒ』という名が、正しく『先生』としての名前であったからだ。世界を跨いでも変わらないものもある……そんなことを感じられて、アリスの気分は高揚していた。

 

「ご無沙汰しております、ウタハさん。本日は依頼をしに来たというわけではないのですが……」

「構わないとも。貴女ならいつでも歓迎だ……そっちの方に、私達がこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある。そこにあるものであれば、好きに持って行っても構わないよ」

 

 彼女がそう言って指さした先には、様々な銃と思わしきものがごった返している。中には銃なのか疑問に思うものもあるのだが……彼女達からすれば、誤差なのだろう。

 

「やった!ありがとう、先輩!」

「よろしいのですか?アリスの銃なのですし、お金なら(わたくし)が払いますが……」

「気にしないでくれ。あそこにあるものは、作るだけ作って放置してしまっているものだ。このまま置いていても、倉庫の肥しになるだけ。それなら、誰かに使ってもらう方がずっといい。それに……貴女からは今までずっと、こちらが提示した金額よりも多額の料金を貰っているからね。このくらいのサービスはするさ」

 

 エンジニア部は、常に予算に悩まされている。ロマンを追い求めるだけでは予算は下りず、下ろせたとしてもロマンを追い求めるには到底足らない。そんな中でも下半期の七割の予算をつぎ込んで宇宙戦艦の砲台を作るのが、彼女達エンジニア部なのだが……それは置いておくとして。

 

 予算が限られているが故に、ワカモの依頼は彼女達からすれば有難いものだった。加えて、ワカモはチップのような感覚で、いつも本来の料金よりも多い金額を支払ってくれる。だからこそ、ウタハはそんなワカモへの恩返しの一環として、サービスをしようとしているのだ。

 

「やあ……一年生のヒビキだよ。良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる……」

「ありがとうございます、ヒビキ。ですが、大丈夫です……アリスが欲しいものは、もう決まっていますから」

 

 アリスはそう言うと、期待に目を輝かせながら、あるものを目指して真っ直ぐに進んで行った。そうして、彼女が止まった目の前にあったのは、身の丈にも迫るほど大きな大砲のようなもの。

 

「アリスの銃はこれにすると、決めているんです」

 

 彼女が見つめているのは、正式名称『光の剣:スーパーノヴァ』と呼ばれる、宇宙戦艦搭載用のレールガンである。

 

「えっと、それは何……?まるで『大砲』、みたいだけど」

 

 ミドリのその質問を皮切りに、エンジニア部からの説明が行われる。要約すると、宇宙戦艦を作ろうとしてまずは砲台たるレールガンを作ったが、前述したようにそれだけで下半期のおおよそ七割の予算を使用した。

 砲台は作ることが出来た。しかし砲台だけでそれだけの予算を使うなら、本艦を作るには何千倍もの予算が必要であり、現実的ではないと判断して、計画は凍結しているのが現状だ。

 

 普通なら計画段階で気が付きそうなものだが、何故スーパーノヴァを作ったのかと問われれば、部長の白石ウタハはこう答える。

 

「ビーム砲は、ロマンだからだよ」

 

 頭の良いバカとは、まさにこのことである。しかし、ロマンに魅力を感じるのもまた事実。実際、アリスとワカモは共感するように頷いている。この場においては、モモイとミドリの方が少数派なのだ。彼女達は納得できないだろうが。

 

「……しかし、それが欲しいのか。うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど、それは難しいな」

 

 そんな色々と積もる話もあるスーパーノヴァだが、運用するには現実的な問題が多くある。

 

「この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる」

 

 スーパーノヴァの全長はアリスの身の丈に迫るほどあり、宇宙戦艦搭載用と銘打っているだけあって、非常に重い。基本重量は140kg以上あり、光学照準器やバッテリーを足した上で砲撃を行えば、その反動はなんと200kgを超える。個人が扱うのは、たとえワカモやホシノといった実力者でも不可能だ。

 

 

 

 ……尤も、それを欲しがっている天童アリスは、例外であるが。

 

「ならアリスが、これを扱える『選ばれし勇者』であることを証明すれば良いんですよね?」

 

 彼女は自信ありげにそう言うと、徐ろにスーパーノヴァを持ち上げる。一切震えることもなく、滑らかにそれを持ち上げる光景に、ワカモ以外の者は驚きを隠せない。

 

 そしてアリスは、見せつけるように銃口を上へと向け、お決まりの台詞を叫んだ。

 

「――光よ!」

「あ、アリス待って!それだとエンジニア部の部室が――」

 

 天井に向けられたレールガンにワカモが焦ってアリスを止めようとするものの、時すでに遅し。どうやらこの世界でも、エンジニア部の作業室の天井には穴が空く運命だったようだ。

 

 轟音を立てながら、スーパーノヴァから射出された光線が、エンジニア部の部室の天井を貫く。天井には巨大な穴が開き、晴れ渡る青い空がこちらを覗いていた。

 

「ほ、本当に扱えるなんて……で、ですがそれだけは、その……!予算とか諸々の都合で、できれば他のものにお願いしたく……!」

「お金なら(わたくし)が出しますよ。流石に戦艦を作れるほどはありませんが、アリスの銃の製作原価くらいでしたら……」

「……いや。構わないさ、持って行ってくれ」

 

 コトリやワカモの言葉に、ウタハは待ったをかける。スーパーノヴァは、アリスにしか扱えない。このままここで腐るくらいなら、アリスに譲ってしまった方がよっぽど良いと彼女は判断した。

 

「ありがとうございます、先輩!」

 

 しかし、当然ロマンを追い求める彼女がタダで渡す訳もなく。

 

「お礼にはまだ早いさ」

 

 そう言うとウタハは、ヒビキに処分要請を受けたドローンとロボットを、全機出すように言った。

 

「他の武器なら喜んで渡しただろうけれど……その武器には、確認が必要かなと思ってね。いや、『資格』と呼んだ方が良いかな」

「!!敵エネミーが現れました!戦闘開始です!」

 

 簡単に言えば、「その武器が本当に欲しければ、私達を倒してからにしろ」という話だ。ゲームで言うならば、新しい武器を手に入れた際の、チュートリアルのようなもの。

 

 前方から、大量の敵性反応を確認したアリスは、慣れた様子で戦闘体制へと移行する。それを見て、モモイとミドリも涙目になりながら銃を手に取った。

 

 ……そんな中、ワカモはいそいそとスマホを取り出し、アリスの勇姿を映像として残そうと、カメラを構えていた。

 

「ちょ、ちょっと!わか……じゃなくて、ユウヒさん!?何でスマホのカメラこっちに向けてるの!?手伝ってよ!!」

 

 モモイがそんなワカモに懇願するが、ワカモは意に介さず、銃を手に取ることもなかった。

 

「あら、(わたくし)が戦ってしまっては、意味がないでしょう?大丈夫です、貴女達なら(わたくし)が手伝わなくとも勝てますよ」

 

 ワカモはそれだけ言い残すと、カメラをアリスに向けたままエンジニア部の方へと下がって行く。残された二人は、ワカモに良い所を見せたいのか、やけにやる気なアリスと共に、ドローンとロボットの集団と戦うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……貴女がそれほどまで入れ込むなんて、なんだか意外だね」

 

 アリス達ゲーム開発部が戦っている中、その光景を記録しながらウタハは、隣でスマホを使い彼女達を撮影しているワカモへとそう言った。

 

「そうでしょうか?(わたくし)も人間です。好きになった者に夢中になるのは、当然のことでは?」

「それでも、あの武器にかかったお金を支払うって言うのは、余程のことだよ。ましてや、自分のためではなく他人のためだ。それほどのことが出来る人間が、この世界にどれだけいることか」

 

 ワカモの「お金を支払う」という発言は、決して嘘ではないということを、ウタハは知っている。どれだけの資産を保有しているかは知らないが、もし自分が「支払え」と言ったら、彼女は当たり前のように支払うのだろう。今までもどれだけ高額な依頼だったとしても、ワカモは一括払いをしてきたが故に、それが分かってしまう。

 

「……貴女は、どこか他人と壁を作っているように感じていたのだが……どうやら、それは間違いだったようだ。素敵な友人もいるようだし、楽しそうにしていて何よりだよ」

 

 ウタハとワカモの関係は、既に二年間に及ぶ。ワカモがアビドスでのユメ救済の後に当時のエンジニア部を訪れたのが始まりであり、以降も定期的に依頼やメンテナンスを依頼してくれる。

 

 それなりに長い付き合いのあるウタハだが、ワカモの第一印象は『常に何かに追われるように必死になっている人』であった。正確に言えば少し異なるのだが、言葉にするならそう表現するしかない、そんな印象を抱かせた。それが何なのかは、ウタハには分からない。彼女には依頼に応え、機械を作る以外にできることがなかったから。

 

 昔と比べれば幾分か余裕があるようには見えるが、心配なものは心配なのだ。敬語を外さないためどこか距離感が遠く、壁を作っているように感じていたのも原因の一つ。「彼女は、青春を謳歌できているのだろうか」と、心の奥底ではずっと思っていた。

 

「まぁ、他者に対して壁を作っていたというのは、安易に否定はできませんが……素敵な友人というのは?」

「この前、たまたま見かけてしまってね。あの桃色の髪の生徒と並んで歩いているところを」

「……ああ、あの時の」

 

 しかし、少し前にたまたま出かけた先で目に入った、ワカモとホシノの姿を見て、それは杞憂なのだと知った。彼女は、心の底から笑っていたのだ。そして今も、まるで運動会の子供の勇姿を記録せんとする親のように、写真を撮っている。

 

「これからも、うちをご贔屓に」

「えぇ、頼りにしていますよ」

 

 今後も、ワカモはエンジニア部に依頼し、ウタハ達はそれに応えるだろう。二年前から変わることのない関係は、これからも続いていく。

 

「キャーッ!!ウタハさん、今の見ましたか!?あのアリスの完璧な一撃を!!!綺麗に残っていたロボット達を一掃しましたよ!」

「………………ああ、そうだね」

 

 それはそれとして、隣でアリスの活躍に興奮するワカモを見て、印象を改めざるをえないなと感じたウタハであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あり得ないわ……ゲーム開発部に新入部員が入ったなんて、あり得ない……!それに二人も……!」

「残念だけど、真実だよ!」

「え、えっと……(わたくし)は、一応部外者なのですが……」

 

 時は過ぎて再びゲーム開発部部室。「部活動の資格要件を揃えた」と安心しきったモモイは、ワカモの膝の上に座るアリスと共に、ソファで並んでレイドバトルに勤しんでいた。ミドリだけは「そんな呑気にゲームをしていて大丈夫なのか」と苦言を呈していたが、先の未来を知るアリスとワカモは勿論、資格要件を満たしていると勘違いしているために謎の自信を持つモモイは、意に介することなくゲームを楽しんでいた。

 ちなみにこの時、アリスとモモイのレイドパーティーに入ってきた『Perorochan32』というプレイヤーネームを見て、ワカモは「ヒフミって、このゲームもやってるんだ……」と感想を抱いていた。おそらくはモモフレンズとこのゲームがコラボしていた時期があったのだろう。ヒフミとはそういう生徒だ。

 

「あなたが噂のアリスちゃんね。ゲーム開発部に入った、四人目のメンバー」

 

 その話は置いておくとして、『資格審査』として来訪してきたセミナー所属の早瀬ユウカは、信じられないものを見るような気持ちで、ゲーム開発部の部室へとやって来ていた。目に入ったワカモに抱えられるアリスの姿を見て、一瞬怪しい眼つきをしたかと思うと、どうやらモモイの話は本当らしいということを実感する。

 

「ふーん、ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握してると思ってたけど……私がこんなに可愛い子のことを知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね。そちらの方は?見たところ、うちの生徒ではないみたいだけど……」

「お初にお目にかかります、セミナー会計の早瀬ユウカさん。(わたくし)は百鬼夜行連合学院三年生の『藻女(みずくめ)ユウヒ』と申します」

「……ああ、あなたがユウヒさんでしたか。エンジニア部からお話は伺っています」

 

 ワカモの挨拶に、ユウカはいつの日か聞いた名前を思い出た。所謂エンジニア部のお得意様であり、定期的にミレニアムに訪れては依頼をしてくれる、百鬼夜行の生徒だという。百鬼夜行はキヴォトスの、所謂『外郭部』の学園であり、中央のミレニアムに来るのは非常に珍しい。それこそ、わざわざミレニアムに定期的に訪れるのは、ワカモだけだろう。

 

 話には聞いていたが、対面したのは今日が初めてであり、穏やかな印象や聞いていた話からも悪い人ではないと、ユウカは結論付けた。

 

「…………意外と、太く感じませんね。やはりあれは誇張表現だったのでしょうか……?」

「??……何かおっしゃいましたか?」

「……いえ、お気になさらず。こちらの話ですので」

 

 対するワカモは、前世で散々ネタにされていた太ももについて、失礼な感想を抱いていたのだが、それが聞こえていたのはアリスだけだった。当のアリスもゲームに夢中であり、耳に入っても気が付かなかったのだが。

 

「とにかく、部の規定人数は満たしたよ!これでゲーム開発部は存続ってことでOKだよね?」

「存続……確かにそうね。この子が本当に、自分の意志でここに来た部員だったら、の話だけど」

 

 モモイの主張にユウカは冷静に返答する。ミレニアムの部活動の運営規則は、今年から少々厳しくなっている。それもこれも、どこかの会長がセミナーの予算を横領し、都市を勝手に建設しているのが原因なのだが、その事実を知るのは当の本人とその護衛、ワカモとアリス……後は、もしかしたら現時点でも、超天才清楚系病弱美少女ハッカーなら把握しているかもしれない。

 

 そうした理由から、ユウカのアリスに対する簡単な取り調べ……もとい、簡単な質問が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして!規定人数も満たしたのに!?」

 

 数分後、ユウカの簡単な取り調べも終わり、彼女から「『今学期』までは、部室も部費も使っていい」と言われたモモイの叫びが、ゲーム開発部の部室に木霊する。

 

 アリスの受け答えは、完璧と言って良い出来だった。ゲーム開発部に来た理由を問われれば、「ゲームが、アリスの人生を変えてくれたからです!」と笑顔で答え、役職を問われれば「テストプレイヤーと、最近始めたばかりで職業レベルは低いのですが、プログラミングも出来ます」と、内容としては文句の付けようもないほど。ユウカも早々に「無理やり連れてこられたわけじゃない」ということを理解し、ゲーム開発部を正式な部活として認定した。

 

「あら、知らなかったのかしら。今は規定人数を満たすだけじゃなく、同時に部としての成果を証明しないといけないの」

 

 以前までは、どちらかの要件を満たすだけで良かったのだが、最近急に規格が変更され、現在では両方を満たさなければ部として認定されなくなってしまったのだ。もちろん猶予期間はあるのだが、それも今月末まで。説明はされていたはずなのだが、その説明会に部長のユズ、そして代理のモモイも参加していなかったという、完全に自業自得により、彼女達は勘違いをしていたというわけである。

 

 つまるところ、ゲーム開発部は最初にも宣言した『ミレニアムプライスで入賞する』という宣言を、有言実行せざるを得なくなった。

 

「それじゃあ、楽しみにしてるわよ。じゃあね~」

「ちょっ、待って!詐欺師っ、鬼っ、悪魔っ!もおぉぉぉぉっ!!」

 

 言うことを言ったユウカは足早に部室を去っていく。忙しい中に来たのだろう、モモイの静止に靡く素振りすら見せず、部室の扉は閉ざされた。

 

「先生、ようやくケイを迎えに行けますね」

「うん、そうだね……タブレット、持って行かないと。流石にモモイのゲーム機に入るのは、ケイもモモイも可哀そうだし」

 

 嘆くゲーム開発部三人を気にすることなく、アリスとワカモは小声で会話をする。これから彼女達は、再び『廃墟』へと赴き、当初の目的でもあった『G.Bible』を探しに行くことだろう。それが、アリスは楽しみで仕方がなかった。ケイもまた記憶を持っているのだと、直感で理解しているから。

 

「……うん、よし!やるしかない、行こう!」

 

 ワカモがタブレットの確認をしていると、モモイ達も決意を固めたようで、武器や装備の準備を進め始めた。

 

 そうして、再びゲーム開発部+αのパーティーは、廃墟へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どういうことです!?何故アリスもケセドも見つからないのですか!!……アリスはまだ分かります。どうせモモイ達が勝手に連れて行ったに違いありません。おそらく先生もアリスと共にいるはず……ですが、何故ケセドを観測できないのでしょうか?工場の管理AIですし、ここにまだ残っていることは確かなはずですが……』

 

 廃墟の一角にある、とあるコンピューターの中で。『名もなき神々の王女』、その真価を発揮するための『Key()』であり、アリスの侍女でもあった天童ケイは、目覚めたばかりの廃墟で誰もいないのを良いことに、ひとしきり騒いでいた。

 

 目覚めてすぐ、彼女は廃墟全体のプログラムを片っ端からハッキングし、アリスの捜索を開始。しかしアリスがいたであろう場所は既にもぬけの殻であった。しかしそれ自体は良い。彼女は恐らくモモイ達に連れられ、既にミレニアムに向かったのだろう。自分の所には来なかった先生に一抹の不満を覚えたりはしたが、納得はできる。

 

 問題なのは、ケセドの存在を観測できないこと。観測しようとしても、ゲームでバグが起こってしまったかのように、ピンポイントで見ることが出来ないのだ。

 

『…………はぁ、これ以上はどうしようもありませんね。素直にアリスと先生を待つとしましょう』

 

 どうにか観測しようと努めたのだが、ケイの優秀な頭脳でも理解できない現象に、素直に降参をする。これ以上出来ることはないと悟り、素直にアリスと先生を待つことを決めた。

 

『…………アリス達が来るまで、暇ですね』

 

 ケイの存在するコンピューターの中には、娯楽と呼べるものは何一つない。ゲームも、おしゃれも、何一つ。そんな暇な空間でも、ケイはアリスと先生を待ち続ける。

 

『はぁ、何故先生は早く私を迎えに来ないのですか。アリスも()()()も、もう出会っている頃でしょうし…………いえ別に、寂しいとかそういう訳ではないのですが……』

 

 そんな言い訳は誰にも聞こえることなく、コンピューターの中に消えていく。彼女達が再会する時は、すぐそこまで迫っていた。




・成り代わりワカモ
前世でのプレイヤーネームは『ユウヒ』。それにあやかって、偽名にも同じ名前を使っている。
アリスが関わるとキャラが崩壊する。
自身の知識の補完や差異を調べるために、キヴォトス全土を範囲として情報収集を行っており、一応ブラックマーケットで情報屋を営んでいる。客は少ないが。
ハッキングもできるが、せいぜいが一般ハッカー程度の実力しかないため、逆に特定されそうで、ミレニアムには手を出せず、ミレニアムの内部情報が一番集まっていない。
「ケイちゃんに会える」とワクワクしている。
プレイヤーネームや推し、趣味趣向など、一部設定に作者の自己投影が入っている。しかし作者よりも遥かにハイスペックだし考え方もまるで違う。

藻女(みずくめ)ユウヒ
百鬼夜行連合学院所属の三年生。部活動は未加入。
狐坂ワカモの親戚であり、似通った部分はあるが別人である……という設定。
非常に美人で人当たりも良いため、関わる者からは軒並み好印象を抱かれる。完全に優しいお姉さん。
昔この偽造学生証をシロコが知った時に、「ならこっちをうちの生徒にしよう!」と言われたことがある。当然、バレる可能性が高すぎて断られたが。
今後も定期的に使用されると思われる。

・天童アリス
無事に光の剣を手に入れた勇者。妙に戦闘に手慣れているため、余計にリオから警戒される。
今後、成り代わりワカモの膝上が定位置になるかもしれない。

・白石ウタハ
藻女(みずくめ)ユウヒが狐坂ワカモである』ということに感づいてはいるエンジニア部部長。しかし何も言及しない。成り代わりワカモが噂されるほど悪人であるとは思えないし、むしろ善人であると知っているから。
初めて会った時から成り代わりワカモの依頼を担当しており、それなりに知れた仲。
色々心配していたが、ホシノと歩いている姿やアリスと一緒にいる姿を見て安心した。



・天童ケイ
成り代わりワカモとアリスがゲームをし始めた頃に目覚めた。不満とか、先生がこの世界にもいることを確信できた故の安堵とか、色々感じてる。
決して口には出さないが、早く迎えに来てほしいと思ってる。寂しい。
本物ワカモが死んでいることを知らない。




今回の話を書いていて、なんとなくスランプに陥っている気がしました。多分時間的な余裕とか、精神的な余裕がないのが原因だと思うので、少し執筆のペースをゆっくりにしようかなと。
なので次回は少し遅れると思います。楽しみにしてくださっている方には申し訳ないです。次回は良いものをお届けできるように、頑張ります。
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