七囚人『災厄の狐』(成り代わり転生者) 作:百合って良いよねって思う
タイトルの学名は他にも
ミレニアムケイチャンカワイイ
ミレニアムイヤシジュウシャ
ミレニアムアカメロボモップ
ミレニアムシロロボモップ
ミレニアムロボモップ亜種
とか色々考えてました。調べた限り学名が特になかったので、今回は仮決めという形。正式に学名が制定されたら、タイトル変更する予定です。
ケイちゃんの絆ストーリーのネタバレが(少しだけ)あるので、注意してください。
次回は掲示板回にする予定ですが、前回同様に意見を募集するために、活動報告を更新しました。詳しくは以下のリンクからご確認ください。作者を助けると思ってご意見寄せて頂ければ幸いです。
掲示板形式について(~パヴァーヌ1章まで)
天童ケイは常々、『自分だけはしっかりしていないといけない』と考えていた。それは前の世界で過ごしていた頃から続いている思考であり、今もなおその考えが変わることはない。
何故今でもそのように考えているのか。それは王女を支える『侍女』として生きていた頃の名残もあるが、それ以上に前の世界で、ゲーム開発部の面々――そして何より、大切な三人の人物と共に過ごしてきた日々があったからこそのものだと言える。
毎日共に任務へと赴き、絆を深めた関係でもあるアリス、ワカモ、そして彼女達を繋いだ存在でもある
アリスに関しては、大した問題でもない。彼女の純粋さは魅力でもあり、わざわざ直してもらう程のことでもないから。そもそもケイにとってアリスは特別な存在であり、彼女を支えるのは本懐でもある。ゲーム開発部に毒されないかが心配ではあるが、そこもケイが気を付けていれば何も問題はない。
しかし問題は、残りの二人だ。
ワカモは先生にべた惚れで、彼を否定することを知らないのではと思えてしまうほど甘い。それに加えて他の者――特に迷惑を掛ける生徒には徹底して苛烈で、先生が居なければすぐに問題行動を起こす。
シャーレの中でこそ、そういった行動は控えられていたが、不機嫌な彼女から滲みだす今にも爆発しそうな雰囲気に冷や汗を流したことは、一度や二度ではない。正式にシャーレに所属するのが彼女と比べてもかなり遅かったケイですらそうであったのだから、先に所属していた者の心労が凄まじいものであったということは、考えるまでもないだろう。現に『
「さて、先生……この部屋の惨状について、ご説明していただけますか?」
そして、先生。彼もまた、問題児であった。
生徒に対して甘いのは良い。そこは彼の美点でもある。ワカモや他の生徒に対しても、過ぎた行動にはきちんと叱っていたようだし、そこを問題とは思っていない。
「………………いや、あの……ケイ様?これには……そう、とても深い事情があってですね……?」
「では、その深い事情とやらを聞かせていただきましょうか。先生は大人なのですから、さぞ高尚な内容をおっしゃるのでしょうね?」
ケイの目の前には、ゲームで混乱した時のようなぐるぐるとした瞳を携え、正座をしている
事の発端は、アリスが気を利かせてケイに体を貸してくれた時のこと。ユウヒとのデートを楽しんでいた最中、ミレニアムだけでなく様々な学園の自治区にセーフティハウスがあるのだという話を聞き、アリスが興味を持ったのがきっかけだった。
アリスへのお礼の一環として、ケイがセーフティハウスへ寄ることを提案し、ユウヒも快諾。
「だ、だってね……ケイちゃんとアリスが、『
しかし彼女達が見たのは、想像していたようなものではなかった。
「でも、いざ見繕ってみたら『これ、懐かしいな』とか、『あれも良いな、これも良いな』ってなっちゃって……気が付いたら、こんなことに」
ミレニアム郊外の閑静な住宅街に存在する、ユウヒのセーフティハウスの一つ。そこは他の拠点と比べて狭くはあるものの、本来なら何の不自由もない程度の広さが確保されている部屋だったはずだが……床や机などスペースのある所には、ゲームや衣服、美容品やぬいぐるみが箱や包みに包まれたまま、所狭しと並べられていた。最低限の秩序は保っているが、寝床と動線以外にほとんどスペースがないというような有り様だったのだ。
その光景を見たケイは静かに怒りを放ち、今に至る。
これが、先生の問題点の一つ。掃除をサボった挙句、シャーレの居住区をゴミ屋敷にしたりといった問題もあったが、それ以上に先生は、とにかく金銭感覚がおかしかった。それは、トリニティのお嬢様のような
「…………はぁ」
呆れてものも言えないとは、正にこのことだろう。
昔からそうだった。「お金がない」と宣いながら、思わず二度見してしまう程の高額な、変なロボットのフィギュアを買ったり、アリスやワカモ、そして自身へ贈り物を何かあるたびに贈ってきたり。
金欠でお昼を菓子パン一つで済ませるような人が、一体どこからプレゼントを贈るお金を出しているか。それを聞いても、曖昧に誤魔化されるだけ。しかし確かなのは……『先生は、散財癖がある』ということだ。それは、彼女になってからも変わらないようだった。
「……だからと言って、限度があるでしょう!?ここにある物だけで、一体いくらになると思ってるんですかっ!?」
ユウヒの背後にある大量のプレゼントに目を向ければ、知る人にとっては卒倒するような光景が広がっている。
前の世界でも贈ってもらった記憶のある、高級化粧品メーカーである『サミュエラ』が発売している、最高級香水『ザ・ビヨンド』を始めとした『12傑作』と呼ばれる商品。他にもグロスやクリーム、パウダーですら揃えれば馬鹿にならない値段なのに、それに加えオシャレで安く、多くの生徒達に人気のある、ケイも着ていたようなブランドの衣服から、名前だけは知っている値段も考えたくないほど見るからに高級なブランドものの衣服、ゲームもハードソフト問わず様々な種類のものが置いてある。
一体ここにある物だけでいくらになるのか。一つ言うなら、優秀なケイの頭脳はすぐさま解をはじき出したが、その金額は目を背けたくなるような数字だったということだ。
そもそも、これ程散らかった場所に招くとはどういう了見なのか。快諾した所を見るに、ただ頭から抜けていただけのようだが、それはそれで問題である。
「お、お金の心配はしなくても大丈夫だよ!一応、資産運用して余裕あるから……!」
そう言ってユウヒが取り出した通帳の残高の欄には、確かにケイのはじき出した金額を大きく上回る数字が刻まれていた。恐らく、サラリーマンが一生を掛けて稼いでも届かない額だ。
「…………このお金は、どうやって用意したんですか?」
ペラペラと受け取った通帳を捲りながら、ケイが更に目を細めてそう問う。思わず目を疑ってしまう程の金額。彼女が疑問を持つことはなんら不思議ではない。
「えっと、大体は投資だよ。ケイちゃんは知らないと思うけど……これでも
「会計学が出来るからと言って、投資が上手いかはまた別問題ですが……まぁ、それは良いでしょう。確かに、その言葉に嘘は無さそうですし」
通帳の入金記載欄には、いくつも『ハイトウキン』や『ブンパイキン』と共にかなりの金額が記載されており、ユウヒの言葉が正しいことを如実に表していた。
「ですが、度々見受けられる正体不明の入金記録は、どこで得たものなのですか?」
しかし、ぱっと見正しそう見えても、ケイを騙すことは出来なかった。明らかに怪しさ満載の出所不明の入金額が、少し前までまばらに記されているのだ。それは馬鹿には出来ない金額で、バイトにしては高額過ぎる。
ケイの言及に、ユウヒは体を硬直させた。その反応からして、何かしら隠していることがあるのは確実だ。
「…………『スランピア』って、覚えてる?」
『誤魔化せない』と悟ったのか、『どうせバレるから今の内に怒られておこう』と思ったのか、僅かな間を置いた後に、おずおずと彼女が口にしたのは、そんな返答。
「『スランピア』ですか……覚えていますよ。私はあまり行ったことがありませんが、何度かアリスとワカモと共に任務で赴きましたね」
彼女の出した単語には、聞き覚えがあった。脳裏に浮かべるのは、廃墟となったテーマパーク。電気の通っていない遊具が夜になると動き出す、近づいた生徒が行方不明になるなどの奇妙な噂が広まっていると、ケイは記憶している。そしてその噂の一部は、真実であるということも。
「……もしかして」
「えっと……はい。ケイちゃんも予想してると思うけど、そこで稼ぎました……」
様々な噂が流れているスランピアでは、夜に広場で度々稼働している『夜のネロ』と呼ばれるビックリ箱のようなエネミーを倒すことで、財貨を得ることが出来る。尤も、それが出来るのは『先生』の特権であり、『元先生』としてのテクストが刻まれているユウヒだからこそ実現した稼ぎ方だ。
「…………何してるんですか!?どうせ先生のことです、一人で行ったのでしょう?あそこにはシロやクロ、ゴズだって出る可能性があるんですよ!もしも何かあったら、どうするつもりだったんですか!?」
そこまで話を聞き理解したケイは、顔を真っ赤にしながらユウヒに対して大声で怒り始める。彼女がユウヒの生徒であった時間は他の二人と比べれば遥かに短いが、それでもスランピアの危険性をよく知っていた。確かに通常はネロが広場で起動しているだけで、あまり危険はない。しかし稀にそこでは、ネロ以外の存在が現れることがあるのだ。それらに危険がないなどとは、口が裂けても言えない。もしものことを考えれば、彼女が怒るのは当然のことだった。
「ご、ごめんなさい……」
怒られたユウヒは、素直に謝罪の言葉を言う。彼女の怒りは自分のことを心配しているが故のことであることも理解しているため、説教を甘んじて受け入れていた。
「ごめんなさいで済む話ではありません!いくら必要があるからと言っても、少しは自分を大切にしてください!……まさかとは思いますが先生、軍需工場にも行っていたりはしないですよね……?」
しかし受け入れたからと言って、ケイの説教と追及が止まるわけではない。「どうせ他にも何かやらかしている」という、最早信頼と言っても過言ではない疑念を、彼女は抱いている。
「軍需工場には行ってないです!」
「……本当ですか?」
「はい!この身体と名前に誓って、嘘は言ってません!」
ジロリとケイはユウヒの言葉の真偽を推し量るが、態度の彼女の言い分を見るに、恐らく真実なのだろうと一旦信じることにした。尤も、まだユウヒのことを疑ってはいるが。
――後で、この人が他にもやらかしていないか、確認しなければなりませんね。
内心でそう思いつつ、ケイは溜め息と共に話を切り上げることにした。
「……はぁ、そこまで言うなら信じましょう。ですが、もう一人でスランピアや軍需工場に行くのは禁止です。行くならせめて私達も連れて行くこと、良いですか?」
「はい……ごめんなさい、お母さん」
そんなケイの考えもつゆ知らず、ユウヒは真面目なのかふざけているのかわからない返答をする。本人としては、自分なりにユーモアを交えようとした結果なのだろう。実際、しょぼんと肩を落としている姿は、本当に反省しているように思えた。
「誰がお母さんですか!!」
彼女のその態度は、ケイの反応の良さも原因の一端なのだが……それが治るかどうかは、また別のお話である。
説教を受けてから数分後。二人は共に部屋の整理を行っていた。
「まったく、なんでこんなに雑に積んでるんですか。少しは整理整頓をですね……」
グチグチと文句を言いながらも、ケイは手際良く箱や包みを仕分けていく。部屋は物が乱雑に置かれているせいで狭く見えるだけで、きちんと纏めていればここまで窮屈には感じなかっただろうに――といったようなことを彼女は思ったが、口に出さなかった。口に出しでも意味がない、とも言う。口にする程度で治っていたら、彼女はここまで苦労はしていない。
「ありがとう、ケイちゃん……ここには基本
「誰がケイちゃんですか。次からは、こうなる前に呼んでください……っていうかこの話、前にも言いましたよね……?」
「あぁ、そういえばそんなこともあったね。懐かしいや……でもあの時も、リオの部屋よりはマシだったでしょ?ここだって、そんなに散らかってないし……」
「争いのレベルが低すぎます。確かに、ここはあの時に比べればマシな方ですが」
テキパキと整理整頓をしつつ、ついでに掃除を進めていく中で、ふとケイは『前』の出来事を思い出す。当時はシャーレがゴミ屋敷になっており、随分と掃除に苦労したものだ。それに比べたら、今回は比較するまでもなく楽である。
「あっ、そういえばお金の管理は今度から私がしますので。高い買い物は要相談、きちんと家計簿もつけてくださいね」
「えっ」
そんな風に会話をしながら部屋を綺麗にしていると、ケイがそんなことを言い出した。突然のその宣言に、ユウヒは体を硬直させる。彼女が手に持っていた化粧品の箱を落とさなかったのが幸いなほどに、その反応は露骨で大きなものだった。
「何をそんなに驚いてるんですか。流石にこんな状況になったら、危機感も覚えますよ。きちんと管理しないと、歯止めが利かなくなりそうですからね」
『前』では早瀬ユウカが財布の一部を握っていたために、ある程度抑制できていたのだろうが、今はそうする訳にもいかない。
「それにこんなことを続けてたら、金銭感覚がおかしくなってしまいますよ。アリスにも悪影響です」
加えて、『前』と比べてお金があるのが厄介だった。きちんと財布の紐を握らなければ、『アリスにプレゼントだよ』とか、『ケイちゃんに似合うかなと思って』とか言って散財するのは目に見えている。それが嬉しくないと言えば嘘になるが、ユウヒやアリスの金銭感覚が狂う方が嫌だった。
「……まさか、既におかしくなっていたりはしないですよね?」
「そ、そんなこと……ない、よ……?」
「……先生、私の目を見てください。隠しても無駄です。どうせ後からバレるんですから」
ケイの話を聞いている間もユウヒの動揺は隠せないものになっており、その姿にますます不信感を抱いた彼女は、ジロリと目を細める。
「その言い草は、何かありますよね。話してください、今なら怒りません」
「嫌だ!絶対に怒るもん!」
「怒りませんよ。だから、素直に吐いてください……そうすれば、きっと楽になれます」
「その言い方は絶対に怒るやつでしょ!
ユウヒの態度は、明らかに何かを隠している人のそれだ。しかし断固として彼女は話す気はないようで、ケイとは視線を合わせないという意思表示のように、確固たる意志の籠った声と共に目を逸らしている。それが逆にケイの導火線に火を点けた。
「……いい加減、私も強硬手段に出ますよ」
「ぐっ……
「何故こちらが悪者のような扱いを……そもそも、何度も同じ手が通用すると思わないでください!」
彼女が都合が悪くなったり、誤魔化そうとしていたりすると目線を合わせようとしないというのは、『前』の世界からそうだった。事実、何度かそのような場面を見たことがあるし、実際に経験したこともある。故にケイは遠慮することなく、両手でユウヒの顔を掴むと、強引に顔を自分の方へと向かせた。
「っ!?」
「ほら、言いなさい。何を買ったんですか?それとも普段の食生活ですか?何にせよ、度が過ぎているなら、どうにかしなければなりません」
「け、ケイちゃん……」
「何ですか。言い訳なら、聞きませんよ」
そうして彼女のことを詰めていると、先ほどよりも弱々しい声を発する。心なしか、顔も赤くなっているように見えた。ケイはそれに疑問を抱きながらも、ユウヒの誤魔化しなのだろうと推察して、話を逸らさないように言葉を紡ぐ。
「……そ、その…………ちょっと、近い……かも」
しかしユウヒの言葉は、そんな彼女の意識を粉々に破壊する程の威力を放っていた。狼狽え、恥ずかしがりながらも彼女が発した音に、時間が止まったような錯覚を覚える。
空気が静まり返り、二人の間には沈黙が流れた。
(近い……?一体なんのこ、と……)
ケイの思考が一瞬停止する。そして改めて、自分達の体勢を見直した。
視界いっぱいには、ユウヒの顔。ついさっきまでは頑なに目を合わせようとしなかったのに、少しだけオレンジがかった黄金色は、ケイの瞳をジッと見つめている。
「えっと、顔が、近くて……あぅ、キス、するみたいな……姿勢、だけど……」
二人の距離は、言うまでもないだろうが、非常に近い。ケイの両手がユウヒの両頬に添えられ、顔を固定しているのだから当然だ。だが、その光景は……第三者から見れば、『今からキスをする恋人』のようにも見える。
後少しでもケイが顔を前に進めれば、自身の唇と目の前の彼女のそれを重ねることが出来るだろう……それほどまでの距離感だった。
「…………~~~~~っ!?///」
段々と弱くなっていくユウヒの言葉で、そのことを理解したケイは、弾かれるように両手を離し、急いでユウヒから距離を取る。
「な、ななっ、何言ってるんですか急にっ!?///」
顔を真っ赤にしながら、離れた彼女はそう叫んだ。いつも通りの冷静な思考など出来るはずもなく、感情的に声を張り上げる。
羞恥からか、身体を節々を震わせたケイのその姿は、非常に可愛らしさを伴ったものとして、ユウヒの目には映っていた。尤もそれは、対するケイも同じである。
「だだ、だってケイちゃんが……両手で顔を掴むから…………えっと、そうにしか、思えなくなっちゃって……」
一方のユウヒも同じように顔を真っ赤にしており、僅かに潤んだ瞳が、やけに扇情的な雰囲気を醸し出していた。彼女の声はケイとは対照的にどんどんと尻すぼみになっていき、最後には彼女の耳でも聞き取れないのでは思うほど小さくなる。
「そもそも、先生が目を合わせようとしないのが悪いのでしょう!?」
「で、でも近付いてきたのはケイちゃんじゃん!」
「~~~っ、私はですね!貴女のためを思って行動してるんです!なのに、急にそんな……っ!」
「それは……分かってるけど!仕方ないじゃん、ケイちゃんが可愛いんだからっ!」
双方の論争は、子供の言い争いに近しかった。感情的で、論理などない。しかしその口喧嘩は、互いが互いであるからこそ出来るものでもある。本来なら両者は、ここまで感情を表に出すことはない。相手が自分のことを好いていると理解しているからこそ、彼女達は争うことが出来ているのだ。
それを知っているが故に、ケイに体を貸しているアリスはこの喧嘩を止めようとはしない。むしろ微笑ましいものを見るような穏やかな目で、二人のことを見守っているであろう。
「かわっ!?~~~っ!!今日こそ、先生を殺して私も死にます!!!」
そのことを知る由もないケイは、彼女の照れ隠しの代名詞とも呼べるようなセリフと共に、ユウヒの元へと動き出した。無論本気で殺しなどしないが、少しくらいは痛い目を見せても良いだろうと判断してのことである。身体を大事にしているユウヒのラインを見極めて行動に移している辺り、存外思考は冷静なようだ。
しかしその行動は、途中で中断を余儀なくされる。
移動しようとした矢先、動かした足に付近に置いてあった箱が当たり、そこに挟まれていたであろう領収書がヒラリとケイの足元に落ちてきたのだ。
「?……何ですか、この領収書」
「あっ…………」
彼女の優秀な眼は、瞬時に領収書の内容を把握する。
「………………先生」
この時のユウヒの不運は四つ、存在あった。
領収書を箱の隙間に挟んで隠した場所が、奇しくもケイの近くであったこと。彼女の動かした足が、偶然それに当たってしまったこと。たまたま、落ちた領収書がケイの足元で静止してしまったこと。
そして……彼女がその領収書の内容をチェックしてしまったこと。
「これはどういうことか、きちんとご説明していただけますか?」
ケイの手にある領収書には、『新型変身ロボット』という文字と、『¥100,000』という値段が記されている。それを握る彼女の雰囲気は、先ほどまでとは比べるまでもなく冷たいものだ。
「……………………はい」
数瞬前までの甘い空気は完全に消え去り、ユウヒは現実に戻される。
その後、彼女がケイに叱られたのは言うまでもない。しかも途中で余罪がポロポロと見つかり、更にケイの説教が苛烈さを増したのは、また別のお話。
「――まったく……先生は私がいないとダメなんですから」
「ケイちゃんは
「少しは自立してください。あれではモモイと同レベルですよ」
「そんなに!?」
「大体、今までは一人で生活できていたのですよね?なら別に、私に頼らなくても大丈夫なのでは?」
「あ、そういえばゲームとかは好きに持って帰って良いからね。持って帰れない分とか服とか化粧品は、後でゲーム開発部宛てに発送するよ。明後日くらいには届くと思う」
「露骨に話題を逸らさないでください」
「寮の手続きは終わったんだっけ?もしかしてそっちの方が良かった?」
「先生、話は終わってませんよ」
「心配しなくても、全部は送らないよ。残った分はこの家に置いておくから」
「私の話を聞いてますか、先生?」
「今日の夜はご飯どうするの?どこか食べに行こうか?」
「……先生、もしかして揶揄ってるんですか?」
「うん!」
「………………」
「えっ、ちょっとケイちゃん?なんでスーパーノヴァをこっちに向けてるの?」
「貴女には、言葉だけでは足りなかったようですから。それにこのくらいでは、少し痛い程度でしょう?傷もできませんし、何を焦る必要があるんですか?」
「ケイちゃん、いやケイ様!?お慈悲、お慈悲を!!」
「問答無用です。――光よ」
「流石に家の中でそれは不味――――」
なおその日の夕方、付近では大きな爆発音が聞こえたという。しかしどこにも爆発の形跡がないことから、この一件は不思議な出来事として、近所では束の間の話題となったのだった。
・成り代わりワカモ
プレゼントとしてゲームとか服とか沢山買ったはいいものの、置く場所に困り放置していた。そのことがすっかり頭から抜けており、ケイちゃんを招いた時には後の祭り。
元々は会計学専攻。でも作者も会計学齧ってるから分かるけど、別に会計学が投資に役に立つことはあんまりない。
スランピアで一時期荒稼ぎをしていた。それと並走して投資を繰り返したの結果、一年ほどで富豪に。ロボットを買ったのは好きだからという理由も一部あるが、それ以上にミーハー精神の部分が大きい。カイテンジャーのフィギュアとか出たら、どれだけ高くても多分買う。そしてケイちゃんに怒られる。
意外とピュア。というか恋人を作った経験がない。目の前に推しの顔があったら、そりゃ緊張して顔も赤くなる。……でももし今の段階でキスをしたら、それはそれで「……この身体は、ワカモのものなのにな」って罪悪感が出てくるメンドクサイ女。
・天童ケイ
アリスが体を貸してくれたから、成り代わりワカモとのデートを楽しんでいたが、途中で立ち寄ったセーフティハウスの惨状に驚愕した人。
今後、成り代わりワカモの財布や資産を管理するようになる。とはいえ、抑えられるかと言われれば、微妙なところ。
最後のスーパーノヴァはとても弱めに撃ったので、成り代わりワカモ以外に被害は出なかった。当の成り代わりワカモも、かなり痛いだけで怪我一つない絶妙な加減。
アリスから体を借りていたから「アリスの体で勝手なことをするわけにはいかない」と耐えられた。それと同時に成り代わりワカモが罪悪感を覚えるだろうなということも理解しているので、今はまだそこまでするつもりはない。
・天童アリス
今話のやり取りと微笑ましそうに見ていた人。ケイと成り代わりワカモが仲良さそうで嬉しかった。
ミレニアムロボモップという学名があるが、他のモップ種ほど毛量は多くないように作者は感じている。その代わり、長いが。髪が痛まないのか、気になる所である。
前書きでも書きましたが、活動報告を更新しました。内容は前回同様「本作がゲームの世界線だったら、掲示板でどういった内容の会話がされていそうか意見が欲しい」というものです。あくまでも参考程度なので必ず採用するかはわかりませんが、是非未熟な作者を助けると思って、コメントしていただけますと幸いです。
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掲示板形式について(~パヴァーヌ1章まで)