七囚人『災厄の狐』(成り代わり転生者) 作:百合って良いよねって思う
メインストーリーVol.1対策委員会編
第2章『守れなかったもの、手放さなかったもの』
君と初めて会ったのは、私が必死になってユメ先輩を探している時だったね。
――ユメ先輩っ!!!
あの日、私はユメ先輩を守れなかった。先輩は私と違って弱いしお人好しだし騙されやすいから、私が守らなきゃいけなかったのに。なのに、私は先輩に酷いこと言って傷つけたんだ。ずっと謝りたいって思って、でももう謝れないのかもしれないと思うと、凄い怖かった。
――小鳥遊、ホシノさん……ですね。早く、病院に連絡を。水は飲ませましたが、栄養も体力も、足りてません。
ユメ先輩を背負ったワカモちゃんを見つけた時は、すっごい焦ったよ。二人ともボロボロだったし、ワカモちゃんに至っては体中を怪我してたんだもん。どうして先輩を背負ってるのかとか、なんで怪我をしてるのかとか、後になって色々聞きたいことはあったけど、その時は無我夢中で病院へ電話をかけた。
ユメ先輩が、身体は弱ってるけど命に別状はないって診断されて、本当にホッとしたよ。でもそれと同じくらい、ワカモちゃんが無事って聞いて安心した。
そこからは大変だったなぁ。ユメ先輩の入院が決まったけど、相変わらず借金もあって。なんとか払えないことはないけど、今までみたいな余裕がなくなるのは明らかだった。でも、仕方のないことだと思ってたよ。だって、私がユメ先輩を傷つけたんだからさ。むしろそのくらいで私の罪が少しでも償えるなら、安いもんだよ。それよりも、病院をいつの間にか脱走していたらしいワカモちゃんの方が心配だった。今ならわかるけど、あの時はヴァルキューレに通報されるのを恐れたから逃げたんだよね。優しいけど、ワカモちゃんって一応私と出会った時には既に指名手配中だったらしいし。
なのに、急に私の前に現れたワカモちゃんが入院費を払うって言い始めた時は意味がわからなかった。警戒もしたよ。今まで悪い大人達に騙されてきたからさ、この人もそういう人なのかなって。
――自分のした選択とはいえ、
そんな風に言われちゃってさ、も~びっくり。悪意なんて一ミリも感じられないし、挙句借金の肩代わりもしましょうかとか言うんだから。その時は咄嗟に断ったんだけど、この人自分が言ってることの意味がわかってるのかとか、九億あるって言っても同じこと言えるのかって思ったんだよね……今思うのは、多分ワカモちゃんはうちの借金のこと、全部知ってたんだろうなってこと。知っていて尚、その言葉が出てきたんだろうなって。
あの時のワカモちゃんは二年生だったけど、今の私でもワカモちゃんと同じ状況になった時、同じ台詞を言えるとは到底思えない。ワカモちゃんは、私なんかとは違って優しいから。
……私、気付いてたんだよ。ワカモちゃんが、私達の物資をたまに補給してくれてたこと。でも、私はその事実を黙ってた。問い詰めることもなく、ただ善意にあやかって……利用したんだ。汚い大人みたいに。シロコちゃんやノノミちゃんが来てからは、二人の分まで補給してくれて……ほんとに、感謝してもしきれないくらい。
他にも、沢山のものを貰った。一人になって、広くなったアビドスの校舎だったけど、寂しくなかったんだ。ワカモちゃんが来てくれてからは、寂しくなくなったんだよ。たまに二人で賞金稼ぎをした時とか、一緒に柴関ラーメンを食べた時とか、女子高生らしくショッピングをしたこともあったね。本当に楽しかったなぁ。
シロコちゃんとワカモちゃんが初めて会った時のこと、覚えてるかな?シロコちゃんが何故かワカモちゃんを異様に敵視してて、いきなり勝負を仕掛けて、面白いくらいフルボッコにされてさ。あの後シロコちゃん、「ん!あの人もうちの高校の生徒にする!」って言ってたんだよ。ワカモちゃんは百鬼夜行に思い入れがあるみたいだからなんとか窘めたんだけど、考えちゃったんだよね。もしもワカモちゃんがアビドスにいたらって。きっと、毎日楽しかったんだろうな。一緒にユメ先輩に振り回されて、借金の額を見ては同じタイミングで肩を落として。ワカモちゃんは凄いから、もしかしたらアビドスの借金も本当にすぐに返しちゃうかもしれないな、なんて考えたり。
君が私のことをどう思ってたかはわからないけどさ、私はワカモちゃんのこと……親友だと思ってたんだよ。
でも……君から貰ったもの、何も返せてないや。
ワカモちゃんは恩返しだからとか、やりたくてやったことだから気にしなくていいとかって言うんだろうけど、それを言うなら私は恩の一つも返せない屑だと思う。
未だに私は、あの時ユメ先輩を助けてもらった恩を、君から貰った沢山のものを、返せていないんだから。
ごめんなさい、恩を何一つ返せなくて。
ユメ先輩のことは、ワカモちゃんと後輩達に託します。
これからも、みんなとは仲良くしてあげてほしい。
それと、ユメ先輩が起きたら、この手紙と一緒に置いておいたユメ先輩へって書かれた封筒を渡してほしいんだ。先輩への手紙が入ってるから。
申し訳ないとは思うけど、これが私の選択なんだ。アビドスを、みんなを守るために。
本当に、本当に、ごめんなさい。
これからも、あなたの幸福を心から祈っています。
さようなら。
あなたの友人、小鳥遊ホシノより
*****
「………………ふざけるな」
ワカモが所有する、アビドス自治区の一角にある拠点の一つ。そこはワカモにとって初めて作った拠点であり、最もお気に入りの隠れ家だった。アビドスに来たばかりの頃はここにずっと出入りしており、ホシノのことを招いたこともある。
そんな拠点に帰ってきたワカモは、帰ってすぐに机に置かれた二つの封筒を見つけた。その封筒はどちらも白一色であり、百貨店でなくても売っていそうなものだ。ホシノの筆跡で文字が書かれており、一つには「ワカモちゃんへ」と書かれ、もう一つには「ユメ先輩へ」と書かれている。嫌な予感がしたワカモは、急いで自分の名前が書かれた封筒を乱雑に開けると、その中に入っていた手紙に目を通した。二分程度で手紙を読み終えると、ワカモの口からは自然と怒りの言葉が零れる。
ホシノが黒服の誘いに乗ることは知っていた。知っていて、止めなかった。それが正しい道筋であり、この青春の物語を自身の知る遥か先の未来まで紡ぐために必要なことだと思っているから。
それでも……例え転生者だとしても、元先生だったとしても、ワカモにだって心はある。ムカつくものはムカつくのだ。
――何が、ユメを託すだ。
――……何が、後輩達と仲良くしてあげてほしいだ。
ワカモだって、ホシノから沢山のものを貰った。自身の覚悟とも呼べる、破滅の可能性を忘れられる穏やかな時間を。楽しい日々を。原作キャラだからとか関係なく、ワカモはホシノのことを好ましく思っている。それこそ、親友という言葉がしっくりとくるほどに。
「……
だからワカモは、考えるまでもなく手に馴染んだ銃である『真紅の災厄』を手に取り、外へと駆けだした。生まれて初めてできた、親友を救うために。
『……今ここで戦って、何かが変わるんでしょうか?今も、すごい数の兵力がこちらに向かって来ています……。学校がなくなったら、もう戦う意味がありません。学校をどうにか取り戻せたとしても、私達にはまだ、大きな借金が残ったまま……』
「……アヤネちゃん」
「アヤネ……」
アビドスの市街地。先生とアビドス高等学校の生徒達は、カイザーPMC理事から真実を聞かされていた。対策委員会が、連邦生徒会に認められていない非公認の組織であること。ホシノが退学したことで、アビドスは正式な機関を失い、実質的に学園として認められなくなったこと。これ以上戦ったところで、何も得られない現状を、理解させられた。
『取引された土地だって戻ってきません。何より、ホシノ先輩もいない、生徒会もない、こんな状態で……私達みたいな非公認の委員会なんかに、これ以上、一体何が……。どうして、どうして私達だけ、こんな……』
しかし、彼女達が絶望的な状況に悲観する中、どこからか爆発音が響き渡る。
「「『!?』」」
その爆発を皮切りに、すぐ近くにいたカイザーPMCの兵士が、次々と報告を口にしていった。
「き、北の方で大きな爆発を確認!」
「合流予定のブラボー小隊が巻き込まれて――!!」
「何っ!?」
爆発はそれだけでは終わらない。すぐさま新たな爆発音が響く。そして耳の良いシロコは気が付いていた。その爆発音の中に、一際異質な
「東の方でも確認!合流予定だったマイク小隊も、大量のC4の爆発で……!!」
「何が起きている!?アビドスの連中は、ここにいるので全員のはず……!!」
突然の状況に、思考が追い付かない。
「カイザー理事!」
「今度は何だ!?」
「な、南東の方角にいたベルト小隊が壊滅!!相手は……さ、『災厄の狐』です!!」
「何だとっ!?なぜ『災厄の狐』がここにいる!!」
「
声が響く。爆発の余韻が残る中でも、よく聞こえる透き通った声だ。しかしその声に色はなく、酷く単調で、その声の主が怒りに満ちているのは明らかだった。
現れたのは、傷一つどころか、汚れ一つ付けられていないワカモの姿。その後ろには、便利屋68の四人の姿も見える。
ワカモの雰囲気は、誰もが恐れをなしてしまうほどの怒気に溢れていた。まるで道端の邪魔な虫けらを見るような、冷たい雰囲気を醸し出している。
「全く……大人しく聞いていれば、何を泣き言ばっかり言ってるのかしら……」
「……!?」
「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く……それが、あなた達覆面水着団のモットーじゃなかったの?」
『……あ、あなた達は!?』
便利屋の登場は、アヤネ達アビドスの面々にとっては予想外のことだった。今まで敵対し、恩知らずの決戦までしてきた彼女達が、何故アビドスに味方をするのか。
「何をすればいいのかわからない、どうすればいいのかもわからない。やることなすこと、全部失敗に終わる……だから何なのよっっっ!!!!」
「え、えっ……?」
「仲間が危機に瀕してるんでしょう!?それなのに、くだらないことばっかり考えて、このまま全部奪われて、それで納得できるわけ!?あなた達は、そんなに情けない集団だったの!?」
陸八魔アルの中に、仲間を見捨てるという選択肢は決して存在ない。必要とあらば己の身を挺する覚悟を持ち、仲間に託したことは必ずやり遂げると信じ、それでも仲間が窮地に陥ればどんな手を使ってでも助けに行く。アウトローとは程遠くても、それが彼女の社員達が彼女を惹きつけているカリスマ性だ。
故に、彼女は憤慨していた。仲間を助けることに、弱気なアビドスを。理屈などいらない、仲間ならば助けるという選択肢が当たり前に取れる。それが、陸八魔アルという生徒なのだ。
「……うふふ、流石はあの『便利屋68』の社長・陸八魔アルさんですわね。言いたいこと、全て言われてしまいました」
ワカモはアルの言葉に関心したのか、パチパチと手を叩いている。その声は嬉しそうだということが誰でもわかるほどに跳ねており、先ほどまであった怒気や冷たい雰囲気はどこにもない。
なおこの時、陸八魔アルの心の中は大絶叫と混乱の嵐だった。誰も触れられないほど冷たい雰囲気や怒気を発しているかと思えば、今度は嬉しそうな声で自分に語りかけてくる。しかも自分のことを認知していたのだ。憧れの人でもあるワカモに知られていると知ってしまったアルは、歓喜を表に出さないことに必死だった。
最も彼女は最初、怒りに身を任せ破壊の限りを尽くすワカモを見て、ビビり散らかしていたが。それでも言いたいことを言い切り動揺や恐怖を表に出さない辺り、流石は肝心な時にしか役に立たない女である。
「ど、どうしてあなt「何故貴様がここにいるっ!?『災厄の狐』えぇ!!」
アヤネの声に被せるように、カイザー理事の怒号が飛んだ。それは、ワカモがここにいる理由を問いかけるものだった。
ワカモは、その動向を常に他の勢力……特に治安維持部隊から注目されている。手を出すといったような真似は決してしないが、彼女の存在はそれだけ危険に思われているのだ。
それも当然のことである。原作通り『災厄の狐』と呼ばれているのには、それ相応の理由がなければならない。ワカモの実力はゲヘナの風紀委員長やトリニティの『歩く戦略兵器』にも並ぶと言われ、加えて戦術・戦略に深く精通し、ドローンなどハイテク兵器も含めてあらゆる装備を瞬時に把握・活用する高い総合戦闘技術、短い会話だけでも相手を洗脳・扇動する話術や心理戦にも長けているなど、総合的な脅威度・周囲に与える被害はキヴォトスの中でも群を抜く。
その脅威度は「ワカモが本気を出せば、キヴォトス全土を火の海に沈めることもできる」と言われているほどであり、彼女がひとたび破壊を始めれば周囲に避難警報が発せられるほど。本人にキヴォトスを火の海に沈める気など更々ないが、可能性があるなら周囲の者は警戒しなければならない。
それは、生徒だけでなく大人達が運営する企業も同じことだ。いや、むしろ企業だからこそ激しく警戒しなければならない。今までワカモが破壊の対象としたのは、そのほとんどが企業であり、それらの企業は総じて再建不能と言えるほどのダメージを負っている。まさに『災厄』と呼ぶに相応しい被害を出すワカモを、企業がマークしないはずがない。
「何故?……親友を助けるのに、何か論理的な理由が必要ですか?」
「……っ!?」
再び、冷たく色のない声が響く。多くの企業は知らない……ワカモの地雷を。決して踏み越えてはいけないラインを。
各地の学園における治安維持部隊のワカモに対する警戒は、大して高くない。精々が自治区に入ってきたら多少気にする程度であり、むしろそこら辺のチンピラの方へと警戒が向いているくらいだ。それは、ワカモが決して生徒に手を出すことがないが故の判断。正確に言えば反撃はするのだが、それだって最低限の被害で済ます。むしろ治安維持の助けになっているほどであり、彼女のラインを正しく理解しているからこそそこまで警戒していないのだ。
……彼女が数多くの生徒の脳を焼いたことも、無関係ではないのもまた事実だが。数多くの治安維持部隊に所属する生徒は何度も耳にしたことがある、「和服と狐の面を着けた生徒に助けられた」という生徒の証言。それが、警戒が低い理由の一つだ。
逆に、企業はワカモの行動原理を理解していない。生徒には決して手を出さないということも知らず、ただただその動向を警戒するしかなかった。
「恩には恩を、仇には仇を……それが
だからこそ、彼らは超えてしまった。その事実に気が付かなかった。彼女が決して許さない、その境界線を。
「あはっ。いいじゃんいいじゃん。私も可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かされたし、これはもう……ぶっ殺すしかないよねっ!!!」
「うふふ、共闘といきましょうか……半数くらいなら、
「さあ、今こそ協業の時よ!合わせられるわよね、先生!?そこの
"……よし、やろう!"
三度、爆発音が響き渡った。
破壊を呼ぶ『災厄の狐』が、彼女が認めた『便利屋』が、大切なものを手放したくないと足掻く『アビドス』が、その想いを一つにする。そこに、彼女らが敗北する要素など、一欠けらも存在していなかった。
「ぐああああっ!貴様ら、飼い犬の分際でよくも……っ!」
「うるさいわね、そんなの知ったこっちゃないわよ!あなたなんかより先生の方が、一緒に仕事がしやすかった!それだけの話!」
「あはっ。飼い主を裏切ることくらい、悪党としては当然でしょ!そんなことも予想できなかったの?」
カイザーPMCは敗北した。それも完膚なきまでに。今もなお敵の半数を請け負っているワカモは戦い続けているが、それは最早戦闘ではなく虐殺とすら呼べる光景だった。全滅させるのも、時間の問題だろう。
そもそも、ワカモがいる時点で勝ち目などないのだ。彼女は各校が誇る最高戦力に匹敵する実力の持ち主、その戦力はまさに一騎当千。そんなワカモに加え、そこらの一般生徒なら軽くあしらえる実力を持つ便利屋の面々やアビドスの生徒達、それに先生の指揮だってある。これに勝てるような戦力は、それこそ
『便利屋の皆さん……それに、ワカモさんまで』
「……お陰様で目が覚めました。私達に今、こうして迷っている時間はありません」
「そうだよ!何よりもまず、ホシノ先輩を取り戻さないと!!非公認だか何だか知らないし、不法組織だって構わない!そんなことは今、何の関係もない!」
「ホシノ先輩を助ける……今大事なのは、それだけ」
アビドスの生徒達も、便利屋とワカモに感化されたのか、先ほどまでの悲壮的な雰囲気はどこにもない。
「くっ、この期に及んで無意味な抵抗を……!」
「あら、無意味だなんてことはありませんよ。例え虚しいものだとしても、『それが今日最善を尽くさない理由にはならない』のですから」
悪態を吐くカイザー理事にそんな言葉をかけたのは、つい先ほど戦闘を終えたワカモだった。背後には撃破されたオートマタの山が築かれており、相変わらず彼女の服には汚れ一つ付いていない。
自分達と同じ数の敵を受け持ち、それでいてなお単騎かつ無傷で戦闘を終えたワカモの姿を見たアビドスや便利屋の面々は、改めてワカモの強さを理解した。ワカモの得意な市街地戦であり、周りに利用できる兵器が多かったということを加味しても、やはり一線を画す実力があるとしか思えない。
「『災厄の狐』えぇ……!」
「とある方が口にしていた言葉です。彼女と縁を結んだことはありませんが……良い言葉だとは思いませんか?
最早、ワカモの目にカイザー理事の姿は映っていなかった。狐面で隠れてはいるが、昔の記憶を思い返し、遠くを眺めているのがわかる。
"……よくも、私の大事な生徒を。ホシノのこと、返してもらうよ"
ワカモの怒気に当てられたのか、普段は温厚で人当たりの良い先生も、今回ばかりは怒りが隠しきれていない。
「ふ、ふざけるな!先生、貴様にそんな権利が――」
その言葉を遮るように、一発の銃弾がカイザー理事を襲う。その銃弾は、致命にはならないが、治療が必要な絶妙な塩梅の位置を穿った。聞きなれない発砲音の先を見れば、ワカモの手にいつの間にか
「理事、傷が……!!すぐに治療を!」
カイザーPMCの兵士は、ほとんど残っていない。ほとんどの兵士はワカモ達によって戦闘不能にされており、カイザー理事が生かされているのもワカモの温情だと言えてしまえるほどの惨状だ。
「くっ、一度退却だ!兵力の再整備に入れ!」
「は、はいっ!!」
「覚えておけ、この代償は高くつくぞ……!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますわ。次邪魔をするなら、今度こそ
捨て台詞にワカモからそんな煽りを受けたカイザー理事は、恨みのこもった目をワカモへと向けながら、兵士と共に退却していくのだった。
「ふぅ……」
「……ん」
一先ずの山場を越し、アビドスの面々から肩の力が抜ける。まだまだ問題は山ほどあるが、焦っていてもいい結果など出ない。
「いや~、あれこそまさに本物の三流悪党の台詞って感じだね。「覚えておけー」なんて実際に初めて聞いたよ」
「……私的には、その後のワカモ先輩の返しが強烈すぎたと思いますけど」
「トリニティや百鬼夜行の上層部なら、あの程度は当たり前に飛び交う言葉ですよ、ノノミさん。むしろ大人があの程度で怯むようなら、一会社の代表などできっこないでしょう」
緊張感が霧散していき、日常の空気感が流れ始める。
"……とりあえず、帰ろうか"
先生のその一言を皮切りに、その場にいたみなは帰路へと歩みを進めた。…………ただ一人、ワカモを除いて。
「……ん、ワカモ先輩。どうしたの?」
「本日は、アビドスに泊めてもらおうと思いまして。その方が、明日からの作戦にも協力しやすいですし……よろしいでしょうか?」
「ワカモ先輩なら大歓迎です~。折角ですし、アヤネちゃんとセリカちゃんも、これを機にワカモ先輩と仲良くなりましょ~!」
『あ、あはは……』
ワカモは、アビドスと共に校舎を目指す。先生は、みんなを後ろから追いかけつつ、ワカモについて思考を凝らしていた。今まで、ワカモと関わったことはあまりない。ブラックマーケットの一件も、便利屋が来てすぐにワカモが退散してしまったから話す機会がなかった。知っていることと言えば、各校がその矯正を諦めたとされる生徒達が収容される『矯正局』を脱獄した七人の内の一人であること、破壊を招くことから恐れられている反面、シロコやノノミ、ホシノを含む一部の生徒からは非常に慕われているということくらいだ。
それでも一つ、わかることはある。
『……親友を助けるのに、何か論理的な理由が必要ですか?』
"(悪い子じゃ、ないんだろうな)"
友達のために、行動できる。何より、彼女もまた大事な生徒の一人。それだけで、先生がワカモを信じるには十分だった。
・成り代わりワカモ
元先生でも、転生者でも、結局は人間。ムカつくこともあるし、後悔することもあるし、折れそうになることもあった。でもここまで来た。
ホシノのことを親友だと思ってる。
勘の良い人は気付いているかもしれないが、『真紅の災厄』は彼女の固有武器ではない。『真紅の災厄』は本人からすればワカモから借り物や様式美といった感覚。本来の固有武器は二丁拳銃。いつか名前を出したい。
狐面の下は仲の良い者にしか見せないし知っている人は黙っているため未だにバレていないが、結構狐面を着けて色々な自治区へと遊びに行っている。その度に現地の治安維持部隊に警戒されては、むしろ不良をボコして治安維持に貢献しているため、今ではそこまで警戒されていない。
怒ると敬語が外れるタイプ。
・黄昏色の装飾が施された拳銃
成り代わりワカモの愛銃。本来は星空の装飾が施された拳銃とセットで使用される。モデルも名前も決まっているけど、それはまたいつか。
・『それが今日最善を尽くさない理由にはならない』
白洲アズサの台詞。例え滅ぶかもしれなくても、全力を尽くす。いつの日か成り代わりワカモが折れそうになった日に思い出した言葉。残念ながら成り代わりワカモはアズサと縁を繋いだことがない(ガチャで引けなかった)が、いつか感謝を告げたいと思ってる。
・小鳥遊ホシノ
梔子ユメと過ごした時間と同じくらい、成り代わりワカモと過ごした時間が大切に思えた。
ユメを守れなかった自分をずっと責めている。だからこそ、アビドスを守ることで償いたい。
・先生
ワカモの善性に気が付いた。謎のシンパシーを感じている。
なんか、日間ランキングが凄いみたいで……10位台なんて初めて取ったのでびっくりしました。評価バーも赤く染まりきって、有難い限りです。
ところで、矯正局長のミニストーリー見ました。うちの成り代わりワカモさんは忍び込んではミスズさんに差し入れあげてそう。