七囚人『災厄の狐』(成り代わり転生者) 作:百合って良いよねって思う
前回の後書きで「ミスズ」さんを「スズミ」さんと書いてしまう致命的な誤字をしてしまいました……腹を切ってお詫び申し上げます。これは矯正局入りも秒読み。
あと、誤字報告いつも感謝です。これからもミスが減らない作者に力を貸してくれ!!!
先生が『大人の戦い』をしているであろう頃、ワカモはアビドス校舎の屋上で一人夜風を感じていた。
「………………」
狐の面を外し、懐から二丁の拳銃を取り出す。普段は『真紅の災厄』を使用しているためあまり使う機会はないものの、その二丁は確かにワカモの愛銃である。かつて先生だった頃、必ず任務に連れて行っていた三人の生徒の内の二人をイメージした装飾が施されたそれは、握る度にワカモに安心を与えてくれる気がした。
「……ワカモ先輩、ここにいたんだ」
「シロコさん……どうかされましたか?」
拳銃を懐に戻した所で、屋上の扉が開かれる音がする。屋上へとやって来たのは、ワカモを慕う砂狼シロコだ。
「先輩のこと、探してた。気が付いたらいなくなってたから、どこに行ったのかなって」
シロコはワカモの隣へと座りながら、屋上へと来た理由を語った。
「そうですか……わざわざごめんなさい」
「謝るようなことじゃない。……考え事?」
「……えぇ、まぁ。少し、アビドスに来たばかりの頃を思い出していました」
ワカモは懐かしそうに目を細めながら、そう言う。昔のことを思い出している、シロコもたまに目にする表情だ。
「ん、ホシノ先輩が週の半分は遊びに来てくれてたって言ってたけど……本当?」
「ふふっ、本当ですよ……ホシノさんと過ごすのが楽しくて、つい沢山遊びに来てしまいました」
今では月に一度遊びに来ればいい方という程度の頻度なのだが、アビドスに来たばかりの頃、ワカモはよくホシノの元へと通っていた。元々はアビドスでの地盤を作ることのついでではあったのだが……ただ純粋に、ワカモはホシノとの日々を楽しいと感じていたのだ。それこそ、ワカモの知る女子高生のようなこともしたし、キヴォトスの女子高生らしいこともした。その日々はワカモにとってもかけがえのない思い出である。
「その時みたいに、もっと遊びに来てくれてもいいのに……」
しかし段々とワカモがアビドスへと遊びに来る頻度は少なくなっていき、シロコやノノミがアビドスに来るようになってからは既に今のペースになっていたのだ。シロコからすれば、不服である。もっと遊びに来て欲しい。何ならそのままアビドスの生徒になってしまえばいい。そう思って止まない。それほどに、シロコはワカモに対して懐いている。
「
アビドスで地盤を築き安定してから、ワカモの忙しさは指数関数的に増えていった。各地での拠点作りや情報収集、アビドスに来た時点で既にタイムリミットは二年を切っており、遊びに行きたくても行けない状況が続いていたのだ。それは今も変わらない。いや、既に地盤作りは矯正局に収監される直前で概ね完了しているのだが、先生が来てからはそちらに集中しなければならなくなった。
ワカモにとって、今年はキヴォトスの存続を懸けた人生で最も重要な年である。最善を尽くすに越したことはないし、できることは全てやらなければならない。
「ん…………残念」
その言葉を最後に、屋上は静寂に包まれる。僅かな夜風の音が聞こえるばかりで、砂漠の夜にしては非常に穏やかだ。空には満天の星空が広がっており、ワカモの愛銃の装飾の元にもなった、嘗ての生徒との思い出が蘇る。とても綺麗だと、久しく夜空を見上げたワカモはその景色を目に焼き付けていた。自然と空へと手が伸びるが、何か掴むこともなく、少しすれば手を降ろす。
「……ホシノさんが、
星天の下の静寂を打ち破ったのは、珍しいことにワカモの方からだった。語るのは、ホシノから贈られた手紙に書かれていた話。
「ホシノさんにとって
「…………」
「
ワカモは、ホシノが自分のことを『親友』だと思ってくれていたことが嬉しかったのだ。自分もホシノのことは大切だとは思っていたのだが、『友達』以上の名前は付けなかった。迷惑になると思っていたし、そう思うのは烏滸がましいかもしれないと考えていたからだ。未だに『異物感』が抜けないのも原因の一端ではあるが、ナグサやホシノのことをとやかく言えない自己評価の低さである。
しかしそんな話を聞いてもシロコは正直、「え、今更?」という感想しか抱けなかった。ホシノとワカモのやり取りは、正直ただの友達と言うには仲が良すぎたのだ。そんな二人をずっと見てきたシロコ(とノノミも)てっきり二人の関係性は『親友』なのだと思っていたのだが……どうやら二人は随分長い間、すれ違っていたらしい。こいつら鈍感だなと思ったシロコだったが、口には出さなかった。シロコはちゃんと空気の読めるオオカミなのである。
「なのに、ホシノさんは勝手に自分を犠牲にしました。到底、許されることではありません」
「……それは、そう。ホシノ先輩は勝手すぎる」
「えぇ、本当に。ですから……帰ってきたら、目一杯お説教をしなければなりませんね」
ワカモはそう言いながら立ち上がる。もうそろそろ先生も帰ってくる頃合いだろうと見切りをつけて、対策委員会の皆がいるであろう部屋に戻るために。狐の面を着け直し、シロコへと改めて向き直る。
「取り返しましょう、シロコさん……ホシノさんは、アビドスの校舎でのんびりしているのが似合ってますから」
「ん、当然」
シロコとワカモは決心する。必ず、
「あ、シロコ先輩とワカモ先輩!先生帰ってきましたよ!」
部屋に戻れば、いの一番にセリカが声をかけてくる。その近くには彼女の言った通り先生がおり、つい先程帰ってきたようだった。
「ごめん、ワカモ先輩探してたら遅くなった……おかえり、先生」
「おかえりなさい……申し訳ありません、
"ついさっき帰ってきたばかりだから、気にしなくていいよ"
先生は本当に気にしていないと言うように、ワカモへと微笑みかける。先生の微笑みにワカモは、「こういう所が生徒を惚れさせている原因の一端か」という最早美しいとも呼べるブーメランな感想を内心で思っていた。
「それで、何か掴んできたって顔だね。じゃあ、改めて――」
"ホシノを助けに行こう!!!"
つい先程もワカモと行った宣言を、今度は先生とする。頼れる大人と、先輩がいるのだ。ホシノを助けて、目一杯叱って、皆で「おかえり」と言う。
明日はそんな日になるだろうということを、シロコは確かに確信していた。
***
カイザーPMC基地、第51区。先生が手に入れた情報によれば、ホシノはこの地区の中央にいるらしい。アビドスと先生一行は、随分と快適に地区内を進んでいた。
……ワカモの蹂躙によって築かれた屍の山を、という補足が付くが。
「ワカモ先輩、凄いですね……」
「これ、私達必要だったのかな……?」
「ん、流石ワカモ先輩」
「このままじゃ、ワカモ先輩が全部解決しちゃいそうな勢いですね~……」
"えっと……ワカモ、程ほどにね?"
そんな感想が彼女達から聞こえてくるほど、ワカモの活躍は凄まじい。
基地へと向かう道中に現れた敵は、そのほとんどがワカモによって瞬時に全滅させられている。敵らしきオートマタが視界に入れば、ワカモはすかさず『真紅の災厄』を発砲、その兵士の持つ爆弾などその場にある兵器を駆使した蹂躙により、アビドスの面々は出発してから一度も発砲をしていなかった。
本来なら、この基地にいる兵士達は一人の生徒に蹂躙されるほど軟ではない。彼らは場合によってはアビドスに住まうデカグラマトンの予言者『ビナー』を対処する可能性があるため、訓練を欠かしていないからだ。
しかしそれでも、ワカモと彼らの間には絶望的なまでの差があった。
そもそもワカモは一対多の蹂躙を得意としており、こういった大多数の敵を相手に立ち回ることはこれまで何度も行ってきたことだ。
それに加え……今のワカモには、『慈悲』や『温情』が一切ない。容赦なく急所に銃弾を撃ち込み、敵の銃や爆弾を奪ってはそれを使い潰し、必要とあらば気絶している敵の体そのものを肉壁にし、終いには敵兵をまた別の敵兵へと投げ飛ばして怯ませる。周りに存在するものを、使えるなら全て使い戦場を支配する、本来のワカモの戦い方だ。
「終わりました、先へ進みましょう」
つい先ほど現れた敵集団を約一分ほどで蹂躙し終えれば、ワカモは涼しい顔(狐面で見えないが)でそう言った。服に少々砂が付いている程度の、全くの無傷でだ。これにはいくら先生や切羽詰まっているアビドスの面々でも苦笑いをするしかなかった。
「ワカモ先輩、体力は大丈夫なの?」
「問題ありません。この程度ならまだ準備運動です」
ワカモはこれまで常に鍛錬をしていた成果か、トリニティの『戦略兵器』ほどではないが継戦能力にも優れている。その上受けたダメージは皆無。この調子で行けばカイザーPMC程度の雑兵相手なら、ホシノ奪還まで戦い続けてもパフォーマンスを維持できるだろう。
『前方に敵を発見しました!!』
少し移動すると、通信機からアヤネの声が聞こえる。基地に来てから既に何度も接敵自体はしており、ワカモ達は「またか……」という感想を抱いた。その度にワカモが蹂躙を繰り返しているのだが、できるだけ早くホシノを助けたいアビドスにとって戦闘は時間がかかるため極力したくないというのが本音だ。
しかしこればかりはどうしようもない、ここは敵地なのだから。手早くワカモが蹂躙しようとまた一歩踏み出したところで……砲弾の音が、その場にいる全員の耳に入ってきた。
「「「『"っ!?"』」」」
ワカモを除く全員が、突然の砲撃に驚く。
「今のは……L118、トリニティの牽引式榴弾砲。ようやく来ましたか」
僅かに見えた砲弾と弾道、そして何より
「トリニティ?……でも、一体どうして」
『あ、あぅ……わ、私です……』
シロコが呟いた疑問に答えるように、通信機器からとある人物の声が答える。
「あ、ヒフ『ち、違います!私はヒフミではなく、ファウストです!』
その人物とは、トリニティの阿慈谷ヒフミ……ではなく、今やワカモと並び裏社会でも一目置かれる存在である『ファウスト』だ。
「わあ、ファウストさん!お久しぶりです!ご自分で名前を言っちゃってましたが、そこはご愛嬌ということで☆」
『あ、あれ!?あぅぅ……!その、このL118は、トリニティの牽引式榴弾砲ですが……』
「トリニティ総合学園は一切関係ない……そういうことですね、ファウストさん?」
『は、はい、ワカモさんの言う通りです……。す、すみません、これくらいしかお役に立てず……』
「ううん、すごく助かった」
今は一分一秒が惜しい。いくらワカモが何度でも蹂躙できるとはいえ、この援護が彼女らにとって非常に有難いものだった。
「火力支援の直後に突撃、定石通りだね」
「敵は砲撃により混乱……今の内に突破しましょう。最短で、ホシノさんの所へ向かいます」
そして、アビドスはついに動き出す。先ほどまでワカモに頼っていたために、全員がやる気に満ち溢れていた。
真っ先に動き出したのは、シロコとセリカだった。二人は遮蔽物を利用しながら敵を撃破し、最短の道を次々と突破していく。ワカモとノノミは、その後ろから二人が道を切り開く援護をしていた。今まで一人で行動してきたが故にあまり知られていないが、ワカモの本来の役割は後衛なのだ。広い視野と威力の高いスナイパーライフルである『真紅の災厄』による射撃は、確実に前衛の動きを最大限生かすものになっている。ノノミのマシンガンによる物量破壊も考慮に入れた、まさしく完璧とも言える援護。先生の指揮の効果もあるだろうが、それと同じレベルと言っても過言ではないほどの戦いやすさを、的確に前衛の死角の敵を潰すワカモの射撃にセリカとシロコは感じていた。
『目標の座標地点に到着!』
今までのペースでは十分はかかっていただろう道のりを、三分程で踏破する。そしてついに、ホシノが閉じ込められているであろう座標へと到着した。周りを見渡すと、そこにあったのは……
「…………」
「ここ、学校?この痕跡……多分学校、だよね?」
砂漠の真ん中にそびえ立つ、学校のような施設だった。
「………………」
その中で、ワカモだけは知っている。かつて栄華を誇っていた学園の残骸が、この地下に眠っているということを。
「ああ。ここは、本来のアビドス高等学校本館だ」
セリカが呟いた疑問に答えるように、機械の声が聞こえる。
現れたのは、大量のカイザーPMCの兵士を引き連れ、武装したカイザー理事。カイザー理事は対策委員会など眼中にもないとでも言うように、その目を恨めしそうにワカモへと向けている。
『敵の増援多数!これは……おそらく、敵側が動かせる全ての兵士と兵器が……』
カイザーPMCの数は、オートマタやドローンなどを含めれば一個大隊にも及ぶ。総力戦を仕掛けるつもりなのか、使えるものを全て動員したようだ。
「……かつてキヴォトスで一番大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋もれている。ゲマトリアは、ここに実験室を立てることを要求した」
語られるのは、かつてのアビドスの中心がここにあったということ。すっかり風化してしまい今はただの砂漠になっているが、小鳥遊ホシノ――ホルスの神秘を有する彼女の実験をするなら、最高のロケーションだろう。
「そんなことよりも、ホシノ先輩はどこですか!」
「あの副生徒会長なら、向こうの建物にいる。もしかしたら、すでに実験が始まっているかもしれないが……」
カイザー理事が示した先には、一つの建物があった。最近新しくできたのか、周りの建物とは一線を画すほど、綺麗な建物だ。
既に実験が始まっているかもしれない。可能性としては低い……それでも、急がなければならない。尤も、既に実験が始まっていたのなら辺り一帯は無事では済まないだろう。ホルスの反転は『セトの憤怒』を呼び寄せる可能性がある。『神秘と恐怖を同時に宿す』実験とはいえ、恐怖を扱うならそれ相応のリスクがあるのだ。それでも、黒服なら成功させてしまいそうな気もしなくもないが……今となっては分からない、所詮は水掛け論である。
「彼女の元に行きたいのであれば、私達のことを振り切って行けば良い。君達にそれができるなら、の話だが」
兵士達はアビドスの面々とホシノがいる建物の丁度間を陣取るように展開している。容易に通してもらえないどころか、ここで全員捕らえる気だというのは明らかだ。その量はワカモの予想よりも遥かに多く、アビドスだけでは対処しきれない量であった。
ワカモは頭の中で計算する。今、どの行動が最も効率的か。
「…………ここは、
選んだ答えは、この場に残ること。この量をアビドスだけで引き受けるのは先生がいるとはいえ些か難しい。便利屋が来るまでどれくらいかかるかわからない。それまでシロコ達が耐えられる保証は、どこにもない。むしろ彼女達だけでは倒される可能性の方が高いだろう。便利屋だけでもそれは同じ。
だからこそワカモがここに残り、敵を全て引き受けシロコ達を先に行かせる。その上で、便利屋と共闘すれば、この程度の集団なら問題なく対応できるだろう。……ホシノ救出には参加できそうにないが、それは些事だ。戦場では合理的な判断をした方が生き残る。
「ん、拒否する。ワカモ先輩は先に行って」
しかしワカモの決断を、シロコは否定した。
「何故です?ここは
「私達は、いつもワカモ先輩に助けられてきた。アビドスがまだ生きてるのは、先輩がホシノ先輩を支えてきたからだって、ホシノ先輩が言ってた。私達がアビドスに来るまでにワカモ先輩がいなかったら、どこかで折れていたかもしれないって」
「そんなことは……」
シロコの言い分は、ワカモには納得し難いものだ。ワカモがいなくとも、ホシノは立ち上がった……いつか、ユメの死を背負い、受け入れ、それでも前を向いて行っただろう。そんな世界を、ワカモは知っている。
「今日だって、そう。先輩がいなかったら、ここに来れなかったかもしれない。だから、恩返し……行って、ワカモ先輩。ホシノ先輩を一番に助けるのは、やっぱりワカモ先輩だと思うから」
「………………」
ワカモは迷う。心情的には、このままホシノの元へと走りたい。しかし合理的なのは、ワカモが敵を引き受け、シロコ達を先へ行かせることだ。
「…………
そう呟いた、直後のことだ。突如、爆発音が鳴り響く。砂煙が上がり視界が塞がった。どうやら被害が起こったのは敵兵のみのようで、自分たちにダメージは一切ない。ワカモとアビドス達はこちらに向かってくる足音の方を向いた。
「じゃーん!やっほ~☆」
「お、お邪魔します!」
『べ、便利屋の皆さん……!?』
砂煙が晴れ、敵兵を爆破しながら現れたのは……便利屋68。
「やーっと追いついた!けどなんかこれみんな集まってるし、もしかして大事なシーンに割り込んじゃった感じ?」
「便利屋……ん、丁度良い」
便利屋の登場で、天秤は確実にこちらに傾いた。シロコは再び、ワカモへ言葉を掛ける。大切な先輩に、親友を救いに行かせるために。
「ワカモ先輩、行って。私達なら……絶対、負けないから」
「…………シロコさん」
ワカモは、アビドスの面々と便利屋を見据える。アビドスの目線は便利屋を期待に満ちた目で見ており、便利屋は若干困惑しているようだった。
「……社長、ここは状況を一旦整理してから…………」
「ふふっ、あの『災厄の狐』に貸しを作れるのなら、儲けものよね。『災厄の狐』……ここは私達に任せて先に行きなさい!!」
「…………便利屋の皆さん……この恩は、いつか必ず返します」
アルのその場のノリの後押しにより、ワカモは駆け出す。目指すのは、親友のいる建物。親友を救いたいという心情を、ワカモは合理よりも優先させた。なおこの時、敵兵の量を見てアルが内心「やっぱりワカモに残ってもらえばよかったーーーー!!!!」と思うのは、最早様式美である。
駆ける。翔ける。邪魔をしてくる敵兵を最低限の労力で薙ぎ倒しながら、ワカモは一直線にホシノの元へと向かう。
「バンカー……あの先に、ホシノさんが」
敵兵を振り切り、辿り着いた先には鉄筋製の地下施設。入口は固く閉ざされているが、あそこにホシノがいるのだろう。
あともう少し……といった所で、邪魔が入った。
「……『災厄の狐』」
カイザー理事はワカモを潰すために、武装しているとはいえ単独で向かってきたようだ。周りにはいつものように兵士はおらず、展開した武装の銃口はワカモを捉えている。
「貴様のせいで全てが台無しだ!!何故貴様は邪魔をする!?あんな滅びかけの学校を守ったところで、一体何になるという「邪魔、消えろ」…………は?」
ポトリと、カイザー理事の首が落ちる。いつの間にか理事のすぐそばまで迫ていたワカモの手には、いつもは『真紅の災厄』に装着してある短刀が握られていた。首を落とされても、オートマタ故に死にはしない。しかし体との接続が外れれば、行動はできなくなる。カイザー理事の体は砂漠の上に倒れ、再び頭と接続しない限り動かすことはできないだろう。
「"
それだけ告げると、ワカモはカイザー理事に目もくれず、固い扉を無理やりこじ開けた。中へと消えていけば、カイザー理事は一人その場に取り残される。
「おのれ……『災厄の狐』えぇぇぇ!!!」
その恨み言は、誰の耳にも届くことなく、砂漠の空へと消えていった。
カイザー理事が実験室と称した建物を、ワカモは慎重に、しかし素早く進んで行く。中には誰もおらず罠も仕掛けられていないようだ。どうやら本当に黒服専用の施設らしいなと、ワカモは内心で感想を漏らす。
「………………ホシノさん」
しばらく進めば、前世で見覚えのある部屋に辿り着いた。部屋は黒一色であり、中央に細い柱のようなものがある。そしてその中心――その場所に、ホシノはいた。ワカモが部屋に辿り着くと同時に拘束は自動的に解かれていたようで、今は何にも縛られていない。
「ワカモ、ちゃん……?」
酷く驚いた顔でこちらを見つめるホシノに、ワカモは手を差し出した。
「迎えに来ました。おバカな親友である……貴女を」
親友を助ける、そんな手を。
・成り代わりワカモ
本当の一人称は「
実は今回カイザーPMCの兵士の量を増やしており、先生込みでもアビドス単体や便利屋単体では対処しきれない量を用意されていたため、ホシノ救出を対策委員会に任せようと思っていた。
本来の役割は後衛。殲滅の方が得意なのだが、百花繚乱での活動は専ら後衛だったので、人並み以上に熟せる。
昔は週の半分をホシノと過ごしており、ホシノが少しずつおじさんになっていく過程も目にしている。四捨五入すればアビドス生になるほどアビドスに馴染んでいる。多分この世界線の先生(プレイヤー)達にもネタにされてたり、「ワカモアビドス生概念」なるものができていたりしてそう。
ホシノは別に自分がいなくても立ち直ったと思ってる。
あまりバレていないが、ホシノや原作のナグサ並みに自己評価が低い。故に自分に向けられる感情に気付かない。自分がどれだけユメがいなくなったホシノの救いになっていたのかも、理解してないと思われる。
・砂狼シロコ
ホシノを救うのは成り代わりワカモだと思っている。それは他の対策委員会の面々も同様。
自分からガンガン関りに行くという性格上、ノノミよりも成り代わりワカモと仲がいい。ホシノからワカモの話をノノミ共々かなりの頻度でされていたので、成り代わりワカモが如何にアビドスを助けてくれていたのか知っている。
ホシノも成り代わりワカモも自己評価低……それに鈍感過ぎん?と思ってる。
・陸八魔アル
成り代わりワカモに貸しを作った。直後、敵の数を見てカッコつけたことを後悔する。
今後、成り代わりワカモがかなり友好的に接してくるので、裏社会で勝手に評価が上がり、白目を向くことが確定している。頑張れ、社長。アウトローはその苦難を乗り越えた先にあるぞ。知らんけど。
・カイザー理事
今回も何もできなかった人。
実は対成り代わりワカモのために結構凄い兵装を装備していたのだが、首を短刀で切断され何もさせてもらえないという屈辱を味わった。ちなみに当たり前の話ではあるが、成り代わりワカモと正面から戦っても勝算は一切ない。ただ時間がかかるかどうかだけの話。
本当は黒服と成り代わりワカモの話とか、カイザー理事が如何に成り代わりワカモを邪魔に思っていたかとかを書くつもりだったけど、なんか合わなそうで没にした。悲しい。
日間ランキング三位、週間ランキング七位、新作ランキング三位ありがとうございます。日間は良い作品を探す為にも定期的に見てるんですが、三位にこの作品があって思わず横転しました。週間と新作もさっき確認したらこのランキングでビックリ。新作ブーストがあるとはいえ純粋に嬉しいです。ありがとうございます。
これからも作者が書きたいように書いていくので、作品が肌に合った方は今後ともよろしくお願いします。