七囚人『災厄の狐』(成り代わり転生者) 作:百合って良いよねって思う
第1章『レトロチック・メモリー』
推敲もできてないので、ミスも多いかもしれません。
ミレニアムサイエンススクール。そこは学園都市キヴォトスでも屈指の科学と叡智が集まる地。現代の技術では解き明かすことの出来ない『千年難題』に立ち向かう研究者達の集まりを前身としたその学園には、『廃墟』と呼ばれる連邦生徒会による立ち入り禁止エリアが存在する。そこにはミレニアムの叡智ですら理解の及ばない、数多のオーパーツが眠っているとされており、例え危険であっても足を踏み入れる者は0ではない。
「『G.Bible』は、きっとここ……ずっと存在が隠されてきた、『廃墟』にあるはず!」
ここにいる猫耳の装飾がされたヘッドフォンを着けた少女……ミレニアムサイエンススクール一年生『ゲーム開発部』所属、
彼女達が危険を犯してでも廃墟までやって来たのは、『G.Bible』と呼ばれる伝説のゲームクリエイターが作ったとされる神ゲーマニュアルを追い求めてのことである。部員数も足りず、結果も出せていない彼女達にとって、『G.Bible』を手に入れ二週間後に控える『ミレニアムプライス』で入賞できるようなゲームを作るのは急務。部室を、自分達の居場所を失わないために、方法にこだわっている場合ではないのだ。……急務だからこのような方法を取っているのだ。決して、普段からこのような手段を取っているわけではない。決して。
兎にも角にも、彼女達は『G.Bible』を求めて廃墟までやって来ていた。
「…………■■■、■■■■!」
「あ、あれって!」
「ロボット!?」
そんな三人の元へ、ロボットが姿を現す。表情がわからないはずなのに、何故かそのロボットが怒っていることが、彼女達にはよくわかった。
「な、何だかすごい狙われてない!?こっちの方に集まってきてるし!?こ、このままじゃ包囲されちゃう!」
辺りからは無数のロボットがこちらへと向かって来ており、このままでは逃げる間もなく殲滅されてしまうのは明白だった。だからこそ、彼女達の顔には焦りが浮かんでいる。
「うわわわ、ど、どうしよう!?」
焦っている間にも、ロボットの数は増え続けている。どういう原理かはわからないが、無尽蔵のロボットがどこからともなく湧いてくるのだ。ゲームの世界でも素材集め中でもないのだから、全く嬉しくない無限ポップである。
そうして包囲されそうになっていると、どこからか銃声が響いた。
「「!?」」
咄嗟にモモイとミドリは顔を見合わせるが、お互い発砲した様子はなく、二人とも首を傾げる。不思議に思っていると、ロボット達が一斉にとある方向を見始めた。何やらそちらの方からロボット達が破壊される聞こえてくるが、段々その音がこちらへと近付いてきているようだ。
「こ、今度は何なのぉ!!」
モモイが涙目に叫ぶが、それに答えられる者はいない。その間も破壊音は彼女達の元に近付いてきており、それが余計にモモイ達の恐怖を助長する。
「わわ、わかんないよ!でも何かこっちに近付いてきてない!?」
ミドリもまた叫んでいるが、しかしどうすることも出来ずただその場に立ち尽くしていると……破壊音の主が、ロボット達を蹂躙しながら姿を現した。
それはさらさらと流れる、綺麗な黒色、その内側は煌びやかな赤色に染まった、真っ直ぐ伸ばした髪を持つ、可憐な美少女だった。少女はロボットを破壊しているのに、その光景は美しいとも言えるほどの所作をしている。思わず見惚れてしまうほど美しい光景に、その場にいた全員が、一瞬敵に囲まれそうになっていることを忘れてしまった。
「…………おやおや、ロボット達が急に集まって行って、こんな廃墟に来る物好きが誰かと思って来てみれば……先生ではありませんか」
"わ、ワカモ…………?"
先ほどまでの破壊音を出していた者の正体は、百鬼夜行の制服をぱっと見わからないほどにアレンジした制服と、その上から黒い着物を羽織のように身に着け、狐面でその素顔を隠した少女――七囚人『災厄の狐』の名で知られ恐れられる、狐坂ワカモだった。
「わ、ワカモ!?もも、もしかして……あの七囚人の、狐坂ワカモ!?」
「……そちらのお二人は、ミレニアムの生徒ですか」
先生は見知った顔(正確には仮面だが)だったことに安心したが、ミドリはその顔を見て更に恐怖が心を支配する。
再度言うが、ワカモは何も知らない者からすれば『企業相手に破壊活動を繰り返す凶悪犯罪者』だ。普通に考えれば、関わりたくないと思うし、ミドリのように恐怖を感じるのも仕方のない話だろう。
「七囚人?ミドリ、この人のこと知ってるの?」
一方モモイは、ワカモのことを知らないようだった。ゲームにばかり熱中しすぎて、世間の情報は彼女には届いていないようだ。「有名人なのかな?」と呑気に考えながら、不思議そうな顔をしてミドリに質問している。
「おしゃべりは後にしましょう。この数は、流石の
ワカモはその場にいる全員を見渡すと、そう言い放った。
少し会話をしている間にも、ロボットは次々と彼女達の元へとやって来ている。ロボット一体一体は弱いとは言え、それらは無限に湧いてくる。いくらワカモの実力が高かろうとも、無限に湧いてくるロボットを相手にするのは手間だ。弾薬も体力も、無限ではない。
「あそこに、ロボット達が寄り付かない工場があります。ひとまずあそこを目指しましょう。お話は、その後で」
そう言ってワカモが指を指した先には、確かに工場が見える。彼女の言うことが本当なら、あそこで落ち着けるだろう。信用は出来ないが、少なくともここに留まっているよりはマシだとミドリは思考する。
「……先生、戦闘の指揮をお願いします!」
覚悟を決めて、先生に指揮を仰ぎ戦闘準備をしながら、彼女達はロボット達を突破し工場へと向かっていくために、戦闘を始めたのだった。
*****
「ほ、本当に……あのロボット達が急に追ってこなくなった……?」
どうにかロボットの軍勢を切り抜けられたモモイ達は、ワカモが教えてくれた工場へと避難することが出来ていた。工場に入ると同時に、ロボット達はまるでこの場所を避けるかのように彼女達を追うのを止めたのだ。
モモイとミドリは先ほどまでの緊張をほぐすように息を吐き、ようやく落ち着くと、思い出すかのようにワカモの方に目を向ける。
「とりあえず、ここまでくれば一休みできるでしょう」
"そうだね……そういえば、ワカモはどうしてここにいるの?"
「オーパーツは、裏でも表でも需要が高く、よく売れるのです。ミレニアムの『廃墟』はオーパーツの宝庫ですから、こうしてたまに調達していまして。今日居合わせたのは、偶然ですよ」
モモイ達が目線を向けた先には、ワカモと先生が親しげに話している様子が伺えた。ワカモはどこからか、円盤状の何かわからないものを取り出しては、先生に見せている。どうやらオーパーツの一つで、高く売れるようだが、モモイ達にその価値はわからなかった。しかし先生は、それを何故か羨ましそうに見つめており、ミドリは「先生ってもしかしてちょっと変な人なのかな……?」と思ったりもしたが、それは置いておくとして。
「せ、先生……その、その人とは……知り合い、なんですか?」
恐る恐る、といった具合にミドリが先生に尋ねると、先生は何てことはないと言うように、口を開く。
"あぁ、まだ紹介してなかったね。この子は狐坂ワカモ……世間では『災厄の狐』って言われたりしてるけど、悪い子じゃないよ。ワカモ、この子達は……"
「ミレニアムサイエンススクール一年生、『ゲーム開発部』所属の才羽モモイさんと才羽ミドリさん、ですよね?狐坂ワカモと申します。以後、お見知りおきを」
「えっ…………?」
「わ、私達のこと知ってるの!?」
先生がワカモへ才羽姉妹を紹介する前に、ワカモは彼女達のことを言い当てる。それがミドリには「貴女達をマークしている」という忠告のように聞こえ、身体が芯から凍えるような恐怖を感じた。逆にモモイは自分達を知っているという事実に、純粋に興味があるようだった。ワカモのことを知っているか否かということだけで、こんなにも感じ方に違いがあるのだから、人間とは面白いものである。
「お、お姉ちゃん……!」
「も、もしかして『テイルズ・サガ・クロニクル』もプレイしてくれてたり!?」
「……その、興味はあるのですが……中々時間が取れなくて、まだプレイ出来ていないのです」
内心発狂しているミドリを置いて、モモイはワカモとの距離をガンガン詰めていく。どんな相手でも関係なく距離を詰めてくる所がモモイらしさに溢れていて、ワカモは仮面の下で穏やかに微笑みながら、丁寧にモモイの質問に答えた。
ワカモ自身、『テイルズ・サガ・クロニクル』に興味はあった。前世見たストーリーでも出てきたものであり、
…………しかし、『テイルズ・サガ・クロニクル』はまごうことなきクソゲーである。そこに反論の余地など一切ない。チュートリアル通りにボタンを押せば何故か死に、最初の敵には訳も分からず瞬殺され、ストーリーで出てくる表現も意味不明。何も常識を知らないアリスをその世界観と難易度からオーバーヒートさせ、レビューではワカモの知る何倍もの酷評の嵐が巻き起こっている。『今年のクソゲーランキング一位』の名は伊達ではなかった。故に、彼女は二の足を踏んでいたのだ。そうして気が付けば、『テイルズ・サガ・クロニクル』をプレイすることなく時計じかけの花のパヴァーヌ編まで来てしまった。
「ほんと!?それなら、この後うちの部室に寄って行かない?ほら、ここで会ったのも何かの縁だしさ!!」
「お姉ちゃん!ちょっとこっち来て!!!」
全くもって不用心な姉を叱りつけるようにミドリは叫び、モモイの首根っこを掴んでワカモ達に背を向けて、逆方向へと連れていく。ある程度距離が離れると、ミドリは小声でモモイへと話し始めた。
「ちょっと、相手は『災厄の狐』だよ!?うちの学園に……ましてや部室に連れてくなんて、本気!?」
「いや……そもそも、その『災厄の狐』って何?聞いた感じ、あのお面の人を指してそうだけど……」
「企業相手に破壊活動を繰り返してる凶悪犯!ちょっと前に矯正局を脱獄した七人の内の一人だって、ニュースでもやってたでしょ!?」
「……あー、えっと……なんとなく、記憶にある、かも?」
モモイは必死に少し前のニュースを思い出そうとするのだが、ぼんやりと「矯正局から脱獄犯が出た」というのを見たことを思い出すばかりで、詳しいことは何も思い出せなかった。モモイは興味のないことへのアンテナが高くないタイプの人間だった。当然、ワカモのことなど知る由もない。もしもワカモがゲーム会社を襲撃していれば、話は変わったかもしれないが。
「で、でも!あの人は良い人そうだし、人違いかなんかじゃないかな?先生だって、「悪い人じゃない」って言ってたし!」
それにたとえ凶悪犯だろうが、モモイにとって、ワカモは大事な『ゲームのファンになってくれるかもしれない人』だ。ここで逃す選択肢などない。
「お姉ちゃんは何も知らないからそう言えるんだよ!いい?『災厄の狐』は文字通り『厄災』そのものなの。『敵対する者には悲惨な最期が訪れる』とか、『破壊と他人の絶望を楽しむ性格破綻者』だとか、『狐坂ワカモに相対した者の明日は彼女の気分次第』だとか、そんな噂ばっかり流れてるんだよ!関わっても絶対ロクなことにならないって!」
ミドリの言い様は散々であるが、残念なことにこれが『災厄の狐』に対する一般的な印象だ。無論そのほとんどは被害を受けた真っ黒な企業が嫌がらせで流した、根拠も何もない噂なのだが、根拠のない噂も多くの人が信じればそれは真実となる。
「え、えっと……」
流石のモモイも、妹の話があまりにも恐ろしいものであったが為に、尻込みしてしまう。
チラリと後ろを振り返れば、先程と変わりなくそこには先生と仲良さげに話しているワカモがいた。ここからでは会話の内容はあまりよく聞こえないが、少なくとも先生は楽しそうな顔をしている。
「…………ミドリ。多分、大丈夫だよ。先生だってあの人を信頼してるみたいだし、きっと優しい人だと思う」
モモイは、先程までのワカモとの会話を思い出しながら、ミドリへ優しく諭す。
「噂が本当なら、先生も私達もきっとここにはいないし、さっきも助けてくれなかったはず。だから、大丈夫」
彼女から見たワカモは、優しい人だった。ロボットに囲まれそうになった所を、助けてくれた。遠慮もなく距離を詰める自身に、嫌な感情一つ感じさせず、丁寧に返答してくれた。だからこそ、モモイは彼女を悪い人ではないと感じている。
「で、でも…………」
「それに、何かあったら私が守るよ。だから、お姉ちゃんを信じて?」
「………………わかった。信じるよ」
ミドリはモモイのその言葉に、信頼を寄せた。彼女にとって、姉は無鉄砲で危なっかしい所もあるが、真剣な場面では誰よりも信頼できる人だ。その姉が「大丈夫」と言った。まだ不安は残されているが、それでもモモイを信じるには、それだけで十分だった。
「じゃあ、戻ろ。先生達も待たせてるし」
「……うん」
今度はミドリがモモイに手を引かれ、ワカモ達の元へと向かっていく。相変わらずワカモと先生は仲良さげに話している。近付けば、その内容はどうやらオーパーツに関することのようだった。
「えぇ、そうなのです。意外と発見するにはコツが必要でして……先生でしたら、わざわざこのような場所で探すよりも効率的な方法が……あら、おかえりなさい。お話は終わりましたか?」
"あ、二人とも。おかえり"
「えっと、わざわざすみません。お待たせしてしまって」
「お待たせ、二人とも!」
戻ってくる才羽姉妹に気が付いたワカモは、噂から想像するものとは、まるで異なる穏やかな声で二人のことを迎える。それに対するミドリとモモイの反応は対称的だ。ミドリは申し訳なさそうに眉を下げており、モモイは何とも思っていなさそうに笑顔で手を挙げている。
"気にしなくて大丈夫だよ"
「ありがとう、先生!ところで……ここって、何をする場所なのかな?」
改めてモモイは周囲を見渡すが、どこからどう見てもただの廃工場にしか見えない。少なくとも、パッと見では連邦生徒会が侵入を禁止するほど危険な場所には思えなかった。
「あのロボット達がいるから、連邦生徒会は立ち入りを禁止してたのかな?」
「うーん、あのロボット達が連邦生徒会が緊急時に使う秘密兵器、とかは考えてみたけど……そういうのじゃない気がするし」
"ワカモは、何か知ってる?"
そんな会話をしながら、モモイ達は散策を開始する。ロボット達がいない故に、何事もなく散策は進むと踏んでのことだ。
「…………この場所は、」
『接近を確認』
ワカモが先生の問いに答えようとした瞬間、どこからともなく放送が聞こえる。学園の校内放送のように、部屋全体に響き渡ってはいるが、その声は酷く無機質で、感情の籠っていないものだった。
『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』
「え、えぇ!?何で私のこと知ってるの?」
『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』
「私のことも……一体どういう……?」
放送からは、抑揚なくそんな言葉が紡がれた。気味の悪い放送に、一方的に身元を言い当てられ、彼女達は混乱するばかりだ。
『対象の身元を確認します。狐坂ワカモ……一部資格を確認しました。入室権限を付与します』
「えぇっ!?」
「…………あら?」
当然、自分も資格なしだろうな、とぼんやり考えていたワカモは、その内容に不思議そうに反応はするものの、内心では納得していた。
一部資格を有している……つまりは、自身に刻まれている『元先生』としてのテクストにでも反応したのだろうと当たりを付ける。既に『シッテムの箱』とアロナを認識できていることから予想はしていたが、ここでも『元先生』としてのテクストは、効力があるらしい。
『対象の身元を確認します。……――先生。資格を確認しました。入室権限を付与します』
「え、どういうこと!?いつ先生とワカモはこの建物と仲良しになったの!?」
"え、えっと…………"
納得がいかないと言いたげに、モモイが先生へと詰め寄っているが、先生もまた困惑していた。先生にとっても、ここは初めて訪れた場所であり、この建物と仲良くなる要素などないのだ。いや、そもそも建物と仲良くなるとはどういうことなのかもわからないが。
『才羽モモイ、才羽ミドリの両名を先生の『生徒』として認定、同行者である『生徒』にも資格を与えます。承認しました』
彼女達の困惑を余所に、放送は淡々と話を進めていく。
『下部の扉を開放します』
その宣言と共に、四人の立っていた床が音を立てて消えた。
「床がなくなっ……落ちる!?」
「うわわわわっ!!」
"きゃあっ!?"
ワカモを除く三人は、そのまま真っ直ぐに落ちていく。心の準備もできない急な出来事であったがために、何も抵抗はできなかった。
「全く、仕方がありませんね」
それを見兼ねたワカモは、手早く三人を助けるために動き出す。それなりにスタイルの整っている先生の腰に右腕を回し、才羽姉妹を両方とも左腕で抱える。先生やワカモに比べれば小さい二人の腰は意外と細く、このままでは折れてしまうのではないかとワカモは不安になったが。
そのまま自由落下に従って落ちていけば、先程の部屋の真下にある広い部屋の床に、音もなく着地した。ワカモは当然、彼女に抱えられた三人にも衝撃はない。
「きゃっ!…………あ、ありがとう、ございます……ワカモ、さん」
「ミドリ、今の見た!?音もなく着地したよ!凄い……ほんとに出来るんだ!!」
左腕で一挙に抱えられた二人は、各々感謝と興奮を口にする。ミドリはワカモの行動を意外に感じながらも、感謝を告げた。対するモモイは、先程のワカモの音のない着地に興奮しているようだ。まるでアニメの強キャラのような仕草に目を輝かせ、矢継ぎ早に妹へとその興奮を語っている。
「どういたしまして……先生も、大丈夫ですか?」
"あ、ありがとうワカモ……助かったよ"
右腕で抱えられた先生を解放すると、彼女はその場にへたり込む。ヘイローを持つ生徒と違い、先生はこの高さでも、当たり所が悪ければ死に至る危険性がある。流石の彼女でも、あの高さからの落下は怖かったようだ。
「そんな深くに落ちたわけじゃないけど……ん?…………えっ!?」
「どうしたの、お姉ちゃん……?…………えっ!?」
そんな先生を置いて先に探索を始めていたモモイとミドリは、あるものを目にする。
「お、女の子……?」
「この子……眠ってるのかな?」
広く円形に開けたその部屋の更に中央。一段ほど高くなった、ステージのような場所の光の当たる所に、その少女は眠っていた。椅子の形をした、見たこともない機械のようなものに座り、服も着ずにただ目を閉じている。神聖にも思えるその光景が、彼女達の目に焼き付いた。
「……返事がない。ただの屍のようだ」
「不謹慎なネタ言わないで!」
某有名RPGで全滅した際に流れるフレーズを口にするモモイにミドリはツッコミつつ、眠っている少女の様子を伺う。『電源が入っていない』という、非常に的を射た感想を抱きつつ、ミドリとモモイは少女の肌を触ったりしていた。
「…………アリス」
その光景を後ろで眺めつつ、ワカモは妙な胸騒ぎを覚える。嫌なものではない。しかし普段感じることのない、形容し難い不思議な感覚だ。
その間にも、モモイ達はアリスに服を着せている。幾ばくかすれば、アリスは目を覚ますだろう。前世でも特段大切にしていた、三人の内の一人。ちょうど彼女がピックアップの時に始めたんだったな、などと思い返しつつ、ワカモは服を着せる工程をジッと見つめていた。
ピピッ、ピピピッ、と。やがて服を着せ終えると同時に、アリスからそんな音が鳴る。柄にもなく緊張しているのか、ワカモの鼓動は早くなり、どくどくと耳鳴りのような音を発していた。
「状態の変化、及び接触許可対象を感知。休眠状態を解除します」
そして、その蒼い瞳が開かれる。彼女は辺りを見回すと、徐ろに言葉を口にした。
「ぱんぱかぱーん!勇者アリスが、マップに降り立ちました!!新しい冒険のスタートです!!!」
その言葉にワカモは酷く驚愕し、目を見開く。
「………………は?……え?」
四人の中で、最も混乱していたのはワカモだろう。何せ目の前にいるのは、何も知らない『AL-1S』ではなく、正しくワカモのよく知る『天童アリス』であったから。
「…………!」
ワカモが予想外の事態に頭を白くしていると、彼女へと目線を向けたアリスが一直線に走って来た。
「え、ちょっ!?」
「な、何っ!?急に何なの!?」
いきなり駆け出して驚くモモイ達を余所に、アリスは躊躇なくワカモへと抱き着く。
いつものワカモであれば、たとえ推定200kgの反動にも耐えるアリスのこの行動を、受け止められただろう。しかし今の彼女にそんな余裕はなく、後ろへとアリスに抱き着かれながら尻もちをついた。その衝撃で狐の面が床へと音を立てて落ちるが、それを気にすることが出来るほど、二人に余裕はない。
「…………あり、す……?」
「はいっ…………!貴女のアリスです、先生」
震える声で小さくワカモが問えば、アリスは満面の笑みと共に返事をする。二人の間でしか聞こえない小さなやり取りだったが、全てを確かめるには十分だった。
「ぱんぱかぱーん。勇者アリスは、先生と再会しました。クエストクリア、です…………!」
「…………はい……っ…………よく、できました」
恐る恐る、ワカモも両手をアリスの背中に回す。
大切な生徒と、大好きな先生と再会できた感動か、はたまた別の感情か。二人は静かに涙を流している。しかし、二人の表情には確かな笑顔があり、お互いの言葉に出来ない気持ちを整理するように、その言葉を口にした。
「アリス…………久しぶり」
「はいっ!久しぶりです、先生!」
それは、この世界にまた一つ、ワカモの大切なものが増えた瞬間だった。
・成り代わりワカモ
アリスと再会した。元々アリス推しの先生であり、アリスのピックアップと同時にブルアカを開始。当然絆レベルは100であり、当初は毎回リーダーにしていた。
アリスの唐突な「ぱんぱかぱーん」にひどく驚き、その後の抱き着きに対応できなかった。
色々と感情がぐちゃぐちゃな人。この後、アリスを幸せにするために覚悟ガンギマリになる。
・天童アリス
記憶持ち生徒。もう一人はお察しの通りケイちゃん。
先生が大好き。詳しくは次回書くと思う。
・才羽モモイ
「『災厄の狐』?何それ?」だった娘。直感的に成り代わりワカモが良い人だと見切っており、ぐいぐい距離を詰めていった。
この後、TSCを成り代わりワカモとアリスやらせる。成り代わりワカモは死ぬ。
・才羽ミドリ
姉の行動に冷や冷やしてた人。成り代わりワカモの噂が恐ろしいものばかりでビビっていたが、「意外と優しい?」とセリカルートを辿りそうになってる。もうしばらくは成り代わりワカモにビビると思う。
・天童ケイ
今は廃墟で眠っている。早く迎えに行ってあげて。
ようやくアリス出せました。後はケイちゃん、君だけだ!!
出先で書いてるのでいつもよりも後書きとかが短くなってます。申し訳ない。
前回の反応を見てると、掲示板回はやっぱり人気ですね。作者も大好きです。今後も定期的にやりたいなーとは思ってます。お楽しみに。