仲間を曇らせたいので強敵から庇って片腕失くしてみた 作:義山硝子
特定のジャンルおよび読者層について揶揄する意図はありません
お電話ありがとうございます
こちら転生管理局カスタマーサポートセンターです
転生先の世界全般に関するお問い合わせは1を
能力、スキル等に関するお問い合わせは2を念じてください
なお、この通話は品質向上のため録音させて頂きます
◆◆◆
お待たせいたしました。
カスタマーサポート担当の譌ゥ縺丞クー繧翫◆縺です。
お話をお伺いする前に、転生者様が現在お住まいの世界区分、また転生前と転生後のお名前をそれぞれフルネームでお願いいたします。
はい、ありがとうございます。
確認しますので少々お待ちください。
大変お待たせしました。
悪役令嬢属/婚約破棄種の世界区分となりますね。
本日はどのようなご用件でしょうか。
はい、承知いたしました。
内容をそのまま復唱いたします。
────────
婚約破棄の後、いつまで待ってもハイスペ男達が私に執着して溺愛してこないんだけど
─────────
お問い合わせ内容は以上ですね。
では大変恐れ入りますが、転生後の時系列にて順次確認させて頂けますでしょうか。
はい。
ええ、さようでございますか。
予定通り、第三王子との婚約破棄は大過なく終了したということですね。
虚偽の証言をした王子の取り巻きも含め、王の一喝により全員廃嫡済みと。
それはなによりでございます。
その後は前世知識を活かし、学業で優秀な成績をおさめる傍ら、余暇での時間で製薬や調味料の開発を行い、名声を上げておられていると、はい。
学院での生活状況はいかがでしょうか。
なるほど。
クラスメートをはじめとした皆様は、転生者様に畏敬の念を覚えていると。それは喜ばしい限りでございます。
ええ、お問い合わせの件ですね。
容姿も家柄も良く、知識も名声も持つ自立した知的な女性であるはずなのに、一向に執着溺愛イベントが始まらない。
それどころか目当ての男性陣と接点すら起きない、と。
引き続き恐れ入りますが、原因特定の為いくつか質問をさせて頂きます。
先ほど、婚約破棄の成立後は学院以外の余暇時間で主に転生知識の具現化作業を行われていたと伺いました。
その間、転生者様の方からは異性に対してどのようなアプローチをお取りになりましたでしょうか。
特にお取りになっていないという事ですね。
理由についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
はい。
なるほど。
つまり
"ご自身は恋愛事に興味は持たないが、世間的に高い評価を持つ複数の男性達から一方的に恋愛感情を向けられている"
という状況をお望みであるということでしょうか。
理解いたしました。
そのようなシチュエーションを想起すると、転生者様の膣分泌液の排泄も活発になるという事ですね。
はい。
ええ、はい。
誠に申し訳ございません。なにぶんわたくし共、生殖器自体がございません為。人類種に対する浅学により不躾な物言いとなりました事、心よりお詫び申し上げます。
では、続けての確認となります。
転生者様の仰る、"ご自身は恋愛に興味がない"というスタンスについてはどのようなお考えに起因するものでしょうか。
ええ、なるほど。
女性による男性への積極的なアピールは"男に媚びる、頭の悪い女がする行為"というご認識であると。
前世での妹様が、はい。
それはつまり、転生者様が仰るところの"頭の悪い女"であったという事でしょうか。
ええ。なるほど。
転生者様は前世で真面目に生活していたのにも関わらず
ご両親や周囲の男性は、ご令妹様の方を可愛がっていた、と。
それはそれは。ご心痛、お察しいたします。
はい。ええ。
"媚びた女に寄ってくるような男はどうせ程度が低い"。なるほど、そのようにお考えなのですね。
いえ。お話の内容はしっかりと理解しております。
前世では周囲に程度が低くて頭の弱い男性しかおらず、愛想だけは良いご令妹様に騙されていましたが、この世界では周囲に高スペックの強者男性が大勢おります。ならば特に自身からアクションを起こさずとも、転生者様の魅力に男性側が自発的に気付き、自ずからアプローチを掛けてくるはずとお考えという事ですね。
今後のサービスの向上の為にぜひ確認させて頂きたいのですが、転生の動機──今回のご要望の根幹としては
ご令妹様を見返したいという事でしょうか。
いえ、決してそのようなことはございません。
当局はあらゆる転生者のいかなる願望につきましても
人類種の倫理観点から曲直を判断するものではございません。ご安心ください。
はい、無回答をご希望との事で承知いたしました。
では今後、転生者様様のご希望されている状況になり得るか確認いたしますので、まずは転生者様の想定されている"執着を向け、溺愛してくる複数の男性"について
具体的にお聞かせください。
ありがとうございます。
では復唱いたします。
第二王子。
公爵家次期当主。
騎士団長の長男。
隣国の第一皇子。
以上でお間違いないでしょうか。
"とりあえず"でございますね。
承知いたしました。
現在の状況をお調べしますので、少々お待ちください。
大変お待たせいたしました。
確認しましたところ、該当人物および同水準の貴族男性においては、ほぼ全員が転生者様と第三王子の婚約破棄の直後に他家の子女と婚約契約を締結しております。
王家と有力貴族、つまり第三王子と転生者様の婚約破棄という事態の余波により権力構造の調整を早急に行う必要があった為と推測されます。
また、本件については直近の国家式典において公表が予定されているようです。
転生者様も何名かの婚約候補には挙がったようですが、
永らく第三王子の婚約者であったことから男性側からの過度の接触を控えていた経緯があり、加えて婚約解消後も特に接点がなかった故に転生者様の人となりを掴めず、リスク回避の為見送りとなった模様です。
はい。
"聞いてない"とのご質問につきまして回答いたします。
大変恐縮ではございますが、当局は転生後世界の状況については転生者様のご依頼を頂かない限り、独断での調査及びご報告をすることは致しておりません。
何卒ご理解ください。
では、続けて今後の展開予測について報告いたします。
第三王子による婚約破棄時に
従いまして、先程お調べした男性達と転生者様の間に今後接点が生まれた場合でも、彼らが婚約解消という選択肢を取る可能性は非常に考え辛くなっております。
以上の観点から、転生者様がご希望されているような
『有力貴族や他国を含めた王族の男性が複数名同時に交際可能な相手として再浮上し、かつ転生者様に執着を向け溺愛してくる』可能性はほぼ皆無であると思われます。
また複数でなく特定の個人と限定した場合でも、今後転生者様と婚姻関係に至る可能性は極めて低いものと予測されます。
いえ。
世界法則につきましては、当局側では不具合を確認できておりません。
ええ。
かしこまりました。
それでは、転生者様のご要望を元に一部達成可能なプランのご提案をさせて頂きます。
現状況下での"複数男性達による転生者様への執着および溺愛"という状況を実現するにあたり、まずは対象となる男性陣の世間的評価基準値について下方修整をして頂く必要がございます。
世間評を含めて具体的に提示しますと、
初老かつ好色で知られている子爵家当主。
叙爵による箔付けを狙っている商家の次男。
散財の結果、家計が傾きつつある男爵家の三男。
などが候補となります。
同時に転生者様からの容姿、家柄、資産についての
積極的かつ継続的なアピール──すなわち転生者様の仰られるところの"男に媚びる"挙動が、こちらも最低限必要になるものと思われます。
この場合、男性たちの執着対象は概ね容姿、家柄、資産となりますが、将来的に転生者様と婚姻可能な男性の選択肢が現時点でも非常に限定的であると予測される事実から、ご希望頂いた要件を実現可能な範囲で一定量満たしているものと判断し、当局より本プランをご提案させて頂きます。
はい。
度々のお叱りと、ご指摘ご意見ありがとうございます。
順次説明と回答を行わせて頂きます。
まず"話が違う"というご指摘について説明いたします。
前提としまして、転生後世界における住人の思考および行動については当該文明レベル時において人類種に発生し得るであろう知能水準と行動規範を可能な限り正確にシミュレートしたものとなっており、どの人物がどのように行動するのか、という結果が予め決定されているものではございません。
転生後の転生者様の行動が、周囲の人物に影響を与える
という説明も事前にさせて頂いており、こちらもつきましてはご納得頂いたと記録されております。
住人の行動規範は決して複雑なものではなく、己に向けられた行動に対し、
接触には関心を
恩恵には感謝を
愛情には愛情を想起する、転生前の世界と同様の人類種における普遍的なアルゴリズムとなっております。
本件における当局の見解としましては、立場や容姿や知識をただ保持しているだけでは他者が愛を向ける際の絶対条件にはなり得ず、本状況は"他者に愛を示すものが愛される"という人類種にとっての常識的な通念に帰結可能であります。
従いまして転生者様がご希望されている状況の未達成につきましては、"前世と同様、ご自身から行動しなかったこと"が最終的な要因であるものと推測されます。
従いまして、"なんとかしてよ"というご要望に対して、当局での対応は致しかねます旨、ご理解頂けますと幸いです。
もしもし。聞こえておりますでしょうか。
はい。
"ここから逆転する方法"でしょうか。
現状況から転生者様の理想を実現する手段、という意味でしたら一部において実現の可能性はございます。
まず該当となる男性への身体的接触を積極的に行い、
性的欲求を惹起させます。
同時に現婚約者についての虚言──具体例としては「階段から突き落とされた」などを伝え聞かせ、婚約者への不信を増大させることにより、対象男性自らによる婚約破棄を宣言させた上で転生者様が代替の婚約者になり替わる手法となります。
この手法を複数の男性に行って頂く事で、転生者様の理想に一部近しい状況になるものと推測いたします。
ぜひ、ご検討頂けますと幸いです。
ご用件は以上でよろしいでしょうか。
はい、前世のご令妹様の現在状況ですね。
ただいまお調べ致しますので少々お待ちください。
大変お待たせいたしました。
性交時の避妊に失敗し、交渉相手の男性と入籍のみの婚姻をした後、現在は三児の母として生活しております。
現代の所得帯評価では貧困と定義される環境ですが、嫡出子含め家庭内幸福度の個人平均値は94%となっております。
ご用件は以上でよろしいでしょうか。
申し訳ございません。
転生者様ご自身の幸福の定義については、わたくし共ではお答えいたしかねます。
ご用件は以上でよろしいでしょうか。
他にご意見、ご要望がございませんでしたら、これにて通話を終了させて頂きます。
この度は貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました。
転生者様が良き転生ライフをお送りできますよう、お祈り申し上げます。
ありませんってば