僕のヒーローアカデミア 徹子の部屋(※違います)   作:まだら模様

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※ちなみにどの時系列のキャラが来るかは不明で、同一人物でも別の時間軸やこの本編の時期や季節、年月が違う人がこの空間に誘われてきます。
例 本編2024年の場合 25年の婆、26年の姿、10年前、5年前、全盛期、老衰期などいろんなバリエーションがあります。
一度来た人でも何度でも来る可能性があります。
やったね徹郎!たくさんの人とお話しできるよ!(白目)


第14回:ホークス(神速の翼)

 

 

 「あ、どうも。手羽先とかあれば最高だったんですけど、ここって持ち込み禁止っすか?」

 

 ソファに深々とふんぞり返り、羽根の一枚で勝手にスタジオの空調をいじり始める男。

 

 速すぎる男、ホークス——その軽やかな笑顔の裏で、俺の「心拍数」と「脳波」はすでに公安のデータベースと照合されている気がした。

 

 

 

 眠りに落ちた瞬間——鳴った。

 

 ♪ ルールル ルルル ルールル ルルル ルールールールー ルールルー

  ルールル ルルル ルールル ルルル ルールールールー ルルッルー

  ラーララ ラララ ラーララ ラララ ラーラー ラーラーラー

  ラララ ラーラーラーラー ラララー ラーラーラーラー ♪

 

 スタジオに引き込まれた瞬間——すでに、何かがおかしかった。

 

 空調の風が、いつもと違う向きから来ていた。

 

 舞台袖からスタジオを確認すると、ソファに男が座っていた。

 

 いや——座っていない。

 

 ソファの背もたれの上に、座っていた。

 

 足をぶらぶらさせながら。背中の大きな翼から、一枚だけ羽根を出して、それでスタジオのエアコンのルーバーをいじっていた。

 

 「……あの」

 

 「あ、司会者さん。ちょっと風の向きが気になったんで調整してたんすよ。翼があると気流に敏感になるんですよね」

 

 「ソファの背もたれに座らないでください」

 

 「あっ、これ駄目っすか。すんません」

 

 飛び降りた。着地音が、ほとんどなかった。

 

 そのままソファに、今度はちゃんと、でも片足を上げた半横座りで収まった。

 

 (落ち着いてくれ……!)

 

 

 

 「えー……皆様、こんばんは。本日もご覧いただきありがとうございます。本日のゲストを——」

 

 「ホークスっす。ウィングヒーロー、ホークス。あ、本名は言わなくていいっすよね」

 

 「……そうですね。では、ホークスさん、今夜はよく来ていただいて——」

 

 「来たくて来たわけじゃないですけどね。まあ、面白そうな場所ではあるんで」

 

 男が、スタジオをぐるりと見回した。

 

 笑顔だった。ずっと笑顔だった。

 

 でも——目が、笑っていない場面がある。一瞬だけ。スタジオの死角を確認する時。カメラの位置を測る時。徹郎の立ち位置を把握する時。

 

 (この人は、常に周囲を把握している)

 

 (笑顔は——営業用だ)

 

 「……今夜は何歳ですか」

 

 「二十二。プロになって数年っすね」

 

 「わかりました」

 

 「なんで年齢聞くんすか。個性の仕様?」

 

 「時系列の確認です。この番組のゲストは時系列がランダムなので、最初に把握しておく必要があって」

 

 「へぇ」

 

 ホークスが、少しだけ目を細めた。

 

 「……なかなか合理的な対応っすね。几帳面な性格してますね、司会者さん」

 

 「毎晩やっていれば慣れます」

 

 「毎晩、ね」

 

 一瞬だけ——目が、笑顔と別のものになった。

 

 「それ、大変なやつっすね」

 

 

 

 「さっき、持ち込みについて聞いてましたよね」

 

 「あっ、手羽先っすね。好きなんですよ。鶏肉全般。福岡出身なんで」

 

 「福岡ですか」

 

 「そうっすよ。まあ、ずっとそこにいたわけじゃないすけど」

 

 「今は九州が拠点と聞きましたが」

 

 「よく調べてますね」

 

 「ゲストのことは事前に調べています」

 

 「どこまで調べました?」

 

 「……概要程度です」

 

 「具体的に」

 

 「出身地、個性の特性、ヒーローとしての戦績、目標として掲げている言葉——そのくらいです」

 

 ホークスが、少しだけ笑い方を変えた。

 

 「目標ね。『ヒーローが暇を持て余す世の中』ってやつですよね」

 

 「はい」

 

 「それ、本気で言ってると思います?」

 

 「……どういう意味ですか」

 

 「建前と本音、どっちに聞こえました?」

 

 徹郎は少し考えた。

 

 「……本音だと思います」

 

 ホークスが、少しだけ目を細めた。

 

 「当たり。正解っす」

 

 「なんで試したんですか」

 

 「建前だと思う人が多いんですよね。冗談で言ってるとか、キャラ作りだとか。でも俺、マジで言ってるんで。ヒーローがいなくても世の中が回る状態が、俺の理想っすよ」

 

 「それって——ヒーローが必要とされない世の中ってことですか」

 

 「ヒーローが暇を持て余せる世の中、っすね。ちょっと違う」

 

 「どう違いますか」

 

 ホークスが、羽根を一枚、指先で弄んだ。

 

 「必要とされない、だと——ヒーローが消える世の中。でも暇を持て余す、だと——ヒーローが存在しても、出番がないくらい平和な世の中。そっちが理想なんですよ」

 

 「……なるほど」

 

 「わかります?」

 

 「わかります。ヒーローが必要ない世の中ではなく、ヒーローが仕事を選べる世の中」

 

 「そうそう。仕事を選べる。それだけで全然違う」

 

 ホークスの目が、少しだけ——本当に少しだけ——温かくなった。

 

 

 

 「……勝手なことをしてもいいですか」

 

 十分が過ぎた頃、徹郎が言った。

 

 「なんすか」

 

 「コーナーをやりたくて」

 

 「コーナー? 番組っぽいじゃないっすか。やりましょう」

 

 「『速攻!ヒーロー世論調査』というコーナーです。私がお題を出すので、ホークスさんが答えてください」

 

 「面白そう。どうぞ」

 

 「最初のお題——好きな人に告白するか、三ヶ月悩んでいます」

 

 ホークスが、即答した。

 

 「却下。悩んでる間に相手に恋人ができたらどうすんの。三秒で言いなさい。ダメなら次。」

 

 (アドバイスが速すぎて情緒が!!)

 

 「……三秒は短くないですか」

 

 「俺が言いたいのはそういうことじゃなくて——悩んでいる間に状況は変わるってこと。行動が遅い人間は、機会を逃す。それだけっす」

 

 「でも気持ちの準備が——」

 

 「気持ちの準備をするために時間を使うより、動いてから準備した方が速いっす」

 

 「……それはホークスさんだから言えることでは?」

 

 「かもしれないすね。でも、速く動けるようになったのは訓練したからっすよ。最初から速かったわけじゃない」

 

 「次のお題——今のヒーロー社会に足りないものは何だと思いますか」

 

 ホークスが、少し間を置いた。

 

 今度は即答しなかった。

 

 「……暇な時間」

 

 静かな声だった。

 

 「みんな必死すぎて怖いんですよ。俺みたいに、仕事中に焼き鳥買いに行けるくらいがちょうどいい」

 

 (そう言いながら——あなたは誰よりも働いて、誰よりも自分を削っている)

 

 (それをわかった上で、笑いながら言っている)

 

 「……焼き鳥を買いに行けるヒーローが、ホークスさんにとっての理想ですか」

 

 「理想、っすね。本当に」

 

 「今は、焼き鳥を買いに行けていますか」

 

 ホークスが、少し笑った。

 

 今度は——少し、疲れたような笑い方だった。

 

 「……たまには行けてますよ。速攻でね」

 

 

 

 「一つ、踏み込んでいいですか」

 

 徹郎が言った。

 

 「どうぞ」

 

 「ホークスさんって——自由に空を飛んでいるように見えて、実は一番太い鎖に繋がれているんじゃないですか」

 

 スタジオが、少し静かになった。

 

 ホークスの笑顔が——消えた。

 

 一瞬だけ。でも確かに、消えた。

 

 そしてすぐに戻ってきた。

 

 「……鋭いっすね、司会者さん」

 

 「すみません、踏み込みすぎましたか」

 

 「いや、いいっすよ。あなたが調べてきた人なら、わかるか」

 

 ホークスが、少し背もたれに体を預けた。

 

 翼が、わずかに揺れた。

 

 「……鎖って言い方、好きじゃないんすよね。でも——間違ってもないか」

 

 「公安の話ですか」

 

 「直接的だなぁ」

 

 「答えたくなければ——」

 

 「いや、答える。夢の中だし」

 

 ホークスが、天井を少し見た。

 

 「……俺、子供の頃から公安に拾われてて。訓練して、ヒーローになって。それ自体は嫌じゃなかったんすよ。ヒーローになりたかったし、なれた。だから感謝もしてる」

 

 「でも」

 

 「でも——ヒーローになってからも、公安の仕事が続くんすよね。表向きはヒーローとして動いて、その裏で公安の依頼をこなす。ずっとそれが続く」

 

 「……それは、自分で選んだことですか」

 

 ホークスが、少し考えた。

 

 「……最初は、選んだっていうより、そういうもんだと思ってたっすね。俺がヒーローでいるための条件みたいな感覚で。でも今は——」

 

 「今は」

 

 「今は、選んでいると思ってます。自分で選んでいる、と思うようにしてる。そうじゃないと、やってられないっていうのもあるけど」

 

 「……やってられないと思うことがあるんですか」

 

 「あるっすよ。当然」

 

 あっさりと言った。

 

 「でも——それが俺の仕事で、俺が速攻で片付けた方が、他の奴らへの影響が少ない。そう思ってる」

 

 「……鎖に繋がれていても、その中で最速で動く」

 

 「そう。誰かが繋がれてないと、他の奴らが飛べないことがある。だったら、俺が繋がれる。速攻で仕事を片付けて、また飛ぶ。それだけっす」

 

 スタジオが、静かだった。

 

 徹郎は、少し考えた。

 

 (この人は——重さを感じさせない言い方をする)

 

 (でも、重さがないわけじゃない)

 

 (軽く言えるほど、慣れてしまっているのかもしれない)

 

 

 

 「……ホークスさんにとっての自由って、何ですか」

 

 徹郎が、静かに聞いた。

 

 ホークスが、少し止まった。

 

 「自由ね」

 

 「はい」

 

 「……難しい質問っすね。正直に答えていいっすか」

 

 「どうぞ」

 

 「俺、自由に飛んでいるように見えるじゃないっすか。翼もあるし、速いし、どこへでも行けそうで」

 

 「見えます」

 

 「でも本当のことを言うと——自由に飛べると思ったことが、あんまりないんすよね」

 

 「……子供の頃から、ですか」

 

 ホークスが、少しだけ目を細めた。

 

 「調べてますね」

 

 「少しだけ、概要を」

 

 「……まあ、そうっすね。子供の頃は外に出られなかった。その後は公安に引き取られて、訓練して、ヒーローになって。ずっと何かの中にいる感じで」

 

 「それは——辛くなかったですか」

 

 「辛い、という感覚があんまりなかったっすね。比較対象がないから」

 

 「それが当たり前だった」

 

 「そう。だから——自由が何かって言われると、正直よくわかんないんすよ」

 

 少しだけ、声が低くなった。

 

 「でも」

 

 「でも?」

 

 「空を飛んでいる時だけは——何も考えなくていい瞬間があるんすよ。ほんの一秒くらい。そのために飛んでいるかもしれない」

 

 「……その一秒が、自由ですか」

 

 「かもしれない。よくわからんけど」

 

 ホークスが、少し笑った。

 

 今夜初めて——作っていない笑顔だった。

 

 

 

 「……一つ、最後に聞いていいですか」

 

 「なんすか」

 

 「エンデヴァーさんのことです」

 

 ホークスの目が、少しだけ動いた。

 

 「……なんで知ってるんすか」

 

 「昨夜、エンデヴァーさんが来ていました」

 

 「マジっすか」

 

 「マジです」

 

 「……で、俺の名前が出た?」

 

 「出ていません。でも、エンデヴァーさんの話を聞いていて——あなたのことが頭に浮かびました」

 

 ホークスが、少し考えた。

 

 「……どんな話をしたんすか」

 

 「贖罪の話と、背中を降ろせない話を」

 

 「……らしいっすね」

 

 「あなたはエンデヴァーさんのことを、どう思っていますか」

 

 ホークスが、少しだけ黙った。

 

 この人が黙るのは珍しかった。

 

 「……子供の頃から、ずっと好きなんすよ」

 

 静かな声だった。

 

 「ぬいぐるみを持ってたくらい。貧乏っちゅうか、家の状況もあって——エンデヴァーの安売りのやつしか買えんかったけど、ずっと持ってた」

 

 (博多弁が、少し滲んだ)

 

 「……それは」

 

 「親父がエンデヴァーに捕まった日に、ヒーローが本当にいるんだって知ったんすよ。テレビの向こうの話じゃなくて、現実にいる、って。それが——俺がヒーローになろうと思った最初の気持ちっすね」

 

 「……エンデヴァーさんは、あなたにとって」

 

 「全部の始まりっすよ。まあ、本人はそんなこと知らんやろうけど」

 

 徹郎は、少し考えた。

 

 「……エンデヴァーさんに、それを伝えたいと思いますか」

 

 ホークスが、また少し止まった。

 

 「……伝えたいかどうかは、わかんないすね」

 

 「なぜですか」

 

 「俺がエンデヴァーさんに持っている気持ちは——ファンの気持ちとか、感謝とか、そういうのじゃなくて」

 

 「どんな気持ちですか」

 

 「……あの人だけですよ、本気で超えようとしてたのは」

 

 静かな声だった。

 

 「俺ね、見てたんで知ってんですよ。本気で超えようなんて人は、一人もいなかった。あなただけですよ、本気で超えようとしてたのは——って、そう言いたいんすよ」

 

 「……伝えてほしいですね、それ」

 

 「かもしれないっすね」

 

 「私から言うことはできませんが——今夜ここで話してくれたことは、覚えています」

 

 「覚えていても、伝える方法がないじゃないっすか」

 

 「ありません。でも——覚えていることに、意味はあると思っています」

 

 ホークスが、徹郎を少し見た。

 

 「……そういう考え方もあるっすね」

 

 

しばらく、静かだった。

 

 

 「……疲れたりしないっすか。それ」

 

 「え?」

 

 「覚えているのは自分だけで、誰にも言えなくて——それって、かなりしんどくないっすか」

 

 「しんどい、と思う時もあります」

 

 「でも続けてる」

 

 「続けています」

 

 「なんで」

 

 徹郎は、少し考えた。

 

 「……後悔したくないので」

 

 ホークスが、少しだけ笑った。

 

 「それ、わかるっすよ」

 

 

 

 そのとき。

 

 ♪ ルールル ルルル ルールル ルルル ルールールールー ルールルー ♪

 

 エンディングのテーマが、流れ始めた。

 

 ホークスが、すっと立ち上がった。

 

 「もう三十分っすか。速いっすね」

 

 「お時間です。ホークスさん、今夜は来ていただいてありがとうございました」

 

 「まあ、悪くない時間でしたよ」

 

 「最後に——一言、いただけますか」

 

 ホークスが、少しだけ考えた。

 

 そして——ポケットに手を入れた。

 

 何かを取り出した。

 

 ミンティアだった。

 

 「……それは私のポケットから——」

 

 「返しますね」

 

 「いつ取ったんですか!?」

 

 「さっき。気づきませんでした?」

 

 「全然気づきませんでした!!」

 

 「まあ、それが俺の仕事っすから」

 

 ホークスが、ミンティアをガラステーブルに置いた。

 

 「それと——」

 

 少し、声が変わった。

 

 「昨夜のエンデヴァーさん。あの人、司会者さんにどんな顔してましたか」

 

 「……どんな顔、というのは」

 

 「嫌そうだったっすか。めんどくさそうだったっすか」

 

 徹郎は、昨夜のエンデヴァーを思い出した。

 

 仁王立ちで、炎をまとって、短文で断言して、床のタイルを溶かして——でも最後に「精進しろ」と言った。

 

 「……最後に、あなたの言葉には泥を舐めた者の匂いがすると言って去りました」

 

 ホークスが、少しだけ目を細めた。

 

 「それ、褒め言葉っすよ」

 

 「そう受け取りました」

 

 「……そっすか」

 

 少し間があった。

 

 ホークスが、翼をゆっくりと広げた。

 

 「ありがとね、司会者さん」

 

 「……何がですか」

 

 「エンデヴァーさんをそういう顔にさせてくれて。あの人がそういう顔する相手、あんまりいないんで」

 

 テーマ曲が、最後の段階へ移った。

 

 ♪ ラーララ ラララ ラーララ ラララ ラーラー ラーラーラー

  ラララ ラーラーラーラー ラララー ラーラーラーラー ♪

 

 「あ、あと一個だけ」

 

 消えかけながら、ホークスが言った。

 

 「たまには、羽根を休めても——誰も怒りませんよ」

 

 徹郎が言った。

 

 ホークスが、少しだけ笑った。

 

 今夜一番——柔らかい笑顔だった。

 

 「……そうっちゃんね」

 

 それだけ言って、消えた。

 

 翼の羽根が一枚だけ、スタジオの床にふわりと落ちた。

 

 

 

 目が覚めた。

 

 朝の六時。

 

 布団の中で、徹郎はしばらく動かなかった。

 

 (……そうっちゃんね)

 

 最後だけ、博多弁が出た。

 

 訓練で矯正されたはずの言葉が——あの一言だけ、滲み出た。

 

 それが何を意味するのか、徹郎にはわからなかった。

 

 でも——あの人の本音が、一瞬だけそこにあった気がした。

 

 攻略ノートを開いた。

 

 「ホークス(鷹見啓悟・22歳):今夜のゲスト。開幕からソファの背もたれに座っていた——なぜ。エアコンのルーバーを羽根でいじっていた。俺のポケットからミンティアを抜き取っていた——気づかなかった。目が笑っていない瞬間がある——スタジオの死角、カメラの位置、こちらの立ち位置を常に確認している。飄々とした外面の裏に、休めない緊張感がある。公安の鎖に繋がれていることを、自分で選んでいると言っていた。自由の定義が『飛んでいる時の一秒』——それだけ。エンデヴァーさんへの気持ちは本物。博多弁は矯正されているが、本音の時に滲む」

 

 ペンを止めて、最後の一行を書いた。

 

「※最後に『そうっちゃんね』と言って消えた。その一言だけ、全部がそこにあった気がした。……羽根を休めてくれ、ホークスさん。内緒」

 

 

 

 その日の学校帰り、鶏の手羽先が特売されていた。

 

 手を伸ばして——買った。

 

 夢の中には持ち込めない。それはわかっている。

 

 でも——なんとなく、買ってしまった。

 

 帰り道、袋の中で揺れる手羽先を見ながら、徹郎は少し考えた。

 

 「ヒーローが暇を持て余す世の中」

 

 それがホークスの理想だ。

 

 でも今夜のホークスは——一秒も暇じゃなかった。

 

 あの笑顔を保つことが、すでに仕事だった。

 

 (いつか、本当に暇になれる日が来てほしい)

 

 夜になれば、また鳴る。

 

 ♪ ルールル ルルル ルールル ルルル……♪

 

 明日のゲストは誰だろう。

 

 それだけが、黒柳徹郎の仕事だ。

 




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