僕のヒーローアカデミア 徹子の部屋(※違います)   作:まだら模様

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※ちなみにどの時系列のキャラが来るかは不明で、同一人物でも別の時間軸やこの本編の時期や季節、年月が違う人がこの空間に誘われてきます。
例 本編2024年の場合 25年の年前の姿、26年の姿、10年前、5年前、全盛期、老衰期などいろんなバリエーションがあります。
一度来た人でも何度でも来る可能性があります。
やったね徹郎!たくさんの人とお話しできるよ!(白目)



第31回:トゥワイス

 

 

 「最高だなこの番組!」

 

 「……いや、ゴミ溜めだわ!」

 

 マスクを被り、支離滅裂な自己矛盾を叫びながら、その男はスタジオの均衡を瞬時にぶち壊した。

 

 

 

 眠りに落ちた瞬間——鳴った。

 

 ♪ ルールル ルルル ルールル ルルル ルールールールー ルールルー

  ルールル ルルル ルールル ルルル ルールールールー ルルッルー

  ラーララ ラララ ラーララ ラララ ラーラー ラーラーラー

  ラララ ラーラーラーラー ラララー ラーラーラーラー ♪

 

 スタジオに引き込まれた瞬間——騒がしかった。

 

 一人なのに、騒がしかった。

 

 舞台袖からソファを確認した。

 

 男が、立っていた。

 

 ソファに座らず、スタジオの真ん中で、腕を振り回していた。

 

 全身黒灰色のラバースーツ。顔全体を覆うマスク。左腕に巻き尺。

 

 「このスタジオ、広い!」

 

 「……狭いな!」

 

 「照明、いい感じだ!」

 

 「……眩しくて死ぬわ!」

 

 (一人で二人分喋っている……!!)

 

 (しかも全部矛盾している……!!)

 

 

 

 「えー……皆様、こんばんは。本日もご覧いただきありがとうございます」

 

 「こんばんは!」

 

 「……誰だよ!」

 

 「……黒柳徹郎です。この番組の司会者です」

 

 「司会者か! 最高じゃないか!」

 

 「……ゴミだな!」

 

 (ゴミ……!! 今夜のスタートが一番キツい言われ方だった……!!)

 

 「本日のゲストをご紹介します——」

 

 「トゥワイスだ! 以後よろしくな!」

 

 「……分倍河原仁! 覚えなくていいぞ!」

 

 (自己紹介の時点で情報量で溺れそうだ……!!)

 

 「……トゥワイスさん、今夜は来ていただいてありがとうございます」

 

 「礼なんていらねぇ!」

 

 「……もっと言え!」

 

 (もっと言えと言われた……!!)

 

 「……では、改めて言います。来てくれて、本当によかったです」

 

 「最高だ!」

 

 「……反吐が出るぜ!」

 

 (どっちだ……!!)

 

 「……あの、テロップに出す言葉——今の『最高』と『ゴミ溜め』、どちらを使えばいいですか」

 

 「最高の方に決まってんだろ!」

 

 「……ゴミの方を使え!」

 

 「……両方出します」

 

 「天才だ!」

 

 「……バカじゃないか!」

 

 (褒めてくれている……たぶん……!!)

 

 

 

 「座ってもらえますか」

 

 「座る!」

 

 「……立つ!」

 

 「座る、でお願いします」

 

 「了解!」

 

 「……嫌だ!」

 

 でもトゥワイスは座った。

 

 ソファにどかっと座った。

 

 「……ありがとうございます」

 

 「礼はいらないと言った!」

 

 「……もっと言え!」

 

 (この人との会話、体力を使う……!!)

 

 (でも——なぜか、嫌いじゃない雰囲気がある)

 

 (うるさいけど、怖くない)

 

 

 

 「……まず確認させてください。今いくつですか」

 

 「三十一だ!」

 

 「……違う!」

 

 「……三十一を信じます」

 

 「正解だ!」

 

 「……不正解だ!」

 

 (どっちだ……!!)

 

 「……この番組のルールはわかりますか」

 

 「三十分話せばお前が現実に帰れる、失敗したら幽閉だろ! 全部お見通しだぜ!」

 

 「……知るか!」

 

 「……知っている方が本音ですね」

 

 「正解!」

 

 「……不正解!」

 

 (この人は——最初に言ったことが本音で、後の言葉が反対になっている)

 

 (それがわかれば、この人と話せる)

 

 

 

 「……一つだけ確認していいですか」

 

 「なんだ!」

 

 「……なんでもない!」

 

 「なんだ、の方を聞きます」

 

 「賢いな!」

 

 「……バカだな!」

 

 「……トゥワイスさんの喋り方のパターン、少しわかってきました」

 

 「気づいたか!」

 

 「……気づくな!」

 

 「気づいた方が本音ですね」

 

 「そうだ!」

 

 「……違う!」

 

 「……最初に言った言葉が本音で、後に続く言葉がその反対——ということですよね」

 

 トゥワイスが、少しだけ止まった。

 

 「……よくわかったな」

 

 矛盾がなかった。

 

 「……三十一話目です。色々な人と話してきたので、少しは慣れました」

 

 「三十一人目か! すごいじゃないか!」

 

 「……どうってことない!」

 

 (すごいじゃないかが本音だ。嬉しい)

 

-----

 

 「コーナーをやってもいいですか」

 

 十分が過ぎた頃、徹郎が言った。

 

 「やる!」

 

 「……やらない!」

 

 「やる、でお願いします。『お前が二人!どっちが本音?』というコーナーです」

 

 「名前が最高だ!」

 

 「……ゴミだな!」

 

 「……最初の言葉で受け取ります。ありがとうございます」

 

 「どういたしまして!」

 

 「……死ね!」

 

 (どういたしまして、が本音だ。礼儀はある)

 

 「最初の問い——ヒーローを目指しているのかわからなくなった人に、何か言いますか」

 

 「やめちまえ!」

 

 「……死ぬ気で続けろ!」

 

 「どちらが本音ですか」

 

 「……どっちも本音だ!」

 

 「え?」

 

 「迷ってるお前も、確信してるお前も、どっちも『お前』だろ! どっちかが消えたら、もうそれはお前じゃねぇんだよ! 全部抱えてろ、バカ野郎!」

 

 矛盾がなかった。

 

 (……これは、本音だ。全部本音だ)

 

 (理屈はメチャクチャだけど——なぜか元気が出る……!!)

 

 「……次の問いです。この番組に来て、思ったことはありますか」

 

 「お前の声、震えてていいぞ!」

 

 「……次はもっとマシな服着てこい!」

 

 (服の話は初めて出た……!! 気にしていたのか……!!)

 

 「震えている声が、いいと思ってくれるんですか」

 

 「ああ!」

 

 「……違う!」

 

 「ああ、が本音ですね」

 

 「……まあな」

 

 「……ありがとうございます」

 

 

 

 「……一つだけ、踏み込んでいいですか」

 

 徹郎が、少し声を落とした。

 

 「なんだ!」

 

 「……黙れ!」

 

 「……聞いてください」

 

 「聞く!」

 

 「……聞かない!」

 

 「……最近、色々な人に言われたことがあって」

 

 「なんだ?」

 

 矛盾がなかった。

 

 「社会的な意味があるのか、記録に残るのか、責任は誰が取るのか——この番組をやり続けることに、意味があるのかって。ずっと、迷っていたんです」

 

 「……それで?」

 

 「それでも続けていて——でも、迷いが消えたわけじゃなくて」

 

 トゥワイスが、少しだけ前を向いた。

 

 「は? 知るかよそんなもん!」

 

 「……え」

 

 「社会が意味あるかどうかとか、記録に残るとか残らないとか——そういうの、知るかよ!」

 

 矛盾がなかった。

 

 完全に、矛盾がなかった。

 

 「……俺な、社会にゴミだって捨てられたんだよ。ちょっとしたつまずきから、転がり落ちて——気づいたら誰もいなかった。社会も、法も、正義も——俺を拾ってくれなかった」

 

 「……それは」

 

 「でもな」

 

 トゥワイスが、声を上げた。

 

 「仲間だけが、『ここにいろ』って言ってくれたんだよ! それだけで十分だろ! 社会? 正義? そんなもん、俺たちの居場所より大事かよ!」

 

 「……トゥワイスさん」

 

 「お前の番組で誰か一人が『生きてていい』って思えたなら、それで全部お釣りが出るんだよ!!」

 

 スタジオが、静かになった。

 

 徹郎は、少しだけ固まった。

 

 (……これは)

 

 (ジーニストさんの言葉が頭に来た。耳郎さんの言葉が。塚内警部の言葉が)

 

 (全部、重くて、正しくて——でも今夜の言葉が、一番、真っ直ぐに来た)

 

 「……それは、本当のことを言っていますか」

 

 「本当だ!」

 

 「……嘘だ!」

 

 「本当だ、が本音ですね」

 

 「……ああ」

 

 

 

 「……トゥワイスさん」

 

 徹郎が、静かに言った。

 

 「なんだ!」

 

 「……あなたを拾ってくれた仲間を、大切にしてください」

 

 トゥワイスが、少しだけ止まった。

 

 「……当然だろ」

 

 矛盾がなかった。

 

 「あいつらがいなかったら——俺、とっくに終わってたんだよ。それだけは、確かだ」

 

 「……確かですか」

 

 「確かだ!」

 

 「……違う!」

 

 「確かだ、が本音ですね」

 

 「……まあな」

 

 「……あなたが仲間のために動こうとする気持ちは——本物だと思います」

 

 「そうだ!」

 

 「……違う!」

 

 「そうだ、を信じます」

 

 「……ありがとな」

 

 静かな声だった。

 

 矛盾がなかった。

 

 徹郎は、少しだけ目が熱くなった。

 

 (この人は——社会から落ちて、自分が本物かもわからなくなって、でも仲間を見つけた)

 

 (その仲間のためなら、何でもすると言っている)

 

 (それは——純粋で、だからこそ、怖い)

 

 (でも今夜だけは、その純粋さに、救われた気がする)

 

 

 

 「……いいか、徹郎」

 

 トゥワイスが、少しだけ前に身を乗り出した。

 

 「お前は、お前を信じてくれる奴のためにだけマイクを握ればいいんだ」

 

 「……それは」

 

 「たとえ世界がそれを無駄だと呼んでも、誰かがそこに意味を見つけたなら、それが全部だろ」

 

 「……でも、それだけでいいんですか」

 

 「いい!」

 

 「……ダメだ!」

 

 「いい、が本音ですね」

 

 「……そうだ。お前みたいな奴が、一人でもいてくれたら——社会からゴミだって言われて落ちてる奴が、少しだけ息ができる。それだけで十分なんだよ」

 

 「……あなたが言うから、信じられます」

 

 「なんでだよ!」

 

 「……あなた自身が、そういう人に救われてきたから」

 

 トゥワイスが、少しだけ黙った。

 

 「……まあな」

 

 「……ありがとうございます」

 

 「礼はいらない!」

 

 「……もっと言え!」

 

 「……もっと言います。今夜、あなたに会えてよかったです」

 

 「最高だ!」

 

 「……反吐が出るぜ!」

 

 (最高だ、が本音だ。絶対に)

 

 

 

 そのとき。

 

 ♪ ルールル ルルル ルールル ルルル ルールールールー ルールルー ♪

 

 エンディングのテーマが、流れ始めた。

 

 トゥワイスが、ぱっと立ち上がった。

 

 「もう時間か! 早い!」

 

 「……遅い!」

 

 「お時間です。トゥワイスさん、今夜は来てくれてありがとうございました」

 

 「こちらこそ!」

 

 「……死ねよ!」

 

 「……こちらこそ、が本音ですね。ありがとうございます」

 

 「最後に一言、いただけますか」

 

 トゥワイスが、少しだけ考えた。

 

 「……ありがとな、徹郎!」

 

 「……死ね!」

 

 「ありがとう、が本音ですね」

 

 「……まあな!」

 

 テーマ曲が、最後の段階へ移った。

 

 ♪ ラーララ ラララ ラーララ ラララ ラーラー ラーラーラー

  ラララ ラーラーラーラー ラララー ラーラーラーラー ♪

 

 「また呼んでくれよな!」

 

 「……二度と来るか!」

 

 「また呼んでくれよな、が本音ですね」

 

 「……当然だろ!」

 

 旋律が最後の一音まで鳴り切るとき——

 

 「あいつらに自慢してくるわ! 今夜の話!」

 

 「……するな!」

 

 そう言いながら——消えていった。

 

 スタジオが、静かになった。

 

 トゥワイスが座っていたソファだけが、そこにあった。

 

 

 

 目が覚めた。

 

 朝の七時。

 

 布団の中で、徹郎はしばらく動かなかった。

 

 「お前の番組で誰か一人が『生きてていい』って思えたなら、それで全部お釣りが出るんだよ」

 

 その言葉が、頭の中にあった。

 

 (……救われた気がする)

 

 (でも——どうして、あの背中があんなに危うく見えたんだろう)

 

 (一人の居場所を守るために、何かを切り捨てる。その覚悟は——怖い)

 

 (でも今夜だけは、その言葉が、一番欲しかったものだった)

 

 攻略ノートを開いた。

 

 「トゥワイス(分倍河原仁・31歳):今夜のゲスト。開幕からソファに座らず、スタジオ真ん中で両腕を振り回していた。最初に言う言葉が本音、後に続く言葉が反対——これを掴んでから話が通じた。社会から捨てられた経験がある。仲間だけが居場所だという確信を持っている。その純粋さが武器でもあり、危うさでもある。でも——今夜の言葉で、少しだけ迷いが消えた。危険度:今夜は低(個性の複製は使わなかった)」

 

 ペンを止めた。

 

 少しだけ考えて、最後の一行を書いた。

 

「※『あいつらに自慢してくる』と言って消えた。……してきてください。今夜の話を、仲間に話してきてください。それが、あなたの居場所での話になればいい。内緒」

 

 

 

 その日の学校帰り、公園のベンチに誰かが一人座っていた。

 

 うつむいて、何かを考えていた。

 

 声をかけるべきか、徹郎は少し迷った。

 

 でも——

 

 (一人でいい。その一人さえ救えれば、それでいい)

 

 その言葉が頭に来た。

 

 徹郎は、その人の隣の自動販売機で、温かい缶コーヒーを買った。

 

 (……塚内警部の真似かもしれない)

 

 (でも——エッジショットさんも、こういうことをしていると言っていた)

 

 そっと、ベンチの端に置いた。

 

 声はかけなかった。

 

 ただ置いて、歩き出した。

 

 (届いたかどうかはわからない)

 

 (でも——置いた)

 

 夜になれば、また鳴る。

 

 ♪ ルールル ルルル ルールル ルルル……♪

 

 明日のゲストは誰だろう。

 

 それだけが、黒柳徹郎の仕事だ。

 




 第31話、トゥワイス回でした。「最初の言葉が本音、後の言葉が反対」——このパターンを徹郎が気づいてから、会話が成立し始める構造にしました。矛盾している言葉の中から本音を拾い続ける徹郎の姿が、この番組の司会者として30話分積み上げてきたものの結果だと思います。
 「お前の番組で誰か一人が生きてていいって思えたなら、それで全部お釣りが出るんだよ」——矛盾なく言った。それが全てでした。
 でも——その背中が、怖いほど危うく見えた。それもまた、本当のことでした。

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