酒寄さんちの次男くん 作:へそ天ペロリスト
前回の投稿から2か月くらい経ってるとか草生えますよ~
後突然失踪するのはデフォです()
彩葉は日課の勉強にひと段落を終えリビングに向かうと、画面に映る相方が百面相の様に顔色をコロコロと変えていた。
ヤチヨのコマンドの様な張り付けた表情ではなく、
「そんな難しい顔してどうしたのヤチヨ」
「―――まれる……」
「…?」
「悔やまれる……ッ!」
「い、一体何があったの」
ふと彩葉が声をかけたことに気づいてか大変険しい顔をしながらぎゅっと拳を握りしめ、プルプルと震えている。
こんな表情のヤチヨを彩葉は見た覚えがなかった。
少なくともかぐや時代は思い立ったが即行動と言わんばかりの行動力の獣であったはずで、何かの後悔を覚えるようなこんな悔しがり方をしているのを見るのは初めて見た気がした。
……いや、ちょこちょこ悔しがってるところは見たかもしれないがアレは鬱ゲーとかそう言う方面の方で、今回のものとは毛色が違ったはずだ。
「ライブ、現地で見ればよかったッ!」
―――あ、ヤチヨがなんか私みたいなこと言い出した。
割と本気で心配しかけた彩葉ではあるが『あ、これはオタク特有の泣き声だ』と言う解釈にたどり着き、スンとなった。
「真面目に抽選に挑んだりしないで直接会場に一般不可視の特別観覧席増設すればよかった!」
「オイコラ管理者」
シレっと職権乱用猛々しい事を言っている悪童に思わずチョップの一つくらい入れたい気持ちでいっぱいになる。
少なくともついこの前まですぐそばにいたかぐやの位置に振り下ろした手が空振るほどには。
「ネット民ども現地民マウント取りやがって!」
「はがれてる、はがれてる、ヤチヨがはがれてかぐや出てきてる」
なお出てきているのはyachi8000成分なのだが彩葉はそんなことはわからなかった。
どうにもゴロゴロと小さなタブレット端末を縦横無尽に転がり回る彼女の口ぶりを整理するに“何らかのライブの抽選に落ちて現地に行けなかったことが相当悔しい”らしい。
公正公平……とは言い難いがそれなりに皆平等に扱うツクヨミの管理者であるヤチヨがここまで悔しがるとは一体何があったのだろうか。
「ヤチヨがそんなに注目してるなんて珍しいじゃん」
ヤチヨの配信を全網羅している彩葉は定期的にヤチヨの中でブーム的に注目しているライバーを追っかけ、公式チャンネルに呼び出す習性があることは熟知していた。
そこに嫉妬などはない。
けれども、ヤチヨがここまでになるライブをする様な配信者に心当たりがなかったのだ。
故に気になった。
「割と最近デビューした子なんだけどね、こう……やけにヤッチョに突き刺さる曲が多くってぇ」
「へぇ」
「あ、一番は彩葉だからね!」
「いや、嫉妬とかそう言うアレじゃないから。単純な興味」
そう言って彩葉はその最近デビューした子、とやらを聞き出し軽い気持ちでそのチャンネルの動画を再生した。
――――そしてヤッチョの8000年*1全部見て自認
「―――え、この人のライブあったの?」
「ついさっき……しかもほとんど新曲だったんだよね」
一曲聞き終わる頃に油の切れたブリキ人形の様な動作でモニター越しにヤチヨと目を合わせ、そう問う。
その事実を認識した彩葉もちょっと机に突っ伏した。
つ、次があるなら応募しなきゃ……。
なお後にそのチャンネル主が未来の義姉であったり実兄だったりするとことを知り、小さく可愛い生物の様に『わぁ………わぁ……!』とオタク特有の泣き声を上げる羽目になるのだがさしたる問題ではない。
〇 〇
ライブを終え、謎の達成感を覚えた日向は妹夫婦(?)に少なくない衝撃を与えていることなどつゆしらず、いつも通りの日常に戻っていた。
そんな中、九千代とのデート以外で街中に繰り出すことのほとんどない日向はそれなりに都心部にある個室のある喫茶店へと足を運んでいた。
「久しぶりだな。元気にしてたか」
「ん、母さんが『あの子受け流す一方で様子の一つまともに話さへん』ってぐちぐちうっさいから兄の生存確認やから」
日向も母の電話を受け流す族ではあるが、たまの近況確認程度はそれなりに話す。
兄である朝日は既に成人しているためか稀の連絡程度。
元気してるのは度々ネット記事になってたりするのを見て知っているらしいのだが、ゲーマーらしくちゃんと健康維持してるのか様子を見て来いとのお達しである。
そんなわけで兄の顔を見に久々に喫茶店で顔を合わせている訳である。
「ったく、もっと気軽に連絡してくれてもいいんだぜ」
「男兄弟なんこんなもんや。マメな母さん見たく連絡するもんでもあらへんやろ」
ネットでは面白お兄さんをしている兄であるが、現実では比較的陰キャ。
ネットゲーマーの典型的姿と言わんばかりに黒縁眼鏡にダボっとしたゆるい恰好をしていた。
「年末くらい実家に顔出せ、だとさ」
「忙しいから無理」
「んな、ドストレートな」
ざっくりと受け流しまくっている兄に改めて母からの伝言を伝えている訳であるのだが、これを改めて母に伝えないといけないと思うと日向は胃が痛い気持ちで一杯である。
「まぁ、とりあえず肌艶は良さそうで安心したわ。宅配ばっかで生活習慣病にでもなってるんちゃうかって母さん愚痴っとったで」
「昔と違って宅配でも気軽に健康維持できる時代なんだぜ?」
ウー〇ーなりの宅配を利用していることは否定しなかった。
それでも3食カップ麺オンリーと言う訳ではない様で「健康は基本だからな」と腕組みをする始末。
外見上の不摂生はしていないようなのでこれは安心して伝えられそうである。
「金持っとるんは強いわ」
「まあな」
ここぞとばかりにドヤ顔を決める朝日に思わずジト目を向けてしまう。
とりあえず元気にやっているようで安心した。
おごりだから好きなもん頼めと言われたので躊躇いなく頼んだ一杯千円クラスの珈琲を飲みながらも他愛のない話をする。
「そう言えばネットで面白お兄さんやってるの見たで」
「―――ボハッ!?」
本当になんて事のない会話の中で日向はふと思い出したようにそう口に出した。
ゲームのプロとやらをやっていることは昔から知ってはいたのだが、あそこまで色物キャラをやっていることを知ったのはつい最近のことであった。
「お、おま、ツクヨミどころかネットとかゲームにまるで興味無しって感じだったやん」
「せやな。未だに兄さんがやってるFPSとかそう言う類にはまったくもって興味ないで」
「んならなんでや」
「ほら、彩葉んとこ顔出した時に月見ヤチヨ見かけてな。それからちょっと調べてみた感じで?」
なにやら思ったよりも朝日に謎の衝撃を与えたらしく、メロンソーダを口から零しながらその話題に食いついてきた。
朝日から見た日向は昔から運動は出来ず、速度を求められるようなゲームの類も苦手であったことからあまり積極的に同じことをして遊ぶということがなかった。
しいて言うなら読書方面では花が咲くことはあっただろうか。
ネットとやエンタメ方面とは程遠い若くして司法試験に受かるようなインテリ系であると言うのが朝日の認識であった。
「ガリ勉のお前がついにネット文明に……」
「え、そんな認識なん俺」
弟が知らぬ間に現代っ子らしいことに興味を持ったようで朝日は思わず涙がこぼれそうになる。
兄にそんな認識をされていたのかと日向は日向で衝撃を受けていた。
まぁ確かに実家にいた頃はだいぶ机とお友達してたけど。
「ツクヨミのことならそれなりに分かるから何でも聞いt―――」
「ヤッチョGPTでええわ」
「ツメタァイ……」
頼れるお兄ちゃんチャンスと言わんばかりにサムズアップしながらそう呟けば大変冷たいお返事が返って来た。
彩葉と同じでそう言うお年頃なのだろうか。
「ツクヨミ以外でもアレや、なんか困ってることあったら言いや」
「特にな………ああ、一つあったわ」
「お、何でも言ってみい」
何分朝日はそれなりにネットの人気者。
軽口で言うマンション一棟買ってやろうかが本当に実行できる財力を有している。
なんであれ力にならるのなら出し惜しみをするつもりはなかった。
「配信の設定でな」
「配 信 の 設 定 !?」
だがやって来たのは予想もしない方面からのそれであった。
ある種かぐやちゃんが月から来た発言よりも衝撃を受けた気がした。
〇 〇
酒寄朝日、もといツクヨミトップライバーであるBLACKONYXのリーダー帝アキラは自身が兄であるとかそこら辺の感情を投げ捨て全力で頭を下げた。
「その祭り参加させてくれ!」
突然の情報を例の顔*2をしながら事態を飲み込むまで幾ばくかの反芻をし、自体を飲み込んだ瞬間に出てきた一言である。
朝日の感情をインターネットスレ風に言えば『【速報】弟氏突然失踪したと思われる大人気チャンネル主だった件【はよ投稿再開しろ】』だろうか。
そう、日向がゲロったのは[SunTyoチャンネル]ではなく[懐かしの名曲カバーしてみたチャンネル]の方である。
何故そちらのことを選んだのかと言えば、日向の彼女ことお祭り好きの神社の娘が『あく投稿再開してください』と圧をかけて来たため、投稿再開の日取りを決めようとしていたのだが『普通に投稿再開するのはつまらない!ちょっとド派手なことをしよう!』とか言い出したからだ。
[SunTyoチャンネル]のライブの演出こそ日向が行ったが、配信設定は九千代に任せていた為自分自身がそれなりに運営していたチャンネルでの配信設定位は覚えておきたかったからのだ。
と言うか先日の[SunTyoチャンネル]のライブで配信設定しっかりしていないとまともにライブと言うかお祭りが運営できそうにないという懸念でもある。
そしてその“祭り”部分に関してポロっと口を零したらトップライバーに頭を下げられたと言うのが流れである。
「ん、まぁ参加してもらえるんなら何曲か歌って貰いたいんはそうなんやけど……」
「ホンマか!?」
「まぁ、ツクヨミの知り合いなんておらんし」
日向の企画する祭りとは“ツクヨミのライバー巻き込んで[懐かしの名曲カバーしてみたチャンネル]の曲歌って貰うライブをしよう”と言うものだ。
祭りをしよう、となっても日向も九千代もツクヨミ内に知り合いなどまるでいないのだ。
そもそもが九千代のわちゃわちゃしたいと言う願いを叶えるためのものである。
当初予定では8割方九千代に出ずっぱりになってもらうことになっていただろう。
仮にあと誘えるとすれば妹の彩葉くらいのもの。
……仮にこのままいくと身内だらけのライブになってしまう気がするな…?
日向は心の中でそれはそれで気が楽でいいかもしれないと考える。
「~~~~~!」
「えっらいガッツポーズするやん」
「おいおい、ツクヨミで音楽関係の投稿している奴は皆知っていると言っても過言ではないチャンネルの復活祭りに参加できるとか喜びしかねぇだろ」
「……そんなけったいなチャンネルでもないんやけど」
そもそも再開すると言っても超不定期投稿になるのは間違いないし、トップライバーが諸手を上げて喜ぶほどのものだろうかと首を傾げるほどだ。
まぁ、これで参加者が増えたので自分は歌わなくてヨシ!と心の中で現場ネコが指さし確認をする図が浮かぶ。
「で、日程とかそこらへんは?」
「検討中」
「決まったらその日は意地でも時間空けるからな」
「ん、と言っても色々と分からんことだらけやかなどのくらい時間がかかるか分からんけど」
「それこそ頼れる存在が要んだろ」
「……?」
頻繁にライブやってるとなると朝日のことかとスッと指を向けると苦笑いを浮かべられた。
「ま、俺もそうだけど日程とかそこら辺のスケジュールから技術的な問題まで丸っとどうにかしてくれるツクヨミの主様のことだよ」
「ああ、月見ヤチヨか。……と言うかこんな企画に呼んでいいものなん?」
「と言うかこんなお祭り参加出来ねぇとかすっげー拗ねるぞあの歌姫は」
「ん、ある程度企画まとめたら聞いてみるわ」
「そうしろ、そうしろ」
ニヤリと朝日は笑いながら今年は退屈する暇がねぇなと笑みをこぼした。
・酒寄日向
うちの姫さんがライブ楽しかった~って勢いのまま更新してないチャンネルの方でのライブしたいとか言い出したでござる。
望むならやるけども。
・月夜野九千代
それはそれとしてその無限にあるレパートリー吐け?全部歌って見せるからと圧をかけるお嬢様。
・かぐやいろP組
次回色々な情報で殴られることが確定した模様()
・酒寄朝日
[懐かしの名曲カバーしてみたチャンネル]が嘗ての自分のイキリM〇Cで良い感じに扱えんとなったパソコンから生まれたと知り「あの頃の俺グッジョブ」と人知れずガッツポーズを浮かべた。
弟に最新型の盛れるだけ持ったM〇Cを送り付けようと画策中ではあるがこの後アイドルソングを歌わされることになることは知らない模様。
BLACKONYXにはDRAMATIC STARS(アイドルマスターSIDE:M)
『DRAMATIC NONFICTION』と『MOON NIGHTのせいにして』を歌わせたい欲ってあると思うんですよ