「んーー!おいひぃー!」
「ふふっ、美味しいね」
ミソラの好物はジェラートだ。
普通のアイスキャンディーや、ラクトクリーム系はスーパーマーケットとかで買うことができるが、ジェラートはあまり売っておらず、また家で用意するのはやや面倒だ。
というかお店で食べた方が美味しい。
なので俺が遠出する行くたびにミソラはぴょこぴょこと付いてきてジェラートを食べるようになり、同時に好物になったのが数年前。
「いやはや、全部お兄ちゃんの奢りでお昼ご飯の後にすぐデザートなんて贅沢だねぇ、うぇへへへへ…」
「だらしない顔だ」
「ふふっ、ミソラちゃんってお兄さんのこと好きなんですね」
「うん!大好きだよ!お兄ちゃんのお陰でわたしは毎日楽しいもん!特にライブ配信!」
「うんうん、分かるよ。配信中のミソラちゃんってとても楽しそうだもん。ふふっ、私も配信やってみようかな?」
「必要なら俺の方で揃えてやるぞ」
「ふぇ?」
「うんうん。ちょうどロッポンドーヒルズに来てるから揃えようと思えば揃えれるかもね!」
「あ、ええと…」
「ロッポンドーで揃えると流石に値が張るからネットオークションで落とすよ。その前にスズカちゃんが欲しいかどうかだけど…」
「スズカちゃんも配信機材あったらわたしと一緒に配信できるよ!一緒にやらない?」
「ミ、ミソラ…じゃなくて、あのノートちゃんと一緒に配信、っ!……す、すごく良いかも…」
おっと?流れ変わったな。
「仮に配信機材を揃えるとしてもロッポンドーは高額設定の新商品しか売らないから、もし欲しいなら俺に言ってくれ。すぐに安くて良いヤツを競り落としてやる」
「そこはお兄ちゃんが買ってあげないの?」
「………それもそうだな。オクダマスタジオの案件を持ってきてくれたのスズカちゃんだし、確かに俺がお礼として買うのも有りだな。よしロッポンドーヒルズに洒落込むか」
「え、え、えええー!?」
「はいはーい!1名様ご案内ぁーい」
「ミソラちゃん!?ちょ、ちょっと…!!」
俺はスズカちゃんの右肩を、ミソラはスズカの左肩に手をドスンと置いてガシッと拘束し、そんな俺たち響兄妹のコンビネーションにお目目をグルグルさせるスズカちゃんを人混み賑わうロッポンドーヒルズの中に押し込む。
目に入る光景は人に人に人。あとはエアディスプレイという浮遊する広告モニターの数々。
都会に慣れてないと簡単に酔ってしまうような眩しい密度だが、人生二度目の俺にとっては特に気にならない光景だし、妹のミソラは友達と一緒に出かけれる喜びに後押しされているので人混み気にせず進めている。
スズカちゃんも仕事関係上都会には慣れていると思うが、しかし今回は俺とミソラに先に行ってどうぞどうぞ〜と背を押されて目をグルグルしていた。でも口元にへらとしてなんか幸せそうである。
…
…
…
さて、正気を取り戻したスズカちゃんに「は、配信機材に関しては少し考えさせてください!」と言われたので電化製品店では何も買わずブラブラする程度に収めると、ミソラが屋上に小さな庭園があると知ったので向かうことに。
エレベーターで屋上に向かうと天気もそこそこな庭園が数メートルほど広がっており、ミソラは一人駆け足で向かう。
やっぱり末っ子って感じがするな。
スズカちゃんも元気なミソラにニコニコとしてその後ろ姿を見送る。
「お兄さん、今日はありがとうございます」
「いいや、構わないよ。しかし俺と出掛けるなんて急にどうしたんだい?」
「あ、その…ごめんなさい。お兄さんの立場からすればちょっと困りモノですよね?」
「まあ…俺とスズカちゃんだけだと社会的に事案として受け取られるからさ。俺的な心配はそこだけ。仲良くしてくれるのは純粋に嬉しいよ」
「は、はい!私もです!えへへ…やっぱり昔のまま優しいですね…」
「昔か……なんだろうか?申し訳ないけど覚えていないんだ。俺は過去にスズカちゃんと何かあったんだろうか?」
「!」
その言葉を聞いてスズカちゃんは少しだけ目を見開くと一度目を閉じ、ミソラの方を見ながら何処か遠くを思い出すような表情をする。
「お兄さんは、その…今とは違って何年か前はサテラポリスに所属していましたよね?」
「!!」
なんでこの子が知っている??
もしかして兄妹自慢のためにミソラが思わず喋っちまった感じか?あまり大っぴらに言ってはならないこと伝えているんだけど。
「あ、ミソラちゃんから聞いた訳じゃないですよ?ただ私が
「覚えている?」
「はい。3年前に…このロッポンドーヒルズにて発生した電波ウィルスの事件で、私はワタルさんと初めて出会いました」
「!」
ここに到着した時も言ったが、俺はこのロッポンドーヒルズに一度だけ来たことがある。
それは数年前かつまだサテラポリスに所属していた任務中の話。
まだ研修生だったこともあり、現場の空気感を覚えるためにも後ろの方で対ウィルス兵器のレーザービームで援護射撃をしていたが、急遽前衛を数名ほど寄越して欲しいと通信を受けるとシドウが真っ先に立候補し、そのまま俺も巻き込まれる形で参加することになった。
こうしていきなり激地に足を踏み入れることになったが、アシッドエース計画を見据えた訓練も受けていたので戦力的に問題ないとされたので、シドウとバトルカードのバリアを展開しながらバスティングスティックでウィルスを切り開きながらウィルスの発生源に突入した。
それがロッポンドーヒルズでの記憶。
ああ___そうだった。
確かにそうだ。
彼女の話を聞いて思い出したさ。
そして、俺は……彼女と出会っていた。
___
__
_
__きゃぁぁぁあ!!
__なっ、子供!?ッ、ワタルっ!!
__任せろ!シドウはウィルスを撃退しろ!
ウィルスの破壊活動にて被害が広がる中、一人の女の子がうずくまり悲鳴を上げていた。
逃げ遅れた子供だったのは明白。
そして俺は進行する部隊から一人外れると女の子の元まで駆け寄る。
また、そのタイミングで襲いかかってきたウィルスの攻撃をバリアで受け止めながらバスティングスティックでウィルスを薙ぎ払って撃退した。
しかしウィルスと相対するということは敵として認知されるということ。
俺と女の子を囲うようにウィルスが集う。
__あ、あ、い、いや…こんなに、沢山っ!
__落ち着け。大丈夫。俺から離れるな。
ウィルスの破壊活動にてウェーブロードの歪み過ぎたのか、運悪くビジブルゾーンとやらが俺たちの間に発生してしまい、ウィルスを裸眼で視認してしまう。女の子も初めてみるウィルスという異形の存在に怯えていた。
__君はこのトランサーを抱きしめるんだ。
__バリアが自動で発動して守ってくれる。
__お、お兄さん、は??
__もしかして、怖いのと、戦う、の??
泣きそうになる女の子の頭を撫でながら「大丈夫だ」と宥めつつ、トランサーを受け渡す前に3枚のバトルカードをセットインを済ませる。
それから俺は何十体も集ったウィルスと向き合いながらセットしたバトルカードの武器を握りしめて、戦闘状態に入る。
__さぁ!デリートされたい奴から来い!
__まぁ、来なくても強引に呼ぶがなッ!
口に咥えたホイッスルをピー!と鳴らすことでウィルスを強引に引き寄せ、両手にそれぞれ構えたバスティングスティックとソードの二刀流でウィルスを撫できり回り回る。
バリア100の効果が続く限りウィルスを斬り捨て回った、そんな戦闘録だ。
これが彼女との出会い。
もう3年近く前の忘却しつつある、記憶…
___
__
_
「ああ、完全に思い出したよ。
君の名前は
ロッポンドーヒルズのウィルス事件で俺が守った子だったな」
「っ、はいっ!!」
やっと思い出した俺にスズカちゃんは喜ぶ。
俺も頭を掻きながら記憶を辿りつつ続ける。
「ごめんな。当時はロッポンドーヒルズを巻き込んだ規模だったこともあり、東西南北を終始ドタバタとしてたんだ。ミソラと同じくらいの歳の子を助けたことは覚えていたが、それがスズカちゃんだったことはココに来るまで忘れていた。しかしそうか、あの時のは君なのか…」
「い、いえ!思い出してくれて嬉しいです!っ、私はずっと貴方にお礼が言いたかったんですっ!あの日助けてくれたら私は今もこうして…!」
「お礼?…気にしなくて良いさ。当時の俺はサテラポリスとしての責務を果たしただけ。そしてあの時のスズカちゃんがこうしてミソラのように一つの業界で元気に活動できてることを俺は嬉しく思う。だからこちらこそありがとう。またスズカちゃんに会えて嬉しいよ」
「そ、そんな…!わたしもっ、あの頃からずっとお兄さんに感謝して…!でも、そっか…え、えへへ…」
でも、そうか。
あの時の子供がこうして元気に生きてる。
それはサテラポリスという民間のために命を張って真っ当するからこそ、こうして未来で受け止めることができた誇らしい報酬。
ならば、サテラポリスとして過去形だった俺でもこの成果は誇らしくあるべきだ。
だから俺も彼女にお礼を言いたい。
やって来たことは意味あったから。
そして父と同じ、その道を
「お兄ちゃーん!街がよく見えるよー!」
奥にある園庭の真ん中でミソラが俺達に声をかけてくる。俺は手を振り、スズカちゃんも小さく手を振ってミソラの声に応えながら、俺たちも奥に進む。そして鉄防止に腕を置きながらロッポンドーヒルズを見渡すと、そこは人類の叡智が集った街々でどこまでも広がっている。
「絶景だな」
「うん!眩しいね!」
「ふふっ、すごい光景。人もビルがいっぱい」
「そうだな。…と、言うか、俺は過去にこんなバカ広い場所で現場研修受けてたのか。どうりで終始慌しかったもんだ…」
「あれぇ?お兄ちゃん昔のことゲロったの?」
「お前ェ、ゲロったて言い方さァ…まぁいい。それでスズカちゃんは過去の俺のことを知ってたんだよ。それも当時はこのロッポンドーヒルズで発生したウィルス事件で俺がスズカちゃんを助けたことあったんだわ。それで今日この日まで覚えてくれてた」
「ふふっ、お兄さんはサテラポリスだったんだよね。すごいなぁー」
「そうでしょ!わたしのお兄ちゃんって本当に凄いんだよ!最終階級は
「ふふっ、そうなんですね」
「まぁ卒業式はボイコットしたけどな」
「え?あ、そ、そうなんで……へ?うええええ!!?ボイコット!!?」
「あははは!もう、流石にその言い方だとスズカちゃんが驚いちゃうよー、お兄ちゃん。でもまぁ…あの時は仕方ないよね。だってその日はいきなりお母さんの病状が急激に悪化して、それでお兄ちゃんも当日の卒業式を直前に抜けて病院まで来て、そしてそのままお母さんは亡くなってりしてね、もう色々大変でねぇ」
「!、!!」
「ああ…確かに色々とあって大変だったな。俺も卒業式の数分前にいきなり病院から連絡が来て、それで病状が悪化した母を聞いてな、あとは無我夢中だったよ。でもそのお陰で母の言葉を聞き届けながら見送れた。だからあの時の選択に悔いはない。あとその後も身の振りも決まったからな」
「身振り………っ、だから、サテラポリスを…」
「ああ……そうだな」
「あはははっ、ま、そういうこと!いやほら、お兄ちゃんって私のこと好き過ぎるあまり心配性だからさ。だから…それでね、これまでのお兄ちゃんの道はね、わたしがいるからね、お兄ちゃんを諦めさせちゃったようなものでね__」
「関係ないぞ、ミソラ」
「!」
「あの日まで築き上げたモノが栄誉あるサテラポリスだろうと、しかし俺は今日この日まで大事な妹を選んだことに対してミリとも後悔したことはない。だからミソラはお兄ちゃんのことを悔やまないで欲しい。そうじゃないと俺も困っちゃうし。な?」
「お、おにぃちゃん…」
不安を香らせるミソラを、その肩をコチラの胸元まで抱き寄せると、余っているもう片方の手でその頭を覆いながらゆっくりと俺の可愛い妹の頭を撫でる。そうして頬擦りしながら小さく声をかけてあげる。
__大丈夫だから。
__どうか気にしないで。
__俺は妹が大事なんだから。
不安をゆっくりと溶かすように、妹の兄として深く遂行する。
そうしてしばらくして。
「も、もう……えへへへ……おにいちゃん…今はちょっとはずかしいよ…」
「ならそういう自責は無しだ、良いね?じゃないと次は道の真ん中でギュッとやっちゃうぞ?」
「ぅぅー、お兄ちゃんのシスコン!」
「妹ラブで結構。俺はミソラを愛してるし」
「それはわたしもだよ!……えへへっ」
「素敵なお兄さんですね。ふふ、なんだか羨ましいなぁ」
「でしょ?でしょー?くふふふ〜。あ、でもスズカちゃんになら、わたしのお兄ちゃんに甘えても良いよ。特別にわたしが許可するから!」
「ふぇぇぇー!?」
「まーた、この妹は勝手に…」
「だってだって〜。ほれほれ〜!ほら!スズカちゃんは一度こっちに来て!」
「わ、わっ!?」
と、ミソラはキャッキャとスズカちゃんの手を引っ張って庭園の奥底に消える。
ちなみに俺は来たらダメなようなのでココで一人待つべく、再び手摺に背中を預けながらもう一度ロッポンドーヒルズを見渡す。
ニホンの中でも特に広大な都内街。
また電波の心臓とも言われるTKタワーが自己主張激しく光景に入る。
そして仕事柄、アレを守るためにどれだけのセキュリティーとファイアーウォールが必要なのかつい頭の中で考えてしまうし、もしウィルスなんかが発生してしまったら何処から対処してウィルスを殲滅するか、ボーっと目で追ってシミュレーションをしてしまう。
「やはり今も昔も、変わらないのかな」
『ワタル?』
「んー?…いやなに。妹を優先してしまったけどウィルスと向き合う仕事自体、俺は変えることはなかったんだと少し考えてただけさ」
『ウィルスと向き合う……か。でも…そのお陰でアタシ達はワタルやミソラと家族になれたのかもしれないから、アタシは今のワタルで良かったと思うし…?』
「!」
『っ、な、なーんてな!あまり気にするな…って、なんだよ!こっち見て笑うなし!』
「ははは、悪い悪い。でもシオンは本当に優しいヤツだな。俺は嬉しいよ」
『っ!…ふん、優しいとか、その…べ、別にどうでも良いし!』
「分かったよ。まあこれまで通りに必要なら俺を助けて、それでミソラを守ってくれ。そのための電波変換でもあるんだ。サテライトの管理者はそれを許してくれた」
『も、もちろんだし!アタシもリンネと同じことできるなら歓迎だからな!』
「…争うためのギフトじゃないぞ?せざるを得ない時のための手段だ。戦いは優先行動ではない」
『わ、分かってるし!必要ならする!でもその時は遠慮しない…だろ!』
「ああ、それで良い。その方が良い」
トランサーから語りかけられる声はシオンだが他の者からは聞こえない。何故なら彼女達の周波数を持っているのは俺とミソラだけ。
彼女達の周波数に感応できたら俺たち以外の人間も彼女達の声は聞こえるかもしれないが、まあそれは今のところどうでも良い。
てか、元はメットールのウィルスだった彼女達とはいえ、それをトランサーに潜り込ませているのは仕事柄あまり知られてはならない。
だから彼女達の存在と声を認知できるのは俺たち響家だけで良いから。
「ふぅー………………ン?」
『どうした?ワタル』
会話に疲れて一息吐いていると、少しだけ脳裏にチクリと刺すような感覚が走った。
別に痛くともなんともない。
だが___なにか、無視できない感覚だ。
俺はその僅かな違和感を頼りにある方向に視線を向ける。
向けた先は___TKタワーだ。
「……」
『ワタル?どうし___ッ!なんだこの感覚!』
どうやらシオンも捉えたようだ。
するとトランサーから飛び出し、手摺に体を乗り出して同じようにTKタワーを見る。
何か__ナニカが、無視させてくれない。
俺たちはTKタワーを見る。いや視る。
するとしばらくして…
ウェーブロードに何かが落ちて来た。
っ、な、なんだ!?
「お兄ちゃん、どうしたの?」
TKタワーのウェーブロードから感じ取れた違和感に気を取られているとミソラが戻って来ていた。あとその横にはスズカちゃん。
ただそのスズカちゃんはちょっとだけ顔を俯かせながら、コチラをチラリチラリとしつつ頬をほんのりと赤くしている。どうしたんだ?
わんぱくなミソラに振り回されたのか?
ああいや、それよりもだ。
「ごめんミソラ、ちょっと顧客から連絡が来てさ、早めに折り返しさないとダメなんだ」
「あ、うん。そうなんだ」
「だから先にスズカちゃんとさ、良さげなスイーツ店探して来てよ。それで見つけたら俺の方にも教えて。連絡等終わったら向かうから」
「うん!分かった!良いの探してくるね!」
「ああ。…そんな訳でスズカちゃんもこのわんぱく娘をよろしくね?」
「あ、は、はい!わかりまひぃた!」
あ、うん。なんか呂律もおかしいなってるな。
ミソラに振り回されたか。やれやれ。
困った妹だ。
「よし、この辺でいいか…」
『するんだな?』
ショッピングビルの人通りの少ない階段で俺はトランサーから聞こえるシオンの言葉に頷き、意識を委ねる。そして…
「電波変換!響ワタル!オン、エア!」
『っしゃ!やってやるし!』
瞬間的に変身が完了する。
それから間近のウェーブロードを探り、その場所に跳ぶと建物外、先ほどの庭園よりも広くロッポンドーヒルズを見渡せる。
それからTKタワーまでの最短ルートを探るとウェーブロードからウェーブロードに跳び移って目指す。
途中、何人かの電波くん達とすれ違い、俺の存在に驚かれてしまうが、それらを無視してTKタワーのウェーブロードまで駆ける。
「頂上!見えて来た!」
電波変換して経過したのは10秒程。
やはり電波の世界はすごい。
あらゆる物理法則を無視しながらの高速移動はまさに光回線と言ったところか。
そして…
「!!??」
『どうした?ワタル?』
俺はTKタワーの頂上に位置するウェーブロードに辿り着き、バトルカードのバリアをいつでも展開できるようにしながら、落ちて来た物体に近き、確かめる。
しかし、確かめたそれは驚くモノ……いや。
___驚く
「こ、こ、この、人って…まさかっ…」
『ワタル?』
知っている。
知っているんだ。
何度か会話だってした。
だってサテラポリスにいたから。
所属先はそれぞれ違ったけど、でも未来ある若者達に期待していつもNAXAとサテラポリスを行き来して、電波社会の発展を願って日々を尽くしていた。
そして数年前に失踪した、
だが、その失踪はこの時点で終わった。
何故なら生きていることがわかったから。
だって…!
だって…!!
「何故ッ!?
星河ダイゴが堕ちてきたんだ!!?」
俺の叫び声に、誰も答えれない。
腰から魂化した姿で顔を覗かせているシオンも持ち合わせていない。
だが、その代わりに…
『ワ、ワタル、こっちにも誰かいるぞ?』
宇宙から落ちて来たこの星河ダイゴに衝撃を受けて見逃していたが、実はもう一人宇宙落ちてきたことを知る。俺はシオンの声に釣られてそちら側にも目を向けると、何やら人間とは全く違う別の存在がヤムチャしやがった格好で倒れていた。
「ぅ、ぐ、グォ…ォォ…」
まるで狼のような姿。
鋭い爪と鋭い牙。
ところどころ青色の丈夫そうな外装に、胴体を形成するのは電波の集合体か。ともかく見た目で狼だと分かる。なんだろうかコイツは?
『同じ香りがする……これはAM星人か?』
「AM星人って三賢者の?…確かに周波数が似ていることがわかる。ならコイツはそういうところから来たのか?もしや星河ダイゴ、と…」
『…なぁ、星河ダイゴって何者なんだ?』
「電波社会の発展に貢献しためちゃくちゃ凄い人だ。俺もこの人とは面識ある。だが数年前に宇宙へ行って消息を絶った。しかしそんな偉人が今日この日、宇宙からロッポンドーヒルズのTKタワーに落ちて来た。意味がわからない…」
それよりも地上じゃなくてウェーブロードに落ちているのは一体どういう事だ?
人間ではないと言うことか??
もしやダイゴさん?今の貴方は…
「シオン、ダイゴさんをトランサーの中に引き摺り込めるか?」
『この人を、か?普通の人間は無理だと思うが…』
「普通の人間はな。でも俺の予想が当たればダイゴさんは恐らく電波化してる状態だ。リアルの地面じゃなくてウェーブロードに落ちてるのが何よりも証拠になる」
『!!…ああ、確認したらできるぜ。トランサーの中に引き込むことは可能だ』
「ならトランサーに引き込んでくれ。一度ダイゴさんを保護する。あとトランサー内部の容量が足りてたらついでにそこの犬っころもトランサーに放り込んでくれ。こんなとこに放置しておくのは危険だろうし」
『あ、ああ。わかったし』
そう言ってシオンはまずトランサーにダイゴさんを引き込み、次に獣の姿をした電波体もこの場を落ち着かせる。
TKタワーの主要ウェーブロードで立ち往生するのは電波の阻害になってしまうからな。
証拠に後ろの方で覗き見ている電波くん達もオドオドして動けずじまいで、少しだけ電波状況が悪くなっている。早々に立ち去ろう。
「一体宇宙で何が起きている…?」
俺の呟きに誰も答えることはない。
ただ、何か嫌な予感がする。
それは電波トラブルと隣り合わせに生きていたサテラポリスだったからこその勘か、もしくはこの世界がロックマンの世界だからこそ良くないナニカが巡ろうとしているのか?
元の場所に帰る足は自然と早くなっていた。
つづく
原作崩壊って書いてて楽しくない?
作者はそういう悪い子なんですよ。ぐへへ。
じゃぁな!