5話の円月のシーンでセリフを追加しました。
ハンターは応用円月の代償で、この戦闘中での翔蟲は使用不可になっています。
※最後らへんは三人称視点となっております。
粘菌を地中に伝わせる。
ハンターの足元を中心に、徐々に展開。
地面、壁面、天井、全てを浸食していけ。
今は高温によるダメージと動きの阻害を目的に……。
エリア全体を浸食しきった暁には、回避する暇も与えず一斉起爆で叩き潰す。
設置、伝達、活性化……。
行うたびに最適化されていく。
粘菌の動きが……。
状態が……。
手に取るように分かる。
まるで身体の一部かのように操作することができる。
さっきまでとは別次元の領域。
もしアニメだとしたら『覚醒』とか言われるぐらい。
ただ……。
……長くは持たなそうだな。
膨大な熱量による身体の融解。
今も徐々に甲殻の軟化が始まっている。
このままいけば完全に溶け、筋肉や内臓器官に甚大なダメージを負うだろう。
……長引けば俺が負ける。
ならば答えは1つ。
速攻ゥ決着!
後脚や尻尾……謂わば下半身に粘菌を集中。
起爆。
マガイマガドのように爆発の反作用を利用して、ハンターに向かって跳ぶ。
このまま真正面から攻撃を仕掛ければ先の二の前となる。
対処が難しい方向から攻め……。
……カウンター前提で動きを作る。
そのまま突進すると見せかけて、ハンターを掠める形で背後に回り込む。
……ワン・ツー!
からの起爆を遅らせるよう調整した粘菌の……。
爆発!
粘菌を精密に動かせるようになったからこその芸当。
カウンター殺しの多段攻撃!
「ふふっ、魅せてくれるね!」
対するハンターは……。
俺の策を見抜いたのか即座にバックステップ。
刀身で弾き、いなし……。
時にはフレーム回避を絡めながら俺の連撃を対処していく。
……対応はされたが、翔り蟲は使ってこない。
あれだけ大規模な円月……翔蟲を全て消費したと見るべきか?
そう脳内CPUをフル回転させている間も……。
ジャブやワン・ツー。
フックやストレート。
ブラキステップで翻弄し、死角からの攻撃を叩き込んでいく。
が……。
……危っぶねっ!
拳撃と拳撃、爆発と爆発の間。
数秒にも満たないような、ほんの僅かな間を縫ってハンターが一閃。
なんとか上昇した動体視力で捉え、軟化が進行していない腕で受け流すことができた。
だが、一閃また一閃と斬撃を通してくる。
受け流し、ブラキステップで躱す。
今の俺がまともに受けたら命取り。
相手の一挙手一投足見逃すな。
相手が果てるまで攻撃の手を緩めるな。
そして、相手より先に次の一手を……。
「これは……匂う、ねっ!」
ハンターが少し考える素振りを見せたかと思うと……。
拳撃と剣撃の合間を縫うようにして、何かを投擲してくる。
それは……ナイフ。
見るからにモンスターを攻撃する用には調整されていないナマクラ。
……何だ?何が目的だ?
俺の胸に向かって投擲されたナイフを見てそう思う。
速度は遅く、恐れるに足らない。
だが、今の俺は甲殻が軟化している。
……何かあっては困るな。
そう思案し腕で弾いた。
いや、弾いてしまった。
「やっぱり……甲殻柔らかくなってるんじゃなあい?」
ハンターがニヤリと笑う。
その言葉には確信が込められていた。
……探りだったのか!?
少しの動揺……されど致命的な隙。
俺の少しブレた右拳を……。
『見切り』
隙をカバーするように、左拳でジャブを放つが……。
首を傾け、頭部を掠めるような最小限の動きで回避される。
……マズッ!
突きが放たれる。
刺さった太刀を軸に俺の左拳を駆け上がり高く飛ぶハンター。
その、姿は……。
『兜割り』
頭部から左腕の付け根にかけて迫りくる太刀。
必殺の威力を持った攻撃に俺は……。
「キィィィィィイイイイイイイイイイン!」
……死ねぃ! 粘菌、一斉起爆!
咆哮で答えた。
本当はダメージを受けないよう俺の周辺だけ爆発の威力を調整する予定だったが……。
……こうなりゃあ、派手にいこうぜェ!
ハンターの太刀が頭部を掠め、左腕に到達する。
粘菌が眩く発光し、エリア全体が光りに包まれる。
ほぼ同時。
吹き飛ばされる地面。
宙を舞う岩石。
まるで火山噴火。
******
岩石を押しのけ立ち上がる。
体の負担は……想定内。
少し融解が進行した程度だ。
問題は、ハンターが放った兜割り。
頭部は、咄嗟に傾けたことで何とかなったが……。
……左腕が動かねぇ。
上腕部分がザックリと切り裂かれている。
もう首の皮一枚でぶら下がっているような状態。
対するハンターは……。
どうやら、爆発の衝撃で吹き飛ばされたようだ。
俺から離れた位置で片膝を付いていた。
「ハァ……ハァ……、足元に潜り込めば爆発はされないと踏んでいたんだけどな」
肩で息をしながら立ち上がるハンター。
防具が半壊し、至る所に火傷を負っている様子。
全身からは何カ所も血が滲み出ている。
明らかに重症……にも関わらず、太刀を構え直している。
その瞳は闘志で燃えていた。
……ククッ! 上等だ!
左腕を右手で掴み……引き千切る。
……動かないのなら邪魔なだけだ。
傷口は瞬時に熱で焼かれ、出血はなし。
劈くような痛みも……。
焼けるような痛みも……。
全て……慣れっこだ。
千切った左腕を右手で持ち構える。
武器の様に……。
手数を失った以上、リーチを伸ばし対抗する。
……これが本当の片手武器ってなァ! オラァ!
「本当に……殺り合っていて飽きない、ねっ!」
ガキンッ!
片手武器と太刀の衝突。
技量でハンターに勝つなど不可能。
強靭な身体能力。
そして……片手武器の関節稼働よって軌道が読まれずらいという点で喰らい付く。
……ここが正念場! ガンガンいこうかァ!
片手武器を振り抜く。
その度に溶けた甲殻が宙を舞う。
ブラキステップで回避する。
筋肉が焼け付き、踏ん張りが効きずらくなる。
俺の身体は刻一刻と限界に近づいている。
だが……それはハンターも同じこと。
俺が今も喰らい付けているのが何よりの証拠。
互いに満身創痍。
もはや意地と意地の張り合い。
ハンターがバックステップで距離をとる。
アイテムを使うか。
ハンターは武器、防具、アイテム、そして鍛えた技術……全てを使ってこそだと俺は思っている。
だってそうだろ?
身体能力には埋めようもない差があるのだから……俺とさしで殺り合っているコイツが異常なだけ。
そんなコイツが、無理して戦闘から退きアイテムを使うほどに追い詰められた。
その事実に俺は……歓喜した。
……ま、使わせるかどうかは別だが、な!
片手武器をブーメランのようにぶん投げる。
ハンターに到達する直前で……。
爆発!
片手武器が木端微塵に吹き飛ぶ。
付着していた粘菌を遠隔で起爆させる……まさに肉片爆弾!
跳び退いたハンターを、高熱粘菌で追い立て……。
……いい位置に立ってくれた!
爆発の反作用で距離を詰める。
息を吸い込み、喉に溜める。
右拳は腰だめに構え……。
……今こそ決着を! ハンター!
放つのは……あの技。
「グオオオオオオオオオオオオオオン!」
……咆哮突進アレンジ!
その名は『咆哮拳撃』
「この技は既に見切っているぞ! ブラキ!」
ハンターが構える。
『鏡花の構え』
盾と矛を同時に熟す、一撃必殺の剣技。
だが……。
「ッ!?」
突如、ハンターの背後で爆発。
鏡花の構えが……崩れる。
「この場所は……頭殻が落ちていた……まさか!」
……頭殻爆弾ってなァ! 誘導した甲斐があったぜ!
体勢が崩れた状態でカウンターを放つなど不可能。
……とくと味わえ俺の拳を!
直撃。
そして、乱れ咲く連爆の華。
消し飛ばされるハンターの……。
『左半身』
……体をずらして左半身だけを犠牲に!?
ハンターが笑う。
……とても、とても楽しそうに。
残された右腕が掲げられ振り下ろされる。
太刀とともに……。
力があまり籠っていない、重力落下に任せた振り下ろし。
されど……。
……グウッ。
その切っ先は軟化した甲殻をぶち抜き。
左肩から胸へと突き刺さった。
******
ブラキディオスとハンターの死闘。
先程まで行われていたのが嘘だったかのように……静寂が支配している。
まるで時が止まったかのように……。
その静寂を破るように声が響く。
今にも消えかかりそうな細々とした、されど確固たる意志が込められたそんな声音。
「ハハ……、鍛えた技術に装備、アイテムまで使って……紛れもない私の全力」
ハンター口から血が溢れ出る。
左腕から左胸までポッカリと穴が開き、生きているのが不思議なほど。
「それでも尚……届かない。ありがとう……やっぱり君は、最高、だ……」
言葉を紡ぐ。
自分の好敵手に向けての感謝を……。
ただ、それがブラキディオスに届くことはないだろう。
彼もまた瀕死なのだから……。
そんな言葉を最後に倒れる。
彼に寄りかかるような形で……。
いや、寄り掛かるというより縋るように身を預けている。
まるで自分の居場所を見つけたような安心した表情。
彼女が安堵の息を吐く。
が……。
その息は徐々に、徐々に小さく……。
弱弱しくなっていくのだった。
遂に決着!
次話でモンハン展開は終わりです。
しばしお待ちを。