落ち込んでる青山を余所に階段を駆け上がり、核のある5階にやってきました。
そこでお互い確保テープをもったまま、膠着状態になっている口田と芦戸を発見なり。
芦戸は軽快なステップで口田を躱そうとするが、口田が意外と俊敏な動きで自分と芦戸と核が直線上になるように割り込んでいく。
ベルトのボックスから取り出して、角砂糖を1個頬張る。
さてさて、『アタシが来た』ってね。
ざり……。
「っ! もう来た!」
芦戸が気付いてこっちを見る。
「ナイスよ、口田! 待たせたわね!」
口田もあからさまにホッとした様子。
「さて。2対1よ、ヒーロー?」
「うぐぐ……ピンチ!」
芦戸は壁側に寄り、アタシと口田の両方を視界に入れる動きをする。
口田は核を背にして、腰を落としてじりじりと芦戸との距離を保っている。
アタシが1人で飛び出す前に口田に伝えてたことは『ディフェンス』だ。
バスケとか、カバディとかで使う守備の姿勢ね。
これはタイマンでお互いに決め手に欠ける場合に非常に有効な「時間稼ぎ」になるのだ。
ざっと昨日の個性把握テストでクラスメイトの動きを確認してたけど、やっぱり素のフィジカルなら口田はかなり良い線いってると思う。
芦戸も何かしらの訓練をしてたんだろう。身のこなしは見事なものだった。
だからこそ、口田相手にも肉弾戦の距離感を測りにいったんだろうね。
芦戸の個性は変な液体をばら撒くこと。どういう液体なのかは知らんけど、常に口田の延長線上に核があれば、芦戸は核にダメージがいくことを避けるために個性をバンバン使えないはず。
そうなれば芦戸は口田を身体能力で躱すか確保するかしないといけないけど、それは口田も同じ。
確保テープは今のアタシらにとってはナイフも同様。
口田も意外と俊敏な動きで常に自分と核を直線に入れ続けていれば、芦戸が痺れを切らして個性を使うまで、アタシがさっさと青山を倒して戻ってくるだけの時間は稼げるだろう。
と、そう、思ったわけだ!
つまり作戦成功だぜ。
「もうっ、やっちゃうからね!」
お、芦戸が個性を使い出した。
液体が広範囲に巻き上げられる。
とりあえず避ける。
む……液体が落ちた地面が溶けてる。
あんたもなかなかに殺傷能力が高い個性だわね。
アタシらが避けたことで核前のスペースに空きができた。
すかさず芦戸が駆け出し、核へと向かう。
……そこはアタシと口田の直線上だけどね。
糖分「1g」使用!
「全身」の身体能力「5倍」!
「20秒間」のドーピング!
地面を蹴る。一歩踏み込んだだけでぐんと体が前に出る。
やっぱ全身強化は爽快だ。
「口田、挟み撃ち!」
頷く口田がちらりと見えた。
「くっ!」
芦戸が腕を振り抜いて液体を飛ばしてくる。
それを空中で横に一回転して避ける。
「うそでしょ!?」
へへ、凄いだろ。
口田が芦戸のすぐ近くまで迫る。
テープを広げて、目はぎゅっと瞑って。
なんだおまえ、かわいいな。
芦戸が足を止める。
口田を避けようと、縦の動きではなく横の動きに切り替える。
それが命取りだぜ。
後ろから芦戸を通り越す勢いで急接近し、腰にテープを巻き付ける。
「ヴィランチームWIN!!」
オールマイトの声。
GG。
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口田に「ありがとう」って言われた。
嬉しいわね。
そっちもよくやったよ。
モニタールームに戻ったら結構囲まれた。
アタシの格闘スキルにみんな驚いてたみたい。
あんま褒めんな。ニヨニヨしちゃうだろい。
講評では口田がMVPでした。
アタシは事前に青山のレーザーとか芦戸の身のこなしを知ってたことで、メタ的な対策をしたことがよろしくなかったみたい。
そりゃそうだ。
実戦で初見の相手に対しては何の役にも立たないからね。
「現場での即対応を想定した応用力を身につけるべし」と言われました。
でも戦闘についてはめっちゃ褒められた。あのオールマイトから。クソ嬉しい。
そのあと芦戸とちょっと喋った。個性は『酸』だってさ。かっけえ。
で、そのあと残りのペアの訓練を見て第1回ヒーロー基礎学は終了となりました。
初っ端から濃かったぁ。
昨日が相澤先生のドッキリテストだったから、普通にしっかり授業で終わったのがなんか意外でした。
やっぱ昨日がおかしかったんよな?
教室に戻ったらHR無しで帰って良いとのことだったんだけど、みんな興奮冷めやらぬということで反省会と個性紹介タイムをすることになりました。
みんなの個性と戦闘に対する心構えみたいなのが知れていいね。
切島が爆豪と轟も誘ったんだけど、2人とも帰っちゃった。
爆豪はずっと黙ったまま。轟は無愛想なんかどうなんか分からん。
お前らのことこそ良く知りたかったよ。
「で、砂藤の個性は!?」
「気になるー! やっぱ増強型?」
切島と芦戸が聞いてきた。
「アタシの個性は【シュガードープ】。糖分を使って身体能力の強化ができるわ。筋力以外に五感も強化できるし、倍率と強化時間の調節も結構自由よ」
「おお、シンプルに便利で強え!」
「だから砂糖食べてたんだ!」
「そう。でも接種した以上の糖分を使ったら動けなくなるし、一度に大量の糖分を摂ってもオーバードーズしちゃうから、管理は面倒かな」
「反動もシンプルに危ねえ!」
思考力も強化できることは伏せる。
これは両親と学校にしか言ってない。
色々勘繰られるのも面倒だしね。
学校側には「思考力の話はしないでください」って入学前にお願いしといた。
あくまで『お願い』だけだけど特に相澤先生から何も言われてないし、通ったということで良いだろう。
まあ別に学力試験とかにはもちろん個性使ってないし、そもそも個性反応を検知されるから使えないから何の謂れもないんだけど、わざわざ言うことでもないかな。
お、ドアが開いた。
スイーっと登場したのはアタシ的クラス内問題児その2の緑谷くん。
その1は爆豪。
昨日と今日のたった2日でお前らだけ目立ち過ぎだもん。
「おお緑谷来た! おつかれ!」
そう言って切島が緑谷に駆け寄る。
アタシも行こっと!
「何喋ってるかわかんなかったけど、アツかったぜおめー!」
「よく避けたよー!」
「一戦目であんなのやられたから、アタシらも気合い入ったわよ」
上から切島、芦戸、アタシね。
困惑している緑谷に、それぞれ自己紹介を畳み掛けていく。
「アタシ、砂藤」
「わわ……」
顔赤くなってる。
視線がアタシの顔と胸を高速で行き来してますぜ。
まったく、見るなら上鳴くらい上手く見るんだよ?
アイツのさりげなさ、15歳のそれじゃないから。
お、麗日だ。
緑谷の怪我の心配してる。
そういえばコイツボロボロやん。
あ、爆豪のこと聞いて駆け出していった。
「あの2人、どういう関係?」
麗日に聞いてみる。
「あ、幼馴染なんやって。仲は悪いみたいやけど……」
「ふぅん」
ちょっとアタシも行ってみよ!
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校門前なう。
お、お二人さんいるじゃ〜ん。
「氷の奴見てっ! 敵わねえんじゃって思っちまった……!!」
うん?
「ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった……!」
なんか怒鳴ってる?
ちょっと隠れよっと。
「黄色女の体術をカッコいいって感じちまった……!!」
アイエエエエ!?
って何で俺くんが!?
アタシ!? アタシのことよね!?
あんま何言ってんのか分かんないけど、確実に何か言ってるわよね!?
あの時コスチュームが黄色い女はアタシだけだったわよね!?
「クソが! クソ! なあ!! てめェもだ……! デク!!」
ちらりと覗いてみる。
「こっからだ!! 俺は……!」
……ああ。
アタシの視線の先。
西陽に照らされる、涙を浮かべた爆豪の顔が、不思議とはっきり見えた。
「こっから……!! いいか!?」
その目は、その表情は。さっきまで落ち込んでいたヤンキーのそれではなく。
「俺はここで、一番になってやる!!!」
とくん。
……え?
「俺に勝つなんて、二度とねえからな!! クソが!!」
えぇ〜、ウソ……。
「爆豪少年〜!」
なんかオールマイトが飛んできたような気がするけど、今それどころじゃない。
今アタシの顔、絶対に超赤くなってる。
アタシ、マジで……?
……いや、まあ、そりゃ、なんか挫折したらしいヤンキーが立ち直って、あんなカッコいい顔つきになってたら、それはまあ見直すっていうか。
よく思い返してみれば綺麗な顔立ちしてるし。
個性も性格も主人公っぽいなぁとは思ってたし。
なんかまあ、子供っぽいところはかわいいかもなとか思っちゃってたし。
……でも、そっかぁ。
そうなのか。アタシ。
はい。
人は自分と似ている人を好きになりやすいらしいので、砂藤が女の子だったら爆豪派閥の誰かに惚れそうだなと思いました。
でも切島には芦戸がいるし、上鳴には耳郎がいるので。
そうなったら爆豪かなと。瀬呂はドンマイ。
8年後にベストテンにすら入れてない原作爆豪を見て悲しくなったので、もし2人がくっつくことがあれば将来は愛妻家な一面と多少柔らかくなった性格とで3位くらいにまでは上がってて欲しいです。
惚れないルートもあるのでご意見あればそっちにします。