初夏の陽気が、旧校舎のグラウンドをじりじりと焼き始めていた。
体育の授業、烏丸による「暗殺訓練」が幕を閉じた。生徒たちは汗を拭い、地面に座り込んで呼吸を整えている。そんな中、連は相変わらず呼吸一つ乱さず、タオルで首筋を拭いながら、脳内のエボルトと「効率的な肉体の動かし方」について議論していた。
烏丸「……さて、訓練の締めくくりに一つ連絡がある」
烏丸が、その鋭い視線を生徒たちに向けた。
烏丸「来週、君たちは二泊三日の京都修学旅行に行く。だが、これはただの観光ではない。防衛省は京都の各地にプロの暗殺者を配備した。君たちの役割は、班ごとの自由行動ルートを綿密に練り、奴を絶好の『狙撃ポイント』へと誘導することだ。土地勘、人混み、遮蔽物……すべてを考慮して、最高のルートを提示しろ」
連「修学旅行で暗殺……。やっぱりこの学校、ゲームの難易度設定がおかしいだろ」
連が小さく零すと、隣にいた業がクスクスと笑った。
業「いいじゃない。京都の風情ある街並みが、ターゲットの返り血で染まるなんて……想像しただけでワクワクするよ」
連「……お前、相変わらず悪趣味だな」
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着替えを終え、エアコンの効きが悪い教室に戻ると、教室内は「誰と同じ班になるか」という、ある種テストよりも残酷なスクールカーストの交渉の場と化していた。
連は窓際の自分の席に座り、修学旅行のしおりを適当にパラパラとめくった。
連(京都、か……)
連にとって、京都は「観光地」ではない。母親である玲奈が経営する「暁不動産」は全国に展開しており、当然、京都の超一等地の開発や視察にも連は何度も同行させられてきた。
「連、将来この土地をどう攻略するか見ておきなさい」と玲奈に連れ回された記憶が、連の頭の中には詳細なマップデータとして保存されている。
そこへ、一人の少年が近づいてきた。
渚「……あの、業君、連君」
潮田渚だ。その後ろには、茅野カエデ、杉野友人、そして神崎有希子と奥田愛美が控えている。
渚「僕たちの班でよかったら、一緒にどうかな?」
業は椅子をガタリと鳴らして立ち上がった。
業「いいよ。渚君と一緒なら、面白いことが起きそうだしね」
渚「連君も、どうかな?」
渚が期待と不安の混じった視線を向ける。連は手元のしおりを閉じ、紫の瞳を上げた。
連「……まあ、いいぜ。俺も余り物で組むよりは、知ってる奴らと組んだほうが効率がいい」
その瞬間、杉野が少し不安そうに渚の肩を叩いた。
杉野「おい渚、マジかよ? 業と連を同じ班にするなんて、ダイナマイトに火をつけて持ち歩くようなもんだぞ。旅行先で喧嘩でも始めたら、京都の街が消し飛ぶんじゃないか?」
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杉野の懸念は、E組の生徒なら誰もが抱く正論だ。椚ヶ丘の二大問題児が揃えば、引率の烏丸ですら胃を痛めるに違いない。
だが、業は不敵な笑みを浮かべ、ポケットから数枚の写真を取り出した。
業「大丈夫だよ杉野。……『事前の手入れ』は済ませてあるから」
そこに写っていたのは、他校の不良たちが、無惨に、しかし芸術的なまでに「成敗」され、屈辱的なポーズで縛り上げられている姿だった。
業「地元の顔役たちには、挨拶(物理)を済ませてある。旅行中に俺たちの邪魔をする奴は、京都の鴨川に沈む覚悟ができてる連中だけだよ」
茅野「……うわ、真っ黒だ。業君、お前それ完全にアウトだよ」
茅野が引きつった笑顔でツッコむ。
連「……ハッ。業、お前は相変わらず手が早いな」
連が鼻で笑いながら、椅子の背もたれに寄りかかった。
連「だけどよ、暴力なんてのは最終手段だろ。もっとスマートに、”詰み”の状態を作ってやればいいんだよ」
連の言葉に、奥田や神崎が「スマート……?」と首を傾げる。
連は窓の外、遠くの景色を見据えながら、平然とした口調で付け加えた。
連「俺の家は不動産会社だ。京都の主要な通りやビルのオーナー、開発利権……その半分近くに『暁』の名前が絡んでる。もし京都で俺たちに喧嘩を売る奴がいたら、そいつの親の職場も、住んでる家も、明日には更地になるようにババアに頼んどくよ」
渚「…………え?」
渚の動きが止まる。
連「最悪の場合、家を失くすとか脅せばいいもんな。ホームレスになりたくなきゃ、大人しく観光案内でもしてろって言えば、大抵の奴は黙るだろ」
連の言葉には、怒りも、冗談の気配もなかった。
それは、圧倒的な経済力を背景にした「事実」の提示だった。暁不動産の御曹司だからこそ言える、物理的な破壊よりも残酷な切り札。
神崎「……れ、連君」
杉野が震える声で言った。
杉野「お前……業よりタチが悪くないか?」
奥田「え、あ、あの……連君、それは流石に、やりすぎというか……」
奥田愛美が、化学実験で爆発が起きた時のような怯えた顔をしている。
神崎有希子も、いつもの清楚な微笑みを凍りつかせ、茅野カエデにいたっては「御曹司パワー怖い……格差社会エグい……」とブツブツ呟きながら後退りしていた。
業「……あはは、連。それ最高だね。俺が殴って、連が社会的に抹殺する。最強のコンビネーションじゃん」
業だけが、嬉しそうに連の肩を叩いた。
連「……まあ、あくまで脅しだ。実際にやるのは面倒だしな」
連は肩をすくめ、再びしおりを開いた。
「京都の土地勘ならある。視察で嫌というほど歩かされたからな。殺し屋の配置、観光客の動線、全部計算に入れてやるよ。……渚、神崎。お前らは行きたい場所をリストアップしとけ。俺が最短・最効率の『殺害ルート』を組んでやる」
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ドン引きしていたメンバーたちも、連の「圧倒的な土地勘」と、業の「暴力的な護衛能力」という実用性には抗えなかった。
渚「……分かったよ。じゃあ、このメンバーで行こう。……なんだか、修学旅行っていうより、敵地への強襲部隊みたいだね」
渚が苦笑しながら、名簿に名前を書き込んでいく。
【班員:潮田渚、茅野カエデ、杉野友人、神崎有希子、奥田愛美、赤羽業、暁連】
殺センセー「ヌルフフフ……! 賑やかな班になりましたねぇ!」
いつの間にか背後に現れた殺せんせーが、顔をピンクの縞模様にして覗き込んできた。
殺センセー「連君、京都の美味しい和菓子屋さんの情報も、ぜひルートに入れてくださいね! 先生、マッハで買いに行きますから!」
連「……ああ。ババアが行きつけの、一見さんお断りの老舗も予約しといてやるよ。……あ、お代は殺せんせーの給料から天引きな」
殺センセー「ヌヤッ!? 先生、破産してしまいます!!」
夕暮れの教室に、騒がしい声が響く。
連は、自身の内に宿るエボルトが『ククク……京都か。古い歴史の街を、俺たちがどう蹂躙するか見ものだな、相棒』と囁くのを聞き流した。
連(修学旅行、か……。まあ、たまにはリアルなフィールドでのオープンワールド・ゲームも悪くない)
暁連は、窓から差し込む夕陽を浴びながら、既に脳内マップを「京都モード」へと切り替えていた。
そこには、暗殺という名のミッションを完璧にクリアするための、無数のルートが浮かび上がっていた。
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