幻想を謳う孵卵器   作:紡縁永遠

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菓子符

 さてさて、久しぶりに神浜に連絡をしますか。神浜へ、結界に関しては放置でいいが、情報アップデートができないのが問題なんだよな。彼処ほどのんびりできる場所はないが、彼処はあそこで問題なんだよな。

 なんせ、事実を知っている奴が何人かいるんだから。

 

 「繋がんねぇな、菫子の奴、幻想郷で連絡忘れてんじゃねえのか?」

 「幻想郷の永住権を得たと数ヶ月前に言ってこっちに来たじゃない」

 「あ?そうだったか?」

 「まさか、わざわざ忘れたの?」

 「悪いかよ、紫。だいたい、まともな魔女を引き抜いていったのはお前等だろうが」

 「それを幻想としたのは貴方でしょう」

 「そうだったな、」

 「役者、揃うといいわね」

 「なら、もう覗くんじゃないぞ、」

 

 宇佐見菫子、魔法少女ではないが先天的に能力を持っていた少女、今までは神浜の情報収集を手伝ってもらっていたが、最近幻想郷の永住権を手に入れたので送ってやった。まさかその部分だけ忘れていたとは、仕方ない諦めて、見滝原に集中するか。

 幻想郷は忘れ去られし者たちの楽園、舞台に上がらず、舞台にすら忘れ去られた世界、こっちに干渉しすぎれば舞台そのものが不具合を起こす可能性がある。そういった意味では怪異などの幻想は舞台に上げるべきではないのかもな。

 ん?そうか、今日か待ってろよ。〈運命を操る程度の能力〉これにより、弔いが可能となっている。マミを起こすか

 

 「起きろ、マミ時間だぞ」

 「起きてるわよ、ねぇ、まどかさん達とこれからも関わっていいかしら」

 「好きにすればいい、子供なんだ背伸びし続ける必要はない。たまには同じ視点で遊べばいいさ」

 「……ありがとう」

 「それに、何をしようが鹿目まどかとは関わることになるだろうよ」

 「それってどういう……!」

 

 俺は、いつもの兎みたいな奴とは別に、人型になってマミを見る。動物形態では、左耳?でいいのか?が、千切れてなくなっているが、この人型もそれを受け継いでるのか、左耳は欠けていて。右のサイドテール、バランスを取ろうと左もやろうとしたが何故が結べなかった。邪魔ったい。身長は137.6とかなり小さい。それでもこの姿を見せることの意味をマミは知っている。

 

 「なぁ、この世で一番おいしいチーズケーキを用意してくれるか?」

 「必要なこと?」

 「愚問だな、最後くらい希望を見せてやりたいだろ」

 「……そう、分かったわ、」

 

 用意するのはチーズケーキと、後は斬刀と千刀、いや白楼剣と楼観剣でもいいな。手入れよし、錆、刃毀れなし。

 〈剣術を扱う程度の能力〉よし、〈空を飛ぶ程度の能力〉よし、気配遮断よし。後は時間になるのを待つだけだな。

 今度はちゃんと食べさしてやるから。

 マミの部屋で待つこと数時間、日が傾き茜色に染まり始めた頃に立ち上がる。

 

 「……行くか」

 

 目指すは見滝原病院、かつて俺が契約し魔女に成りきれなかった少女との出会いの場所であり、別れの場所。そして、今現在、鹿目まどかと美樹さやかがいるはずだ。お守りを……持っていないな、昨日の今日で忘れたのか?いや、昨日言い忘れたか?言っていたはずだよな、とりあえず、殺すか孵卵器。

 

 

 「ねぇ、あれ、」

 「うん、グリーフシードだよ、」

 「インキュベータ、」

 「やっぱりそっちを知っているんだね、でも、お守りを持っていないのはよかったよ、あれがあると僕らは入れないからね、神浜のあれよりも厄介だ」

 「何が目的なの?」

 「何って、魔法少女を増やすことが僕たちの目的だよ、だから、僕と契約して魔法少女になってよ」

 

 この期に及んでまだ契約を促すか、まぁそれがお前達の正解で、正義であることは知っているし、理解していた。でもそれは人にとっては悪であり、間違っている。

 

 「鈍符(にびふ)〈零閃編隊・二機〉」

 

 シャリンシャリン

 

 スキマ空間から柄を出して、鍔鳴りが二回鳴る。

 斬刀・鈍、

 ありとあらゆる存在を一刀両断にできる、鋭利な刀。切れ味に主眼を置いた刀であり、特殊な刀身によって物質の分子結合を破壊し、文字通りあらゆる物質を一刀両断することができる。

 因幡国下酷城城主の浪人。居合い抜きの達人が持つその技は公共の場であろうと、振れる速さにある。

 人間形態の気配遮断能力と合わさり、数瞬斬られたことに気づいていなかった。

 

 「持っておけと、いったはずなんだがな……ここから離れろ、それが今のお前達の役割だ」

 「え?」

 「もしかして、幻夢……さん?」

 「さんはいらねぇ、そして鹿目まどか、正解だ。俺は幻夢、弔いに来た。それだけだ」

 

 ここから先はあまり良いものではない。壊れてなければ戻ってこれるが、基本的に魔女に成った時点で魂は崩壊する。願いを叶えたとしても戻ってくるのは死体だけ、ヒビの入ったソウルジェムと物言わぬ外傷がない死体。最後まで説明していないのに、見せる必要はないだろう。

 

 「ねぇ、」

 「なんだ、美樹」

 「今日、マミさんから聞いたんだけど、まどかとは確実に関わるってどういう事?」

 「俺より暁美に聞け、そっちの方が詳しい……それで何時までここにいるつもりだ」

 「ついてく、」

 「化け物と戦うことに恐れ逃げたガキが何を言ってやがる、何を思うも自由だが、臆病者は切り捨てる、それだけだ」

 「それでも、なんであたし達が関わっちゃだめなのか、その理由を知らないままで引き下がりたくはない!」

 「私も、なんであの夢を見たのか、なんで私は関わることになるのか、それを知りたい」

 

 昨日とはえらい違いだな、はぁ、なんで俺はこの目に弱いんだか、やっぱり此奴ら被害者だけじゃ終わらんな。

 

 「……地獄だぞ」

 「それでも行く」

 「被害者じゃなくなるんだぞ、」

 「関係ない」

 「……分かった、ならばついてこい、この先どれだけの地獄があろうと、お前等が目をそらすことを許さない。役者として決まったお前等は舞台から降りることが死を除いてなくなった」

 

 マミはまだ来てないが、これ以上は待てないな。結界が広がる。やはりと言うべきか、医療器具とお菓子まみれの結界、そこにチーズに類するものは無い。結界内に流れる呪文のような歌も、チーズを求めている。

 

 チーズ! チーズ! チーズは どこよ?

 

 チーズ! チーズ! わたしは ここよ?

 

 チーズ! チーズ! おねがい ひとつ

 

 チーズ! チーズ! チーズを さがせ!

 

 Charlotte

 

 「チーズ! チーズ! チーズはあとで……

 

 望む希望は、手向けの花に、

 

 振りまく絶望、これにて終い、

 

 鎩符(さいふ)〈地形効果・千刀巡り〉」

 

 千刀・鎩

 いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀。数の多さに主眼を置いた刀であり、「千本で一本」と称され、全く同じ形状で全く同じ性能の刀が千本存在する。

 出雲国三途神社の長。帯刀せずに相手の刀を利用して攻撃を仕掛ける奪刀術・千刀流の使い手が所持していたこの刀は刀の有無にとらわれない、そこにあれば真価を発揮する。

 既にスキマにて、結界内に満遍なく散らされた二百の刀、残り八百は使わない、狭すぎるからだ。

 

 「あれが…」

 「お菓子の魔女名をCharlotte、今回弔う相手だ」

 「え?」

 「鎩符〈二刀・十文字斬り〉ソウルジェムの名を聞いた時点で考えろ、俺の知り合いの中にはソウルジェムの響きとインキュベータという名前だけで俺たちがやっていることを九割理解した奴がいたぞ」

 

 弔う相手が魔女ということに対する疑問に説明しながら、地面から引き抜いた二刀の鎩で十字に切裂く。幻想となった刀と剣術ではあるが弾幕はでない。当たり前だこれは変体刀は歴史改変が可能であり、元の歴史に戻すにあたり幻想にすらしてはいけないのだから。

 

 「安心しろ、そのレベルにまでならなくたっていい、あれは天才と呼ばれる存在が努力を惜しまずしてたどり着ける領域だ。

 「凡人のお前等が辿り着ける領域じゃない…鎩符〈一刀・一文字斬り〉マミ、まだか、」

 

 今度は一刀で横に一を書くように切裂く。

 既に第二形態ともとれる蛇のような姿にかわり、こちらにかみついてくる。何度か切ってはいるが、物理特化の変体刀は効果が少ない。斬刀を使えば殺せるが、それでは意味がない。願いを叶えるだけ叶えて、それから判断する。

 

 「おまたせ!」

 「遅い、

 

 チーズ! チーズ! チーズはここよ、

 

 さぁ、たべろ、魔女としての生涯、最後の晩餐だ」

 

 口のなかに、マミが作ってくれた現状用意できるこの世で一番おいしいチーズケーキを放り込む。

 ベヒのような身体はしぼみ、現れたのは白髪の少女、鼓動は……?!ある!驚いた、まさか魂が崩壊せずに残っていたのか。始めてだよ、戻ってこれた少女は。

 

 「まって、どういうこと?」

 「戻せるの?」

 「そのまま、見たとおり、魔女とは魔法少女が絶望した姿、ソウルジェムとは魔女を孵化させるための無精卵、そしてインキュベータは孵卵器と言う意味だ。

 「ここに来る前に、再三の警告をした。魔法少女と魔女、そして孵卵器の物語から、舞台からお前等は降りることができない、たとえ魔法少女になろうがならなかろうが、それがお前等が選んだ道であり、加害者へとなったお前等ができることだ」

 

 白髪の少女をおんぶして、病院から離れる。明らかにバランスは悪いけど、同じ髪色ならば面倒見のいい子と捉えられるはずだ。

 まどかとさやか、そして事情を知っているほむらにも説明を開始する。これから進む、ワルプルギスの夜を軸とした舞台、魔法少女の脆く儚く魔性の舞台の開始、いや、既にまどかが孵卵器に合っていた時点でこの物語の歯車は回っていたのかもしれない。

 長い会話に、背中の少女が身じろぎをする。

 

 「…ン……、ゲンム?」

 「起きたか?よく気づいたな、おはよう、なぎさ」

 「はいなのです……でも、もう少し寝るの…で……」

 「ふっ、それじゃぁマミ、背負ってくれ、獣形態に戻る、この姿を孵卵器に見られるのはまずい」

 「はいはい、分かったわよ、戸籍とかは何とかしなさいね」

 「わかってる」

 

 マミになぎさを任せて、俺は獣形態になる。今から役所に行って、ハッキング、及び戸籍改ざん、洗脳をして施設育ちとして百江なぎさを今も生きている人間とする。流石に勉強とかさせないとな。教育を受けさせる義務ってな。

 

 「待ちなさい」

 「来ると思ってたぜ、暁美、それで聞きたいことは魔女から魔法少女に戻す方法か?」

 「ええ、」

 「魔法少女に成るには願いを叶えなければならない、願ったから魔法少女に成る。これを前提として、もう一度願いを叶えてやればソウルジェムは復活する」

 「じゃぁ!」

 

 やっぱり喜ぶか、けど此奴に関しては希望を与えちゃならんな。

 

 「ただし、少女達の魂がそこに残っていればな。肉体は魔女になってから数日のうちに倒せば帰ってくるが、魂はそうもいかん。それになぁ、死者蘇生や怪我の回復、生きたいという願いに対してはこの方法は使えない。当たり前だろう。怪我を直すのに、怪我をさせてしまったらその時点で希望ではない。どう頑張ってもお前は誰も救えねぇよ、そう願っちまったんだからな」

 「貴方に何がわかるの!」

 「わかるわけねぇだろ、人間同士だって理解できないことだぞ、俺にわかるはずがねぇ」

 

 心を読んだってわかんねぇことだ。だいたい、

 

 「絶対的な絆なんて、考えてみたら結構怖いもんだぜ。それこそ時を超えられるほどにな」

 「なっ?!」

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