ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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乙女ゲー要素があるので初投稿です


Part 11

 ホッグズ・ヘッドに行くことは禁止されていませんが、まず誰も行こうとはしない場所です。だってよく考えてくださいよ。三年生になって、ちょっとだけ色恋とか特別な関係が気になってきて、そこで相手から連れてこられた場所が埃っぽいどころか埃の上を歩くような、臭いがきつい場所だったら酷いと思うじゃないですか。

 

 まあだからこそ、ここに来るような学生が多いとフラグが立ってGG値が上がりやすくなります。店主のアバーフォースは地獄耳ですし、ここには耳をそばだてている悪人がわんさといます。闇ルートに進む場合はここを中心に密猟クエストとかを受けることになるのですが、初心者がやらかしがちなのは正体を明かしてしまったり店内で詳しい話をすることですね。

 

 ここに情報が集まるよう、アバーフォースは意図的に色々なものを見逃しています。その点では兄とあんまし変わらないんだよな。こいつもこいつで面倒なやつである。

 

 とはいえ、ここにトムを呼ぶのはそう難しいことではありません。「裏側を見せてあげる」と言って時間を指定しておくだけです。一応彼は友人とか同級生とか先輩とかからホグズミードの誘いを色々と受けているのでそちらの方を先に片付けてもらいましょう。まあ一緒に過ごした時間が長くてしっかり関心を向けられているヴェルダンディと違ってそんなトムの顔しか見ていない有象無象に負けるはずがないんですがね!

 


 

 今日は、ホグズミードにホグワーツの三年生が初めて来る日であった。それはホグズミードの店の住人たちにとって年に一度の特別な日であったし、ここでお得意さんを作ろうとちょっとしたサービスや特別な体験を、と力を入れる人も珍しくなかった。

 

 だが、この寂れたパブではそのような大通りの喧騒とは無縁であった。今日来ているのは盗人、売人、密輸業者。つまりは、いつもの悪人のたまり場に過ぎない。

 

 きしむ扉が開く音で、グラスを磨いていたアバーフォースは来店者にちらりと視線を向けた。背が低いが、子鬼(ゴブリン)屋敷妖精(ハウスエルフ)のような小柄さではない。

 

 ホグワーツの少女が迷ってやってきたにしては、深く被ったフードというここの事情をわかっている服装をしていた。ここでは相手の顔を見ることも、相手に顔を見られることも避ける。そういう場所だからこそ、アバーフォースはその店主として多くのものに触れることができていた。

 

「店主、バタービールを一つ」

 

 声は低くしているのだろうが、それでも若さがあった。おそらくは裏側に繋がりにある家が出身のホグワーツの学生か誰かだろう、とアバーフォースは当たりをつける。

 

「あいよ」

 

 唸るように言ってアバーフォースは古い瓶を取り出し、カウンターに座った少女の前にドンと置いた。

 

「今日は、姐さんはいないのかね?」

 

「お前には関係のない話だ」

 

 シックル銀貨二枚を受け取りながら、アバーフォースは少女に返した。ナギニはこの頃、起きている間であっても人間の姿を保つことが難しくなっていた。地下室で寝ているか、騒いでいるか、あるいは丸まって呟いているか。アバーフォースには彼女に寄り添うことはできず、ただ一人でいることのできる場所を提供するのが精一杯だった。

 

「……彼女に、会わせたい人がいる」

 

 その言葉に、アバーフォースはグラスを拭っていたぼろ布を止めた。

 

「事情によっては、お前をここから追い出すぞ」

 

 不機嫌をあらわにした顔と声色で、アバーフォースはフードの少女を睨みつけてグラスを差し出した。

 

蛇語使い(パーセルマウス)だ」

 

「……そいつは、どんなやつだ」

 

「会わせてみればいいだろう、彼女は自分で相手を見分けるだけの分別がまだあるはずだ」

 

 そう言って少女は、汚いグラスに自分でバタービールを注ぎ、一口に呷った。

 


 

 何度やっても怖い男ですね。基本的に誰にでも無愛想ですが、ナギニはちゃんと彼の優しさを受け取っています。それはそれとしてそんなお姉さんをこんな場末のパブで働かせるんじゃないですよ。三本の箒みたいなもっとこう、雰囲気のいい学生のデートスポットにされるような場所で働いたほうがナギニさんにとってもいいと思いますよ。それはそれで精神的ダメージがある? そうかも。

 

 ちなみに今の彼は妹と息子を実質的に殺したグリンデルワルドに対する恨みが高いので下手に信奉者(アコライト)ムーヴをすると殴られます。そのあたりの遠慮とかは特にしてこないです。

 

 逆に言えば彼の庇護下に入るとそれなりに便利なのですが、その場合はダンブルドアからの友好度が基本的に低く、闇への誘惑イベントも重なるので、うまく灰色の領域に居続けるのにはかなり複雑なプレイングが導入されます。ギャンブル系の技能を持ってるなら小遣い稼ぎには良いスポットなんですがね。

 

 後は時間を飛ばしてトムが来るのを待って、一緒に地下室へ向かいましょう。バタービールで酔わないようには注意。

 


 

 惨めな記憶が蘇っていた。

 

 痛みと罵声。周囲からの視線。それでもなお気品と意地を、と耐えていた過去。

 

 そこで出会った青年。共有できた孤独。それでも、呪いは着実に進行していた。

 

 気がつくたびに、人間らしく考えることのできる時間が失われていく。写真を頼りにしなければ、あれだけ自分がそばにいて、あるいは自分のそばにいてくれたはずの男も思い出せなくなっている。自らの身体に走る違和感から、彼女は身体を壁や床に打ち付けるようにしていた。

 

動物もどき(アニメイガス)……いや、その条件だと血の呪い(マレディクタス)か?」

 

「女性血統特有とすると血の呪い(マレディクタ)と言ったほうがより正確ね」

 

 若い男と女の声が、話しながら部屋への階段を降りてくる音が扉の先から聞こえた。ああ、柔らかそうだという衝動を、彼女はかろうじて残る何かで抑えつける。もしそう感じてしまうのなら、あの時にあの人が愛してくれた自分がいなくなってしまう、という混乱にも似た意識の中、彼女は扉が開けられるのを待った。

 

「……これ、が」

 

 入ってきた少年が呟いて、持っていた手燭(チャンバースティック)を掲げた。彼女は二人の前に自分の身を晒していた。彼らの小さな手では掴めないほど太い胴。開けば彼らを丸呑みできるほどの大きな口と、そこにある牙。

 

 二人が蛇となった彼女を見るのと同じように、彼女も少年と少女の姿と熱を感じていた。そしてその少女が、憎むべき相手であると、その理由も思い出せないままに直感した。

 

 身体の痛みは、攻撃を止める理由にはならなかった。背筋の筋肉を縮め、そして一気に解放して飛びかかろうとした。

 

()メロ!

 

 少年の声が、地下室に、そして彼女の思考によく響いた。それは彼女の思考を、理性を一気に引き戻す。次に襲ってきた身体の痛みに彼女は耐えられず、持ち上げていた身体を下ろした。

 

……何者ダ 少年

 

 そう尋ねると、少年の顔には驚きが走った。

 

話ガ 解ルカ?

 

エエ、アナタハ 蛇語遣イ ナノネ

 

僕ハ リドル、トム。リドル ダ

 

(リドル)……

 

 そう言われて、ナギニは彼の隣に立つ少女を思い出した。二年半ほど前、ホッグズ・ヘッドにやってきた人物だ。少しだけ成長してはいたが、それでもあの時の得体のしれない面影は変わっていなかった。

 

 少しずつ、彼女の中に人間らしい感覚が戻ってきた。腕の存在が、二本の足で立つ感覚が、さっきまでとは異なる生物としての振る舞いが、彼女の姿を変えていく。とぐろの中から布が現れ、伸びていく彼女の四肢に女給の服の形を取っていく。

 

「……本当に、変身するんだ」

 

 少年はさらに驚いたように彼女の顔を見ていた。似たような視線は何度も投げつけられてきたはずだったが、不思議とナギニはトムから向けられるその目は悪くないな、と感じた。

 

「……お久しぶりですね」

 

 そう言って、ナギニは少女の方を見た。

 

「ええ、ナギニ様。ホグワーツ三年生をしております、ヴェルダンディ・ルストランジュと申します。こちらはトム・リドル。私の友人ですわ」

 

 フードを外し、ヴェルダンディは言った。トムは二人の様子を見て、初対面ではないことはすぐに分かった。ナギニの言葉には嘘がなく、そしてこの場で語りたくないことが多くあるのだろうということはトムにはすぐに読み取れた。

 

「……まさか、ヴェルダンディ。君が蛇語(パーセルタング)を使えたのは」

 

「教わったからです。トムのように生まれつき、というものではありませんわ」

 

 その時に、トムは自分が騙されていたことに気がついた。あのコンパートメントの中では気がつかなかったが、彼女が話せる蛇語はほんのわずか、場合によっては一言だけだったのかもしれない。それだけで自分の行動を封じ、あの忌まわしい行動を引き起こさせ、その上で周囲が屈辱的な誤解をするように誘導したのだ。

 

 トムは深く息を吐いて、吸って、むせた。埃と獣の臭いがする。こんな場所で息をするのは苦痛だったが、出ていくつもりはなかった。

 

「ナギニ、仕事はできるか?」

 

 上の方からアバーフォースの声が聞こえた。

 

「ええ、大丈夫。あまり激しくは動けないけど、ちょっとした手伝いぐらいであれば」

 

「なら休んでおけ」

 

 ぶっきらぼうなアバーフォースの言葉へ、ナギニは呆れたように、しかし小さく笑いながら息を吐いた。

 

 地下室からの階段をナギニは少しふらつきながら上る。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 トムの差し伸べた腕に、ナギニは体重をかけた。

 

……ありがとうね、リドル

 

 ヴェルダンディには聞こえないように、ナギニは小さく呟いた。

 

 トムに支えられて一階に戻ると、机の上に温められたバタービールが三杯出ていた。

 

「六シックル」

 

 そう言いながら、ヴェルダンディは銀貨をレジの上に置く。しかし引き出しに吸い込まれたのは二枚だけだった。

 

「一人分はおまけしておいてやる」

 

 無愛想にアバーフォースはヴェルダンディに告げた。少なくとも、トムがそう悪い男ではないということをアバーフォースは見抜いていた。

 

 確かに、彼は闇の才能があるのだろう。彼は周囲を油断なく観察していたし、今でも店主であるアバーフォースへの警戒を解いていない。だがナギニには手を差し伸べていたし、ヴェルダンディとは距離がありそうだった。

 

 そしてこの時には、アバーフォースにはヴェルダンディが信奉者(アコライト)ではなくとも、グリンデルワルドに繋がりを持つ人物であることは察せられていた。レストレンジ(ルストランジュ)という家名、いつのまにかナギニの部屋にあったアウレリウスの写真、そして隠そうとしている何か。それはおそらく、ナギニがヴェルダンディへと蛇語(パーセルタング)を教えたという事実である、というところまでアバーフォースは見立てをつけていた。

 

 それについて、アバーフォースはナギニを問い詰めることはできなかった。彼にできるのは彼女が自分がいてもいいと思うだけの場所を与えることが精一杯だった。少なくともここにいる少年のように、彼女の辛さを共有するということはできなかった。そこで話されている低い、シューシューという音の意味はわからなかったが、それが悪い言葉ではないことは把握できた。

 

「おい、あまり他の客をじろじろと見るな。そしてこれ以上飲まないなら退店しろ」

 

 そう言ってアバーフォースは隅の客の机を叩きながら、久々に優しい表情をしていたナギニを横目で見た。

 


 

 これって寝取られでいいですよね? 同じ屋根の下で寝て、一緒に生活をしてきたのに、そんな年上のお姉さん相手に一気にいい関係になっちゃうんですか? トム、これだからお前はよ……。

 

 ちなみに内部属性的に言いますとトムは年上に対して強く、年下に対して弱いという補正がかけられています。史実でも彼が攻略したのはヘレナ・レイヴンクロー、ヘプジバ・スミス、そしてナギニという年上が多いですね。一方でベラトリックス・レストレンジに襲われたりしています。

 

 つまり死喰い人の中にはナギニとベラトリックスの三角関係が……トム・リドルってサークルクラッシャーの素質があるのでは?

 

 とまあ、こうやってトムとナギニを接触させると高確率でいい感じになります。史実だとトムがナギニと出会ったのはもう少し後になって、互いにもう戻れないところまで行き着いてしまったからこそ、ある意味ではお似合いになったんですがね。

 

 ちなみにこの二人の会話は原則として小声の蛇語で行われるのでヴェルダンディからは把握できなくなります。どうせ彼女の悪口とか共有しているので別にいいんですけどね。どうせヴェルダンディさんは当て馬キャラですよ。

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