空を駆け 影に潜みて 敵解つ   作:エルンストレーム総統

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第18話

 

 

 

 

 

 

 エルヴィン・スミスの演説が終わった。

 

 

 その後、訓練兵たちは一人、また一人と去っていく。

 

 

 俯いたまま歩く者がいた。拳を握り締め、悔しそうに歯を食いしばりながら去る者がいた。膝が震え、隣の訓練兵に肩を支えられながら、その場を離れる者もいた。

 

 

 カイは、その背中を黙って見ていた。

 

 

(まあ、責めることは出来ないな)

 

 

 巨人がいる壁外へ向かう。

 

 

 自分の意志で、あの『地獄』へ進む。

 

 

 トロスト区で巨人を見た。仲間が食われる姿を見た。血と肉と蒸気の匂いを嗅ぎ、悲鳴を聞き、立体機動装置のガスが尽きる恐怖も知った。

 

 

 その上で、調査兵団を選ばないことを臆病だと笑える人間は、少なくともカイではない。

 

 

(普通は行かない。死にたくないなら、尚更だ)

 

 

 死にたくない。

 

 

 生きたい。

 

 

 安全な場所へ行きたい。

 

 

 その願いは、人間として真っ当なものだ。

 

 

 むしろ、自分から死に近い場所へ向かう者たちの方が、余程どうかしている。

 

 

(調査兵団は、やっぱり異常者の集まりだな。自由、人類の勝利、壁外への希望。言葉は綺麗だが、実態は巨人のいる場所へ自分から進む連中だ)

 

 

 カイは、去っていく訓練兵たちから目を外す。

 

 

 そして、残った者たちへ視線を向けた。

 

 

 ミカサ・アッカーマン。

 

 

 アルミン・アルレルト。

 

 

 ジャン・キルシュタイン。

 

 

 コニー・スプリンガー。

 

 

 サシャ・ブラウス。

 

 

 クリスタ・レンズ。

 

 

 ユミル。

 

 

 ライナー・ブラウン。

 

 

 ベルトルト・フーバー。

 

 

 そして、カイ・シュナイダー。

 

 

(アニはいない。憲兵団側。ここは原作通りだな)

 

 

 アニ・レオンハートは、この場にはいない。

 

 

 彼女は憲兵団へ進む。成績上位十名に入り、内地へ向かう権利を得た訓練兵として、その選択をする。

 

 

 この場にいないことが、自然だった。

 

 

(エレンは……別枠か)

 

 

 エレン・イェーガーも、通常の新兵としてこの場に立つ存在ではない。

 

 

 彼は巨人化能力者であり、人類の希望であり、同時に危険物でもある。王政や憲兵団が黙って見ている筈が無く、調査兵団としても普通の新兵と同じ扱いには出来ない。

 

 

 リヴァイ班の管理下に置かれるのは、自然な流れだった。

 

 

(俺をリヴァイ班に入れない判断も、当然と言えば当然だな)

 

 

 エレンの監視と、いざという時の処分を担う部隊。

 

 

 そこに、訓練兵上がりの新兵であるカイを入れる。

 

 

 表向きの理由を作るには、少し無理がある。

 

 

 トロスト区で戦果を挙げた。

 

 

 精鋭班に組み込まれた。

 

 

 それでも、リヴァイ班に入れる理由としては弱い。

 

 

 何より、カイには裏の役割がある。

 

 

(調査兵団の新兵。エルヴィン直属の秘匿特殊戦力。固定分隊なしの訓練・観察期間。……肩書きだけで面倒臭いな)

 

 

 昨日、カイは調査兵団幹部の前で呪術を見せた。

 

 

 呪力強化、『脱兎』、影収納、簡易結界、『玉犬・渾』。

 

 

 領域展開と反転術式の名前も出した。今の自分には出来ない高等技術として説明したが、名前だけでも『縛り』の対象にはなる。

 

 

 呪術を公開すればするほど、呪術を知る者が増えれば増えるほど、カイの実力は底上げされる。

 

 

 ただし、単純な『術式の開示』よりも効果は低い。

 

 

 呪力、術式、結界術、領域展開、反転術式。呪術体系全体へ公開対象を広げている以上、当然といえば当然だ。

 

 

(それでも、永続的な底上げは大きい。呪力操作、呪力総量、術式効果。伸びるなら伸ばした方が良い)

 

 

 だが、情報を出せば出すほど、秘匿は難しくなる。

 

 

 王政に知られれば、拘束、尋問、研究対象、利用、処分。どれになるか分からない。

 

 

 少なくとも、自由に動けることは無くなるだろう。

 

 

(調査兵団の内側に置かれる方が、遥かにマシだ。首輪付きの自由でも、王政に首根っこを掴まれるよりは良い)

 

 

 そんなことを考えていると、声を掛けられた。

 

 

「おい、カイ」

 

 

 振り向くと、ジャンが立っていた。

 

 

 隣にはアルミンもいる。

 

 

 ジャンは、調査兵団に残ったことで、まだ気持ちの整理がついていないのか、少し不機嫌そうな顔をしている。だが、いつものような棘は少し薄い。

 

 

「結局、お前も残ったんだな」

 

 

「最初から調査兵団志望だったからな」

 

 

「まあ、そうだろうな。トロスト区じゃ、精鋭班にまで入ってたんだろ?そんな奴が今更憲兵団に行くとは思わねぇけどよ」

 

 

 ジャンは、納得したような、少し面白くなさそうな顔でそう言った。

 

 

 憲兵団に入り、内地で暮らす。

 

 

 ジャンが元々抱いていた目標だ。

 

 

 その彼が、こうして調査兵団に残っている。今この場に立っている。

 

 

 その事実は、ジャン自身の中でもまだ完全に整理されていないのだろう。

 

 

「精鋭班に入ったのは、ピクシス司令の判断だ。俺から頼んだわけじゃない」

 

 

「分かってるよ。けど、普通の訓練兵は入らねぇだろ、そんなもん」

 

 

「俺も驚いた」

 

 

「本当かよ」

 

 

「本当だ」

 

 

 カイが答えると、ジャンは胡散臭そうに目を細める。

 

 

「お前、そういうことを平然と言うから分かりにくいんだよ」

 

 

「慌てて言えば分かりやすいのか?」

 

 

「そういう話じゃねぇ」

 

 

 ジャンは顔を顰めた。

 

 

 そのやり取りを見て、アルミンが小さく苦笑する。

 

 

「でも、カイが残ってくれたのは心強いよ」

 

 

「そうか?」

 

 

「うん。トロスト区でも、エレンの護衛側にいたし……それに、カイは昔から調査兵団に入るつもりだったんだよね」

 

 

「ああ」

 

 

 カイは頷く。

 

 

「それは変わってない」

 

 

「そっか」

 

 

 アルミンは、少しだけ安心したように頷いた。

 

 

 だが、その表情はすぐに曇る。

 

 

「エレンは……僕たちとは、別になるんだよね」

 

 

「だろうな」

 

 

 カイは答える。

 

 

「巨人になれるんだ。普通の新兵と同じ扱いには出来ない。王政や憲兵団が黙って見ているような存在でもない」

 

 

「……うん。分かってる」

 

 

 アルミンは頷く。

 

 

 分かってはいる。

 

 

 だが、納得しきれているわけではない。

 

 

 それは、カイにも分かった。

 

 

「エレンはエレンだよ」

 

 

「ああ」

 

 

「でも、周りはそう見てくれないかもしれない」

 

 

「だから、近くに分かっている奴が必要なんだろう」

 

 

 カイは、少し離れた場所にいるミカサへ視線を向けた。

 

 

 ミカサは、周囲の話を聞いているようで、その意識の大半をエレンへ向けているように見えた。

 

 

(ミカサは、まあ当然として。アルミンもエレンから離れる気は無いだろうな)

 

 

 エレンが何処に行こうと、ミカサは追う。

 

 

 アルミンも、形は違えどエレンから離れない。

 

 

 そういう関係だ。

 

 

「お前はどうなんだよ、カイ」

 

 

 ジャンが聞いてきた。

 

 

「どう、とは?」

 

 

「団長に呼ばれてたんだろ。お前も、何か特別扱いでもされんのか?」

 

 

「トロスト区での戦闘報告と、調査兵団に入る意思を確認されただけだ」

 

 

「だけ、ねぇ」

 

 

 ジャンは納得しきっていない顔をしたが、それ以上は踏み込まなかった。

 

 

 疑っているというより、単純に気になっているだけなのだろう。

 

 

 カイは、それで十分だと思った。

 

 

「まあ、精鋭班に入った奴なら、団長に呼ばれてもおかしくはねぇのか」

 

 

「そう思っておいてくれ」

 

 

「言い方が胡散臭ぇんだよ」

 

 

「善処する」

 

 

「絶対する気ねぇだろ」

 

 

 ジャンは呆れたように言う。

 

 

 その時、コニーが横から顔を出した。

 

 

「何だ?カイが特別扱いされる話か?」

 

 

「されない」

 

 

 カイは即答した。

 

 

「何だ、されないのか」

 

 

「何で少し残念そうなんだ」

 

 

「いや、カイが偉くなったら、飯の量が増えたりしないかと思って」

 

 

「それはサシャの発想だろ」

 

 

 カイがそう言うと、少し離れたところにいたサシャが顔を上げた。

 

 

「呼びましたか?」

 

 

「呼んでない」

 

 

「飯の話ですか?」

 

 

「違う」

 

 

「肉ですか?」

 

 

「もっと違う」

 

 

 サシャは心底残念そうな顔をした。

 

 

「調査兵団に入ったら、肉は食べられますかね」

 

 

「食べられる訳ねぇだろ」

 

 

 ユミルが冷たく切り捨てる。

 

 

「壁外で巨人に食われる可能性の方が高い」

 

 

「それは困ります」

 

 

「肉の心配より命の心配をしろ」

 

 

「死ぬ前に食べたいです」

 

 

「最悪の覚悟の決め方だな」

 

 

 クリスタが、困ったように二人を見ている。

 

 

 その光景に、カイは僅かに息を吐いた。

 

 

(こういう空気は、悪くないな)

 

 

 トロスト区では、多くの訓練兵が死んだ。

 

 

 トーマス、ミーナ、ナック、ミリウス。

 

 

 他にも多くの者が、巨人の口に消えた。

 

 

 それでも、生き残った者たちは話している。

 

 

 冗談を言い、飯の心配をし、互いの顔を見て、まだ生きていることを確認している。

 

 

 だからこそ、次に死ぬ時はあっけない。

 

 

 そのことを、カイは知っている。

 

 

(知っていても、全部は止められない。トロスト区でもそうだった)

 

 

 イアンも、ミタビも、多くの駐屯兵も死んだ。

 

 

 カイが動いても、全ての死は止められない。

 

 

 呪術を使えば救えた命もあるかもしれない。だが、その時のカイは呪力が尽きかけており、状況も複雑だった。

 

 

 後から考えれば、ああすれば良かった、こうすれば良かったと幾らでも思い付く。

 

 

 だが、戦場で全てを選べるわけではない。

 

 

 ふと、視線を感じた。

 

 

 顔を向けると、ライナーと目が合う。

 

 

 ライナーは、いつも通りの顔をしていた。

 

 

 頼れる兄貴分の表情。訓練兵時代から変わらない、周囲を安心させる顔。

 

 

 その隣には、ベルトルトがいる。

 

 

 ベルトルトは少し不安そうに立っているが、それも普段通りと言えば普段通りだ。

 

 

(ライナーとベルトルトも残ってる。……まあ、原作通りだな)

 

 

 戦士である二人が調査兵団へ入る。

 

 

 エレンに近づくためか、壁外調査で機会を探るためか。

 

 

 細かい理由は兎も角、彼らがここにいること自体は原作通りである。

 

 

 カイは二人の正体を知っている。

 

 

 だが、それを表に出すつもりはない。

 

 

(今ここで何かする意味は無い。下手に触れば、こっちの情報だけが増える)

 

 

 ライナーは、すぐに視線を外した。

 

 

 表面上は何も無い。

 

 

 何も無いまま、時間だけが進む。

 

 

 それで良い。

 

 

 今は、まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、調査兵団の兵士から、今後の説明が行われた。

 

 

 支給される装備。

 

 

 生活場所。

 

 

 訓練予定。

 

 

 壁外調査へ向けた準備。

 

 

 上官への報告と命令系統。

 

 

 訓練兵団とは違う。

 

 

 ここから先は、訓練ではない。

 

 

 それを、説明する兵士の声や、周囲の空気が伝えてくる。

 

 

 やがて説明が終わり、新兵たちが移動を始める。

 

 

 カイも流れに合わせて歩き出そうとした時、調査兵の一人が近づいてきた。

 

 

「カイ・シュナイダー」

 

 

「はい」

 

 

「団長がお呼びだ」

 

 

「分かりました」

 

 

 カイが答えると、ジャンがこちらを見た。

 

 

「また呼ばれてんのか」

 

 

「そうらしい」

 

 

「本当に戦闘報告だけか?」

 

 

「そういうことになっている」

 

 

「なっているって何だよ」

 

 

「言葉の綾だ」

 

 

「余計胡散臭ぇ」

 

 

 ジャンは顔を顰めた。

 

 

 アルミンは何か言いたそうにしていたが、結局口には出さなかった。

 

 

 カイは軽く手を上げる。

 

 

「すぐ戻る」

 

 

「ああ」

 

 

 ジャンは短く返した。

 

 

 アルミンも頷く。

 

 

 カイは調査兵について歩き出す。

 

 

(目立たないようにするのも、そろそろ限界か?)

 

 

 団長に二度も呼ばれている時点で、目立たない訳がない。

 

 

 だが、完全に目立たないことは、もう諦めるべきなのだろう。

 

 

 呪術を公開した。

 

 

 調査兵団の内側に、自分の異常を置いた。

 

 

 ならば、多少の視線は避けられない。

 

 

(問題は、その視線が王政や憲兵団まで届くかどうかだ)

 

 

 そこだけは、避けなければならない。

 

 

 カイは、調査兵の後ろを歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 案内された部屋にいたのは、エルヴィンだけだった。

 

 

 リヴァイも、ハンジも、ミケもいない。

 

 

 机の上には、書類が積まれている。トロスト区攻防戦後の処理、兵員の再編、物資、エレンの扱い、調査兵団の次の動き。

 

 

 どれも軽い内容ではないのだろう。

 

 

 紙の束だけで、人が死んだ後の重さが伝わってくるようだった。

 

 

「来たか」

 

 

「はっ」

 

 

 カイは敬礼する。

 

 

「楽にしてくれ。長くは掛けない」

 

 

「分かりました」

 

 

 カイは敬礼を解き、姿勢を正したまま立つ。

 

 

 エルヴィンは、書類から視線を上げた。

 

 

「今日から君は、表向きは他の新兵と同じく調査兵団の一員として扱う」

 

 

「はい」

 

 

「ただし、分隊への正式配属はまだ行わない。しばらくは訓練と観察期間だ」

 

 

(まあ、そうなるよな)

 

 

 固定分隊なし。

 

 

 新兵として扱いつつ、置き場所を決めない。

 

 

 便利だが危険な駒を、何処へ置くか見極めるための時間。

 

 

 カイは、エルヴィンの判断をそう解釈した。

 

 

「君の力は、許可なく使わないこと。王政、憲兵団、他の兵士、同期にも明かさない」

 

 

「承知しています」

 

 

「ただし、命に関わる緊急時は別だ。その時は、君の判断に任せる」

 

 

 カイは、僅かに目を細めた。

 

 

 許可制。

 

 

 だが、緊急時は自分の判断に任される。

 

 

 この一文があるか無いかで、戦場での動きは大きく変わる。

 

 

「必要があれば、私から個別に命令を出す」

 

 

「了解しました」

 

 

「君の立場は難しい。通常の新兵として扱われる一方で、通常の新兵ではない。だからこそ、軽率な行動は避けてほしい」

 

 

「分かっています」

 

 

 カイは答える。

 

 

 だが、一つ確認しておくべきことがあった。

 

 

「質問しても宜しいでしょうか」

 

 

「何だ?」

 

 

「緊急時の判断には、どの程度まで含めますか」

 

 

 エルヴィンは、少しだけ目を細める。

 

 

「具体的には?」

 

 

「自分の命だけでなく、班や同期、上官、作戦そのものが崩れる可能性がある時です。呪術を使わなければ誰かが死ぬ、あるいは作戦が失敗する。そういう場面で、命令を待つ余裕が無い場合」

 

 

「その場合は、君の判断に任せる」

 

 

 エルヴィンは即答した。

 

 

 その答えの速さに、カイは少しだけ驚いた。

 

 

「ただし、使用後は必ず報告すること。何を使い、誰に見られ、どのような結果になったか。そこを誤魔化されると、こちらも君を守れない」

 

 

「はい」

 

 

「君を守るためでもあり、調査兵団を守るためでもある」

 

 

「理解しています」

 

 

 エルヴィンは頷いた。

 

 

「それと、エレンについてだが」

 

 

 その名が出た瞬間、カイの意識が僅かに鋭くなる。

 

 

「彼はリヴァイ班の管理下に置かれる。君をそこに入れる予定はない」

 

 

「妥当だと思います」

 

 

「理由は分かるか?」

 

 

「エレンの監視と、いざという時の処分を担う部隊に、訓練兵上がりの新兵を入れるのは外聞上不自然です。それに、私を入れる場合、表向きの理由が必要になる」

 

 

「その通りだ」

 

 

 エルヴィンは、僅かに口角を上げた。

 

 

「君には、別の形で動いてもらう。必要な時に、必要な場所へ送る。そのためにも、今は通常新兵として周囲に馴染んでもらう」

 

 

「分かりました」

 

 

「不満は?」

 

 

「ありません」

 

 

 これは本心だった。

 

 

 リヴァイ班に入れば、エレンの近くにはいられる。

 

 

 だが、目立つ。

 

 

 不自然な配置は疑問を生む。

 

 

 疑問は調査を呼ぶ。

 

 

 調査は、呪術に近づく。

 

 

(それは、面倒どころじゃ済まない)

 

 

 カイに必要なのは、自由に動ける余地だ。

 

 

 表向きは通常新兵。

 

 

 裏では個別命令。

 

 

 この形が、今は最も都合が良い。

 

 

「最後にもう一つ」

 

 

 エルヴィンの声が、少しだけ低くなる。

 

 

「君が我々を信用して力を明かしたことは理解している。だが、我々も君を完全に信用したわけではない」

 

 

「当然です」

 

 

「それでも、君を王政に渡すつもりはない。少なくとも、現時点では」

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

「礼を言うには早い。これは善意ではなく、判断だ」

 

 

「それでも、です」

 

 

 カイは静かに答えた。

 

 

 王政に渡されない。

 

 

 それだけで、今は十分だった。

 

 

 エルヴィンは、しばらくカイを見ていた。

 

 

 やがて、書類へ視線を戻す。

 

 

「下がっていい」

 

 

「はっ」

 

 

 カイは敬礼し、部屋を出た。

 

 

 扉を閉めると、廊下の空気が僅かに冷たく感じる。

 

 

(調査兵団の新兵。エルヴィン直属の秘匿戦力。王政には出せない異常。……肩書きだけは随分増えたな)

 

 

 カイは、廊下の先へ歩き出す。

 

 

 自由の翼を背負った。

 

 

 だが、その翼は軽くない。

 

 

 王政へ渡されることのなかった異常。

 

 

 調査兵団の内側に秘匿された呪術。

 

 

 表向きは一人の新兵として、裏ではエルヴィン・スミス直属の秘匿戦力として。

 

 

 カイ・シュナイダーは、調査兵団に入団した。

アンケート第2回です。見た感じ、半分程度の方が、「私に委任する」という立場のようで……。この様子だと、3回目は不必要ぽいかな?取り敢えず、また好きな所に投票してください。後、恋愛要素って要ります?「作者に展開は委任する」立場の方は、①と②に投票してください。原作の展開的に、ヒロインはユミルやクリスタになるかも。

  • 57回壁外調査 女型に先制攻撃
  • 57回壁外調査 リヴァイ班と共闘
  • ストヘス区 女型本体を生身で捕獲
  • ウトガルド城 ユミル巨人化と共に大暴れ
  • 王政編 リヴァイと共にケニー戦
  • 王政編 反転術式でケニーを治癒
  • マリア 区内で鎧と超大型と交戦
  • マリア エルヴィンとアルミンを反転治癒
  • グリシャの手記と共に呪術公開
  • マーレ襲撃で大暴れ
  • ①恋愛要素は必要
  • ②恋愛要素は不必要
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