真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
魔界の廃ビルの屋上。
砂漠の中に浮かんでいる、小さな島のように見える。
周囲に悪魔はいないが、遠くに巨大な鳥の悪魔が飛んでいた。
程なくして、異変が起きる。
アルテミスの前で、黄金の雨が降っていたが、やがてそれが人型になる。白と黒の半身を持つギリシャの主神。
ゼウスである。
ゼウスはその肉体美を誇示しながら、傅いているアルテミスに言う。
「で、どうであった」
「はい。 ベテル本部から離反した天使達の戦力は相当なもので、特に首魁となっている大天使達は、簡単に倒せる相手ではありません。 あれは恐らくですが、何者かが背後についていると見て良いでしょう」
「何者か、か。 一神教関係者であり、神でないとすると、候補は限られるがな」
「いかがなさいますか」
ゼウスは本人でも偵察をしている。
アルテミスとしては、他のギリシャ系神格の力も借りたいところではあるのだが。それは難しいだろう。ただでさえ、ベテル本部主導の混沌勢力の残存勢力の撃破作戦に、ギリシャ支部はかなりの戦力を割かなければならないのだから。
「ベテル本部から離反した天使どもが堕天使となっていない時点で、既に四文字の神めが倒れたことは確定となったな。 これからは、それを大前提として動く」
「つまり、離反すると」
「それはまだ早い。 何かしらの動きが必ずあるはずだ。 それを見届けてからでも遅くはないだろう」
「は……」
アルテミスは知っている。
父ゼウスは、古くに己を分割した。
その分割存在をユピテルという。
物語として愛されたギリシャ神話を行儀良く改変した存在がローマ神話だ。其処では、ゼウスに対応するユピテルを始め、ギリシャ神話の神々はほとんどがとても性格が良い品行方正な神々とされた。
支配のツールとして、威厳が求められたからだ。
だが、ゼウスはそれを鼻で笑った。
そして、求められる存在を切り離したのである。
結果ゼウスは弱体化した。
しかしそれが故に。
「あの事件」でも、被害を最小限に抑えることが出来たのだ。
「既に姉上が動き始めている」
「叔母上と申されますと」
「デメテル姉上だ」
「ああ、デメテル様ですね」
デメテル。
ギリシャ神話の豊穣神である。
あまり知られてはいないが、ゼウスは末っ子だ。
先代ギリシャ神話の王クロノスの子である神は多数いるが、その全てがゼウスの兄と姉である。デメテルも例外ではない。
ゼウスがオリンポスの神々の頂点に立つことが出来たのは、暴虐を極めた先代王クロノスを倒すための最大の活躍をしたためであり。
実のところ、ゼウスをその兄や姉達は、あまり快く思っていない。
それをアルテミスはよく知っていた。
「だがな、知っての通り姉上は何を考えているかよく分からないところがある。 どうも例のナホビノに目をつけたようでな。 ニンフどもが知らせてきおったわ」
「監視しますか」
「いや、おまえがあのナホビノにつけ」
「!」
あのナホビノか。
まだ発展途上だが、不思議な魅力のある存在だ。
異性としての魅力は0だというのも妙だ。
頭が切れるし、あの武勇。
それでどうして心が動かないのか、アルテミスにも分からない。
「眷属となると、最悪父上と戦うことにもなりますが」
「それはそれで面白いからかまわんよ。 それに、四文字の神めが死んだと言うことは、またユピテルを切り離して、座を狙うのもありだろうな」
「前に懲りたではないですか」
「そうはいってもな。 インドの連中は世界を一旦終わらせようとしている節があるし、他の連中はどうにも明確なビジョンがない。 何より四文字の先代は座から蹴り出されてから、どうにも覇気がない。 いや、元々支配下の連中に覇気があったのはあったが、信仰としてはどうしても力に欠けてはいたがな」
自分はそれに追われた癖に。
そうアルテミスは内心でつぶやく。
いずれにしても、父の考えは昔から分からない。
「ともかく命令だ。 姉上は昔から何を考えているかわからんし、放置しておいてナホビノをたらし込まれると面倒だ。 今のうちに、おまえが掣肘しておけ」
「分かりました。 ただし、戦うことになっても恨まないでください、父上」
「ふっ、そうだな……」
アルテミスは頷くと、父の前を離れる。
さて、今ナホビノは、まだ魔界にとどまっているか。
不思議な存在。
存在自体には興味が湧く。
だが、そもそもとして、父に従ったままで良いのだろうかと、アルテミスも時々思うのである。
父は策略家だ。
これからどのような悪辣な手段でも執るだろう。
冷酷な狩りの神であり、月の女神でもあるアルテミスも、悪辣な手段を執る。自分の水浴びを見てしまっただけの狩人を、むごたらしいやり口で惨殺したように。
ただ、それでは人は着いてこない。
ローマ神話の行儀がいい自分の分身を見て、アルテミスは人々が素直に信仰しているのを見た。
それで、考えも揺らいだ。
どの神々も、信仰を集めようとする理由が分かった気がする。
残虐で冷酷なだけでは限界がある。
人々にとっての救いであり。
いっそのこと思考を放棄して全てを差し出したいとさえ思わせるくらいでなければ、神々は駄目なのではないのか。
そうとさえ、アルテミスは思うのだ。
それをやった一神教が、世界で最大派閥になって。史上最大の勢力となったのも。
今では頷けるのである。
嘆息すると、まずはナホビノのところに急ぐことにする。
どういう理由でナホビノに取り入るか。
素直に話した方が良いだろう。
あのナホビノは、極めて聡明だ。
嘘をつけば恐らくは即座に見抜かれる。
それは観察していたから知っている。
それに。
同じ月の力を持つ存在が、ナホビノを……正確にはその周囲にいる誰かを観察している。それもまた、不安要素の一つだった。
(続)
メガテンが「真」になってから、ゼウスが本格的にシナリオに絡むようになったのは意外と最近。DSJ以降です。
真Vでも結構面白い絡み方をしてきました。
本作でのゼウスは、ある理由で創世に非常に強力な関わりを持っています。
故に天の玉座について、色々と画策しているのです。
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