真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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4、大戦の前に

魔界から東京に戻る手段はいくつかある。現在、一番厄介な十九代目葛葉ライドウが東京に戻っている事もあって。

 

八雲ショウヘイは、東京にそれらの手段の一つを使い、東京に戻ってきていた。

 

羽虫が蠢動している。

 

それを嗅ぎつけたからである。

 

なお、東京ではジョカは普段とはちょっと格好を変えて、少しセレブな西洋風の格好にしている。

 

見た目だけなら普通の女性に見えるので、それで変装は充分。

 

八雲は一応サングラスはしている。

 

父の形見の警察の制服は、そのまま着るつもりだが。

 

代謝がなくなっている今。食事もトイレもなんなら入浴すら必要ない。ナホビノになるというのはそういうことだ。

 

古くに悟りを開いて人間を超越した存在なども、恐らくはナホビノになったのだろうと八雲は考えている。

 

釈迦が仏教を開いたのは紀元前六世紀前後くらいではないかと言われており。

 

その頃には四文字の神など、たかが知れたローカル信仰に過ぎず。それどころか、バアル信仰やゾロアスター教の影響を受け、四文字の神に存在していた配偶神を切り捨てたりと、過渡期にあった状態だ。

 

今のように、ナホビノ候補を片っ端から始末するような真似はしたくても出来なかったし。

 

なんなら数多あるバアル信仰の中の変わった分派程度でしかなかったのだ。

 

東京を歩く。

 

蜃気楼の奇跡の街。

 

しかしながら、暮らしている人間は本物だ。

 

18年前にシャカイナグローリーで再生された人間だけがいるのではない。

 

それ以降に生まれた人間や、地方から来た人間は、皆ちゃんとした人間であるし。

 

また、仮にシャカイナグローリーで生じた人間だとしても。

 

その後の時代を生きる権利があると八雲は考えていた。

 

生きる資格がないのは。

 

アティルト界の住人に過ぎず。

 

人間の思念から作り出された程度の分際で、人間を支配していると思い込んでいる神魔どもだ。

 

街を見回っていると。

 

老人から声を掛けられる。

 

「ショウヘイちゃんじゃないか」

 

「!」

 

振り返ると、父の旧友だ。既に初老である。

 

幼い頃は誤解を受けがちだったショウヘイを庇ってくれたし、神話の話を色々としてくれた。

 

ジョカは気を利かせて距離を取ってくれる。

 

ショウヘイは、黄金の瞳を隠すために今はサングラスを掛けているのだが。それでも分かるようだった。

 

「警察を辞めたと聞いたけれど、大丈夫なのかい。 警察官でもないのに警察の制服を着ていると、確か何かの罰になったのではないのかい」

 

「いえ、特に問題はありません」

 

「父さんと母さんの事は残念だった。 私がもっと早くに気づいていれば、あんな事故には……」

 

「貴方のせいではありませんよ。 気を落とさず。 私には仕事がありますので、失礼します」

 

まだ何か父の旧友は言おうとしたようだが。

 

明らかな拒絶の気配を察したのだろう。

 

後は黙って見送った。

 

ジョカが戻ってくる。

 

「あの男とは口を利くのだな」

 

「あの人は唯一善意で接してくれた。 母の影響で古くから神魔が見えていた俺にな」

 

「そうだったな。 確かにおまえがどれだけ神魔が見えない人間にとって不可解な話をしても、真剣に話を聞いていたし。 あのおまえの一番の友達だった怪異の事にも、理解があったな」

 

「だから出来ればこの後の混乱は生き延びてほしいものだな。 勿論、特別扱いするつもりなどないが」

 

さて。歩いて回って、だいたい分かった。

 

今、東京でやはり羽虫が悪さをしている。

 

出来れば魔界の東京駅近辺にすぐさまに出向き、手当たり次第に神魔を狩って回りたいのだが。

 

こっちの方が危険度が大きい。

 

浄増寺の霊的防御の修復の際に、余計な事をした奴がいる。

 

現在東京駅近辺では大乱戦が開始される兆候で、混沌勢力の悪魔は総力戦を準備している状態だ。

 

つまり連中の主流派ではない。

 

いくつか思い当たるが、恐らくは。

 

あのカディシュトゥとかいう連中だろう。

 

だとしたら、出現したところを斬り伏せる。

 

かなり巧妙に悪意の糸を張り巡らせているようだが。ただ、人間を殺して回ったり、根こそぎマガツヒを吸収したりといった事をもくろんではいないようである。それもまた、不可解だ。

 

出来るだけ被害を減らすつもりなのか。

 

可能性は否定できないだろう。

 

「それでどうする。 浄増寺にあるアレをすぐに破壊するか。 マガツヒの量からして、既にかなりの大物神格を呼び出す核になり得るほどに成長しているようだが」

 

「いや、必要ない。 マガツヒがどれだけあっても、使えなければ意味がない。 それに……」

 

既にベテル日本支部が動いている。

 

恐らくはベテル日本支部の長官……あの人間のフリをしている輩も、とっくに見抜いているのだろう。

 

つまり元から根を絶つつもりだ。

 

この点では、八雲と意見が一致している。

 

「それと機会がなかったから言っていなかったのだがな」

 

「なんだ」

 

「あれを見かけた」

 

「……そうか」

 

最後に見た時。豹変した八雲を、悲しそうに見ていたっけ。

 

それからもう二度と会うとは思っていなかった。

 

ジョカが見たと言うことは、活動を続けている、ということだ。

 

ちょっとだけ安心した。

 

「少しばかりこのくだらんマガツヒを収集している輩は泳がせる。 回収に来た時に斬り捨てる」

 

「分かった。 ただし、下手をするとナホビノとかち合うぞ。 ライドウともな」

 

「その時はその時だ」

 

邪魔になるなら全て斬り捨てる。

 

そう、あのとき。

 

悪魔に使嗾されたとは言え、父と母を惨殺した人間どもがたいした罪にも問われなかったのを見て。

 

八雲は決めた。

 

その後、父と母を殺した人間どもを、ジョカが皆殺しにして地獄に落としたが。

 

必死に命乞いをする連中を見ても、八雲は何一つ心など動かなかった。

 

あれらは既に人間ではなかったからだ。

 

それ以前もそれ以降も、八雲は人間は殺していない。

 

それも、いつまで続くかは分からないが。

 

ともかく、今は目的のために動く。

 

神魔全てを滅するという目的のために。

 

 

 

(続)







八雲が闇落ちした経緯は原作でも語られていますが、彼の両親を簡単に悪魔の口車に乗ったアホどもが殺戮した事が要因ですね。

両親どちらも立派な人たちだったのに。

恐らくは、悪魔は最後の一押しをしただけだったのでしょう。八雲が一番許せないのは自分自身で、更にはそれと同類の人間である……だから人間に強くなることを強要しようとしている。

それが彼のオリジンなのです。





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