真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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苛烈な戦闘が行われる「橋頭堡」近辺。

とてもではありませんが、とても侵攻拠点を確保できたなんていえない状況です。

まずは周囲を調査しながら、火の粉を払う。

それからですね。





1、橋頭堡確保戦

上空での激戦を横目に、煌はタオとユヅルとともに、周囲を探索。この様子では、ただ天使とベテル各支部の人員が来る事が出来ただけで、他はとても無理だろう。

 

ハヤタロウは他に任務がある。

 

ユヅルは手持ちをあらかた展開。その中の河童達は、さっと散って、情報収集に動いていた。

 

在来の妖怪というだけでアドバンテージが大きい。

 

それを早速生かしていると言うことだ。

 

煌も無言で雑多な悪魔達を展開。

 

それにしても、酷い有様だ。

 

砂漠化しているのはそうなのだが、辺りの荒廃がまた一段階上がっているような気がする。

 

この辺りは銀座だろうか。

 

倒れているビルが、他の倒壊したビルにのしかかっている。

 

高級店だったらしい店が、崩落してその上で悪魔達が戦闘している。

 

踏み砕かれ。

 

踏みにじられ。

 

どれだけの血を啜っても、飽き足らないかのようだ。

 

仕掛けてくる。

 

上空から来る悪魔に、一斉射を浴びせる。タオは面制圧の光の力を展開して、数十の悪魔を瞬時に蒸発させていた。

 

ずっと回復をしていた事で、嫌でも力が磨かれたらしい。

 

凄まじい火力に、悪魔達が怯む。

 

其処に針穴を通す那須与一の狙撃が突き刺さる。

 

天使達も負けておらず、怯んだ悪魔の群れは瞬く間に囲まれ、叩き潰されていった。

 

ベテル本部の天使達もなかなかやるな。

 

一緒に来たデビルサマナー達は、それぞれ別に動いている。

 

老神父が呼び出したのは、天使十体ほど。そのまま、空に展開して悪魔と戦わせているようだが。

 

一番強いのが下級一位のプリンシパティだ。どうみても支援しか出来ない。

 

此処では中級天使がやっと前線に立てるか立てないか、という戦闘をしているようであるのだから。

 

巫女の方は、大量の悪魔を大地から呼び出している。

 

アオガミが教えてくれる。

 

魑魅だ。

 

自然から生じる存在で、人を惑わすこともあるというが。それ以上に、幾らでも湧いてくる。

 

西洋でいうところの精霊のようなもので、伝令として活用できるようだった。

 

「ご注進!」

 

河童の一体が戻ってくる。

 

今、ちょうど上空から仕掛けてきた悪魔と戦闘しているところだ。下級の堕天使だが、それでも実力はパワーと遜色ない、それが数十、隊列を組んで襲ってきている。タオの光の面制圧をさっと散って回避すると、それぞれが対空砲火をくぐり抜けて迫ってくる。

 

煌も雷撃で応戦。

 

数体をたたき落とすが、至近まで一体が来る。

 

だが、鬼後輩が、タオに迫った一体を、真正面から地面にたたきつけた。

 

鬼の中では弱い方。

 

そう称していたが、今では充分に戦えている。

 

二体が同時に来るが、それを同時に煌が相手にする。相手にしながら、報告を聞く。

 

「上空で大天使が苦戦しているとの事。 現状では橋頭堡の確保すら怪しいというのが実情のようです!」

 

「了解。 引き続き周囲の情報を集めてくれ。 どんな細かい事でも構わない」

 

「! 地上部隊が来ます!」

 

巫女が言う。

 

対応が遅れた神父のデビルサマナーが、もろにそれに襲われそうになって、転ぶ。

 

迫ってくるのは、多数のラミアだ。

 

ラミアの群れが、一斉に襲いかかってくる。

 

ただ、実力は前に浄増寺で戦った者ほどではないようである。煌は即座に前に出ると、悪魔達を展開。

 

アルテミスが出ると、ラミアは露骨に怒りの表情を見せていた。

 

「ゼウスの娘ぇ!」

 

「リビアの女王のなれの果てか。 哀れなものだな!」

 

一斉にアルテミスに襲いかかるが、その足下がいきなり泥濘と化して、ラミア達が困惑する。

 

地面は基本的に砂だ。

 

其処にマーメイドが干渉するとこうなる。

 

小型の蛇と大型の蛇では動き方もかなり異なっており、ラミアのようなサイズの蛇となってくると、小型の蛇がやるようなダイナミックな蛇行は不可能だ。それもあって、動きが止まったところに、アルテミスが一斉に冷気の技をたたき込む。

 

更に、煌が雷撃を立て続けに打ち込むと、ラミア達が恨み言を述べながら消し飛ぶ。気持ちは分かるが、今は容赦している余裕がない。

 

更に上空へ雷撃で支援。

 

天使と交戦している悪魔に横やりを入れていく。

 

那須与一も、一射確殺で悪魔を落としており、さすがはいにしえに名を残した大弓術家だ。

 

天使の部隊が、さっき煌達が来たトンネルを抜けてくる。

 

更に戦力をました天使部隊が、上空での戦闘を押し始める。

 

だが。

 

爆発が起きて、何か墜ちてくる。

 

地面に激突したそれには、多数のヒルみたいなのが張り付いていた。

 

「ぐっ、お、おのれ……!」

 

「動かないで。 回復します」

 

「まて、近づくな。 このヒルのような虫は」

 

「問題ありません」

 

タオが印を切って祈ると、凄まじい光が墜ちてきた人型を包む。虫は一斉にタオに襲いかかろうとするが、全て光の中で消し飛んでしまった。

 

おおと、人型が呻く。

 

改めてみると、ロボットのような姿をした天使だ。全身が機械的である。

 

「助かった。 私をやった奴がまだ上にいる。 気をつけろ……」

 

「貴方は」

 

煌が名乗りつつ、上空に雷撃を入れ続ける。

 

乱戦はまだ続いていて、天使が押し気味になってはいるが、どちらもゴミのように落ち続けている。

 

また、巨大な鳥が参戦した。

 

光り輝いている鳥が行くところ、悪魔が焼き尽くされている。

 

あれはかなり名がある存在とみた。

 

それでも、まだこの辺りを完全制圧とはいかないようだ。

 

「私は大天使メルキセデク。 先陣を承ったのに、情けないことだ。 そちらの女性は、確か日本支部の聖女か。 凄まじい治癒の力だ。 これならば、異名にも納得がいくな」

 

「それで、貴方を倒した相手は」

 

「……あいつだ」

 

思念を送ってくる。上空にいる悪魔。あの位置だと、煌だと継続的な戦闘が難しい。

 

煌がそうつげ、ユヅルが頷くと、鳥の悪魔を具現化させる。

 

赤い翼を持った、美しい姿の鳥だ。

 

霊鳥ホウオウ。

 

そうユヅルが言う。

 

なるほど、これが。

 

四神の一角朱雀の別の姿とも言われる、不老長寿の鳥。煌を背に乗せて、飛んでくれるという。

 

上空にはおぞましい呪いに包まれた悪魔がいる。

 

天使部隊が近くまで降りてきて、直衛になるという。ヴァーチャーに転化した元パワーは、更に力を上げている。

 

頷くと、下は任せて、上空に。飛ぶことは出来るには出来るが、其処まで高所に飛ぶのは難しいのだ。

 

ホウオウの速度が上がる。

 

天使達も、煌が行くのを見て、陣列を整え、悪魔達に向かっていく。あちこちで組み合う天使と悪魔。

 

きりもみに墜ちていく者も多い。

 

激しい攻撃が飛んでくるが、それら全てに対応は出来ない。

 

直衛になった天使達が、次々に墜ちる。

 

そして、見えてきた。

 

傷だらけで、死闘を経たのだと分かる堕天使。

 

角を生やし、伊達男風の衣装を着込んで。それでいながらいかにも悪魔という格好をした存在。

 

メルキセデク曰くアザゼル。

 

元々ファントムソサエティという組織を束ねていたらしいが、それが全滅させられて、アティルト界に叩き帰され、その時大きなダメージを受けた。

 

その後なんとかアッシャー界に戻っては来たが、ダメージが深刻で、無理矢理復活したため力も弱体化しているらしい。

 

いずれにしてもおぞましい呪いを扱う存在である。

 

即座に跳躍して、斬りかかる。

 

肩で息をついていたアザゼルは、即座に剣を出して受け止めてくるが、一気に地面に向けて押し込む。

 

ぐっと呻くと、アザゼルは吠えた。

 

「その姿、ナホビノか! 天使どもの長である四文字の神が、東京を陵辱したことを知って天使どもに味方するか!」

 

「今も東京には多数の人々が暮らしている。 それを好き勝手に陵辱しようとしているのは貴方たちだろう」

 

「黙れ! 幻の人間など、糧にする以外に価値などあるか!」

 

「貴方もカディシュトゥと同じか。 なら容赦しない」

 

火花を散らした一瞬から、蹴りをたたき込み。更に麁正連斬を打ち込む。

 

ぎゃっと悲鳴を上げて、地面に落ちていくアザゼル。そちらに、即座に準備をさせていた。

 

ホウオウが追いついてきたので、背中につかまる。悪魔が多数迫ってくるが、アザゼルを落とされたのを見て、戦意が明らかに落ちている。天使達が横合いから攻撃を仕掛け、次々にたたき落とす。

 

煌の眷属天使も、数体を失いながらも、必死に壁になって守り切ってくれた。

 

下で、罠発動。

 

トロールをジャンプ台にして飛んだ鬼先輩後輩が、連携して落ちてきたアザゼルを、下にスマッシュ。

 

更に下では、アルテミスとマーメイドが連携して、氷で相手を串刺しにするべく杭を作り上げていた。

 

アザゼルがそれに直撃。

 

だが、この程度で上級堕天使を倒せるかは分からない。

 

着地と同時に、警戒を指示。

 

吹き荒れるおぞましい力。それを浴びて魑魅が一瞬で溶けていく。巫女のデビルサマナーの前に滑りこんだ塗り壁が、数秒で溶かされてしまった。

 

その間に必死に巫女のデビルサマナーが逃げる。

 

アザゼルが、全身血だらけ。

 

体中から血を噴き出しながら、鬼の形相で立ち上がっていた。

 

「おのれ貴様等! ナホビノがいるとはいえ、簡単にこの私を倒せると思うなよ……!」

 

ざっと、大量の虫が出現する。

 

ホウオウと天使達が光の力を展開。タオも光で面制圧を仕掛けて、虫をまとめて消し飛ばすが。

 

アザゼルは、喝と吠えて。

 

それでタオの光の面制圧を吹っ飛ばしていた。

 

流石にやるな。

 

だが、その間に、側面に回った那須与一が、強弓をたたき込む。

 

アザゼルは弓をがっと受け止めて……受け止めきれない。受け止めたが、思い切りこめかみに突き刺さった。

 

一瞬だけ気まずい沈黙が流れるが、矢を引き抜いたアザゼルが、吠えたける。

 

「懸かってこい! 叩きころ……」

 

その瞬間、ユヅルの操る猪笹王と、煌のトロール。更には鬼先輩後輩が、四方向から同時にタックル。

 

必死に鬼先輩後輩を両手で止めたアザゼルだが、トロールと猪笹王のタックルはどうにも出来ず。

 

文字通りぐしゃっと潰れて、なんだか可哀想なことになった。

 

メルキセデクと戦闘して、無事では済まなかったのだ。

 

それでも、ふらふらと、煌に向けて歩いてくる。

 

手を伸ばしてくるのは、執念だろうか。

 

煌は即座に首を跳ね飛ばし。更には、体をバラバラに切り裂いていた。

 

消えていくアザゼル。残った首が、消えながらぼやく。

 

「ちっとは病み上がりに手加減しろ……」

 

マガツヒと情報を吸収。

 

これで、多少は戦況は有利になるはずだ。ただ、アザゼルが病み上がりで、メルキセデクとの戦闘で死に体だったのが勝因だが。万全の状態だったら、かなり厳しい戦いだっただろう。

 

ユヅルがハルパス親子を展開。

 

空に向けて叫ばせる。

 

「アザゼルどの、討ち死に!」

 

「討ち取られましたよ!」

 

「アザゼルさんがばらばらになっちゃった! もう勝ち目はないよ!」

 

「ち、畜生っ!」

 

明らかに逃げ腰になる堕天使達。主力の堕天使がそうなると、一気に崩れ始める。更に、トンネルを抜けてきたのは、見覚えがある金色の鎧を着込んだ褐色肌の大天使。

 

アブディエルだった。

 

負傷し、座り込んでいたメルキセデクが敬礼。

 

アブディエルもそれに返す。

 

アブディエル麾下らしい精鋭の天使達が、上空に即座に舞い上がる。見るからに、此処で戦闘していた天使達とは練度が違う。

 

「日本支部のナホビノの活躍で、敵前衛のアザゼルを討ち取ることに成功。 これから掃討戦に入ります」

 

「負傷が酷いようだな。 一度後方に下がれ」

 

「はっ……」

 

「小僧、アザゼルを退けたか。 少しは腕を上げたようだな」

 

威圧的にアブディエルが視線を向けてくる。

 

メルキセデクは完全にアブディエルよりも格が下のようだが。それでも、アブディエルに抗議の言葉を入れる。

 

「アブディエルどの。 ナホビノ殿の活躍で、多数の天使も、増援としてきてくれたデビルサマナーも助かりました。 せめて一言くらい、ねぎらいの言葉を」

 

「……おまえは良いから下がれ。 此処からは私が指揮を執る」

 

不満そうに、メルキセデクが負傷した天使達と下がる。

 

タオもあまり今の発言には好意的になれないようで、厳しい目でアブディエルを見ていた。

 

アブディエルはどこ吹く風。

 

上空を見上げると、一言だけ言う。

 

「部下の手前もある。 先陣の戦功は見事であった。 だが、此処からは戦闘の次元が違ってくる。 浮かれて死ぬでないぞ」

 

「分かりました」

 

「……」

 

凄まじい勢いでアブディエルが上空に上がると、片っ端から悪魔を蹴散らし始める。

 

ユヅルとタオと、軽く話をする。

 

「一旦はこれで大丈夫な筈だ。 僕たちは状況をもう少し見たら一度戻ろう。 ハヤタロウも即座に戻ることは出来ないだろう」

 

「そうだな。 少しハヤタロウが心配だが、それでも隠密行動には特化した存在だし、持久力も並外れている。 きっとうまくやるはずだ」

 

「私は少し此処に残るね。 負傷者を助けないと」

 

煌もイズンを展開。

 

イズンも回復の力を得意としている。即座に、負傷している天使達を回復にあたらせる。

 

龍穴を発見できたのは大きい。

 

回復を済ませると、辺りの悪魔を掃討。地上部隊がまだまだいるようだったので、それらと交戦する。

 

ラミアがかなりいるが、それも天使部隊が上空から攻め立てるので、掃討は難しくない。

 

全てを蹴散らして、周囲の地形を把握しておく。

 

宝石が散らばっている。

 

どこかの宝石店のものだろうか。

 

拾っておくと、アオガミがアドバイスしてくれた。

 

「宝石は悪魔に好まれる。 契約の対価として求められる事がある。 持っておいて損はないだろう」

 

「分かりました。 しかしこの惨状は……」

 

「ああ、酷いものだな。 18年前の大戦というが、やはり記憶を調べる限り、既に18年前には終わっていた可能性が高い。 大魔王が姿を見せた時点では、とっくにこの状況は来ていた。 だとすると、この戦いは敗戦処理なのかも知れない」

 

「……」

 

ジャックフロストの親玉みたいな真っ黒いのがいる。

 

敵対的ではなかったので話を聞いてみると、前からこの辺りに住んでいて、「銀座の夜の帝王」を目指していたそうである。

 

この荒れ果てた砂漠の帝王か。

 

滑稽でしかない。

 

呆れているのに気づいたか、大きなジャックフロスト。じゃあくフロストというらしいのだが。

 

それは、ぷんすかと怒って見せた。

 

「お、おいらもいずれはもっと高位の存在になってみせるんだホ! その時は、銀座の帝王の威厳を見せてやるホ!」

 

「ああいうのがこれから山ほど来るようだが」

 

「ホ!?」

 

どうやら、ギリシャ神話の部隊がきたようだ。

 

ヘカトンケイレス。

 

一目で分かった。

 

三兄弟の大巨人。頭50、腕は100。ただ、見た目の凄まじい異形と裏腹に、其処まで凶暴な雰囲気はない。

 

ただ、感じる力が桁外れだ。

 

悪魔も、慌てて進路から逃れているのが分かる。生半可な悪魔では、あれには戦いどころではないだろう。

 

主神の地位にいたティターン神族を退ける切り札となった巨人達である。その実力は、生半可な神々では勝てない。

 

跳び上がったじゃあくフロストとやらは、隅っこでブルブル震え始める。これでは、悪さどころではないだろう。

 

危険なことをやり始めるようだったら、こちらも考えなければならなかったが。

 

ユヅルが嘆息。

 

「僕の手持ちになるか。 此処からは離れられるが」

 

「……俺、もっとビッグになりたいホ。 悪魔合体だと、なんか負けた気がするんだホ」

 

「そうか。 少なくともこの辺りからは離れた方が良いだろうな。 これからベテル本部が本陣を敷く。 逃げ遅れると、大天使が殺しに来るぞ」

 

「ヒホ! 大天使! じょ、冗談じゃないホ! でも、ありがとホ! 俺が強くなったら、今度は何か礼をさせて貰うホ!」

 

真っ黒だったジャックフロストみたいなのが、ひゅひゅっと縮んで、普通のジャックフロストになると。

 

そのままどこかに逃げていった。

 

あれは背伸びして、ああいう姿をしていた、ということなのか。

 

煌を最後に見ていたけれど。

 

今度は煌の真似をしたりしないだろうな。

 

まあ、その時はその時だ。

 

悪さをしないのであれば、なんでもいい。ジャックフロストは本来危険な妖精だ。その危険を取り除くことが出来ただけでも、今は充分とするべきだろう。

 

一度戻る。

 

天使達の本隊が来たらしく、以前アオガミの記憶で見た美しい方陣を敷いている。アブディエルが指揮をとり、此処から更に戦線を拡大するつもりのようだ。

 

とりあえず、此処の確保には協力した。これから混戦になるとみて良い。

 

伝令が来た。

 

ベテル日本支部のデビルサマナーだ。

 

決死の思いで来たという顔をしていた。

 

「夏目煌くん、すぐに戻ってきてくれるか」

 

「そちらで進展があったんですね」

 

「ああ。 とにかく急ぎだ。 此処は日本支部の戦力を最小限だけ貼り付けていればいい。 皆、戻ってくれ」

 

「了解」

 

敬礼をびしっと返すユヅル。

 

タオも礼を丁寧に返していた。

 

煌は出来るだけ急いで戻る。途中で、いくつかの話を急ぎ気味にされる。

 

「東京の方で問題が顕在化している。 こっちにいる面子では手に負えないかも知れない」

 

「ライドウさんの実力は僕をしのぎます。 彼女がいてもどうにもならないんですか?」

 

「あの人は別件対応中だ。 更に脅威度が高い案件にね」

 

「……」

 

本当に色々とまずいんだな。

 

それを思い知らされて、煌は無言になる。

 

ともかく、今は問題を一つずつ片付けていかなければならない。

 

国会議事堂近くに出ると、飛んできたのは、アマノザコだった。思わず構えるデビルサマナーを制止する。

 

「煌! 見つけた見つけた! 気配を感じたから、来て良かった!」

 

「なんだ。 君たちの知る悪魔か」

 

「問題ない。 知り合いだ。 人を傷つけない契約もしてある」

 

「そ、そうか」

 

アマノザコに、軽く説明。

 

これから東京に戻ること。

 

大戦が魔界の東京駅近辺で起きている事。それらを話すと、アマノザコもうんうんと頷いた。

 

「東京駅だっけ? なんだか大きな戦いが始まるって聞いたから、知らせてあげようと思ってきたんだけど、知ってたんだね! 流石だね!」

 

「知らせに来てくれたのは助かる。 それでもう東京に戻るが」

 

「うーん、あたい邪魔にならないようにするから、着いていっていい? 眷属にはまだなろうとは思わないけれど」

 

「……分かった。 ただし人前には姿を見せないようにしてくれ」

 

これは、何か事情があるな。

 

ともかく、今は急ぎだ。

 

龍穴を使って、研究所に戻る。

 

いきなり警報が鳴っている。それだけ切羽詰まった事態なのかと思ったが、警報が停まった。

 

一緒に来たデビルサマナーも、困惑している様子からして、彼が魔界に来てから何かあったようだ。

 

ちなみにアマノザコは実体化を解除して、普通の人には見えないくらいに肉体を希薄化させている。

 

デビルサマナーの素質がある人間にしか、これなら見えない。

 

力の消耗を抑える意味もあるようだ。

 

ユヅルが駆け回っている研究員達に聞こえるように言う。

 

「敦田ユヅル、夏目煌、磯野上タオ戻りました。 荒事があれば対応します!」

 

「今越水長官が上で指揮をしている! そちらに行ってほしい!」

 

「こんな時に侵入とは……」

 

「世界最高レベルのセキュリティが紙同然だ。 それにスタンドアロンのPCにまで侵入してくるのではどうにもならん……」

 

ぼやいている研究員達。

 

ともかく会議室へ。

 

武装した自衛官が殺気だって走り回っているが。

 

警報が停まったと言うことは、危急時ではないということだ。

 

越水長官が、険しい顔をして報告を聞いている。

 

どうもこれは、面倒な事態が複数起きているとみて良さそうだ。

 

ユヅルが戻ったことを告げると、越水長官がご苦労と言って、椅子に腰掛ける。疲れている様子はなく、相変わらずの超人ぶりだ。

 

「早速の活躍見事だ。 アザゼルはファントムソサエティの上層にいた悪魔で、ファントムソサエティの壊滅とともに同時に討伐されていた。 無理に具現化したから弱体化していたのだろうが、それでも倒せたのはたいしたものだ。 これから乱戦になると判断して、一度退いた判断も正しい。 戦力を無駄に出来るほど潤沢ではないからな」

 

「こちらでは何が起きたんですか。 負傷者がいれば対応します」

 

「磯野上くん、問題ない。 ハッキングだ。 しかも恐らくは、それをやったのは例の八雲だろうな」

 

前は正面攻撃を狙ってきたが、今度はハッキングか。

 

悪魔は電子機器に極めて強いと聞いていたが、確かにそれを考えると、ジョカを従えている八雲なら簡単に電子セキュリティを突破できるだろう。

 

いずれにしても、対応が早かったので、機密を奪われていないらしい。それで良かったと言いたいところだが。

 

サーバなどを強引にシャットダウンした事もあって、復旧に一手間以上掛かるそうだが。

 

「君たちを呼び戻したのは別件だ。 今ヨーコくんとイチロウくん、ミヤズくんが調査をしているが、浄増寺を中心に東京に悪魔が出現している。 何かしらの工作をしている可能性が高い」

 

「!」

 

「浄増寺を破られると極めて厄介だ。 即座に対応にあたってくれ」

 

「分かりました」

 

煌が立ち上がる。

 

二人には先に休憩を取って貰う。煌はそういうのはほとんど必要なくなっている。

 

後で合流するといって、ユヅルはタオとともに休憩所に向かった。

 

指示された座標はいくつかあるが、すぐにイチロウと連絡。合流地点を決めると、煌は合一を解除。

 

自衛隊が車で送ってくれるようだが。

 

今なら、走った方が早い気がした。







※アザゼル

メガテンではデビルサマナーソウルハッカーズなどで登場する悪魔です。いわゆるグリゴリ(エグリゴリ)ですね。

グリゴリというのは、楽園追放された人間の子孫達を見に来て、それを愛した天使達です。ちなみにその天使と人間の子が「ネフィリム」ですね。グリゴリは堕天使扱いされる事も多いです。メガテンではその堕天使扱いを採用しています。

まあ、天使が堕天する条件というのはいくつかあるのですが、その一つが愛慕だったりしますので。この扱いは妥当でしょう。

本作でのアザゼルは、色々あってファントムソサエティの総裁をしていました。東京受胎の時にファントムソサエティが壊滅的な打撃を受けたのですが、その時東京を離れていたので、シェムハザら他幹部と違い生き残る事が出来ました。しかしながらその後ファントムソサエティが全滅した時にツバメさんに討ち取られてしまいます。

その後短時間で無理矢理アッシャー界に復帰してきた事もあって、この東京駅付近での戦いでは力が足りていませんでした。それもあって、煌くんに比較的あっさり討ち取られてしまいました。





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