頭が黄金色の天秤の古びたスーツを着た男がそこには立っていた。金属の揺れ触れる音を鳴らしながら彼は私に語りかけてくる。
「現実と非現実、それらは形而下と形而上といっても差し支えない、ある種の反発であり物事の一側面に過ぎません」
「それらはコインの裏表と同じ……」
「崇高であるのです」
「嗚呼……お目にかかれて光栄です、先生。私の名前はアレゴリー。ゲマトリアの一員です。」
「我々ゲマトリアは崇高を目指し、日夜研究と探求を続けて来ました。」
「その最中、崇高の側面である神秘と恐怖を発見しそれらを利用することが可能になりました」
「ですが、どちらに対するアプローチも表現も全てが不完全であったのです。ゲマトリアはこれまでの研究と探求が無駄になったと同義であると考えました」
「……少なくとも私はそう考えています。」
「ですが、先生。私はある種の形而上の資源とも言える物から、二側面を持つ彼らを束ねました。」
「それらは形而下としても顕現し、新たな神性として朦朧とする非現実から呼び出されたのです」
「私は彼らを自己の三天使と名付けました」
「そして私は形而下でありながら朦朧とするという特異な状態である彼らを束ね一つの事象へと転化しました。」
「彼らの一人の名を借りミルハと呼称しています」
アレゴリーが現れ、金属の音を鳴らしながら語りかけてくる。
「ゲマトリアは秘儀や技術を所持している者達の集まりでした。それは私も例外ではありません。」
「私の「秘儀」は元来「儀式」と「契約」と同じ事象ですが、今となっては原義とは異なっています。」
「……嗚呼、申し訳ない、少し熱中しすぎましたね。再度お目にかかることができ、光栄に思います、先生。」
「ときに先生、信頼とは何でしょうか?多くの場合は信じて頼ることと答えるでしょう。」
「しかし、本当にそうでしょうか?……少し露悪的な言い方ですがこう解釈もできるはずです。」
「自由意識の否定と譲渡であると。もっと大衆的イメージいえ、解釈の中で語るのであれば……」
「それは「信仰」です。私の秘儀は「信仰」と「神性」あるいは「神格化」です。それらは自身の自由意識を対価に安心や信用といった非現実的、つまりは形而上の対価を得る行為であるのです」
「私は私の秘儀を用いて神性を呼び出しました。多くの神性よりも自由意識による神格化が強い神性として」
「それは人間の純粋な意識と信仰による自由でない矛盾した自由意識からの脱却による人間の超越的欲求から生まれました」
「私はそれを古来、高次な人間的状態の永続性と解釈した不老不死の探求家達の象徴の解釈からフマーヌスと呼称しています」