# 大きくなりすぎちゃった歩夢ちゃん
「あぁ……今日も頑張ったなぁ」
上原歩夢は放課後の校舎裏で深いため息をついた。肩にはスクールバッグ、腕には同好会の練習着が入った袋を提げている。
「ライブ準備と期末テスト対策……両立するのはやっぱり大変だよ」
ここ数週間、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の活動と学業を両立させようと必死だった。ステージ構成を考え、振り付けを練習し、さらに授業の予習・復習までこなす日々。歩夢の体は確実に限界へと近づいていた。
「歩夢さん、また徹夜したの?目の下に隈ができてる」
背後から声がかかった。振り返ると、そこには小柄な後輩・天王寺璃奈が立っていた。彼女は少し心配そうに歩夢を見上げている。
「うん……ちょっとだけ。でも平気だよ!スクールアイドルだから元気いっぱい!」歩夢は無理に笑顔を作ってみせた。
「無理しないで」と言いながら、璃奈は鞄から小さなボトルを取り出した。「これ、私が作った特製の栄養ドリンク。疲労回復成分たっぷりだから」
「えっ、本当に?ありがとう、璃奈ちゃん!」歩夢は嬉しそうに受け取った。「今すぐ飲んでいい?」
璃奈はわずかに嬉しそうに肯定した。「どうぞ」
透明な液体は不思議な光沢を放っていた。歩夢は一口飲むと、「わぁ、甘いのに後味スッキリ!なんだか力が湧いてくるみたい」と喜んだ。
実際、その後の歩夢の動きは驚くほど軽やかだった。教室に戻ると集中力も増し、いつもなら解けない数学の問題さえ簡単に解けた。帰り道も足取りが軽く、まるで翼が生えたかのようだった。
「すごーい!璃奈ちゃん、本当にすごい効果だね!」
しかし夕方になると、歩夢の体に違和感が現れ始めた。
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「あれ……?なんか熱っぽいかも」
校舎内の女子トイレで手を洗いながら、歩夢は自分の頬に触れた。確かに火照っている。朝から感じていた微かな頭痛も強くなってきていた。
「風邪かな……でも栄養ドリンクのおかげで疲れは取れてるはずなのに」
洗面台に映る自分の姿を見つめる。確かに疲れているように見えるが、妙なところがあった。鏡の中の自分が徐々に大きくなっている気がするのだ。
最初は錯覚だと思った。しかし次の瞬間、明らかに歩夢の視点が上がっていた。洗面台が低い位置に移動している。
「えっ……?」
歩夢は慌てて周りを見回した。個室のドア枠が低く見え、水栓も小さくなっていた。そして—
「何これ……何これ!?」
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「きゃあああっ!!」
歩夢の悲鳴が女子トイレに響き渡った。一斉に周囲の生徒たちが振り向く。
「どうしたの?」「上原先輩?」
「大丈夫ですか?」
騒然とする中、一年生の中須かすみが心配そうに歩夢に駆け寄った。スクールアイドル同好会のメンバーであり、歩夢にとっては信頼できる後輩だった。
「あ、あ、か、かすみちゃん……」
歩夢は震える声で言葉を紡ぐ。彼女の身長は既に165cmを超え、標準的だった身長を優に超えていた。
「何かあったんですか?」かすみが尋ねた瞬間、歩夢が彼女の腕を掴んで個室へと引きずり込んだ。
「わわっ!」バランスを崩しかすみが壁に手をつくと、ちょうどその壁が歩夢の腰の高さになっていた。
「な、何ですか急に……」かすみは混乱しながらも歩夢を見上げた。「あれ?歩夢先輩……」
「見て……私……大きくなってる……」歩夢の声は震えていた。
二人の会話の間にも数センチメートルずつ、歩夢の体は成長していた。制服の上着はすでに胸のあたりがきつくなり始めており、スカートは腰の部分がパツンパツンになっている。
「え、いや、それは単に栄養ドリンクで元気が出ただけでしょ?」かすみは冗談めかして言ったが、すぐに現実に気づいた。「いや待って、本当です!どんどん大きくなってる!」
歩夢の身長は今や170cmを優に超え、通常159cmの彼女とは見違えるほど高くなっていた。155cmのかすみよりも頭一つ分以上高い。
「どうしよう……どうすればいいんだろう……」歩夢は困惑と恐怖で顔を覆った。
「とりあえず外に出ましょ!」かすみは慌てて提案した。「こんなところで困ってる場合じゃないです!」
「でも、みんな私を見てる……」歩夢は個室の扉を開ける勇気がなかった。窓ガラスに映る自分の姿は、既に制服のボタンが弾け飛びそうなほど膨らんでいる。
「もう気づかれてますよ!ほら!」かすみが窓の方を指差すと、廊下では生徒たちがざわつき始めていた。誰かが「あれ、上原先輩だよね?」「でもなんか……デカくない?」と話し合う声が聞こえてくる。
「まずい……」歩夢は頭を抱えた。「みんなにバレちゃう……」
「歩夢先輩!」かすみが真剣な表情で言った。「これは非常事態です!とにかくここから脱出して、りな子に相談しましょう!」
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「そうだね!璃奈ちゃんなら何か分かるかもしれない!」歩夢が同意した瞬間—
「きゃっ!」
歩夢が突如として前屈みになった。かすみの視界の端を何かが高速で横切る。次の瞬間、鋭い衝撃が額を襲った。
「いたっ!」
かすみは反射的に額を押さえた。手を離すと、そこには制服のボタンが食い込んでいる。血が薄く滲んでいるのが見えた。
「ごめんなさい!かすみちゃん!」歩夢が慌てて謝罪した。
「だ、大丈夫です……それより歩夢先輩……」かすみの視線は自然と歩夢の胸元に注がれた。「胸が……」
歩夢自身もそれに気づいていた。制服のブラウスは胸の部分が完全に裂け、白いレースの下着が露わになっていた。かつてDカップだった胸は今や二回りも大きく、推定Gカップまで成長している。
「ああ……どうしよう……」歩夢は両手で胸を覆おうとしたが、すでに腕が届かないほど大きくなっていた。「体が制御できない……」
再び歩夢の体が伸び上がる。身長は175cmを優に超え、天井に頭が触れそうなほどになっていた。パニクった歩夢は個室内の狭い空間で右往左往する。
「落ち着いてください歩夢先輩!」かすみが叫んだ。「深呼吸してください!」
「で、できないの……!」歩夢は涙声で答えた。「どんどん大きくなるのが止まらないの……!」
かすみは冷静に状況を分析した。(これヤバい……歩夢先輩の体が限界に達してる……!)
「かすみちゃん、助けて……」歩夢の声は震えていた。彼女の瞳には恐怖の色が浮かんでいる。
かすみは決断した。「こうなったらもう……」スマホを取り出す。「りな子を呼び出します!」
「でも、みんなに見られたら……」歩夢が不安そうに言う。
「もう手遅れですよ!」かすみは個室のドアを少しだけ開け、廊下を覗き見た。案の定、すでに人垣ができていた。「みんな気づいてます。歩夢先輩の異変に」
歩夢の顔から血の気が引いた。「そんな……」
「りな子に説明して、ドリンクの解毒方法を探ってもらいましょう!」かすみは素早くスマホの画面を操作した。「時間がありません!」
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「あっ……」
その時、チャイムが鳴り響いた。五時間目の終わりを告げる合図だった。トイレ内が一気に騒がしくなる。
「次の授業始まるよー!」
「急がないと遅刻する!」
「あれ?上原先輩いないの?」
生徒たちがぞろぞろと出ていく。歩夢のことを心配する声もあったが、時間が迫っているせいで長居はできなかった。
「歩夢先輩大丈夫かな……?」
「具合悪そうだったよね」
「保健室行ったのかな?」
最後の一人がドアを開け、閉じた時—周囲の音がぴたりと止んだ。
「今だ!」かすみは素早くスマホをタップし始めた。「りな子にメッセージ送ります!」
「お願い……」歩夢は肩で息をしながら呟いた。体中の関節がギシギシと軋む音がするようだった。
かすみはメッセージを素早く打ち込んだ。
『りな子!緊急!歩夢先輩が巨大化してる!トイレ個室!すぐに来て!』
送信ボタンを押す。既読を示す緑のマークが付くのを待った……
しかし、待てど暮らせど既読は付かなかった。
「なんで……!」かすみが焦りの色を見せる。「りな子、どこにいるの!?」
「きっと授業中だよ……」歩夢が弱々しく言った。
「あ……」かすみは思い出した。璃奈は三時間目に体育があると言っていた。おそらくスマホは教室に置きっ放しなのだろう。
その時、歩夢の体が再び大きくのけぞった。
「あうっ……」
ミシッという鈍い音が個室内に響く。歩夢がゆっくりと頭を下げると、天井に頭頂部が接触していた。身長はとうとう2mを超えていた。
「天井に当たっちゃった……」歩夢の声には恐れが混じっていた。
「ど、どうしよう……」かすみが焦燥感を募らせる。「このままじゃ歩夢先輩が出られなくなる……」
歩夢は個室内の空間を見回した。すでに彼女にとっては狭すぎる空間だった。両腕を広げれば壁に触れ、脚を伸ばせば便器に届く。
「かすみちゃん……」歩夢の声は震えていた。「私、どうしたらいいの……?」
かすみは必死に考えを巡らせた。時計を見ると、次の授業が始まって五分が過ぎている。廊下に人の気配はない。今ならトイレを出て職員室に行き、先生に助けを求められるかもしれない。
「歩夢先輩、ちょっとここで待っていてください!」かすみは決意を固めた。「かすみん、先生を呼んできます!」
「でも、一人じゃ……」
「大丈夫です!」かすみは強く言い切った。「りな子にも伝言残しておきます!歩夢先輩はここで待っていてください!」
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「違うの……かすみちゃん……」歩夢は懇願するように言った。「私が言ってるのは一人になることじゃなくて……私の体が……」
突然、歩夢が再び激しい苦痛に襲われた。
「きゃあっ!」
彼女の体が弓なりに仰け反り、胸の部分から強い圧力がかかっているのが傍目にもわかった。
「歩夢先輩!大丈夫ですか!?」
「何かが……溢れて……来るの……!」歩夢の声は震えていた。「胸が……痛くて……」
次の瞬間、歩夢の胸部がさらに膨張した。Gカップを超え、今やJカップの大ぶりな胸がブラジャーカップから完全にはみ出していた。制服のボタンはさらにいくつか弾け飛び、肌が露出していく。
「ひっ……」
かすみが息を飲んだ瞬間、信じられない光景が目の前に広がった。歩夢のピンク色の乳首から、純白の液体が滴り落ちていた。
「え……な、何これ……?」歩夢自身も何が起きているのか理解できず、困惑の表情を浮かべている。
液体は次第に量を増し、床に水溜りを作り始めていた。甘く香ばしい匂いが個室に漂う。
かすみは言葉を失ったまま立ち尽くしていた。目の前の状況があまりにも非現実的で、理解の範疇を超えていた。
「か、かすみちゃん……これは何なの……?」歩夢は涙声で尋ねた。恥ずかしさと戸惑いが入り混じった表情だった。「私の体……どうなっちゃってるの……?」
かすみは何も答えられなかった。科学者である璃奈ならともかく、普通の高校生のかすみにこのような医学的異常に適切な判断を下せるわけがない。
歩夢の体は依然として成長を続けていた。今や彼女の肩幅は個室の幅とほぼ同じになっていた。もし今後もこのペースで成長が続けば、物理的に個室から出られなくなってしまう。
「まずい……」かすみは我に返った。「歩夢先輩!とにかくこれを拭かなきゃ!」ポケットからハンカチを取り出し、急いで歩夢の胸元に押し当てた。「かすみん、タオル持ってくるから待ってて!」
「でも……」
「大丈夫!すぐ戻ります!」かすみはドアに向かったが、そこで足を止めた。「歩夢先輩、まだ動けますか?」
歩夢は頭で天井を突き破らないよう、慎重に身体を動かしていた。「なんとか……」と辛うじて答える。「でも長くは……持たないかも……」
「わかりました!すぐに戻ってきます!」
かすみが個室を出ようとした瞬間、新たな問題が発生した。歩夢の巨体によって個室のドアが僅かしか開かなくなっていたのだ。
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「え……?」
かすみが言葉を失う中、歩夢の体はますます大きくなっていた。天井に頭を付け、膝を曲げた不自然な姿勢で立つ歩夢。もはや視線の高低差は大人と子供ほどもある。
「かすみちゃん!」歩夢の声が頭上から降ってきた。その声音には切迫感があり、今にも泣き出しそうな様子だった。
かすみが見上げると、歩夢の大きな瞳から涙が零れ落ちるところだった。
「お願い……お願いだから……」歩夢が両手でかすみの肩を掴んだ。その力強さにかすみは思わず身を硬くした。「私のおっぱいを……絞ってほしいの」
「えっ!?」かすみは耳を疑った。「そ、そんなこと……」
「違うの!」歩夢は首を振った。「自分でもわからないの……でも何かが『出したい』って言ってるの……私の体が……そう訴えてる気がする……」
歩夢の言葉に嘘はなかった。彼女の表情は苦痛と戸惑いに満ち、真剣そのものだった。巨大化する身体、乳房から溢れる謎の液体——確かに異常事態だった。
「私にはできないですよ……歩夢先輩……」かすみが首を横に振る。
「お願い……!かすみちゃんだけが頼りなの!」歩夢の懇願には切迫感があった。「先生や他の子には見せたくないし、何より……怖いの……」
その言葉に、かすみはハッとした。歩夢だってこの異常事態に怯えている。スクールアイドルとして明るく振舞っている彼女だが、実はとても繊細な性格だということをかすみは知っていた。
「……わ、わかりました」かすみは覚悟を決めた。「でも、どうすればいいか教えてくれますか?」
「ありがとう、かすみちゃん……」歩夢の顔に安堵の色が浮かんだ。「手のひらを上にして……こうやって……」
歩夢が自分の右手を差し出し、乳首に向けて傾ける仕草を見せた。「私が絞るから、そこに……」
「わかりました」かすみは慎重に右手を差し出した。「それで……いいんですね?」
「うん……ごめんね、こんなこと頼んで……」歩夢の声には羞恥心が混じっていたが、それでも続ける必要性を理解していた。
かすみは黙って頷いた。緊張で手が震える。それでも、今は歩夢のために何かをするしかない。
歩夢がゆっくりと上体を傾けた。巨大化した胸が揺れ、かすみの手のひらに近づいてくる。
「いくよ……?」
「はい……」
歩夢が片方の乳房を持ち上げ、かすみの手のひらの上で軽く圧力をかけた瞬間——
「あっ……!」
白い液体が勢いよく流れ出した。
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
白い液体は温かく、かすみの手のひらを満たしていく。甘い香りが個室全体に広がり、かすみは思わず鼻をくんくんと動かした。
「わっ……」かすみが小さく声を漏らす。「これ……牛乳みたいだけど、もっと濃厚というか……」
「そんなの飲まないで!」歩夢が慌てて制止する。「汚いから……絶対ダメ!」
しかし、歩夢の言葉を遮るように、彼女の身体がさらに膨張した。ブチッという音と共に、最後の制服の布地が裂け散る。歩夢は今や完全に全裸になっていた。
「あ……」歩夢が両手で胸と下半身を隠そうとしたが、巨大化した身体では手が十分に届かない。
かすみは咄嗟に目を逸らした。「大丈夫です、見てませんから!」
「ごめんね……こんな姿見せて……」歩夢の声は震えていた。「でも止められないの……」
かすみの手のひらには、すでに溢れそうな量の白い液体が溜まっていた。捨てるべきか、保存すべきか—科学的な好奇心が頭をもたげる。
「かすみちゃん……それ、捨てて欲しいの……」歩夢の声は涙交じりだった。「恥ずかしいし、何より……あなたが危険かもしれない」
「でも、この液体の正体がわかれば、歩夢先輩を治せるかもしれませんよ?」かすみは正直な気持ちを吐露した。「りな子なら何かわかるかも……」
歩夢は悲痛な表情で首を振った。「それでも、お願い……捨てて」
かすみは葛藤した。希代の発明家である璃奈に渡せば、この謎を解明してくれる可能性はある。しかし、歩夢の気持ちも理解できた。この状況でさらなる恥辱を与えることはできない。
「わかりました」かすみは渋々頷いた。「じゃあ、ひとまずこれだけ……」
手のひらの液体を個室内の便器に流そうとした瞬間、新たな問題が発生した。歩夢の足が巨大化しすぎて、床が抜け落ちそうになっていたのだ。
「まずい……!早く何とかしないと……!」
かすみは液体を流し終えると、歩夢に向き直った。「歩夢先輩、とにかくここを出ましょう!このままじゃ危ないです!」
歩夢は悲痛な面持ちで頷いた。「でも……もう……」
彼女の身体は既に個室の幅を超え、今や完全に詰まってしまっていた。外に出ることすら叶わない状況に、二人の表情に絶望の色が広がっていく。
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「か、かすみちゃん……!」歩夢の声が震えた瞬間、彼女の全身が激しく揺れ始めた。
「きゃあっ!」
かすみは足元の不確かさにバランスを崩し、咄嗟に歩夢の太ももにつかまった。しかし震動は収まらず、むしろ増していく一方だった。
「止まらない……!体が……熱い……!」
歩夢の叫びと共に、白い液体の流出量が倍増した。今や乳首からは噴水のように液体が噴き出し、個室内に濃密な甘い香りが充満していく。
「歩夢先輩!しっかりしてください!」
かすみは叫んだが、歩夢の耳には届かないようだった。彼女の身体は爆発的な速さで拡大し始め、天井板がミシミシと音を立てて軋んだ。
「こんな……こんなの……!」かすみの声は恐怖で上ずっていた。「逃げないと……でも……」
歩夢の腕が大きく膨らみ、今や個室の幅を超えていた。脱出路は完全に塞がれてしまっている。白い液体が雨のように降り注ぎ、かすみの体も衣類も液体まみれになっていく。
「もう……もうダメだ……」かすみは諦めかけた。「歩夢先輩の体内に入れられるくらいなら……いっそこのまま……」
彼女の目から涙が溢れた。甘ったるい香りに包まれ、温かい液体に浸かりながら、かすみは死を覚悟した。
そのとき—
ズシン!
大きな音と共に建物全体が揺れ、天井板が一部崩れ落ちた。
「かすみちゃん……ごめんね……」歩夢の声は消え入りそうで、ほとんど聞き取れなかった。「でも……これ以上は……耐えられないの……」
歩夢の身体が光り輝き始めた。白い皮膚が淡い青色に変わっていく。そして—
パキン!
何かが砕けるような音がして、歩夢の全身から一斉に光が迸った。
「うわっ!」
眩しさに目を細めたかすみの視界の中で、歩夢の巨大な身体が急速に縮んでいくのが見えた。10秒もしないうちに、歩夢は元の身長159cmまで戻っていた。
「な……何が起きたの……?」かすみは呆然としながら立ち上がった。
歩夢は床に倒れたまま、荒い息をついている。その表情には安堵の色があった。
「助かった……のかな……」かすみが歩夢に近づいた。「歩夢先輩?大丈夫ですか?」
歩夢は弱々しく目を開けた。「うん……何とか……」
だが安心するのは早すぎた。個室の壁がグラグラと揺れ、今にも崩れ落ちそうになっていた。
「まずい!早く出ないと!」かすみは慌てて歩夢の腕を掴んだ。「立てますか?」
歩夢は痛みに顔を歪ませながらも立ち上がろうとした。しかし、彼女の足元には大量の白い液体が溜まっていた。
「滑る……!」かすみが警告する。「歩夢先輩、足元注意して—」
そのとき、廊下から複数の人影が見えた。
「ねえ!誰かいるの!?」
「凄い音したんだけど……」
「まさか倒壊事故……?」
教師や生徒たちが集まってきたのだ。かすみは途方に暮れた。(この状況を見られたら……歩夢先輩が裸なのに……!)
「かすみちゃん……」歩夢の弱々しい声が聞こえた。「私……」
# 巨大化する歩夢ちゃん(続き)
「歩夢先輩……!」
かすみは迷うことなく自分の着ていたベストを脱ぎ、歩夢の裸体を覆った。わずかな布面積ではあったが、これが今の状況での精一杯だった。
「かすみちゃん……」
「喋らないでください!」かすみは厳しい口調で言ったが、その眼差しには深い優しさがあった。「もうすぐ先生たちが来るから、それまで少しでも休んでください」
歩夢の身体は完全に元のサイズに戻っていたものの、その消耗は想像以上だった。顔は蒼白で、唇は乾ききっている。
ドアが開き、三人の教師が姿を現した。若い女性教員が先頭で、その後ろには学年主任と用務員が続いている。
「誰かいるの?」女性教員が声を掛けた。「大きな音がしたけど、怪我人はいる?」
「先生!」かすみは勇気を振り絞って前に出た。「上原先輩が体調を崩されて、ずっと倒れていたんです」
「上原さん?」
「はい。でももう意識はありません」かすみは嘘をついた。実際には歩夢はかろうじて意識を保っていたが、それを伝えれば更なる混乱を招くと判断した。「それに制服も汚れてしまったので、新しいものを用意していただけませんか?」
「わかったわ」女性教員が頷いた。「保健室から制服を取ってくるわ。学年主任先生、上原さんの様子を見てくれますか?」
「もちろん」
学年主任が個室に近づこうとしたとき、かすみが素早く割って入った。
「あの!すみませんが……」かすみは声を落として言った。「上原先輩、かなり動揺しているようで……男性の先生にはあまり見られたくないみたいです」
学年主任は眉をひそめたが、すぐに理解を示した。「わかった。女性教員だけで対応するようにしよう」
かすみは胸をなでおろした。「それと……この個室、床が抜ける寸前なんです。みなさん入れないようにしてもらえますか?」
「了解した」学年主任が周囲の生徒たちに向かって叫んだ。「皆さん!ここは立ち入り禁止です!理由があってのことですから、協力してください!」
教師たちが撤退し、生徒たちも散り始めた頃、歩夢が弱々しくかすみの袖を引っ張った。
「かすみちゃん……ありがと……」
かすみは歩夢のそばに跪いた。「当然ですよ。仲間なんですから」
歩夢はかすみの言葉に微笑みを浮かべたが、すぐにまた苦しそうな表情に戻った。「でも……どうしてあんなことになったんだろう……」
「あとでりな子にお願いしましょう」かすみは決意を込めて言った。「今は休んでください」
「うん……」歩夢は安心したように目を閉じた。「ありがとう……」
その直後、歩夢の瞼が完全に落ち、静かな寝息が聞こえ始めた。疲れ果てた少女の表情には、やっと訪れた安堵が表れていた。
「おやすみなさい、歩夢先輩」かすみはそっと囁いた。「全部元通りになりますからね」
廊下からは慌ただしい足音が聞こえてきた。女性教員が替えの制服を持って戻ってきたのだろう。
かすみは深く息を吸い込み、これから始まる長い一日の残りに備えるべく、しっかりと背筋を伸ばした。
# 巨大化する歩夢ちゃん(完結編)
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翌日の午後。保健室の白いベッドで歩夢がゆっくりと目を開けた。
「歩夢先輩?」
かすみの声に、歩夢はぼんやりとした意識を取り戻した。枕元には心配そうに覗き込むかすみの顔があった。その奥には侑と璃奈も座っている。
「かすみ……ちゃん?」歩夢の声はかすれていた。「私は……一体……」
「大丈夫です!」かすみが安堵の表情を浮かべた。「今日は本当に酷い目に遭いましたね。でももう安全です!」
歩夢は状況を整理しようと辺りを見回した。消毒液の匂いがする清潔な部屋。自分の腕には点滴がつながっている。そして璃奈が申し訳なさそうに俯いていた。
「歩夢さん……」璃奈が小さな声で切り出した。「この度は本当にごめんなさい」
「璃奈ちゃん?どういうこと?」歩夢が首を傾げる。
侑が苦笑しながら説明した。「つまりね……」
璃奈は栄養ドリンクについて正直に話した。彼女自身の体で臨床実験を行い、効果は抜群だが副作用はないと確認していたこと。しかし歩夢の場合に限って想定外の巨大化と母乳分泌という異常事態が発生したこと。
「私の計算ミスだった」璃奈は深く頭を下げた。「歩夢さんの体質との相性を見誤っていた。本当にごめんなさい」
「でも、実験して何の副作用もないって確認したんでしょ?」歩夢が優しく尋ねた。
璃奈はうなずいた。「だからこそ余計にショックだった。完全に想定外だったから……」
「だったら仕方ないよ」歩夢が微笑んだ。「それに実験してくれてなかったら、私も飲まなかっただろうし」
「そうだよりな子!」かすみが強く言った。「責任を感じる必要なんてないんだから!」
侑も笑顔で加わった。「私たちみんなで乗り越えたんだから、もう水に流そうよ」
璃奈は少し潤んだ目を拭った。「ありがとう……でも必ず原因を突き止める。もう一度検査させてもらうけど……」
「もちろん!」歩夢は快活に答えた。「むしろ喜んで協力するよ。ただし今度は私の体で直接試さないこと!」
四人は笑い合った。部屋の空気が和やかになる。
「それにしても不思議だったな〜」侑が腕組みをして言った。「なぜ歩夢だけあんな目に遭ったんだろう?」
かすみが得意げに胸を張った。「それがですね!実はかすみんが予測しているんです!」
「えっ?」歩夢が興味を示した。
「あのドリンクには何らかのホルモンけー物質が含まれていたはずです!」かすみが指を立てて解説する。「女性ホルモンの一種で、巨大化を促進させたんじゃないでしょうか?」
「なるほど!」璃奈が真剣に聞いていた。「乳腺の発達を促進させる作用がある可能性は高い」
「そして歩夢先輩は……」かすみがニヤリとした。「侑先輩とお付き合いされているわけですし……」
「やめてよかすみちゃん!」侑が赤面して抗議した。
「その……関係があるの?」歩夢も頬を染めている。
璃奈は少し考えてから、「愛の力」と小さく呟いた。「歩夢さんの愛情エネルギーが……ドリンクの成分と共鳴した可能性も……」
「ちょっと璃奈ちゃん!」侑が慌てて友人の発言を遮った。
四人は再び笑いに包まれた。緊張が完全に解けた瞬間だった。
「とにかく」歩夢が真面目な顔に戻った。「皆のおかげで助かったよ。ありがとう」
「当たり前ですよ!」かすみが拳を握った。「仲間なんですから!」
璃奈は静かに頷き、「明日はもう大丈夫だと思う。体力も回復してきたようだし……」
歩夢はベッドの上で体を動かしてみた。驚くほど体が軽いことに気づく。
「本当だ……すごく体が楽」歩夢が嬉しそうに言った。「逆に気分爽快かも」
「やっぱり効果はあったんだね!」侑が励ますように言った。「副作用はあっても効能自体は本物なんだ」
歩夢は笑顔でうなずいた。「明日からの練習、全力で頑張れそう!」
四人は和気藹々と話し合いながら夕方を過ごした。窓から差し込む陽光が部屋を暖かく照らしている。
「よーし!」歩夢が勢いよくベッドから跳ね起きた。「ちょっと体を動かしてこようかな?」
「安静にしなさい!」三人が同時に叫び、保健室に再び笑い声が響いた。
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後日談:
璃奈の研究によると、栄養ドリンクには確かに特殊なホルモン誘導体が微量に含まれていた。そして歩夢の体内で未知の化学反応が起きたことが判明した。現在も継続して調査中だが、一つ確かなことがある。それは歩夢の疲労が劇的に改善され、その後一週間以上絶好調だったということだ。
侑との恋愛パワーも相まって、歩夢はこれまでにない活力に満ち溢れていた。そして彼女たちスクールアイドル同好会の活躍は、さらに輝きを増していくことになるのだった。
《fin》