仮面ライダーガタック スライムと戦いの神   作:フェンネル

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フューズと加賀美

「バカモン!!」

 

ブルムンド王国の朝。

綺麗な青空と住民の賑やかな声が広がる中、1人の男の怒鳴り声が木霊した。

 

「毎度毎度無茶しようとするな!」

 

その声の主はフューズ。

ブルムンド王国の自由組合支部長、ギルドマスターである。

対して怒鳴られているのはまだ駆け出しの冒険者こと加賀美新。

 

「お前のランクはCだろうが!大鬼族の里の調査なんて危険極まりないんだぞ!」

 

「今の俺なら大丈夫です!巨大妖蟻だって倒したんですよ!」

 

傍から見れば無謀としか言えないこの選択。

事実大鬼族のランクはB。

Cランクの冒険者では1体相手でも到底力及ばぬ存在。

適正ランクではないと言える。

 

「絶対やれます!」

 

その里とあってはリスクしかないクエストだが、当の加賀美は自信ありげだった。

そもそも加賀美がクエストに行くとなると英雄たる静江が同行することがほぼ確定しているので、適正ランクは関係ないのだ。

 

「……どうしても行くんだな?」

 

「はい!」

 

加賀美が1度決めたら折れないということを、フューズは嫌という程知っていた。

しかし、弱点も知っている。

このやり取りも1度や2度ではない。

 

「わかった。なら許可しよう」

 

「おぉ!」

 

許可が降りたことで加賀美は喜び、急いでクエストを受注しようとした瞬間。

 

「危険だからな……シズさんは悲しむだろうな……」

 

フューズはぼそりと呟いた。

 

「!」

 

静江の名前を出された事で加賀美の威勢の良さはどこへやら、あっという間におろおろし始めた。

 

「お前がそこまで言うなら仕方ない。許可しよう」

 

フューズは白々しく後押しをするが、加賀美は慌ててクエストの依頼書を戻した。

 

「なんだ、行かなくていいのか?」

 

「は、はい……」

 

「そうか?まぁ機会は今だけじゃないからな。いずれ腕を上げて行くと良い。その方がシズさんも喜ぶだろ」

 

そう、加賀美は静江という存在に極端に弱かったのだ。

普段はどれだけ言っても引き下がらないと言うのに、静江の名前を出すと驚くほど素直に言うことを聞く。

 

「(本当に、単純というかなんというか……)」

 

加賀美はどこまでも静江が悲しむことを避け、どこまでも静江が喜ぶことをしようとする。

それは、初めて会った日から分かりきっていることだった。

その手札があったので、これまでのクエストに行くかどうかの問答はフューズの全戦全勝だった。

 

「ふぅ……戻るか」

 

これがブルムンドの朝ではお馴染みの出来事だった。

加賀美を引き下がらせた後にギルドの一室に帰ってから、フューズは1人呟く。

 

「あいつにスキルの1つでもあれば良いんだがな……」

 

危険なクエストに行かせたくないというのは、静江だけでなくフューズにとっても同じこと。

魔物との戦いで命を落とすことは珍しくない。

加えて加賀美は異世界人でありながらスキルを持たないという大きなハンデを抱えてしまっている。

 

「頼むから、シズさんを泣かせたりするなよ」

 

フューズは恩人であり戦友であり憧れの存在が、今の幸せをできるだけ長く享受できることを望んだ。

そのためには、加賀美という存在が不可欠であることもよく分かっている。

だからこそ危険なクエストに行かせないよう、毎度強く言い聞かせているのだ。

 

「さて、明日はどうするかな」

 

毎度という言葉の通り、加賀美は毎日フューズとこのやり取りをしている。

そして静江の名前を出して引き下がる、というのがお決まりのパターンとなっていた。

そのテンポの良さを思い返して、思わず笑ってしまう。

 

「……俺も俺だな」

 

そして、それを楽しんでいる自分自身にも。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

朝、加賀美が目を覚ましてリビングに降りると寝ぼけ眼から一転、目の覚めるできごとがあった。

 

「あ、新くん。おはよう」

 

「おはようございます、静江さ───」

 

なんと、静江の唇が色気のある赤に染まっていたのだ。

彼女の白い肌が、それを際立たせていると言える。

あの口紅が、静江の魅力をしっかりと引き出していた。

 

「ど、どう……かな?」

 

恥ずかし気に聞く静江。

いつもとは違う雰囲気に驚きながらも、加賀美は心からの言葉を放った。

 

「すごく……綺麗です」

 

そして、自分の考えに間違いはなかったと心の中で誇った。

目の前にいる静江は紛れもなく美しいと言える。

 

「そ、そっか……嬉しいな」

 

静江は照れくさそうに目を伏せた。

ただひたすらに、胸が高鳴っている。

加賀美は、新しい静江の姿を見れたことを心から喜んだ。

 

「髪型とかもね、色々挑戦しようかと思ってて……」

 

「おぉ!良いじゃないですか!とことん付き合いますよ!」

 

加賀美のやるべき事が増えた瞬間だった。

静江も胸が温かくなった。

 

「こうしちゃいられません!行きましょう静江さん!」

 

「え?」

 

加賀美は静江の手を引いて宿を飛び出し、ギルドへ駆け出した。

 

「あ、新くん!?」

 

道中の静江の心の落ち着きの無さと言ったら凄まじいものであった。

 

「(手、手が〜っ!)」

 

加賀美がドタバタと騒がしく走り、目当ての部屋の扉を勢いよく開けると、書類の山と睨み合うフューズの姿が。

 

「あ、シズさん、どうも」

 

「お邪魔してごめんね」

 

「いえ、それより───」

 

フューズは静江に挨拶を交わした後、彼女の手を引く男に鋭い視線を向ける。

 

「見てくださいフューズさん!今日の静江さんは一味違いますよ!」

 

「フンッ!」

 

そして声高らかに言う加賀美の頭に3度、落雷のようなチョップを食らわせた。

 

「ノックくらいしろバカモン!」

 

加賀美は地面に伏した。

静江が慌てて駆け寄る。

 

「あ、新くん大丈夫?」

 

静江は頭から煙を出す加賀美の背中をさするものの、フューズの言い分が最もなことから味方はできなかった。

 

「シズさんも何で止めなかったんですか!」

 

「あ、あはは……ちょっと楽しくなっちゃって……」

 

「……まぁいいです」

 

「ちょっとフューズさん!静江さんを見て何も気づかないんですか!?」

 

「お前がちゃんと入って来てたらこんなことにはなってないんだよ!」

 

頭に三段重ねのタンコブを積み上げた加賀美の言葉を、フューズは一蹴する。

そもそも加賀美が部屋に入ってきた時点で静江の変化は目についており、それより加賀美に注意することを優先したまでなのだ。

 

「そうだ。カガミ、今日は人が少ないからクエスト選び放題だぞ。ほら行ってこい」

 

「本当ですか!?」

 

フューズの口車にまんまと乗せられ、加賀美はクエストを選びに行くため部屋を出ていった。

残ったのはフューズと静江の2人。

 

「シズさん。ちょうど良いタイミングですし、少し話しましょう」

 

体良く加賀美を部屋から退出させたフューズは椅子に座り、静江にも座るよう促す。

 

「カガミについて」

 

 

 

 

 

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