小逆転!ベレリアンド戦争! ~if キャメロット王国参戦す~ 作:koe1
ベレリアンド戦争が『歴史時空改変犯罪者』の手によって、『艦これ』で例えるのならば『オルクセン王国 S勝利!』から『エルフィンド王国 B勝利』になってしまった世界線の野生のオルクセンの第1話です。
星歴876年10月26日18時。
オルクセン王国は、キャメロット王国特使を介して同日16時頃にエルフィンド王国へ対して手交された宣戦布告に基づき、対エルフィンド戦争に突入した。
少なくともこの時までは、キャメロット王国の、少なくとも内閣はオルクセン王国よりの立場であった。
しかし開戦直前直後に、とある歴史時空改変犯罪者の手によってオルクセンにとっていくつかの不幸と神のいたずらが起きてしまった。
その結果、エルフィンドは奇襲は受けたものの完全無警戒状態だけはギリギリ避けられ、そしてキャメロット国内の世論は反オルクセンでほぼ一致団結して燃え上がり、オルクセンより立場であった内閣ですらその世論を無視できない状況に。
ただオルクセンが初期対応を迅速かつ間違いないようにおこなっていればキャメロットは反オルクセンで世論が盛り上がることがなかったはずだが、オルクセンは初期対応に完全に失敗してしまったのだ・・・。
もはやキャメロット王国のベレリアンド戦争参戦は避けられない状況となったが、しかしそれでも内閣は懸命の綱渡りをし、陸軍のベレリアンド半島派遣は、元々デュートネ戦争で轡を並べてオルクセンと共に戦った陸軍が親オルクセン派の巣窟であったことや、それ以前に準備も無しに国外に大規模派遣が出来るわけもなく、『準備不足のため即時派遣は不可能。最低でも4ヶ月の準備を擁する』として時間稼ぎを試みた。
しかし海軍とその傘下にある海兵隊は陸軍より遙かに即応性が高かったことと、エルフィンド海軍近代化で近年エルフィンド王国との繋がりが強化されていたため親エルフィンド派が多く、さらにデュートネ戦争でオルクセンの海上戦力と共闘したこともなかったので親オルクセン派は皆無な有様な上、開戦初頭の『ファルマリアの虐殺(オルクセン側名称 ベラファラス湾海戦)』にてオルクセン軍の徹底的な攻撃を受けてしまった海軍は引き延ばしを図る陸軍を横目に、キャメロット国民の大声援を受けつつ、ベレリアンド半島海域に、その主力中の主力である『本島艦隊』を派遣。
さらに『在留キャメロット人保護』を名目に、海兵隊もベレリアンド半島に可能な限りの戦力を派遣!
エルフィンド王国とオルクセン王国の運命は如何に!?
星歴876年10月26日16時12分。
エルフィンド王国首都ティリアン在外務省内にて軽い雑談の後、キャメロット王国特使よりオルクセン王国からの宣戦布告分が手交された。
「これ以上の仲介は出来ない。爾後の責任は貴国にある」
エルフィンド外交中枢達はその際の、日頃は友好的だったキャメロット特使のただならぬ無愛想な態度に必死に食らいつき、1時間近く雑談して己達が何をやらかしたのかようやく理解した。
彼女たちは真っ青になった。
真っ青になった彼女たちをみて、特使である私は心の中にほんの小さな罪悪感を感じてしまった。
そして普段なら絶対に口を出さないことを口にしてしまった。
ただどうしてそんなこと口にしてしまったのかは今でもわからない。
神の悪戯であったのだろうか。
それとも魔種族研究家としての憐憫故にだったのだろうか。
ただなぜかそれを口にしなければならないと思ってしまったのだ。
私はこう言ってしまった。
「これは個人的なアドバイスですが、直ちにオルクセン王国からの宣戦布告をエルフィンド全土に告知するべきかと。貴女達は魔術通信が使える。一般国民にも伝えてしまうというリスクは確かにあります。しかし1分でも速く宣戦布告が伝われば、それだけ準備と避難に時間を費やすことが出来、来たるべきオルクセン軍の来寇の際に犠牲者が1人、十人、百人、千人、1万人は減るでしょう。私は貴女達にアドバイスをします。直ちに、遅滞なく、この場ですぐに宣戦布告についてエルフィンド全土へ向けて告知すべきです。貴女達の魔術の力を使って。今日の晩餐は諦めて」
私はそう言って被り掛けていた帽子を改めて被って退室しようとしたところ、外交官の1人が顔が真っ青なままこめかみに手を当てるという魔術通信をするときに姿勢をとり、もう1人は私より先に部屋を飛び出していった。
そして最後の1人は手交された宣戦布告を手にしたまま固まっていた。
神よ、この戦争においてオルクセン、エルフィンド共に一頭でも犠牲者が少なくなりますように。
「オルクセンからの宣戦布告だと!?それと誰だ!そんなことを勝手に国民に魔術通信で告知した大莫迦者は!?まだ10分もたっていないのに街はもう大混乱だぞ!!一体誰のせいだ!!文書局長と勝手に告知した奴を呼べえ!」
目の前で外務大臣閣下と外務省中枢の皆様が暴れ回っていると言っていい表現で荒ぶれている。
といっても、その数は少ない。
誰が発したかがまだはっきりとしないオルクセンからの宣戦布告を魔術通信による告知・・・いや公布した結果、内閣をはじめとして陸軍、海軍、内務省等からの問い合わせが殺到。
職員の大半はそれらの対応に追われ、なし崩し的に退庁できなくなっている。
外務大臣閣下も荒ぶれているが、緊急招集された閣僚会議へ向けて準備をしながらだ。
おそらく単なる宣戦布告だけならば閣僚会議の緊急招集はされずに明日以降に回されたろうが、各官庁や街の大混乱もあっての緊急招集なのだろう。
街では店が閉まりかけの時間だというのに既に物資買い占めが起きつつあり、軍は軍で電信と魔術通信で、実際の侵攻は速くても1ヶ月後だろうが各地へ念のための緊急警報を発している。
内務省の秘密警察は・・・何をしているのかはさっぱりわからないが、各地の一般警察と国境警備隊には警報を発したとのこと。
この辺は私達優れた白エルフの官僚制と魔術力によって成せる技。
警報は魔術通信と電信によって1時間もあればエルフィンド全土に伝わるだろう。
一般国民の混乱と共に。
だけど・・・弱小氏族の身ながら献身と努力を重ねて外務省中枢近くまで登ってきたけど、誰かの文章ミスが原因でオルクセンから宣戦布告をされるなんて・・・私の命もこれまでかな・・・。
オルクセン王国は、キャメロット王国特使を介して同日16時以降に手交されたエルフィンド王国への宣戦布告に基づき、同日18時に対エルフィンド戦争に突入した。
『猛きオーク族の祖より選ばれ、諸種族3500万の民草を統べる重責を託されしオルクセン国王はここにエルフィンド王国に対し、戦を宣す』
そして事前計画に基づき同日17時52分、オルクセン海軍荒海艦隊はエルフィンド海軍唯一と言っていい拠点であるベラファラス湾内にあるファルマリア港への奇襲攻撃のため、第1水雷艇隊を先頭に突入を開始した。
「おるぞおるぞ!おるおるぅ」
「内港内に商船多数!」
「そっちには絶対に手を出すな!これは我が王直々のご命令だ!」
「ハーフン岬砲台も沈黙・・・」
見張り員がそう言いかけた瞬間、ハーフン岬砲台の方から砲声が聞こえた。
そして一瞬遅れて少し離れたところに巨大な水柱が立った。
「くそ!気づかれた!!狙うは外港!リョースタとスヴァルタだけは絶対に沈めろ!」
1ヶ月ほど前に急遽派遣が決定され、つい3日前に霧が立ちこめるベラファラス湾を越えてファルマリア港に辿り着いたキャメロット王立海軍エルフィンド親善交換派遣艦隊旗艦装甲艦『アルティメット号』並びに同型艦『ストロンゲスト号』そして装甲帯巡洋艦と小型巡洋艦、合わせて2隻の随伴艦。
ゲストであるが故に外港のもっとも良い場所に停泊していた4隻の艦隊に向けて、オルクセン海軍の水雷艇が一直線に突っ込んでくる。
「オルクセン艦、我が艦隊めがけて真っ直ぐ突っ込んでくる!」
「ついさっきエルフィンドから宣戦布告されたという連絡があったばかりだというのに速すぎるぞ!奴ら何か魔法でも使ったのか!?」
「発光信号送り続けろ!!手当たり次第に戦闘旗と国旗も振り回せ!!汽笛も鳴らし続けろ!!奴ら俺達をエルフィンド艦隊と勘違いしているぞ!!」
『ワレ、キャメロットカイグンナリ。ワレ、キャメロットカイグンナリ。ワレ、キャメロットカイグンナリ』
「くそったれ!こっちがそっちの戦闘旗を確認しているんだから、そっちもこっちの旗が見えるだろう!!」
「機関室、まだ動かせないか!?」
「錨を急いで揚げろぉ!!」
「打つな!絶対に打つなよ!!」
「エルフィンド艦艇、沿岸砲台に続いて発砲を開始!」
「オルクセン艦、我が艦隊めがけて距離約300ヤード(約275m)付近で魚雷らしきもの投下!!!」
「オルクセン艦1隻に命中弾あり!四散しました!!」
「敵水雷艇、当艦脇を通過!!くそったれ!!俺達は可愛い白エルフじゃねぇぞ!!」
「打つなー!!絶対に打つなよー!!」
「東方に煙多数みゆ!!大型艦数隻接近しつつあり!!」
「魚雷、装甲帯巡洋艦ローズに接近しつつある!!命中しますぅ!!」
「巡洋艦グランに魚雷命中!!船体が折れた!!沈没します!!」
「ローズにも魚雷命中!!炎上傾斜しつつあり!!」
「救助いそげぇー!!短艇降ろせー!!」
「エルフィンド砲艦1隻撃沈!巡洋艦1隻大破!」
『エルフィンド艦隊』への奇襲を成功させた水雷艇隊は、1隻の犠牲が出たもののその戦果に興奮していた。
そして離脱しつつある彼らの前にオルクセン海軍主力である荒海艦隊がやってきた。
「来た!来たぁ!来たぞぉ!」
旗艦レーヴェの艦橋から荒海艦隊司令長官マクシミリアン・ロイター大将が、沿岸砲台やエルフィンド艦艇からの砲撃による水柱で身体を塗らしながらも艦橋に仁王立ちして双眼鏡を覗く。
そこには始動しつつあるエルフィンド海軍の中小型艦とは別に未だに全く動かないエルフィンド海軍主力の『リョースタ』と『スヴァルタ』の2隻と、その周辺で水雷艇隊の魚雷攻撃を食らい、炎上している中型艦が2隻ほど見える。
「リョースター型2隻から我が艦隊に向けて盛んに発光信号送りつつある!内容読み取れず!!」
「戦闘中に敵艦に向けて発光信号とは・・・エルフィンドの連中、今の魚雷攻撃を演習中の事故と勘違いしているのでしょうか?」
光源が弱い上に、近くで炎上している艦の炎のせいでまともに読み取れない発光信号を見ながら呆れたように参謀の1人が呟くが、ロイター大将は何もいわない。
ただ彼は敵が流石に盛んに反撃している中、それはないと考えている。
おそらく水兵が混乱して意味のない発光信号を送り続けているだけなのだろうと。
そして事前の取り決めと訓練に従い、自動的に物事は進んでいく。
「魔術通信封止解除!」
「主隊全艦我に続け!!」
「パンテルに命中弾あり!」
「距離4800!!」
「沿岸砲台、我が艦隊に向けて盛んに砲撃中!」
「戦闘左砲戦!!」
「レオパルドに命中弾!!炎上しています!」
「ベリトード炎上中!隊列より離脱しつつあり!」
「距離3500!!」
「エルフィンド艦艇、低速なれど個々に行動しつつあり!我が艦隊の右舷側より反航しつつ盛んに砲撃中!」
「艦名不明味方艦1隻、炎上!」
「リョースターとスヴァルタ!未だ動かず!」
「何隻かやられたな参謀長!?」
「はい!しかしまだリョースターとスヴァルタは動いていません!絶好のチャンスです!!」
オルクセン艦隊は大胆にも外港に対して距離2000メートルの線まで接近しようとしていた。
水雷艇隊の夜襲を受けたにも関わらず未だに一発も撃ってこない、まるで不甲斐ないリョースターとスヴァルタにその至近距離から引導を渡してやろうという闘将ロイター提督の決心による。
「目標距離2000!!」
「打ち方始め!!」
『ワレ、キャメロットカイグンナリ。ワレ、キャメロットカイグンナリ。ワレ、キャメロットカイグンナリ。ワレ、キャメロットカイグンナリ。ワレ、キャメロットカイg』
『アルティメット号』と『ストロンゲスト号』のマストトップから発信され続けられていた発光信号は、信号員が雷光弾の炎によって焼き殺される瞬間までオルクセン艦隊に向けて発信され続けられていた。
もちろん甲板の上で盛んにキャメロット国旗や戦闘旗を振っていた水兵達も、最後の最後まで発砲を控えさせて、矢継ぎ早に適切な命令を下していた士官達も皆焼け死んだ。
キャメロット王立海軍エルフィンド親善交換派遣艦隊の4隻は、戦争当事国同士の戦闘に巻き込まれた戦争非当該国の矜持として最後の最後まで一発の砲弾も銃弾も放つことなく、ファルマリア港に沈んだ。
そしてその光景はエルフィンド海軍将兵や上陸していたおかげで助かったキャメロット海軍将兵の目にしっかりと焼き付けられた。
対してオルクセン海軍は待避中の水雷艇隊が更に1隻撃沈され、2回実施した攻撃の結果、水雷艇2隻と巡洋艦3隻の犠牲をはじめとして、長期的な修理が必要な艦が5隻程出たものの、オルクセン海軍の主力艦であるレーヴェ級装甲艦3隻は多少の命中弾はあったが軍艦としてはほぼ無傷であった。
その被害に対してオルクセン海軍にとっての魔王であったリョースタとスヴァルタを始めとする巡洋艦1隻、砲艦1隻を撃沈し、さらにエルフィンド海軍の地上の関連施設に対しても艦砲射撃をおこない、これらの幾つかを完全に破壊。
『オルクセン海軍が全滅したとしてもリョースタとスヴァルタは沈めることが出来ない』と評価されていたオルクセン海軍にとっては、その2隻さえ沈めることが出来たのならば十分以上に満足できる戦果であった。
その一方、リョースタとスヴァルタを攻撃中に、艦隊行動をとれぬまま単艦ごとに必死の防戦をおこなっていた他のエルフィンド海軍艦艇への攻撃は殆ど成功しなかった。
とはいえリョースタとスヴァルタを撃沈した今、後に行われるであろうエルフィンド海軍残存艦艇との艦隊決戦での撃破は容易であると思われた。
・・・実際に沈めたのがキャメロット海軍の艦艇であったことに気がつかず、キャメロット王国参戦以後もそれを、その参戦理由を顧みずに『キャメロットとエルフィンドによる欺瞞』と判断して頑なに認めなかったために、オルクセン海軍はその『エルフィンド海軍残存艦艇』との艦隊決戦において地獄を見ることとなる。
それに対してエルフィンド海軍は、先日濃霧の中をキャメロットへ向けて、予定より数日遅れで出航していった親善交換派遣艦隊のリョースタとスヴァルタ、そしてその随伴艦達は開戦の事実を知らないまま未だキャメロットへ向けて航行中で、さらにベレリアンド半島残留エルフィンド艦艇艦艇の殆どが、ギリギリではあったものの開戦の警告が間に合ったことと、キャメロット艦隊がエルフィンド海軍主力と誤認されて集中攻撃されたことから、結果としてその戦闘力をほぼ完全に維持することに成功した。
ただし親善交換派遣艦隊にリョースターとスヴァルタの2隻を派遣してしまったために総旗艦として適切な規模な艦がいなくなってしまったので、名目上の総旗艦を置いただけで一時的に上陸していたエルフィンド艦隊首脳部は、地上施設から懸命に指揮を執っていたがオルクセン海軍の艦砲射撃に巻き込まれて全滅していた。
よって致し方なく、混乱の結果生じてしまった、本来ならあり得ない、あくまで現地部隊での一時的な緊急措置ではあったが、ファルマリアのエルフィンド海軍は階級が最上位の部隊指揮官であった海兵連隊の二等少将がなぜかとることとなってしまった。
オルクセン海軍は自身の研鑽と努力によって太陽を昇らせたと思っていたが、その陽光は朝陽ではなく沈みゆく夕陽だったのだ。
そしてその夕陽は世界最強海軍の怒りという闇夜も連れてきてしまったのだった・・・。
こんな感じで始まる野生のオルクセンだそうです。