小逆転!ベレリアンド戦争!  ~if キャメロット王国参戦す~   作:koe1

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たいへんだ。
せいへんだ。


第15話「こうなるしかなかったのです」

星暦877年5月6日。

ティリアンにあるエルフィンド駐箚キャメロット公使館の門にて衛兵である海兵隊員が捧げ銃をする中、煌びやかで凜とした騎兵に護衛されたこのエルフィンドにおいてもっとも高貴な馬車が公使館に入っていく。

続いてそれに一歩だけ格は落ちるが、エルフィンドにおいて二番目に高貴な馬車が入っていき、さらにもう1台馬車が入っていく。

そしてその御一行を公使閣下と夫人、特使閣下を始めとする公使館一同が出迎える。

ちなみに俺も出迎える側にいる。

エルフィンド外務省が死ぬ気になってまとめ上げた『キャメロット王国に対しての感謝を示すため』のエルフィンドの女王陛下であるエレンミア・アグラレス女王陛下の行幸だ。

そしてそのお供は首相であるドウラグエル・ダリンウェン閣下に海軍最高司令官兼侍従武官長であるファラサール海軍大将殿に外務大臣殿。

さらにお供のお供としてそれぞれに1名ほどの秘書や副官がついている。

護衛の騎兵は黄金樹騎兵旅団の残置部隊から2個小隊40名前後。

もちろん行幸路沿いは警察や独立ティリアン防衛隊の各部隊が警備にあたっている。

市内警備は万端。

オルクセン軍が突如として襲撃してきても何とかなると誤解するぐらいの警備体制だった。

もちろん内情は寒々としているのを知っているので『誤解』なんだがな。

 

女王陛下一行はすぐに公使館でも一等の部屋に公使閣下自ら案内し、お茶の用意がされる。

茶葉はもちろん特級品で、ケーキスタンドに乗っているサンドイッチや菓子類も厨房の連中が徹底的に食材を吟味した上で普段以上に気合いと根性と入れた作った物だ。

なのでちょっとでも焦げたり切り口が甘いと判断された廃棄品が大量にでたほどだ。

その廃棄品を味見させてもらったが、それですらたまんなかったな。

当然食器類も超一流、普段は厳重に保管している物だ。

なにせ女王陛下御自らの行幸だ。

公使閣下曰く『公使館保管の記録にある限り初めてのこと』とのことだ。

まぁこの行幸が『記録』に残るかどうかはわからねーがな。

お茶会はすぐに始まり、お茶会の『雑談中』の一環で、女王陛下よりキャメロット政府を代表している公使閣下に対して『今戦争におけるキャメロットの尽力に対して感謝の御言葉』を『非公式』に述べられた。

当初の予定では『公式に感謝を示す』筈だったんだが、エルフィンド側のあちこちからクレームが・・・その中でも飛び切りでかいクレームが2件ほど入ったせいで、『公式』が『非公式』になった。

まぁ『公使館を訪れる』だけは女王陛下が珍しく強硬に主張したされたそうで、そのおかげで予定どおりだが。

ちなみにその飛び切りでかいクレームは、目がガンギマリじょーちゃん情報だと首相閣下と宗教大臣閣下?教義大臣閣下?からだそうだ。

ただそのクレームのおかげで公使閣下と特使閣下も腹を決めた。

『これほど援助と支援をおこない、共に血を流している唯一の友好国に対してすら公式に感謝の意を示すことが出来ないエルフィンドの現政権は終わりだ』と言うことを。

なので『終戦工作をおこなうように』という本国の首相閣下のご意向に従い、少々乱暴な『終戦工作』にご協力して頂けることとなった。

ありがたい限りだぜ。

 

そして俺の目の前では、端から見れば優雅な会話だがその内容は『口喧嘩』といっても過言ではない会話を、愛くるしくも美しい黄金樹より生まれし偉大なる女王陛下と、人間族を同等の知的生物としてみていない目をしているダリンウェン首相閣下がされていらっしゃる。

ちなみにきっかけは首相閣下の『短命種である我らに劣る人間族に対して優秀なる光りのエルフである私達がここまでする必要はない(要約)』発言に対して女王陛下が窘めたことだ。

なおファラサール海軍大将殿は平然と黙ってお茶を飲んでいて、外務大臣殿は顔を青くしてキャメロット側に懸命に謝罪しまくりつつ、全力で首相閣下を止めようとしているが、キャメロット側に対してはともかく首相閣下に対しては『残念。効果がない』という状況だ。

大変だな、外務大臣閣下・・・。

でも大丈夫だぜ。

今よりもっと酷いことがこれから起きるから気が楽になるはずだぜ(笑)。

という訳で、俺は懐から拳銃をゆっくりと取り出して、天井に向けて一発撃った。

さてさて成功すると良いな政権簒奪。

 

銃声が轟くと、外務大臣閣下と首相閣下の秘書、そして公使夫人達は一瞬呆然とした後、俺が銃を皆様に向けると涙目になって滅茶苦茶びびって丸まって震えだしたが、大変失礼であるがそれを無視して話を進めさせて頂く。

「貴様、なにをしたかわかっているのか?」

人間族を同等の知的生物としてみていないダリンウェン首相閣下は平然として俺に尋ねる。

俺はせっかくの拳銃をしまい込んでから

「我らが首相閣下。大変失礼ではありますが、これよりあなたより政権を簒奪させて頂きます」

と言っている真っ最中に、後ろの扉が勢いよく開き、実弾装填済みかつ銃剣装着済みのマティーニ小銃を構えた海兵隊員達がなだれ込んできて全員に銃を突きつける。

外務大臣閣下、首相閣下の秘書、公使夫人の3人は悲鳴を上げる。

そりゃ当然だ。

後で誠心誠意謝るんで許し欲しい。

ちなみに女王陛下にファラサール海軍大将とその副官、ガン決まりじょーちゃんは平然としているし、公使閣下と特使閣下も平然としている。

その様子を見た首相閣下は

「公使殿、これはキャメロットにによる侵攻だ。断固として抗議をすると同時に、ただ今をもって我が国はキャメロットに対して宣戦布告する」

と平然という。

度胸あるな・・・まぁ俺達を知的生物としてみなしていないから、なんとでもなると踏んでいるだけだろうがな・・・。

そう思っていると、ゆっくりとティーカップをテーブルの上に置いた公使閣下が

「首相閣下、それは我が国の台詞です。我がキャメロット王国は外交特権を一切無視して公使館建物内に武装したエルフィンド兵を侵入させたことに対して厳重に抗議します。私達は敷地内までしか許可しておりませんぞ」

と落ち着いて言う。

「貴様なにを言っている?」

と首相閣下が心底呆れたようにいうが、そのやりとりの中、ファラサール海軍大将の副官殿がゆっくりと俺の元までやってきて、持っていた鞄から俺の宝物の『二角帽』を取り出し「大佐殿、これを被らねばエルフィンド軍とわかりませんぞ。キャメロット海兵隊と誤解されては我が軍の恥だ」といってそれを手渡してくれる。

俺はそれをゆっくりと被ってから、改めて首相閣下に

「首相閣下、自己紹介が遅れまして真に申し訳ございません。一度だけしかお会いしたことがないので忘れていらっしゃるようですが、自分はエルフィンド海軍名誉大佐であります。そしてここに居る海兵隊員諸君もしっかりとご覧ください。紛うことがないエルフィンド海軍海兵隊であります。そして自分は『キャメロット人義勇エルフィンド海軍海兵隊』を率いている者でもあります。キャメロット海兵隊員と装備と軍服が大変似ているから誤解されていらっしゃるかもしれませんがご注意を(笑)」

と言うと、特使閣下がわざとらしく、そして愉しげに

「なんと!直前になって『女王陛下の警備に人間族との共和共闘を知らしめるために、護衛の人間族義勇兵部隊を特例として公使館敷地内に入れさせて欲しい』というのは嘘だったのですか!」

という(笑)。

その言葉を聞いて首相閣下が「ファラサール、貴様の仕業か?」といつの間にか女王陛下を庇う位置に移動していたファラサール海軍大将殿に尋ねるが、大将閣下は「私ではありません」とだけ言う。

続いて首相閣下は公使夫人と共に抱きついて震えている外務大臣閣下をにらむが、外務大臣閣下は涙目で全力で首を振る。

うん、外務大臣閣下は本当になにも知らねーもんな。

「となるとクーランディアか・・・」と座ったまま首相閣下はいうが、いや~大変に申し訳ないんだが、それも違うんだよな・・・と思いつつ、外国公使館で政権簒奪をするなんていう無茶どころでないことを思いついて、その調整連絡をほぼ1人でやりきったガン決まりじょーちゃんを目だけで見ると、にっこりと微笑でくれた。

ただ首相閣下の秘書殿の後ろから頭に右手で拳銃を突きつけて、左手でナイフを首に突きつけているいる状況じゃなければ可愛いと思ったが、そんな状況でも微笑んでいられるその胆力が凄ぇな・・・。

ちなみに首相閣下の秘書殿は可哀想なぐらいガタガタ震えて涙目になっている。

首にうっすらと赤い線もあるから、軽く切ったんだろうな・・・。

たぶん魔法を使う気配でも感じたんだからなんだろうが・・・エルフ狂いとしては可哀想に思っちまう。

後で全力で贈り物をして謝るから許してくれ・・・。

 

さて、首相閣下かその秘書殿が魔法を使う姿勢をとったら躊躇なく殺す予定だったが、その必要はギリギリで回避できたようだ。

魔法探知係の黄金樹騎兵旅団の兵もなにも言ってこないということは、魔法でこの政権簒奪を通報することはできなかったのは確定みたいだな。

そんな中で公使閣下と特使閣下が白々しく「女王陛下、反乱軍が首相閣下に集中している今のうちに我らと共に安全な部屋に移動しましょう」と言って、ファラサール海軍大将殿と共に部屋から女王陛下をお連れする。

ちなみにこれはあくまでも『我が国首相閣下指示による終戦工作』なので、キャメロット的には問題なしだぜ(笑)。

もちろんその内容は現地にお任せだから、我らが首相閣下はこんな終戦工作をしているとは思ってもいねーだろうがな(笑)。

ちなみに公使夫人は、俺とオルクセンへいつも一緒に行ってくれている中尉が丁重に別室にお連れしている。

・・・しかし計画した者の1人とはいえ、こんなことを・・・他国公使館内で政権簒奪なんてしていいのかと思うが、まぁガン決まりじょーちゃんは『成功すればどうとでもごまかせますし-』といっていたが、常識人としては気が重い。

めっちゃ愉しいがな(笑)。

兄貴に教えたら頭を抱えた後に殴られること間違いねーから、細かい事は黙ったままにしよう(苦笑)。

ちなみに計画を打ち明けた公使閣下と特使閣下はおもしろがっていた(苦笑)。

女王陛下には『公使館で何かが起きます』と遠回しに手紙で伝えていたが、こんなことが起きても全くびびっていない・・・。

流石は女王陛下だな・・・度胸が違う。

そんなことを考えているうちに首相閣下を副官殿が縛り上げているが、このまま政権簒奪がうまくいくといいが・・・。

警察と秘密警察は『ファルマリア撤退友の会』の3人が主要指揮官をしている『独立ティリアン防衛隊』とそれに偽装している精鋭部隊が押さえる。

各閣僚はクーランディア元帥閣下とその旗下部隊が押さえる。

もっとも首相以外の閣僚に逃げられたとしても、こちらは女王陛下を押さえているから問題はない。

まぁそれ以前に外務大臣閣下はここにいらっしゃるし、女王陛下の側にいらっしゃる海軍大臣閣下と陸軍大臣閣下は共犯だ。

まぁ外務大臣閣下は巻き込まれた形だが、現役閣僚3人がこちら側にいるし女王陛下もいらっしゃるから、最悪の場合は『亡命政権』を作る予定でもあるし、何とかなるか?

まぁオルクセン側に引き渡す生贄として、宗教大臣?教義大臣?どっちだっけ?まぁそいつと首相閣下、出来れば秘密警察長官の3人を予定している。

闇エルフ虐殺の主犯として。

秘密警察の親分である内務大臣は微妙なラインだし、復興に必要だからオルクセン側が強硬に要求しない限りは引き渡さない予定だ。

ちなみに当初のじょーちゃんが語った計画では『秘密警察長官は私が殺して良いですか?親友の敵みたいなんで?』と珍しく感情的に言ってきたので、なんとか説得した。

オルクセンに引き渡せば向こうが敵討ちしてくれるし、殺しというのは心に来るものがあるから避けた方が良いと言って。

だけどじょーちゃんから聞かされて驚いたが、閣議決定で闇エルフ達を虐殺するとは・・・。

じょーちゃんが『戦後、外務省の中枢と緒戦で撤退した軍人はみんな殺されるの決定でーす』といっていたのが、それを教えられたおかげでよく理解できたぜ・・・。

そう思いながら、ついさっきまでお茶会が開かれていた部屋をもう一度見回すと、厨房の連中が丹精込めて作ってくれた菓子やサンドイッチが目についた。

お茶と食べ物がもったいないな・・・。

戦争と政権簒奪はクソだぜ。

俺はなぜかそんなことをふと思ってしまった。

で、俺はガン決まりじょーちゃんへ向かって「成功したみたいだから、魔法で決起を伝えてくれ」とお願いすると、じょーちゃんは人間族義勇海兵隊員が手際をよく縛り上げている首相閣下秘書から目を離し、

「わかりましたー。『Now it's showtime』でしたっけ、決起の符丁?」

と念のために確認してきたので黙って頷いた。

さあ!ショータイムの始まりだぜ!!

 

 

 

結論からいうと閣僚の皆様方と警察と秘密警察の押さえ込みは90パーセント成功した。

決起符丁を流すとすぐに各決起部隊は行動を開始し、若干の抵抗があったものの、閣僚全員を抑えることに成功した。

唯一室内に立てこもって抵抗したプレンディル内務大臣も、俺が女王陛下からの『身の安全を絶対に保証する』という手紙を届けると大人しく降伏した。

というかこちらは逮捕する気はなかったし、そのまま閣僚として残って頂く予定だと俺が告げると、呆然とした顔をしたのが面白かった。

内務大臣閣下の護衛の警察官や兵士、こちら側の兵共々に犠牲者がでなかったのは幸いだった。

面白かったのが教義?宗教?大臣だが、兵が室内に踏み込むと同時に窓から飛び降りたそうだが、当たり所がよすぎたみたいで、結構な高さだったそうだが腕と鎖骨を折った程度で済んだそうで、魔法の薬で治療してから縛り上げたそうだ。

警察も問題なく押さえることが出来た。

元々火力の差があるのと、魔法や口頭で抵抗しないことを要請すると大人しく従ったそうだ。

ただ秘密警察の一部がティリアン市内にある警察庁舎に立てこもった。

なんとか説得を試みたがこちらはまったく駄目だったそうだ。

なので『特設ティリアン防衛旅団』の旅団長殿が直卒した部隊があっという間に鎮圧した。

双方共に犠牲者は出てたが、ブレンウェル秘密警察長官の死亡は確認した。

ちなみにわざわざやってきたじょーちゃんは、初めて見た感情のない目でじっとブレンウェル秘密警察長官の死体を見ていた。

『特設ティリアン防衛旅団』の旅団長殿から呼ばれて駆けつけたが、怖くて近寄れなかったほどだった・・・。

ちなみに軍や警察内に浸透している秘密警察の工作員に対しては『罪は問わない。名乗り出るのが怖いのなら名乗り出なくてもいい。そのまま現在の任務で忠勤に励むように』と女王陛下の名前で公布した。

そしてその証拠として、掻き集めた秘密警察の書類をティリアン市内で市民が見る中で燃やした。

まぁオルクセン側に対しての色々な証拠隠滅という面もあるがな。

政治犯収容所もすぐに開放し、収容者を保護した。

政権自体はクーランディア元帥閣下が首相になり、各閣僚はそのまま残留。

ただし教義大臣だけは廃止ということになった。

教義省は全職員を一時拘束して思想調査をしているそうだ。

そして政変が始まって3日後に、白旗を掲げた俺と赤星十字旗を掲げている海兵隊中尉の2人を先頭にして、真っ青な顔をした外務大臣閣下をエルフィンド側の代表としてガン決まりじょーちゃんだけを共にし、さらにキャメロット側の代表として特使閣下であるアストン卿とその秘書である甥っ子が交渉団としてついてきて、オルクセン側に誤射されないようにつけてもらった軍楽隊・・・なんと懐かしいことにファルマリアでもついてきてくれた軍楽隊が威勢の良い音楽をかき鳴らす中、オルクセン軍の陣地に徒歩で赴き、対応してくれた少尉に講和交渉を前提とした休戦を申し出た。

今度は打たれなくてよかったぜ(笑)。

オルクセン側は、少なくとも前線部隊ではすぐに休戦の申し出を受け入れてくれた。

俺達は慌ててやってきてくれたオルクセンの師団長である中将閣下の許可を取った上で、青い顔のままだが頑張ってくれている外務大臣閣下がその名前で、講和交渉のための一時休戦がなったことをエルフィンド軍に対して魔法で伝えた。

すぐにここまで聞こえるような大歓声が俺達の背中から聞こえてきた。

前線がギリギリで魔法が届く距離でよかった。

オルクセン側でも一瞬遅れて大歓声が起きた。

こちらはこっちの魔法を感じたか、オルクセン側も独自に魔法で伝えたからなんだろう。

たぶんどっちも自分達が勝ったと思っているんだろうが、それを決めるのはこれからだぜ。

だけどよくよく考えると、たまたま巻き込まれた単なる民間船船長がなんでこんなことをしているんだよ・・・。

あ~・・・ティリアンに戻ったら、久しぶりに酒を・・・とっておきのキャメリッシュ・ブラックバーンの20年物を飲もう。

外務大臣閣下とじょーちゃん、特使閣下と甥っ子、中尉も誘うか?

『ファルマリア撤退友の会』に続く『猪さんにみんなでお手紙届けた仲良しの会』として(笑)

あ~となると、軍楽隊のみんなにも何か贈らねーといけねえか(苦笑)。

公使館厨房にキャメリッシュ・ブラックバーンを持っていって、頭もまた下げまくって、ケーキでも焼いてもらうか。

それとも酒が良いかな?

俺はそんなことを考えた後、空を見上げて『戦争、終わると良いな・・・』と思った。




あっけなく政権簒奪完了。
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