小逆転!ベレリアンド戦争!  ~if キャメロット王国参戦す~   作:koe1

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無事に調印完了


第18話「こんなでいーのか?」

講和会議という名目になっている会議会場である車内には何ともいえない沈黙が訪れていた。

女王陛下の「ファラサール、どうしよう・・・?」以後、誰も何も喋らない。

そして相変わらずオルクセン側で唯一席に着いている闇エルフのじょーちゃんは同じ知的生物として認めていない物体を眺めているような表情で女王陛下をみている。

女王陛下は笑顔を浮かべているが、あれは女王としての本能で浮かべているだけで、何をどうしようという行動に移れるような状況じゃない。

肝心のグスタフ国王陛下は文字通り頭を抱えて黙っている。

なんというか、浮気の瞬間をかみさんに見られた男みたいだな。

いや、浮気じゃね。

嫉妬深い婚約者の前で、初めて会った若い娘に突然結婚を申し込まれたという訳のわからない状況だ。

男としてお見舞い申し上げるぜ・・・。

でもって紅い眼鏡の闇エルフ達は、親友の旦那の浮気を目撃した様な空気をグスタフ国王陛下にぶつけている。

俺の偏見からいうと女性ばかりで男女間の恋愛の機敏に疎い白エルフ・・・エルフィンド側は、どう発言していいかわからず固まっている状況だ。

なにせガン決まりじょーちゃんですら『どうしたらいいですか?』という視線を懸命に俺に送ってきているぐらいだ。

オルクセン側はオルクセン側で『国王陛下御自ら関わること』なので、下手に発言ができないのと、おそらグスタフ国王陛下が秘匿していたんだろうが『それって本当ですか?』のダブルのしがらみで動けなくなっている。

最後に残ったキャメロット側は・・・こちらが事前に女王陛下のグスタフ国王陛下への嫁入り白エルフ融和作戦を知らせていなかったせいと王族個人の話になってしまっているのもあり、我関せずという状況。

無言で紅茶を飲んでいる。

で、俺は俺でこれ以上下手なことをいえば不敬になるので喋ることができない。

キャメロット側が動けない理由である『王族個人間の話』でもあるからだ。

家臣としての忠言は全て言った。

これ以上は家臣が口にできるものではない。

そしてエルフィンド側にいるキャメロット人である俺にグスタフ国王陛下に直言できる立場はない。

どーすんだよ、これ・・・。

そんな状況なので、たぶん闇エルフ達を除くここにいる全員がこう思っているだろう。

 

『 誰 か 何 と か し て く れ 』

 

どのぐらいの時間がたったがわからなかったが、気まずい沈黙が支配している車内にわざと大きくしたであろうカップをソーサーに置く音がした。

目線だけでそちらの方をみると、アストン特使閣下がその音の元だった。

「あ~これは私の長い人生・・・とは申してもこの会議参加者の中では若年ではありますが、人間族の経験としてから導き出したものですが、アグラレス女王陛下。今貴方が口に為べきことは率直な謝罪です。『ごめんなさい』。今はこの言葉を心より発するべきであると、そして先ほどの発言を撤回されるべきかと不敬ながら意見致します」

「グスタフ国王、先ほどの私の発言は全て撤回致します。ごめんなさい」

女王陛下はアストン特使の意見具申が終わった瞬間に口を開き、続いて全力で頭をお下げになった。

まさに見た目相応といえる素直な謝罪だ。

もちろん続いてエルフィンド側が俺や速記手も含めて全員が全力で頭を下げる。

「ああ、うん・・・アグラレス女王、そう言って頂けると助かる・・・本当に助かる・・・。白エルフの納得については・・・他の方法を考えて頂ける様にお願いしたい」

グスタフ国王陛下は、ちらちらと席に着いている闇エルフのじょーちゃんの方を見ながらその謝罪を受け入れた。

しかし未だ闇エルフのじょーちゃんの表情は変わらない。

相変わらず同じ知的生物として認めていない物体を眺めているような表情で女王陛下をじっとみている。

そして他のオルクセン側の参列者は『国王陛下といい仲』なのが、あの闇エルフのじょーちゃんと気がついたようで、ひそひそ話をしながらちらちらと見ている。

皆様、仲のよろしいこって。

で、アストン特使閣下のおかげで最低最悪な状況を脱することはできたが、これからどうするかだ・・・。

 

そう思っていると、唐突にグスタフ国王陛下が俺の方を向いて口を開いた。

「二角帽殿、君のおかげで助かった。ありがとう。つい先ほどまでは君をどうすれば縛り首にできるかどうかを考えていたがそれを改めた。アグラレス女王同様に私も君の友人にして欲しいが如何かな?」

と、これっぽっちも想像していなかったことを突然口にされた。

俺はついうっかり素で「は?」と言っちまったぐらいだ。

グスタフ国王陛下は、とても愉しげに

「君はアグラレス女王の友人なんだろう?私も君の友人になれば、『共通の友人』として色々と相談にものってもらえるだろうし、今度は私がアグラレス女王に何かをしてしまったときに、今のようにある程度の取りなしもしてくれるだろうしな」

と言ったので『政治的友人という奴か』と納得して受け入れようとしたが、グスタフ国王陛下はさらに続けて

「それに君は私の命の恩人だ。私はアンダリエル少将・・・ディネルースに『おいたをしたら八つ裂きにして殺す。例え便所に隠れていても息の根を止める』と情熱的に言われていた。なので君は命の恩人だ。そして命の恩人と友人になるのは必然ではないかと思うのだが如何かね?」

と仰る。

これって答えは1つしかねーじゃねーか・・・

「この様な不作法者でよろしければ、是非ともグスタフ・ファルケンハイン国王陛下の御友人の末席に加えさせて頂ければ光栄と存じます」

と座っていた椅子から立って、床に片膝をついて言う。

そんな俺を見たグスタフ国王陛下は「いやいや、二角帽殿。君と私は友人であって家臣ではない。その様なことをする必要はないぞ」と愉しげに言う。

それに続いてアストン特使閣下が「グスタフ国王陛下、新たなる御友人の誕生、おめでとうございます。そして二角帽君。私が知る限りでは、グスタフ国王陛下の人間族で存命の友人は私と君の2人だけだ。友人の友人・・・つまり私達も友人というわけだ。よろしく頼む」と愉しげに言われる。

つまり・・・『友人』として柵のない立場でオルクセン・キャメロット・エルフィンド間の調整を・・・秘密外交担当官になれってことかよ!

頭の中でアストン卿の言葉をそう解釈しつつ「アストン特使閣下のような星欧・・・いやこの世界で名をはせる魔種族研究家と友人になる事ができ光栄でございます」と頭を下げながらいうと、ビューロー外務大臣閣下が「こちらも友人というよりも家臣のようだな、堅いぞ」とニヤリと笑いながら茶化してくるが・・・笑うと本当に野盗みたいな顔になるんだなとしみじみと思った。

ちなみにゼーベック上級大将殿やコボルト族やドワーフ族はクスクスと、嫌みではなく愉しげに笑っていて、闇エルフのねーちゃん・・・アンダリエル少将殿もようやく表情を緩めて『まぁ、うちの旦那はいい男だからモテるのは仕方ない。若いだけが取り柄の女には負けない!』という表情になっていた。

ちなみにエルフィンド側は女王陛下とガン決まりじょーちゃんの2人だけが遠慮しがちな拍手をしてくださっていた以外は、どう反応していいか困っている様子だった。

キャメロット側は乗りよくみんなで拍手をしている(笑)。

俺は片膝ついた状態から立ちあがり、

「しかしグスタフ国王陛下、大変情熱的な仲のようで。私も似たようなことを恋人に言われたので、友人のふりを見て我が身を引き締めたいと思います」

というと、グスタフ国王陛下はとても愉しそうに「ほう?」と全力で続きを促してきたので、

「オルクセンにお邪魔している船の機関長の白エルフと最近よい仲になりまして。エルフィンド艦隊を率いて暴れていらっしゃるミリエル・カランシア少将殿の妹にあたるそうなんですが。で、秘密外交用に蒸気船をもらったはいいが、今までは帆船に乗っていたので機関員がいなかったのでどうしようと考えていたら少将殿に機関長をはじめとする機関員10人を紹介して頂いたんです。そんな機関長に『浮気したら殺す。マストトップだろうが、船底だろうが、どこに隠れていたとしても必ず探し出して殺す。私のカットラスで切り刻んで殺す。その後自分も死ぬ』と言われておりまして・・・。闇、白関係なく、エルフって情熱的なんですかね?」

と肩をすくめながら言うと、国王陛下はとても愉しそうに笑われながら「君も姐さん女房か!友人同士、気が合うようだな!」といってアンダリエル少将殿の方を見ると、少将殿は気恥ずかしそうに顔を赤らめて、ちょっとすねたような顔をされていた。

少将殿、さっきまでと全然違って可愛いじゃねーかよ。

他のオルクセン側参列者は愉しげに笑っていて、エルフィンド側は女王陛下はなんというか、羨ましそうな表情を浮かばれていて、女王陛下以外は、ガン決まりじょーちゃんも含めて皆さん複雑な表情をされていらっしゃった。

ちなみにキャメロット側はすました顔をして紅茶を黙って飲んでいた(笑)。

そして紅い眼鏡のじょーちゃん達は、表情や動きは全く変わらない直立不動のままだったが、全員から満面の笑顔で拍手をしているような雰囲気が漂っていた(笑)。

そんな三カ国の代表者それぞれの友人という立場を得ることができた俺は、早速この雑談時間の最後を利用して柵のないことを言うことにした。

「恋人自慢の時間も終わったことですし、細かい事は後でゆっくりと実務担当者間で話し合うことにして、とりあえずとっとと調印だけ先にすませませんか?これ以上何かが起きたとしても俺はもう止められませんので」

面白いことに各国速記手や紅い眼鏡のじょーちゃん達も含めて参列者全員が俺の言葉に無言で頷いた。

 

星暦877年5月11日、エルフィンドはオルクセンに無条件降伏し、キャメロットはオルクセンと講和を結んだ。

戦争は完全に終わった。

見た目はエルフィンド・キャメロット連合の敗北という形で。

実際にはオルクセンとエルフィンドは併合に向けての諸条件をこれからつめていくし、オルクセンとキャメロットに至っては、オルクセン側が『ファルマリアの虐殺』の謝罪と賠償をした上で、負傷死亡したキャメロット兵や遺族への見舞金の支払いとエルフィンドが販売した戦時外債を引き受けをすることとなる。

ちなみにオルクセンに戦いを挑む半歩寸前までいっていたアスカニアとグロワールが購入したエルフィンド外債については『当事国消滅につき権利消失』という形で処理すると、とても悪そうな顔をされたグスタフ国王陛下が仰っていた。

ただこの2カ国とキャメロット以外が購入したエルフィンド戦時外債についてはについては、要秘密会議という形にするそうだ。

悪い魔王様だ。

で、グスタフ国王陛下が立ち上がりながら、これから戦争終結の演説をされると仰っると、外務大臣閣下がおずおずと手を上げつつ「国王陛下、失礼ながらよろしいでしょうか?」と発言を求めた。

その外務大臣閣下の背中に心配気にガン決まりじょーちゃんが手当てている。

グスタフ国王陛下は鷹揚にうなずくと席に再び着かれた。

外務大臣閣下は立ち上がると

「グスタフ国王陛下の終戦演説の前に『レラーズの森事件』に関しての記者会見の御許しを頂けませんでしょうか?」

と言うと、オルクセン側はざわついた。

特にアンダリエル少将殿の顔がこわばっているし、紅い眼鏡のじょーちゃん達からは隠し切れない殺気がこぼれている。

エルフィンド側はただ回答を待つ。

グスタフ国王陛下は無言で頷かれた。

 

「グスタフ国王陛下からの終戦の御演説の前に、エルフィンド側代表団より『レラーズの森事件』に関しての記者会見をこれより行います」

オルクセン側が各国記者団や観戦武官を前にそう宣言するが、反応はたいそう薄いものだった。

オルクセン側が大々的に発表していないのもあるし、オルクセンの数々のやらかしを誤魔化すための事件と思われていたからだ。

各国記者たちの顔は『グスタフ国王陛下からの終戦の御演説を先にやれ!』という顔ばかりだったが、そのせいか、オルクセン側の記者が2人…珍しいことに闇エルフの記者が2人最前列に陣取ることに成功した。

そして外務大臣殿を先頭にエルフィンド代表団が前に出てきて記者会見が始まった。

その第一声は外務大臣殿が発せられた。

「オルクセン側が発表しました『レラーズの森事件』に関しては誤りがあります」

次の瞬間、最前列に陣取っていた2人の闇エルフ記者が「そんなわけあるか!!!!」と怒声を、心からの怒声を上げるが、外務大臣殿は無視する。

そして俺の前にいらしゃるグスタフ国王陛下とアンダリエル少将殿からすさまじい怒りを感じたので『友人』として「国王陛下、少将殿。最期までお聞きになった後に我ら一同の御処分をお考え下さい。先ほどの手紙のように最後まで読まずに判断を下されるのは何卒おやめください」と小さい声で耳打ちする。

グスタフ国王陛下は無言だったが、記者会見を止められるようなことはしなかった。

外務大臣殿は言葉を続ける。

「オルクセン側の誤りですが、オルクセンは『数千人の闇エルフ族の遺体を発見した』と発表いたしておりますが…最低でも1万5千人が、かの森にて処刑されております」

2人の闇エルフ記者がその言葉に呆然とし、逆に人間族記者たちが騒ぎ出した。

「我が国の前政権により、同族であるはずの闇エルフの追放が決定され、それにより虐殺が発生し、生き残った闇エルフの大半はオルクセンへの亡命を余儀なくされました。それ以外の辛うじて生存した闇エルフ達は農奴、もしくは政治犯として扱われました。エルフィンド国内で現政権により保護できました闇エルフは約1千名。現在療養を受けており、彼女たちの将来に関しましてはオルクセン側と相談の上で、決定させていただくつもりです」

更にそのあと、闇エルフ虐殺に関して外務大臣殿は把握していることは包み隠さずしっかりと発表したが、その責任は女王陛下にはなく、すべては前首相ドウラグエル・ダリンウェンと元教義大臣、そして教義主義者たちにあると匂わせ、最後に女王陛下を始めとするエルフィンド側代表団が全員で謝罪した。

闇エルフ記者のうち1人は呆然としていたが、もう1人は泣きながら「許されると思うな!許さない!絶対に許さない!」と叫んでいたが、誰も止めなかった。

 

そして会場が落ち着いた後、今度はグスタフ国王陛下が演説を始めた。

「今日、我らオルクセンとエルフィンドの代表は、知的生物として崇高かつ尊厳ある平和の恢復を希求せんがため集い、ついにそれを成した。もはや不信と憎悪と悪意を以て睨み合う刻は過ぎ去った。これよりベレリアント半島は悪しき習慣を捨て、新しく生まれ変わり、両者は融合していくであろう。ともに手を携え、星欧の平和を希求し、貢献していく国を築きたい」

最初は先ほどの『レラーズの森事件』記者会見の衝撃的な内容から、白エルフの罪を許すような内容が含まれていた演説内容に遠慮がちな拍手だったが、闇エルフ記者達が拍手をしていることに気が付くと、拍手はだんだんと大きくなり、ついに万座の拍手となり、その中でオルクセンの軍楽隊がオルクセン国歌を演奏して終戦式典は終了した。

気が付けば1人になっていた俺は「戦争はクソだな…」とどうしてか呟いてしまった。

 

 

 




次話が火葬戦記の最終話だそうです。
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