小逆転!ベレリアンド戦争!  ~if キャメロット王国参戦す~   作:koe1

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せんそーのあとかたづけ


第19話「これでよかったのか?」

とあるエルフィンドの街にある駅近くの広場で、復員する二個中隊程度のオルクセン兵達が列車を待っている。

正確には列車到着まではまだ時間がかなりあり、今は休暇扱いになっているとのことだった。

オルクセン兵の中にはこの街を散策に行っている奴らもいるとのことだが、つい先日まで戦争をやっていた国なので、大半の連中は念のためということで纏まっているという感じだ。

んでもって、こちらの準備もようやく整った。

俺が「はじめていいぞ」というと、そのオルクセン兵達・・・オークやドワーフ、コボルト達に向かって「食べてけー!食べてけー!オルクセンに帰る前に食べてけー!また今度旅行で来る前に食べてけー!エルフィンド名物の杏子茸のミルクスープだぞー!安いぞー!支払いは軍票でもなんでも良いぞー!ネギは入れてないぞー!コボルトも安心して食べられるぞー!」と、ギザ歯ソバカスや他の白エルフ達が、いつの間にか覚えてオルクセン語で、オルクセン兵達に向かって呼びかける。

それを聞いて、さっきから良い匂いをさせていたこちらが気になっていたオルクセン兵達が我先と軍票やオルクセン通貨、そして持ってはいけないことになっているエルフィンド通貨を差し出し、俺達の基準からすると超巨大といっていいサイズのオルクセン軍の飯盒に、金を受け取りながらミルクスープを注いでいく。

ちなみに安いというのは本当だ。

原価以下で売っている(苦笑)。

ちなみに杏子茸のミルクスープを作っているのは無傷で鹵獲したり、戦場に遺棄されていた奴を修理したりしたオルクセン軍の野戦炊事馬車や、許可を取って持ってきたエルフィンド軍の野戦炊事釜だ。

エルフィンド軍基準だと下手すりゃ一個旅団は楽にまかなえるの量の炊事ができる数があるが、オルクセン軍基準だと一個大隊分程度だ。

オーク達食べ過ぎだぜ(笑)。

それを使って白エルフ達が・・・武装解除でオルクセン軍の連中よりも一足先に復員したが、すぐに帰る手段がなかったり、他にも色々と理由があって故郷に戻らない連中を俺が個人的に雇い、そいつらが一生懸命作って、飯盒に注いで、金を受け取っている。

ちなみにギザ歯は放っておくとオルクセンに『対空射撃諸元』制作の関係者として逮捕されるかもしれないと思ったので、たまたま再会したときにほとぼりが冷めるまで保護しておこうと思い声をかけたが、ギザ歯本人には逮捕される恐れがあることは伝えていない。

 

で、この街でここ一週間ほど朝から晩まで、色々なエルフィンド名物のスープを原価以下の格安でオルクセン兵や、今日はいないがキャメロット兵や武装解除された元エルフィンド兵達、そしてこの街の住人達に振る舞っている。

飲食店の殆どが色々な事情で休業中だからできる技だ。

そうでなければ飲食店の連中と血で血を洗う戦いになっていたことは間違いねえ。

とはいっても、それでもいい気はしないだろうから、金を払って下ごしらえの手伝いをして貰っている。

今もそれぞれの店の厨房で明日の下ごしらえをしてくれているはずだ。

ちなみに実際の財布は、もちろん俺も出しているが、大半はエルフィンド政府と、とあるオトモダチの魔王様だ。

『オルクセン国民としての白エルフ融和のためのささやかな一歩』と称してお願いしたら、エルフィンド政府は淡々と、オトモダチの魔王様は渋々と出してくれた(笑)。

人間族や白エルフにも振る舞っているが・・・まぁ融和のためだ、我慢してくれ(笑)。

それに食材手配は俺が頑張っているから問題ねーだろう。

今日のアンズダケだって、エルフィンド産とグロワール産のそれぞれ乾燥物を1200ポンド(約544kg)ほど手に入れて、ミルクもかなり苦労して大量に手に入れた。

実際にはコンデンスミルクが大半だが(苦笑)。

明日もなんとかアンズダケのミルクスープ出せるか?

そしてこの野外スープ食堂は、なんと素晴らしいことに楽団付で、今はエルフィンド軍の『ファルマリア友の会』と『猪さんにみんなでお手紙届けた仲良しの会』加入資格をお持ちのエルフィンド軍楽隊(笑)が、美しいという表現以外ができないエルフィンドの郷土音楽を奏でている。

ちなみにさっきまではオルクセン軍の軍楽隊が勇壮重厚なオルクセン音楽を演奏していて、この次はキャメロット軍の軍楽隊が愉快な音楽を演奏する手筈となっている。

もっとも1週間前にこれを始めたときは、やることがなくて暇していた軍楽隊の連中と、ギザ歯同様にたまたま再会できたので、『3食付の日払いで一仕事やらないか?』と声をかけて始めたんだが、3日前になぜかオルクセン軍が軍楽隊を派遣してきて、それを聞きつけたキャメロット陸軍も対抗して昨日になって軍楽隊を送りつけてきた。

そいつもにも喰わせることになったので結構きついが、何とかするしかねぇ(苦笑)。

最も内心では、その内エルフィンド海軍やキャメロット海軍も軍楽隊を送ってくるんじゃないかとわくわくしているがな(笑)。

なおこれはもちろんオルクセン側の許可を取っていて、警備という名目で監視のオルクセン軍憲兵達もついていてくれている。

そいつ等には日が暮れたらこっそりと酒を・・・ラムを『警備の疲労回復と防寒用』と称して少しだが振る舞っている(笑)。

ちなみに俺達が使っている野戦炊事馬車は、オルクセン軍の帳簿からは消えているものなので使用していても問題はないと考えていたが、後々問題にするかもしれない奴がいるかもと心配してくれた憲兵との話し合いで後ほどオルクセン軍に返還するということで纏まった。

実際には、とある魔王様も出資者だから問題にはなりにくいと思うが、融通が利かない憲兵の割にはしっかりと融通を利かせてくれる憲兵達だったので、顔を立てるためにもその提案を了承した。

 

「アンズダケってどんな茸なんだ?」

飯盒の半分ぐらいに注がれた熱々の杏子茸のミルクスープを、これまた俺達からすると巨大といえるサイズのスプーンで食べようとしていたちょっとのんびりとしている顔をしたオークが手を止めて隣にいた、こっちはちょっと顔つきが悪いオークに尋ねるが、尋ねられたオークは「知らん。だがうめーぞ」と食べながら答える。

「アンズダケっていうのは、オルクセンでいうフィッファリンクだ。こいつは乾燥した奴を戻したやつを使っているが、生の奴も美味いぞ」と、他のオークの飯盒にスープを注ぎながら俺が答えてやると、そいつは「フィッファリンクかー」と言ってから食べ始めたが、少しすると食べながらぼろぼろと泣きだした。

「おいおい、にーちゃんどうした?」

ギザ歯ソバカスが心底心配したような声でそのオークに尋ねると

「この美味いスープを飲んだらなんかホッとして・・・生きて帰れると思ったら涙がとまらくなって・・・美味しいなこのフィッファリンクのスープ・・・本当に美味しいな・・・」

相変わらず、ぼろぼろと泣きながらそのオークはスープを食べる。

ちょっと顔つきが悪いオークが「ヴルスト売り、大丈夫だ。帰るぞ。帰れるんだ」といって、その顔つきに似合わず優しく背中をさすってやっている。

そんな中「おいどうした?」と、2頭のオーク兵を連れてやってきた将校が心配そうに、泣いているヴルスト売りと呼ばれているオークに話しかける。

「隊長殿!ヴルスト売りの奴、この美味いスープを飲んでいたら、ホッとしちまったらしくて・・・隊長殿も如何ですか?安いのにとても美味いですぜ」といって、顔つきの悪いオークが将校に・・・大尉殿にも俺達が売っているスープを勧める。

「そうか、なら俺も貰おうか」と言うと、ついていた2頭の内、ひょうきんな顔をしたオークが「まず隊長殿の飯盒に注いでくれ。次はおいらの。染物屋はどうする?」と飯盒を2つ差し出しながら、後ろを振り返って、もう1頭のオークに尋ねると「俺も!」と言ってからそのオークは飯盒を持っていないことに気がつき、背嚢が置いてあるところに走って行った。

3頭分のスープ代を払ったその大尉殿は、スープを口にすると一言「美味い」と言い、ひょうきんな顔をしたオークも「美味いっすね・・・」という。

息を切らせて飯盒を持って戻ってきた染物屋と呼ばれていたオークもスープを一口飲んで「美味い。子供達にも食べさせたいな・・・」と言ってくれた。

料理人じゃねーが、美味いといってくれるのが嬉しいぜ。

 

他のオルクセン兵達にスープを注ぎながら5頭の会話に耳を澄ませていると、隊長には故郷に婚約者がいて、その婚約者へのプレゼントを買いに街に出ていて、ひょうきんな顔をしたオーク・・・『客引き』と呼ばれているオークと『染物屋』と呼ばれているオークが護衛と目利きとしてついていった事がわかったが、残念ながら先に帰還した部隊の奴らが土産物として街の店の商品の殆どを買っていて、良い物は見つからなかったとぼやいていた。

婚約者がいるのか・・・

「ギザ歯、ここちょっと任せたぞ!」

俺はそう言って俺達が泊まっている、すぐ近くにあるオルクセン側が特別に用意してくれた宿舎代わりにしている建物に走って行き、機関長にやろうと思ってティリアンで買ったペンダントを手にとって戻り、大尉殿に「大尉殿、無事の御生還、おめでとうございます。よろしければこちらを婚約者殿に。ただチェーンの長さはオークの方には合いませんので、オルクセンに戻った後に変わりのものを手配してください」と言って、ペンダントの入った箱を手渡すと、戸惑いと訝しさが半々という顔つきで大尉殿は箱を開けると、出てきたペンダントに驚きの声を上げて、俺の方を見た。

「隊長、こいつは良い物ですよ・・・」横からそのペンダントを覗き込んだ『客引き』が感心したように言う。

「おめーがいうんなら間違いねーだろうが、こいつは確かに良いもんですな・・・」と『博徒』と呼ばれている、ちょっと顔つきの悪いオークが関心したような声で言う。

そして残った2頭、『ヴルスト売り』と『染物屋』が「隊長よかったですね」と無邪気に言う。

大尉殿は「よろしいのですか?」と、今は勲章もエルフィンド軍の階級章も着けていない、今は単なるスープ売り集団の親玉の人間族に丁寧に尋ねてくれたので「私にも婚約者がいましてね。ただ私はまだこちらにいるので代わりの物も手に入れられるでしょうが、大尉殿はもうオルクセンに戻られる。なのでよろしければですが」

というと、綺麗な敬礼をしてくれた後、生々しく「ではこのぐらいでは?」「いや、それじゃ貰いすぎで。このぐらいでは?」「それでは流石に・・・ではせめてこのぐらい」という会話をしてから無事に大尉殿の元にペンダントは旅立っていった。

その間に、欲しい奴にスープがほぼ行き渡り少し余裕が出たギザ歯達と他の4頭のオークが仲がよくなっていたようで、大尉殿も含めた5頭というか、ここにいる部隊が第九山岳猟兵師団第七連隊に所属していることやハウプトシュタット州ゴルドブルン市に駐箚していること、そして5頭が共に予備仕官や予備役だったことを教えてもらっていたり、ヴルスト売りから「ゴルドブルンに来たらうちの屋台のヴルストを御馳走するよ」や「行ったら必ず食べ行くよ!」や「うちの店にも来てくださいよ」という客引きに博徒が「お前の店は白エルフの嬢ちゃん達はいけねーだろうが!」や染物屋が「ゴルドブルンお土産に良い染め物を作るから来てね」という会話をしていて、それをみた大尉殿が小さい声で『美しい国エルフィンド』と古アーブル語で呟いたので、俺も古アブール語で『美しい国オルクセン』と呟くと、驚いた顔をされた後に大変綺麗な敬礼をしてくれたので、俺もエルフィンド流の敬礼で返礼した。

 

そしてその夜、宿舎であちこちの料理屋で下ごしらえをしてくれた材料で翌日のスープの仕込みをしているとミュフリング少佐殿がやってきて、グスタフ陛下からの

「6月18日にアグラレス女王・・・当日までには、女王同意の下で『黄金樹の守護者 アグラレス王女』へと称号が変更されるが、彼女の案内でエレントリ館を訪れる予定だ。友人として君も如何かな?ディルーネスも行くので、君の情熱的な恋人も連れてきてくれ」

という手紙を持ってきてくれたので、『もちろんお供させて頂きます』という返事を書かせて頂いた。

というかそれ以外の返事は書けないだろう・・・。

だけどエレントリ館って、エルフ達の聖地中の聖地だよな・・・。

ある意味俺にとっても憧れの地ではあるが、なにも起きなきゃいいがと心の中で思いつつ、最も重要な『機関長、来てくれるかな・・・』と心配しつつ、敗戦で混乱しているエルフィンド国内で確実に電信を届けるために、明日の朝一番で、自分の立場を悪用して『外交電信』扱いでタスレンにいる白銀樹号に電信を送らないといけないと考えた。

 

 

そしていよいよ6月18日という日がやってきた。

4日ほど前にティリアンに到着していて、戦火ををなんとか免れることができたティリアンを機関長と一緒に観光した・・・くともできなかった。

観光する余裕がなかった。

魔王様からのご招待に対して俺は船長礼服を着れば良いが、機関長が意外なことに民間船士官礼服を持っていないことがティリアンに機関長がついてから判明したので、大慌てでティリアンの仕立屋に大枚はたいて食料も手渡して、さらに材料も一部持ち込みの上で頭下げまくって注文を受けてもらい、昨日まで礼服制作にドタバタしていたからだ。

靴とかも手に入れなきゃならないから苦労したぜ・・・

なんとか間に合ってよかった・・・。

 

エレントリ館にむかう車列はエルフィンド軍の黄金樹旅団とオルクセン軍の混成・・・といっても9割はオルクセン軍だが、そんな護衛部隊の元でオルクセン国王グスタフ・ファルケンハイン陛下、王妃に内定しているディネルース・アンダリエル少将殿をはじめとする錚々たる面子が馬車に乗っている。

ちなみに一緒の馬車に乗っている機関長は真っ青な顔をしている。

う~ん・・・お茶会の時のギザ歯ソバカスを見ているようだぜ・・・。

ちなみに同じ馬車には外務大臣殿とガン決まりじょーちゃんも乗っているが、こちらもかなり緊張しているようだ。

エルフ狂いの俺にとっては単なる『書物で知った憧れの地』でしかないが、白エルフにとっては半端ない聖地のようだ。

 

車列がエレントリ館に到着すると、女王から王女と称号が変わったアグラレス王女殿下が一行を出迎える。

さっさく一行はエレントリ館に入っていくが・・・すっげぇなここ・・・清楚にして荘厳壮大。

ここよりも立派な舘は世界中を探してもないんじゃないかと思ったほどだ。

で、俺も最後尾から、真っ青な顔をして動かなくなっている機関長の手を引きながらエレントリ館入っていこうとするが、出迎えの侍従の1人によからぬ雰囲気を感じたので、風向きを感じると、運が良いことに丁度良い風だったのでハンカチをわざと落として、風に飛ばされたハンカチを拾いに行くふりをしてその侍従の元に行き

「早まるな。悔しいのはわかる。悲しいのはわかる。だが死ぬな。白エルフの聖地は焼かれるわけじゃない。あんたみたいなやつが絶対に必要になる」

と小声で言うと『短命種如きが!』という目をして睨んだので、無言で俺の礼服の襟元に縫い付けているエルフィンド軍の階級章を指すと、はっとした顔をした。

俺はもう一度「樹はまた芽吹く」とだけ言って機関長の下に戻った。

やめてくれると良いが、これ以上は流石に怪しまれる。

あの顔は船と運命を共にする船乗りの目をしていた。

気持ちはわかるが、命は大事にしてくれよ・・・。

 

で、中に入るともうなんというか・・・凄いとしか語彙が出ない。

そして機関長だけではなく、とうとう外務大臣殿やガン決まりじょーちゃんも顔を青くし出した。

その気持ちわかるは・・・。

俺達につけられた侍従殿が説明するところでは、3つの邸館と5つの東屋や離れがあり、それらを天井つきの回廊が繋いでいるとか。

それぞれの建築物も石材、木材、漆喰も贅沢に使われている上、どこもかしこもが長い年月を経てしっかりと手入れをしてきた建物だけが得ることができる見惚れるほどの色艶。

しかも滝があったり、背景の素晴らしさと相まって荘厳この上ない。

豪華ではなく、繰り返しだが荘厳だ。

今更ながら人間族の俺が立ち入って良いのかと思っちまったが、来てしまったからには存分に楽しむしかない。

ちなみにキャメロット代表ではなく『グスタフ王の友人』という立場でアストン卿もいらしており、その秘書である甥っ子もついてきているが、さっきちらっと見たときは2人揃って静かにメモをとりまくっていた。

気持ちはわかる。

もうメモをとらないと最初見たことを忘れてしまうぐらい奥に進むほど凄い。

手元に写真機があったら、ガラス乾板代金だけで破産するのは間違いないぐらい2人で写真を撮りまくっていただろう。

そうしている内に、書庫にいたオルクセン軍のグループに追いついたが、休戦交渉の際に散々俺達を侮辱した次長殿がエルフィンドの史書を見て

「おお、エルフィンドの歴史書だ。負けたと書くだけでこの厚み?」

と奢りきった声で呟いたのが耳に入り、頭を抱えそうになった。

幸いなことに一緒にいた機関長や外務大臣殿、ガン決まりじょーちゃん達の耳には入らなかった・・・か、聞かなかったことにしてくれたようだが、あのオーク・・・たしかグレーベン少将殿だったよな・・・。

そう思っていると、たまたまゼーベック上級大将殿が近くに寄ってきたので、小声で「上級大将殿、少将殿をもう少し教育した方が良い。その内、外交で取り返しのないことをしでかします」と呟くと、ゼーベック上級大将殿はとても困った顔をされた。

するとその様子がたまたま目に入ったらしい元帥に内定されているシュヴェーリン上級大将殿・・・とおぼしき片牙の歴戦の勇士といえる面構えのオークが「ゼーベック、どうした?」と言いながらこちらにいらした。

シュヴェーリン上級大将殿とは初対面だったが、目で何があったを促したので、正直に「グレーベン少将殿が危険すぎます。確かに少将殿が1人いれば100万の敵にも負けないし、1000年の安寧をオルクセンは得るでしょう。ですが・・・周辺への思慮が足りなさすぎる。今はまだゼーベック上級大将殿が上にいらっしゃるのでやらかしたときのフォローをしてくださっていますが、彼がその能力に相応しい地位にまで辿り着いたとき、上にグスタフ国王陛下以外がいなくなったときに回りがどうなるか全くわからない。100万の敵には負けないが、1人の味方に刺されるかもしれない。国家として500年の安寧を得るでしょうがが、501年目には少将殿の口が元で周辺国が一斉に宣戦布告するかもしれない。へりくだれとは言わない。回りと協調しろとも言わない。ただ思慮をもう少しもてと言った方が良いです。そうすれば少将殿が1人いればオルクセンは200万の敵にも負けないし、国家1000年の安寧をオルクセンは間違いなく得ます」

と言うと、シュヴェーリン上級大将殿は

「お前、グレーベンの坊主のことをかなり買ってくれているな。買っているからこそ心配してくれているのか」

と、こちらの心の中を覗き込まれたようなことを言われた。

そうだよ、俺はあのクソ生意気なオークを買っているよ。

そうでなきゃ100万や200万の敵にもあいつ1人いれば良いとか、1000年の安寧とか言わねーよ!

できればキャメロットに亡命してうちの国の軍のトップに来て欲しいぐらいな!

そうすればキャメロットは世界を征服できると本気で俺は思っている。

そんなことを思っているとシュヴェーリン上級大将殿は

「グレーベンの坊主には娘を通じて少し教育するとしよう」

と言って俺の肩を感謝するように軽く叩いてから戻っていった。

ただ俺が『娘を通じて』という意味がわからないでいるとゼーベック上級大将殿が

「グレーベンの妻はシュヴェーリンの末娘だ。私が紹介した」と教えてくださった。

うわ・・・もしかして俺って、オルクセン軍3大トップのうち2人に喧嘩売っちまったのか?

やっぱり北星大陸に亡命するべきかもしれねーな・・・。

 

その後、俺達はオルクセン軍のグループで膝が悪いせいで少し遅れだした、3大トップ最後の御1人であるツィーテン上級大将殿と一緒に行動したが、流石は完全に包囲された補給線も断たれたノグロストを守り切った名将だと心の底から感じた。

クラインファスを占領したエルフィンド軍は幾度となく孤立しているノグロスト奪還を試みたが『ノグロストが険、緩やかならず』と、偵察の段階で断念しちまったぐらいだ。

補給線が断たれて、食料も武器も弾薬も不足しているにも関わらず、兵達の士気は高く、防備体勢は完璧。

更にいうのならば、そんな全てが不足に陥った状況にも関わらず、白エルフ達が暴動を起こすことなく、最後までその軍政に従ったという名将中の名将だ。

どうもオルクセン軍の中では『クラインファス奪還のための行動を起こさなかった』という理由で評価が低いようだが、逆だ。

この方がいなかったらノグロストは奪還できていて、その勢いでモーリアも奪還できていたもしれない。

そうすればオルクセン軍をベレリアント半島内で半包囲できていた。

今日、俺がここにいることもなかっただろう。

早さが命の騎兵総監だっていうのに粘り強いし、耐える力も半端ないし、統制力は化け物だ。

というかよく考えたら、キャメロット基準でいうと農耕馬や重輓馬といえる馬でオルクセン軍の騎兵部隊を作り上げた男が軽いはずがない。

クラインファス軍と呼称されていたエルフィンド軍を率いていた、ダリエンド・マルリアン大将殿が『こいつ以外にオルクセンに攻め込むのは任せられない』といって昇進の上で任じたセレスディス・カランウェン中将殿が、偵察だけで奪還を諦めちまったぐらいだ。

もっともそのカランウェン中将殿もオルクセン軍が半包囲したクラインファスを最後まで完全に守り切った上に、時折逆襲してオルクセン軍に少なくない打撃を与えていた化け物だ。

そんな名将とお近づきになれて俺は心の底から嬉しかった。

もっとも放っておく形となった機関長がすねまくって、後が大変だったがな(笑)。

 

そんな感じのエレントリ館訪問だったが、アンダリエル少将殿とアグラレス王女殿下、更に案内の侍従1人という少人数で、聖地の中の聖地である、アグラレス王女殿下が生まれたという黄金樹を見学されたグスタフ国王陛下だが、その黄金樹見学後からどうも様子がおかしかった。

アグラレス王女殿下に『友人』という立場を利用して近づき、それとなくお尋ねすると、200年前にエルフィンドから旅立った最後の神の使いが残した碑文をご覧になってから様子がおかしいという。

俺が何が書いてあるのですかとお尋ねするが、アグラレス王女殿下をはじめとして誰もそこに記されている古代文字は読めないという。

キャメロット風に意訳するのならば『神の使い』もしくは『使徒』、『天使』。

エルフィンド語から直訳するのならば『指導者』。

前首相ドウラグエル・ダリンウェン閣下が取り調べで語っていた奴か・・・。

俺も暇だったから2度ほど取り調べに参加させて頂いたが・・・その指導者様の教えを全く守っていなかったよな、ダリンウェン閣下。

 

 




次話で最終回のようです。
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