小逆転!ベレリアンド戦争! ~if キャメロット王国参戦す~ 作:koe1
星歴876年11月24日
作戦名『Great Escape』開始から既に4日目。
ひっきりなしにやって来るキャメロット船籍の船にファルマリア市民や避難民達がどんどんと乗船していく。
既に1回目の避難民輸送を終えて帰ってきた船だ。
許されるのならば、戻ってきたときには弾薬等を運んできて欲しいがその様な余裕は荷役時間的にも備蓄的にもないとのこと。
とはいえ食料は各船荷役時間の都合上で少量ずつだが運んできてくれているのでそれは有り難い。
今まで少ない食料で食いつないでいた状況から少しでも量や質が良くなればそれは希望につながる。
希望を持つ者が多くなれば、混乱も起きにくくなる。
肝心の脱出は単純計算らしいが、大小様々な船がいるというので、推定平均値として1隻あたり400人を詰め込むという計算でやっているらしい。
なので6万5千人だとされている避難民に対して165隻が必要となるが、キャメロット民間船は元々ここに停泊していた9隻に第一陣でやってきた15隻。
更に無事だったエルフィンド船籍の船が3隻、他の港から回ってきたのが6隻あわせて33隻。
さらに海戦での被害の軽かったキャメロットの一等巡洋艦3隻も輸送にあたってくれている。
なので単純に計算すると、36/165隻なので、4~5回往復すればいい計算だが、実際には各船とももっと詰め込んでいるので計算より多くの避難民を輸送できている。
既に1回目の輸送で15000程度を運んだらしい。
更にキャメロット船籍の救助船団第二陣の20隻が今日の夕方にも到着するとのこと。
そうすれば輸送はもっとはかどる。
単純に考えれば、400人×20隻だから8000人を一度に輸送できる。
最初からいる船36隻を合わせれば56隻、22000人を運べる。
つまり1回目の輸送と合わせると37000人を運べる。
まぁ実際には岸壁それほどあいていないので、各軍艦のボート類も提供しての艀輸送もしているぐらいなので、そんな単純な計算ではないことはわかるが。
避難民の避難先となっているのは北のエヴァンマール港と更に北にあるタスレン港で、船舶の速さによって行き先を変えている。
なので各船共に1往復で乗船下船も含めて4~5日と見込んでいるので、第二陣が到着すれば2週間程度で避難が出来る。
実際の避難航海はそれぞれ準備が整った船が出航して独航もしくは2~3隻程度の船団で航海しているが、ファルマリア~タスレン間の航路は我がエルフィンドとキャメロットの二等巡洋艦、水雷巡洋艦が警備をしており、オルクセン側の襲撃を許さない体勢になっている。
そしてエルフィンドの一等巡洋艦と装甲帯巡洋艦はベラファスト湾内並びに湾口の警戒。
我が軍の装甲艦リョースタとキャメロット軍の装甲艦と装甲帯巡洋艦がファルマリアにいて、オルクセン軍の攻撃に備えている。
正直、海上戦力としては過度に分散している形だが、オルクセンの主力艦隊を文字通り粉砕した今となっては、警戒するのは民間船への単艦襲撃程度のなので問題はないと言える。
今のところオルクセン側は何故か攻撃を控えているが、問題は私達、軍が撤退するときだ・・・
しんがりは増援が送られてきたキャメロット海兵隊が引き受けるとのことだが、そんな名誉あることは奴らだけに奪われてはならない。
ここファルマリアは私達エルフィンドの…白エルフの街だ。
最後にズボンとブーツを濡らしてボートに乗るのは私達でなければならない。
パンパン!パンパン!
突然あちこちから小銃の発射音が聞こえた。
時間からいって『定期便』の時間なので、なんとかあの鳥を落とそうとしているのだろう。
私は指令本部となっている壕からでて
「打つな!打つな!どうせあたらん!弾の無駄だ!」
と怒鳴ると、我がエルフィンド海兵と臨時に私の指揮下に入れられている陸軍兵は射撃をやめた。
しかし一人射撃をやめようとせずに未だ空に向かって狙いを定めて続けている莫迦が・・・いや、キャメロット海兵がいる。
どうせ当たらんというのに無駄なことを・・・
私はそう思いながら壕に戻ろうとしたとき射撃音が一発だけした一瞬の間隔の後、突如として歓声が巻き起こった。
まさか!
私は慌てて空を見上げると、綺麗に飛んでいたあの鳥が・・・大鷲族がもがくように空を飛んで徐々に高度を下げている。
当てたのか!?当てたのか!?どうやって当てた!?
私は射撃姿勢をとったままのキャメロット海兵のところに駆けよってその両肩を掴み
「当てたのはお前か!?どうやって当てた!」
と尋ねるが、アーブル語を理解しないのか、困った顔をして何も答えずにいる。
この短命種が!アーブル語程度勉強してこい!
そう罵声を浴びせそうになったとき、
「二等少将殿、一体何やってんだよ?一目惚れして結婚の申し込みか?」
と、あの短命種のくせに教養高いキャメロット人船長が呆れたような声を掛けてきた。
本来ならば船長として避難輸送にあたっているはずなのだが、数少ない貴重な通訳なので頼んで残って貰った。
…実際にはまたオルクセンに対して文書を交付するときに古アーブル語で美しい文書を書けるのがこいつだけなので、居てもらわないと困るからなのだが…。
あとでどんな因縁を、ティリアンでふんぞり返っている役人どもがつけてくるかわからないからな…。
これだけは4人いる二等少将の意見が完全に一致しているのがなんとも情けないが、口にはできん。
ちなみに船の方は1隻も無駄に出来ないということで、部下を仮の船長に任命して避難民輸送にあたっているそうだ。
それはともかく、ここで嫌みで返したりすると美しい古アーブル語で嫌みを返してくるので我慢して
「この海兵が鳥を撃ち落としたらしいので、どうやって当てたのかを聞き出そうとしただけだ」
と正直に答える。
あれか…と未だに藻掻きつつ徐々に高度を落としている大鷲族を見てからキャメロット語で海兵に話しかけ、少しやり取りをしたあとこちらを向き、
「たぶんニ等少将殿の求める答えじゃないと思うんだが…狙って撃った。それだけだそうだ…」
と、キャメロット船長も困ったような顔をして言った。
それはまさに私の求める答えではなかった。
その後、思っていたより近くに大鷲族が堕ちたので兵を集めて堕ちた場所にいくと、息はあるがぐったりした大鷲族とかなり小柄なコボルト族が大鷲族に縋り付いていた。
周りの兵達も殺気だっており、腹癒せと士気のためにに撃ち殺そうと考えたが
「空を飛ぶ大鷲族を落とするなんて大戦果だぞ!自慢できるぞ!生捕りだ!捕虜にしよーぜ!」
と何故か一緒についてきたキャメロット人船長が大声を出して、周りの殺気だった空気を飛ばしてしまった。
私はため息をつきたいのを我慢して「こいつらは捕虜だ」と言った。
兵士達が倒れている大鷲族を守るように立ち塞いで喚いているコボルト族を少々手荒に大鷲族から引き剥がすと、大鷲族が何事かを言いはじめたが、キャメロット人船長が大鷲族とオルクセン語で話し出し、さらにコボルト族にも何事かを話しかけると、2人とも大人しくなった。
そして「軍医殿、こっちだ!」と大きな声を出すと、いつの間に呼んだのが我軍の軍医がキャメロット海兵隊数名に護衛されながらやってきた。
倒れたままの大鷲族族の前にきた軍医は困った顔をして私とキャメロット人船長の方をみるが、キャメロット人船長が「首の根元あたりを撃たれたと言っている。診てくれ」と軍医に言ったあと、大鷲族族に何事か話しかけると大鷲族は首を上げ、その下にまずキャメロット人船長が躊躇いなく入り、続いて軍医がおずおずと入っていき、傷口を探し始めた。
私はそれをみてため息をついて壕に戻ろうとすると、キャメロット海兵隊の1人が大きな赤星十字社の旗を掲げているのに気がついた。
一体何をしている?と思っていると、キャメロット人船長がいつの間にか後ろにいて
「丘の上からこそこそ見ているのオルクセンの連中に捕虜として扱っているのを見せるためだ。国際法もろくに守らねー連中だ。下手するとこいつらと一緒に俺達を砲撃で吹き飛ばしてきかねねーからな」
と言ったので私は呆れながら、打つならとっくに打っているだろうと思ったが、それを察したのかキャメロット人船長は
「兵士個人個人と上の連中は違う。こうやって赤星十字社の旗を掲げていれば、少なくともこれを見ている兵達は俺達がこいつらを捕虜として扱っていると理解するし、上がこのことに気がついて攻撃を命令しても躊躇したり、わざと外したり、攻撃したふりで済ませてくれるだろからな。あと俺達がやばいとき殺されずに捕虜にしくれる可能性が高くなる。…ただもしかしたら赤星十字社とかの存在を教えられてないかもしれねーがな…そんときは…まぁそんときだ」
それを聞いて自分がオーク共の捕虜になろうことはありえない!と思ったが、口には出さないことにした。
もう一度大鷲族の方を見ると、なんと腹を上にした姿勢に…仰向けになっており、軍医が麻酔なしで…あの巨体に麻酔をするならどんな量が必要か考えたくないが、身体に食い込んだ弾丸を摘出しているところだった。
大鷲族なので表情はわからないが、途轍もない痛みに耐えているのだけはわかる。
そしていつの間にか拘束を解かれたコボルト族が大鷲族も元にいて、大鷲族の身体を心配そうに撫でていた。
その後、私が止める間もなく貴重なエリクシル剤を使って大鷲族の治療したあとは、キャメロット人船長が「うちが墜としたからこっちが貰っていくぞ」と言い残し、赤星十字社の旗を掲げたキャメロット海兵隊員と共にコボルト族と大鷲族はひょこひょこと歩いて港の方に向かっていった。
私はそれをみて、なぜ大鷲族は飛んで逃げないのか?と疑問に思ったが後ほどキャメロット人船長に「逃亡しないことを誓う捕虜宣誓をさせたし、それ以前に兵士に囲まれた状況で逃げるバカはそんなにいないだろう」と説明をしてくれた。
そして次の日の朝、キャメロット海軍の生き残ったアルティメット号の砲術長が、昨日大鷲族を撃ち落としたキャメロット海兵を連れてきて、この海兵がどうやって大鷲族に銃弾を命中させたのかを技術的な方向から聞き出すことに成功し、それをまとめた拙いアーブル語で記された報告書を持ってきた。
どうもあの船長が依頼したようだった。
私はそれを貪る様に読んだが、要は『飛んでいる大鷲族そのものに狙いを定めるのではなく、飛んでいる方向の少し先に飛行速度に合わせて狙いを定めて撃つ』とのことだが、実際には正確に飛んでいる高さと速さを見極めた上で、弾丸が落ち始める距離等も計算して撃つという、かなり高度な技術が必要ということがわかった。
ちなみにこの海兵は鳥撃ち猟師の息子なことと、貸与されているマティーニ小銃の弾丸の飛び方のくせを把握していたのでそれでなんとか当てたとのことだが、大鷲族の大きさにかなり距離感が惑わされた等も記されており、どうやって墜とせたのかがわかったと同時に、これは一朝一夕で身につけられるものではないということも理解した。
さらにオーク共が諦めずに定期便を飛ばすのなら、このキャメロット海兵に頼るしかないことも理解した。
ただその予想は半分裏切られた。
砲術長は海兵から聞き出した情報を元に、他の生き残っている艦長を含む砲術士官や計算が得意な航海士官達と共に『対空射撃諸元表』なる、各高度別毎のマティーニ小銃の性能を基準にした射撃角度をまとめたものを製作中とのことで、それが完成次第、飛んでくる定期便に対して、それを元にした分隊単位での試射をおこない、数値が正しいかを試すとのことだ。
曰く、5回以内の射撃で落とせたら概ね数値は問題ないと考えているらしい。
そして定期便の時間となったが、オルクセンは相変わらず大鷲族を飛ばしてきた。
飛んでいるコースはいつもと同じだが、今までより少し高く飛んでいる。
いつの間にか"Eagle killer"と呼ばされ始めたキャメロット海兵が高度と速度を報告していく。
速度にはどうも変化がないようだ。
それを元に『対空射撃諸元表』で射撃角を確認したキャメロットの砲術士官が、それぞれ6名ずつで特別編成されたキャメロット海兵とエルフィンド海兵とエルフィンド陸軍兵の『特設対空射撃隊』に指示を出していく。
パパーン!!
まずキャメロット海兵隊がこちらに向かって飛んでくる大鷲族に一斉射撃するが命中弾無し。
パパーン!!
続いてエルフィンド海兵隊が一斉射撃するが命中弾無し。
パパーン!!
最後に陸軍兵が一斉射撃すると・・・大鷲族がよろめいたと思ったが、残念ながら持ち直した。
どうもかすっただけのようだが『対空射撃諸元表』は効果がある!
私は正直驚いたが、例の"Eagle killer"は別な感想を持ったようで、一斉射撃をした陸軍兵の中の一人に・・・白エルフのくせに対して美しくない、ギザ歯のそばかすが目立つ国境警備隊出の兵の元にかけより、どうもその兵だけに射撃させようとしている様子だった。
"Eagle killer"が喋ることが出来る単純な指示に従って大鷲族に一人狙いを定めたギザ歯そばかす兵はもう一発打つと、丁度私達のほぼ直上を通過したばかりの大鷲族がよろめき、方向を変えつつ徐々に高度を落としていった。
大歓声があちこちで巻き起こった!
当たった!昨日と同じだ!!私も心の中で歓声を上げた!
私はすぐに『特設対空射撃隊』以外の手短にいた兵を纏めると、懸命に羽ばたいてはいるが高度をどんどん下がり、フラフラと方向が定まらず飛んでいる大鷲族の落下方向に向かって走って行った。
オルクセン側に落ちるな!という白銀樹への祈りが通じたかはわからないが、我が軍の防衛線内に大鷲族は落ちた。
今回も大鷲族とそれに乗っていた小柄なコボルト族は生きていて、キャメロット人船長のまねをしたわけではないが、赤星十字社の旗を掲げさせてから、昨日よりも重傷の大鷲族とこちらも負傷しているコボルト族を治療し、アーブル語ほど上手く喋れないオルクセン語で捕虜宣誓をさせた上で、コボルト族は先に担架で、大鷲族は数少ない工兵に輿を作らせ、それに載せた後に15人がかりで運んで行った。
幸いなことにオルクセン軍は一発も打ってこなかった。
そして大鷲族とそのコボルト族を尋問した結果、どうも最初の射撃から弾が近くを飛んでいたらしい。
つまり・・・やはり『対空射撃諸元表』は効果がある!
そしてキャメロット側だけではなく、エルフィンド側にも"Eagle killer"の才能がある者がいることがわかった。
ただどうもキャメロットの"Eagle killer"と『対空射撃諸元表』を作った海軍士官達は不満があったらしく、早速改訂版の制作に入っていった。
ほぼ徹夜で作業したのか、次の日の朝に目の下に隈を作ったキャメロット海軍士官達は新たな『対空射撃諸元表』をもってきた。
昨日の物よりわかりやすくなっていた。
まず速度観測を諦めて、"Eagle killer"が感じ取り、他の士官が観測していた数値から導き出した大鷲族の水平飛行速度を時速43ノット・・・陸軍風に言うのならば時速約50マイル(時速約80km)の仮定固定値とし、『対空射撃諸元表』から速度換算部分を廃して、高度のみの測定ですぐに射撃指揮を下せる単純な物に手直しした。
もっとも水平飛行時以外や、大鷲族が飛行速度を変えると役に立たなくなるが、今はこれで十分と判断してらしい。
ただ高度測定だけはどうしても難しく、現時点ではこれはキャメロット人"Eagle killer"にの観測に頼るしかないということになった。
正確な高度観測方法については研究課題だと明記されている。
そして射撃方法自体は3個『特設対空射撃隊』が2回ずつ射撃した後、効果がない場合のみ"Eagle killer"2名の自由射撃ということになった。
実験と敵に少しでも情報を渡したくない兼ね合いという奴だ。
もっとも真上から見なくても丘の上からコソコソと見ているだろうが、それでも真上と横から見るのとは全然違うだろうから、妨害することは大事だ。
そして定期便の時間となったが、2日連続で大鷲族が被害を出しているというのにオルクセン側はまた飛ばしてきた。
ただし高度は昨日より更に高い。
マティーニ小銃の射程ギリギリのようだ。
だが"Eagle killer"はいけると判断し、高度を報告していく。
高度一定、特に変化無し。
速度も昨日までと変わらず。
ちなみにその脇にギザ歯そばかす兵がいて、一緒に空を見上げている。
どうも高度の判断の仕方を教えているようだ。
すぐにキャメロット砲術士官が射撃角と方向を指示して、キャメロット海兵、エルフィンド海兵、エルフィンド陸軍の順で射撃を開始すると、2回目のエルフィンド海兵の射撃時に効果があったようで、大鷲族は一気に高度を落としていった。
今までより落ち方が違う!
どうも複数の命中弾があったのだろうと思った。
私は落下していく方向・・・街の方に向かって数人の兵に着いてこい!と声を掛けると走って行った。
落下地点には既にキャメロット海兵隊、生き残りの水兵、我が陸軍兵が集まっていたが、遠巻きに大鷲族を取り囲んでいた。
何かと思ったがコボルト族が間違いなく絶命している大鷲族にすがりついて泣いていた。
正直あの高さから落ちていったのにその背中に乗っているコボルト族が無事だったのが信じられないが、落下したとき近くにいて目撃していた兵が言うには、大鷲族は懸命に姿勢を変え、背中に乗っているコボルト族だけは助けようとしていたように見えたとのことだった。
わたしはその2頭がどうも神聖な気がしてしまい、近づくのを躊躇ってしまった。
どうも他の兵士達もその様なものを感じてしまい、遠巻きにしていたようだった。
しかしいつまでもそうしているわけにはいかないので、コボルト族を捕虜にするように指示を出そうとした瞬間、またあのキャメロット人船長がやって来て、ずかずかと泣いているコボルト族に脇に行くと、たとえ文化が違えと、戦死した大鷲族に敬意を払う姿勢をとった後にコボルト族と少し話してから、大鷲族の羽根を3枚抜いた。
ただこっちというか、周りにいた兵士達に向かってまずアーブル語で「戦利品じゃねーぞ!」と怒鳴り、続いておそらくキャメロット語で同じ言葉を怒鳴り、その3本の羽根を全てそのコボルト族に渡した。
その後「今抜いた羽根はこのコボルト兵の戦友の遺品だ!こいつの思い出に1本!故郷に届ける1本!そして家族がいたら渡す1本だ!死体漁りは恥だぞ!」と怒鳴ってから、キャメロット語でもう一度怒鳴った。
その言葉に少なくともその場にいた者は誰もが従い、誰1人として大鷲族の羽根を戦利品として持ち去る者はいなかった。
その後コボルト族は捕虜として連れて行き、大鷲族は見張りをつけた上で丁重に埋葬した。
そして次の日から大鷲族は・・・定期便は飛んでこなくなった。
星歴876年11月28日、俺はまた前みたいにエルフィンド軍の大佐とうちの海軍の大佐、更に護衛のうちの海兵隊と、接近を知らせる役目も兼ねて音楽を奏でながら着いてくるエルフィンド海兵隊軍楽隊と共にファルマリアを取り囲んでいるオルクセン軍の陣地に向けてまた進んでいる。
もちろん大佐は白旗を持っているが、今回はその従兵が赤星十字社の旗も持っている。
今日は『撤退勧告』ではなく、昨日までで落とした大鷲族とコボルト族兵士達の捕虜名簿と家族への無事を知らせる手紙をオルクセン側に届けるためだ。
もっとも大鷲族は身体の都合上、字が書けないので、俺が話しを聞いて代筆したんだがな。
もちろんお届けついでにあわよくば色々とお話し合いをという夢と希望も持っていた。
だけどな・・・まさかこっちの姿を見た途端、向こうの士官が射撃命令ををだすとは思わなかった。
慌ててバラバラになって物陰に隠れて懸命に
「打つな!捕虜名簿と捕虜の家族宛の手紙を持ってきただけだ!捕虜名簿と手紙だ!!それを渡しに来ただけだ!!打つな!!」
とオルクセン語で叫びながら、白旗と赤星十字社旗を振り回わさせるが、今度はその旗めがけて打ってきやがった!
あいつら正気かよ・・・白旗を打つなんて・・・あとオルクセンも赤星十字社協定を結んでいるだろう!!
「俺達は捕虜になったお前達の戦友の名簿と手紙を届けに来ただけだぞ!!」
もう一度怒鳴るが射撃は更に激しくなり、とうとう負傷兵も出始めたので、エルフィンドの大佐が退却を指示し、俺達は負傷兵を担いで命からがら逃げ出した。
流石に追撃はしてこなかったが・・・オルクセンはもう駄目だ。
国家として野蛮すぎる。
「銃声が近いな・・・」
地図をじっと見つめていたグレーペン少将閣下を顔を上げてそう呟いた。
思考を邪魔されて気に障ったという感じだ。
我が王の命により第一軍は現在もなおファルマリアへの総攻撃を仕掛けられていない。
早期のファルマリア占領とファルマリアを起点とした本国との海上輸送補給計画をたてていた少将閣下としては出鼻をくじかれたせいで鬱積が相当たまっている様子だった。
さらにキャメロットが参戦して海軍が壊滅したせいで、ファルマリアを占領したとしてもその海上輸送路が使えそうにない上に、ここ数日連続して大鷲軍団の被害が続出しているのでその鬱積もあるのだろう。
「確認してきます」
参謀の誰かがそう言ってテントから出て行き、少しして戻ってくると
「エルフィンド軍とキャメロット人義勇軍の連中がまた来たとのことで、追い返したそうです」
と報告をされた。
少将閣下は「そうか」とだけ言うと、再び地図に目を落とした。
私は後にどうしてこの時に「よろしいのですか?」と一言言わなかったのかを後悔した。
大鷲軍団への対抗方法を開戦初頭に発見することに成功しました。
よって以後、大鷲族の行動は制限されることとなりました。
捕虜名簿と捕虜からの手紙の受け取り拒否を乱暴にしたために、以後諸外国でのオルクセンの野蛮値が大幅上昇しました。
そしてこっちの世界ではギザ歯そばかすちゃんは無事でした!