とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。
星漿体任務後

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・今回特に激しいオリジナル展開になります。苦手な方は要注意
・作者無宗教です。ツッコミどころあったらすみません。


転生者、祝福する

私はぽかんと口を開けたまま、伏黒甚爾の顔を見つめていた。

それでも手は止まらない。術式は途切れることなく発動し続け、伏黒の欠損していた左腕を“再生”し終える。

 

そのまま口元を覆うように手を当てて数秒思考する。

……うん。これで行こう。

 

ふっと力を抜き、ぐったりと伏黒に寄りかかるようにして脱力する。

視線だけを伏黒に向け、「合わせろ」と無言で合図すると、伏黒の目が細められた。

 

慌てて、しかし意外と丁寧な手つきで私を抱き留める伏黒。

──さすがヒモ。慣れてやがる。

 

その様子をドアの前から見ていた夏油が、明らかに慌てて一歩踏み出す。

 

「お腹すいた………」

 

私の口からぽつりと零れた一言に、伏黒が「あー」と思い出したように声を上げた。

 

「お前、燃費悪かったな。悪りぃな」

 

言いながら抱き止めたままの伏黒が、ふっと納得したように頷く。

それを聞いて夏油も「ああ、なるほど」と同意するようにうなずいた。

 

「そっか。昼から何も食べずに術式使ってたんだな……潔乃ちゃん、大丈夫?」

 

私の大食らいを知っている夏油が、心配そうに顔を覗き込みながら尋ねてくる。

中学時代と違い、日常的に朝から晩まで術式呪力を使うようになってからは、いくら食べても食べ足りない。

食べる量を減らすとすぐに体重が落ちる。そのことを知ってるゆえに本当に心配そうだ。

 

この燃費の悪さには、高専に入学してから気がついた。

ちくしょうそれ知ってたら中学の時から呪力もっと使ってた。

黒井のつくったデザートもっと食べまくったのに、と寮の部屋のベッドの上でゴロゴロしたことを覚えてる。

 

「お腹……すきまくりです。術式使いすぎて低血糖でヘロヘロなんで……ご飯食べに行ってもいいですか?」

 

情けなく頭を振りながら、伏黒にもたれていた体を起こし、お腹を摩りながら訴える。

 

「なら俺も行っていいか? カップラーメン一個や二個じゃ全然足りねぇわ」

 

伏黒が私の言葉に合わせるように口を挟むと、夏油が露骨に嫌な顔をした。

視線が雄弁に物語る──お前は信用できない、と。

 

「このヘロヘロの嬢ちゃん一人で外に出すより、俺が一緒にいた方が安全だろ?

それとも、お前がついていくか? あのガキどもの護衛を俺に任せて」

 

にやりと笑いながら伏黒が煽るように言う。

 

「悟にお願いしよう」

 

夏油は即答するが、私は首を振った。

 

「五条さん、今いろいろ調整かけてるはずなので動けないと思いますよ」

 

「……それでも、悟に連絡を入れてからの方がいい」

 

「すぐ捕まりますかね? 私もう、お腹空きすぎて無理です」

 

そう言った瞬間、タイミングよく私のお腹がぐうぅと鳴った。

普段なら女子力的に致命傷だが、今はナイスアシスト!

──ありがとう私の腹!!

 

「…………」

 

夏油が困ったような顔をする。

 

「心配なら建人を巻き込みます。それなら問題ないでしょう?」

 

その言葉に夏油はしばし悩んだ後、諦めたようにため息をついて頷いた。

 

「……わかった。気をつけて行ってくるんだよ……おい、伏黒」

 

鋭い視線を向ける夏油。

 

「潔乃ちゃんに何かあったら殺す」

 

「雑魚が。俺みたいな猿に負けたくせに何言ってんだ? そもそも、縛ってんのに何もするわけねーだろ……とりあえず、決まりだな」

 

伏黒が呼吸をするように煽り、互いに殺し合った直後らしい剣呑な目つきで睨み合う。

……もう少し仲良くしてくれ。これから嫌でも仲間付き合いするんだから。

 

携帯を取り出し、孔に電話をかけ始める伏黒。

受話口から孔の驚いた声が漏れ聞こえるが、そりゃそうか。死んだと思ってるもんな。

伏黒は適当に流して車を回すよう手短に依頼した。

この仕事の早さはさすがだ。

 

「おい、何食いにいく?」

 

「食べに行くんじゃなくて、どこかでコンビニで買ってくれば………」

 

現在がど深夜なのと、私の食べる量、伏黒の食べる量を想像したのか夏油の声が尻すぼみになる。

 

「なんでもいいですけど、たくさん食べられて……目立たないところがいいです」

 

そう答えつつ、私は七海、そして伊地知にも今から出てこいメールを飛ばす。

 

「まかせろ。孔に奢らせてやろうぜ」

 

伏黒が口角を上げ、妙に楽しそうに笑った。

 

 


 

 

中華料理店の円卓テーブル。

テーブルいっぱいに並ぶ高級中華料理を、私と伏黒は遠慮なく平らげていく。

 

対照的に、七海と伊地知はやや引き気味の表情でこちらを見つめていた。

その視線には「よく食べるな……」という戸惑いがありありと滲んでいる。

一方、孔は財布を開いては閉じ、そして深々とため息をついた。

 

「……タバコ吸ってくる。お前らが食ってるの見てると胸焼けしてくるわ」

 

うんざりした声を残し、席を立つ孔。

だが、その目はよく状況を読んでいた。伏黒と私が「私たちだけで話したい」と思っていることを察しての行動だろう。

 

ちなみに、この店は超高級店だ。

通常なら予約をしてもすぐには席を確保できないし、深夜営業などもしていない。

しかし、孔が持つ裏社会のコネを使えば話は別──彼は店側に一言入れ、今は深夜というか早朝の4時という常識外れな時間にも関わらず、豪勢な料理を並べさせている。

 

やっぱりやり手だ、この仲介屋は。

 

……ただ、星漿体任務の追加依頼で、孔の懐は一度潤ったはずなのに、今日だけで一気に出費させてしまったことが心苦しい。

料理の量も値段も桁違いだ。しかも、これから先の関係を考えれば、頼みごとはまだ続く。

 

──後でまた定期的にお願いするから、心の中で拝みながら、私はチャーハンを頬張った。

うん、美味しい。さすが高級店だ。

 

孔が煙草を吸いに出て行ってしばらくしてから、伏黒と私はほぼ同時に食事の手を止め、互いに目を合わせる。

伏黒がちらりと視線を七海と伊地知に流した。

 

「……そっちの金髪は前回もいたな。那覇空港で警備してた高専の学生だろ」

 

七海をじっと見据え、思い出すように呟く。

そのまま隣に座る伊地知へ視線を移した。

 

「……テメェは知らねぇな。高専にそんな学生いねぇだろ。そして──」

 

伏黒の視線が私に向く。

 

「お前も前回はいなかった」

 

「……気になってたんですけど、なんで私にその話を?」

 

行儀が悪いが、円卓に肘をついて伏黒を見つめる。

 

「前回との違い。俺が把握してる限り、その違いの全部にお前が絡んでる」

 

伏黒も同じように肘をつき、軽い口調で話し始める。

 

「純粋に、私がいるから変わっただけじゃないですか?」

 

軽く肩をすくめる私に、伏黒は鼻で笑った。

 

「後になって思えばお前の行動全部が、星漿体のガキと俺の死亡を回避する動きだった。

……それに、これはメタな話になるが、“前回”という言葉が通じる時点で、何か知ってるんだろ?」

 

──この人、ゴリラのくせに頭回るんだよな。

 

心の中で毒づきながら、私はジャスミン茶を口に含んだ。

そして箸を軽く掲げ、七海と伊地知を指差す。

 

「私を含め、ここにいる3人は、伏黒さんと同じく前回の記憶がある人間です。

言い方を変えると、この3人しかいません。伏黒さんが4人目です」

 

「行儀が悪い」と七海が顔を顰めながらも、仕方なさそうに自己紹介を始める。

 

「七海建人です。今世では、そこの潔乃の双子の兄になります。

4歳の時に潔乃さんが記憶を取り戻した時に、視線を合わせたら記憶が戻りました」

 

それに続いて、伊地知が深く頭を下げた。

 

「伊地知潔高です。来年、高専入学予定です。

4歳の時に公園で七海さんたちと会って、潔乃と視線を合わせた時に記憶が戻りました。

今世では七海兄妹の幼馴染ですが……前世では呪力なしの一般人で、潔乃の双子の兄でした」

 

「……は?」

 

伏黒が絶句し、私と伊地知を交互に見比べる。

 

「なんでお前らだけ立ち位置が変わってんだよ」

 

「いや、私もわからないです……」

 

困惑する伊地知に、七海は深くため息をつき、疲れたように眉間を揉みながら口を開いた。

 

「……どうせ五条さんのせいでしょう。あの人、潔乃さんに執着してましたからね」

 

吐き捨てるようなその声音には、諦めと苛立ちが滲んでいた。

私も思わず目を逸らし、ジャスミン茶をもう一口含む。

 

「……確かに妙に執着されてるのは、否定できないですね」

 

ぼそりと呟くと、伏黒が片眉を上げてこちらを見る。

 

「五条か。そういや、アイツも前回とは動きが違ってたな」

 

「違ってた?」

私が問い返すと、伏黒は思い返すように頷いた。

 

「お前が渡した宝石の効果もあるんだろうが、前回より動き自体に余裕があった。そのおかげで苦労したぜ。

これもお前が現れたことで五条の行動も変わった、そういうことだろ?」

 

「……まぁ、そうなりますね」

 

私は苦笑して肩をすくめる。

 

「私がいることで変わった部分もあるんですね。前回、変えられないのも多かったのに」

 

「変えられない?」

伏黒が目を細める。

 

「はい」

 

私は短く答え、息を整えてから静かに語り始めた。

 

「前世の私には未来視があったんです。

このままだと、星漿体任務の失敗をきっかけに夏油さんが呪詛師になり、やがて百鬼夜行で命を落とす……

その死体を平安時代から生きている呪詛師に悪用され、最終的には、そこにいる建人を含めた多くの呪術師と一般市民が死ぬ呪術テロが複数回起こる。そんな未来視です」

 

伏黒の表情は変わらないが、視線が続きを促している。

 

「ちなみに言うと、五条悟も死にます」

 

「……マジでか? 覚醒したあいつが?」

 

伏黒が心底驚いた顔を見せる。私は頷いて肯定し、話を続けた。

 

「……2018年12月24日、新宿での決戦。両面宿儺との戦いで五条さんは命を落としました」

 

「平安時代の化け物が、なんで平成にいるんだよ」

 

「さっき話した平安時代から生きてる呪詛師のせいですよ。両面宿儺の受肉体になれる人間を作り出したんです」

 

「チッ、そっちも化け物かよ」

 

「詳細は省きますが、残された人たちで……どうにか宿儺と羂索を討ち取りました。

でも……その代償はあまりにも大きかった」

 

「五条悟をぶっ殺したやつを残ったメンツで? マジか?」

「マジです」

 

驚きすぎて声が若干裏返ってる。伏黒にしては珍しい。そう思いながら答え、視線を伏せた。

 

「今話した通り、両面宿儺を倒せたとはいえ、この未来視は限りなく最悪に近いです。

親しい人たちの死もそうですが、一般人も大量に死にますし、日本という国家としてもボロボロです……だから私は、未来を否定したかった。

そのために五条さんを裏切り、夏油さんの側につき……そして、夏油さんの死体と共に心中したんです。

夏油さんの遺体がなければ、渋谷のテロは防げると思ったので」

 

私がそこまで語ると、七海が淡々と補足した。

 

「潔乃さんがそこまでやっても基本的な流れは変わりませんでした。

変わったのは……五条さんが渋谷で封印されなかったことと、その結果、死滅回游が起こらなかったことぐらいです」

 

その言葉に、伏黒は呆れたように息を吐き、私に視線を向ける。

 

「お前のやった程度だと、本流の流れを大きく変えるのは不可能だったってことか」

「腹立つ言い方ですが、その通りです」

 

もっと大きく改変する必要があったのかもしれない。

安易に死ぬのではなく、夏油傑の死体を処理した後逃げ切って、もっと引っ掻き回すべきだったか?

いや、五条に捕まった時点で詰みだったから無理だったなこれ。

そんなことを考えていると、七海がさらに補足してくる。

 

「私が死んだ後、死後の世界……とでも言えばいいんでしょうか。

そこで夏油さんや同級生から潔乃さんが今話した内容を聞きました。

そして潔乃さんが一人でさっさと転生したってことも。

その後、後から来た五条さんが……盛大に怒りましてね」

 

七海の表情がますます険しくなり、私をじっとりと睨む。

いや、ほんとごめんって。気まずいのでそっと視線を逸らす。

 

「私たちがいくら説明しても聞きませんでした。

『次に転生したら、潔乃から直接理由を聞く。そして絶対見つけて説教する』そう言って、ベンチを蹴り飛ばしてましたよ。

だから私としては、その五条さんの執着( 呪い)が原因で、こうなってるんじゃないか?と考えてます」

 

「……ありえるな」

 

七海の言葉に考え込むようにしてから、それを肯定する伏黒。

 

「六眼無下限持ちの覚醒した術師の言葉だ。無意識の呪いや縛りになっててもおかしくねぇ。

しかも発言した場が常世(とこよ)なら、呪力的な効力がさらに強まるだろうな」

 

伏黒は呆れたように私を見やる。

 

「でも、その五条の坊は今、記憶がないんだろ?」

 

「はい。記憶があるなら……とっくに土下座して謝り倒してますよ」

 

私が肩を落として答えると、伏黒は顎に手を当て、思案げな顔をした。

 

「当人は記憶が戻らない縛りか?いや、まだ確定はできないな。

七海と伊地知は双子という因果で記憶が戻ったんだろう。二卵性でも呪術的に魂の(えにし)は強い」

 

「では、伏黒さんはなぜ戻ったんでしょうか」

 

伊地知が問いかけると、伏黒は腕を組んだ。

 

「……俺は前回は五条悟に殺された。それを覆したからか?」

 

「それなら、星漿体の天内さんや黒井さんも記憶が戻るはずです。二人は戻ってません」

 

「伏黒さんが天与呪縛のフィジカルギフテッドだから……という可能性は?」

 

「それなら、初対面の時から記憶が戻ってるはずだ。

お前らの記憶が戻った経緯を聞く限り、“潔乃と視線を合わせること”は条件の一つなんだろう。

実際、俺の記憶が戻ったのは五条とやり合って、薨星宮に戻ってきてお前と視線を合わせた時だ」

 

沈黙が落ち、四人全員が同時にため息をつく。

 

「結局……何も分からない、ってことですね」

 

「まぁ、俺は死なずに済んで丸儲けだからな。クソみたいな人生だが──延長戦、楽しませてもらうぜ」

 

伏黒は肩をすくめ、まるで全てを振り切るように、再び箸を取った。

「考えても無駄だ」と言わんばかりのその態度に、私もつられて白身魚の甘酢あんかけへ手を伸ばす。

 

──今は食欲優先だ。

頭を悩ませるのは後でいい。

 

そんな私たちを、七海と伊地知は呆れた顔で見ている。

そして、またもや深々とため息を吐いた。彼らも諦めたように食事に手を伸ばした──

 

そのタイミングで、場違いなほど明るい着信音が鳴り響く。

……この時間にかけてくるってことは。

 

嫌な予感とともに携帯を確認する。画面に表示された『五条悟』の文字に、思わず顔を顰めた。

 

周囲に見せると、七海と伊地知は同時に顔を引き攣らせる。

伏黒は対照的に、ニヤリと楽しげな笑みを浮かべた。

 

「……あー、これは絶対面倒なやつ」

 

ぼやきながら、私は通話ボタンを押す。

──その瞬間。

 

『おいッ!!! 潔乃、どこにいるんだテメェ! 伏黒のおっさんと七海もだ!』

 

鼓膜を破る勢いの大声量に、思わず携帯を耳から離す。

面倒なので、そのままスピーカーモードに切り替えた。

 

「ご飯食べてます。高級中華、美味しいです」

 

わざと淡々と答えると、円卓を囲む3人が反応した。

伏黒は肩を揺らして笑いを堪え、七海はため息付き、伊地知は頭を抱えた。

 

「呪力切れでお腹空いてどうしようもなくて、っての、夏油さんにちゃんと伝えておきましたけど……聞いてないです?」

 

わざと淡々とした口調で言いながら、私は白身魚の甘酢あんかけを口に運ぶ。

 

「……ついでなんで潔高も呼んで、今一緒に食事してますけど」

 

スピーカーから聞こえる五条の息遣いが一瞬止まる。

次の瞬間、チッと舌打ちが響いた。

 

『……どこの店にいんだよ』

 

その声には、焦りと苛立ちが入り混じっていた。

私はわざと何でもないことのように答える。

 

「〇〇駅の《xxxx飯店》です。シークレット営業で開けてもらってるので、普通に来ても開いてないですよ……って──」

 

言い終わるか終わらないかのうちに、通話がぷつりと途切れた。

画面を見ると、無情にも「通話終了」の文字。

 

「……切れた」

 

私が呟くと、円卓の面々はそれぞれ別の反応を見せた。

七海はため息、伊地知はこめかみを押さえる。

一方で伏黒はニヤリと口角を上げ、面白そうに目を細めていた。

 

「……あーあ、来るな」

 

「「……絶対、来ますね」」

 

七海と伊地知の声が重なる。

あーめんどくさいなぁ。まだ伏黒のこと信用できないのはわかるんだけどさぁ。

私は肩をすくめながら、今のうちにと燕の巣のスープを啜った。

 

 


 

 

念の為店員にもう1人連れが来るとは連絡して数十分後、勢いよく扉が開き、五条が乗り込んできた。

その場にいた全員の心が一致する──「ほんとに来たよ」。

五条の六眼が鋭く室内を見渡し──そして、私を見た瞬間、ぴたりと止まった。

 

「……は?」

 

五条の顔に、わかりやすいほどの困惑が浮かんでいる。

その視線は、私が着ているワンピースに向けられていた。

 

「……オマエ、そんな服もってたっけ?」

 

「あ、これ……」

私は説明するように口を開いた。

 

「伏黒さんが、仲介屋の孔さん経由で買ってくれたんです。

血まみれの制服のままだったので……さすがに、それで食事は無理だったので」

 

孔が用意してくれたのは、ライトブルーのレースワンピースだ。シルバーのパンプスも合わせられていて、センスの良さが光る。やっぱこの人、仕事できる!

そして、ここらの気が回るあたり伏黒のヒモ力の高さ!!

満足げに見せつける。

 

「…………」

 

説明を聞いて、五条の表情がムッとしたものに変わった。

え? なんで? すごく良くないこれ?

 

伏黒は小さく鼻で笑い、気にせず料理を食べてる。

だが、五条は完全に無視し、私へと歩み寄る。

 

「もうある程度、腹に溜まっただろ」

 

低く、感情を抑えた声。

 

「帰るぞ」

 

そう言って五条は私の腕をぐっと掴み、強引に立ち上がらせる。

 

「え! ちょっ、五条さん──」

 

「七海は伊地知を家まで送ってけ。

オッサンは……適当に食ったら薨星宮まで戻ってこい」

 

淡々と指示を出すと、それ以上は一切説明もせず、私の腕を引きずるようにして店を後にした。

 

「ちょ、五条さんエビチリとフカヒレまだ食べてない!!」

 

私が振り返る間もなく、扉は閉ざされ、廊下を歩き、店舗の外に連れ出された。

初夏だというのに、夜明け前の冷たい空気が頬を刺す。

店先には、すでにタクシーが停まっていた。多分五条が乗ってきたのをそのまま待たせたんだろう。

 

五条は何も言わず、そのまま私を押し込むようにして車内へ乗せ、自分も続いて乗り込む。

──そしてタクシーは、音もなく走り出した。

 

 


 

 

タクシーが夜明けの街を滑るように走り抜ける。

車内には、重く張りつめた沈黙が漂っていた。

 

──なーんで五条はこんなに不機嫌なんだろう。

 

夏油には事前にきちんと状況を伝えていたし、伏黒とは縛りを結んでいるから、護衛としてはむしろ適任。

七海と伊地知を巻き込んだのは……まぁ秘密の話をするためだったけど、

それだって五条向けの言い訳をしっかり用意していたのに。

ちなみに言い訳は、今回の私に七海や伊地知が裏方で参加してたことは言ってあるので、七海もいるしついでなので顔合わせで呼んだ、と。

 

ちらりと横目で五条を窺うと、五条は腕を組んだまま窓の外を睨んでいた。

その顔は不機嫌さを隠そうともしていない。声をかけるタイミングが掴めない。

 

あーあ……エビチリとフカヒレ食べたかったなぁ

 

気まずい沈黙を誤魔化すように、私はどうでもいい現実逃避をする。

そうしていると、五条がぽつりと呟いた。

 

「……もろもろ落ち着いたら、買い物行くぞ」

「は?」

 

思わず聞き返してしまい、顔を上げる。

 

「なんで?」

「ワンピース」

 

短く答える五条の横顔は、妙に不機嫌そうだ。

 

「……俺も贈るから」

「いや、別にいらないですけど……」

 

思わず本音が漏れる。

この件だって、制服が血まみれで仕方なく伏黒が用意してくれただけだ。

高級な服なんて、私には似合わないし、必要もない。

 

しかし五条は私の言葉をバッサリと切り捨てた。

 

「うるせぇ。黙って付き合え」

 

低い声でそう言い放ち、私を鋭い視線で一瞥する。

私はその横顔をちらちらと盗み見ながら、つい口を開いてしまう。

 

「……このワンピース、似合ってないです?」

 

五条が、わずかに視線を動かしてこちらを見る。

その青い瞳は何も言わず、ただ私をじっと見つめるだけ。

 

「結構……気に入ったんですけど」

 

少し声が小さくなる。

自分でも「いいもんもらった」と思うレベルで、気に入ったんだけどなぁ。

このデザインを甚爾(ヒモ)が指示したのか、( 仲介屋)が選んだのか分からないけど、私によく似合うものをセレクトしてくれてる。二人ともモテ男だろこれ。

 

沈黙の中、五条が自分の頭をぐしゃりと掻き、苛立ちを隠すように低く言い放つ。

 

「……似合ってる」

 

「お? やっぱり?」

 

「すっげー似合ってる……だから、次は俺が贈る」

 

言い捨てるように告げる五条に、思わずぽかんとする。

そして、わずかに口元が緩んだ。

なるほど、嫉妬か!

前世で貰ったのは、ご飯や酒、呪力を込める宝石、そして寮の部屋丸ごとだった。

結構いろんなもん貰ったり良くしてもらってたけど、思い返せば、五条から洋服は贈られたことなんて一度もなかった。

そういった意味で女性扱いされてなかったからな。

今回は、先に伏黒に贈られたことが面白くなかったのだろう。

自分を一度殺した相手だから、なおさら対抗心が強くなるのかもしれない。

 

「……えー五条さんの趣味? 沖縄でのパーカー見る限り期待できないなぁ。」

 

口元を緩めて笑いながらそう答えると、五条の機嫌は一気に上昇する。

 

「バッカ! あれはオマエに似合うの選んでたんだよ!」

 

唇を尖らせてそう言い放つ。

あぁ、私の水着の露出を心配して私に着せる前提で、あのデザインだったのか。彼氏気取りか? まぁいいけど。

確かに、私も金髪のクォーターの派手顔なのであの手のデザインは似合うけどさ。

五条よりは「似合いすぎて悪目立ち」という感じでもなく、自然に似合うは似合うのだ。

納得がいった。五条らしくないセレクトって思ったんだよね。

五条ってアニメ1期のEDみたいに私服の趣味悪いのかと思いきや、普段はそうでもないのでおかしいと思った。

 

「私に? あーあのデザイン私も似合いはするか……確かに」

「ほらな! オッサンより俺の方がセンスいいんだぞ! 楽しみにしてろよ!」

 

ご機嫌なドヤ顔で胸を張りながら肩を抱き寄せてくる。

そして、もう片方の大きな手で、私の頭を容赦なくくしゃくしゃと撫で回す。

一気に機嫌が良くなった様子に苦笑しながら、五条の好きにさせた。

 

 


 

 

数日後、成田空港のプライベートジェットエリアに私たちはいた。

もちろん五条の伝手だ。適当な貨物線を使う予定だったが、五条のおかげでだいぶ優雅な逃亡方法になって、天内と黒井はちょっと喜んでいた。

ちなみに天内と黒井はメイクと変装で全く違う見た目になっている。特に変装はしていないが、サングラスに黒スーツという明らかに堅気に見えない格好の伏黒。

ちなみに天内と黒井は偽装パスポート。伏黒は本人名義だ。

星漿体の任務の件の内容を知っているのは、私たちと孔と盤星教の人間だけ。

現場は虚式・茈によって破壊され尽くされ、五条悟の報告書により襲撃者は跡形もなく死亡したことになっている。そして、暗殺者の正体は不明。

つまり伏黒甚爾は形式的には無実。

このタイミングで天内たちの護衛として、しばらく日本から消息を絶ってもらう。

 

するとどうなるか。呪術界の上層部、特に御三家の禪院家などは襲撃者が伏黒甚爾だと思い込むだろう。そこが狙いだ。

あの五条悟を追い詰める襲撃者なんて、該当するのは限られている。ミスリードを誘う。

いや真実だけどね。

でも、真実ってのはいくらでもねじ曲げられるし、嘘でも相手に伝わらなければそれが真実になる。

他のメンツにはせいぜい、私たちが用意した真実を前に踊ってもらおう。

その間に五条に伏黒恵を確保してもらい、五条の保護下に入った後で伏黒甚爾には帰郷してもらう。

そうなれば、五条の保護下にいる伏黒恵に禪院家は手を出せない。

伏黒からは、伏黒が死んだと判断された時点で、子どもを渡す約束は破棄になる契約になっていると確認済みだ。

 

ちなみに、この悪どい作戦の発案は伊地知(兄さん)だったりする。

さすが原作で高専を裏から牛耳っていた男。私のトレース元!尊敬しかないわ。

 

「どうか、気をつけて」

 

プライベートジェットに乗り込む前、最後の別れに天内にそう言うと、ギュッと抱きつかれた。

 

「……先輩、ありがとう」

 

泣き出す天内を抱きしめ返し、頭を優しく撫でる。

 

「自由に生きて、幸せになってね」

「……うんっ!!うん!!!!」

 

「『いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい』」

「『テサロニケ人への第一の手紙』5章16〜18節じゃな。ありがとうなのじゃ」

 

天内の頭を撫でながら、額に祝福のキスを贈る。なんか五条と夏油、そして伏黒がギョッとした顔をしているが、完全にシカトする。

 

要するに『状況に惑わされず、いつも喜んで、どんな困難な状況でもめげずに頑張れ』ってことだ(意訳)

伊達にミッション系の学校に通ってないぜ。

 

黒井にも同様に抱きしめて、額にキスを落とす。

レズっぽいって? たまにはいいだろ。学園の王子様だったんだから。

 

天内と黒井がジェットに乗り込んでいくのを、五条と夏油と3人で感慨深げに見送る。すると、伏黒が近寄ってきた。

 

「俺に見送りのキスはねぇのか?」

「異教徒で神を信じてないあなたにはいらんでしょう」

「ちげえねぇ」

 

私たちの会話に五条が嫌な顔をしたのを見て、私は肩をすくめる。

これくらいの軽口冗談くらいは許せよ。尻の穴が小さい男は嫌われるぞ。

 

「ま、勝手にもらうけどな」

 

と言うなり、伏黒は身を屈めて私の頬にキスを落とし、至近距離でニヤリと笑った。

 

「セクハラですよー」

「てめぇ!!」

「おい!!!!」

 

私、五条、夏油の反応に伏黒は楽しそうに笑い、ジェットの中へ消えていった。

五条と夏油の視線が突き刺さる。いや、勘弁してよ。

すぐさま五条に服で頬を擦られ、夏油からアルコール入りウェットティッシュを渡され、私はため息をついた。

 

 


 

 

主人公

 

まさかの伏黒甚爾が記憶ありで大パニック。

とりあえず、上手いことやって外に出て、七海や伊地知と最速で話し合う時間を取った。

4人で話したけど結局わからん。伏黒だけ共通項がない! やっぱ天与呪縛で呪力から脱出した影響か?

五条が乗り込んできたので、エビチリとフカヒレ食べれなかったのが不服。

主人公は五条のご機嫌を取るために買い物に行っただけと思ってる。

前世で補助監督時代に似たようなこと(不機嫌な五条に付き合って買い物や飯行きまくった)があったので、全くデートと認識してない。

後日のワンピースを買いに行った時に絶対に高級中華を奢ってもらおうと思ってる。

なお、伏黒のほっぺにキスくらいはなんとも思ってない。前前世は結婚してたし、これくらいなんとも思わない。が五条と夏油の反応がめんどくさい。

 

 

 

五条悟

 

天内達を外に逃すのに、五条家のつても使うために外に出て戻ってきたら、夏油から「潔乃と伏黒と七海で食事に行った」と聞いてキレた人。

縛りがあるから安全なのは分かってるが、それでも行動が軽率すぎると。

慌てて迎えに行ったら、自分以外の男からもらったワンピースを着て楽しそうに食事してて、ムカついた。

そのままの勢いでデートの約束を取り付けた。

なおジェットは正確には五条家ではなく、関連企業のもの。そこに無理やり天内達を捩じ込んだ。

天内と黒井へのキスはまぁ、納得したが、伏黒のほっぺへのキスは絶許。次来たとき殺すと思ってる。

デートでは自分好みのワンピースからアクセサリーを買ってやって、ほっぺにキスくらいはしてやろうと決意してる。

 

 

夏油傑

 

天内達の護衛のために、内心面白くないと思いつつ、伏黒と七海を護衛につけて食事に出した人。

潔乃に対しては縛りもあるが、ヒモはヒモなりに気安く接しているのが分かり、

2人の付き合いの長さは本当で、それなりの信頼関係があるのを見て、仕方なく了承した。

なお、後で五条にメタクソにキレられた。うるさいな! 私だってそう思ってたけど! とキレ返した。

伏黒甚爾は気に入らない。本当に気に入らない。猿が!

私の可愛い後輩に気安く触れるんじゃない!

 

 

七海建人

 

寝てるところを叩き起こされた。伏黒甚爾に前世の記憶が戻ったと聞いて無量空処。

会ってみて、頭は回るし、本能的に感じる生物的な強さにゾッとした。

でも、得意の鉄面皮で顔には出さない。

実はそれを伏黒に見抜かれてて、「ガキのくせにいっぱしの術師だな」と高評価されてることに気づいてない。

どうしようもない危険人物だと聞いていて警戒しているが、縛りがあるのと、主人公とはそれなりの信頼関係があるのを見て、ひとまず共闘関係を結ぶことには同意した。

この人から体術を学べないか? と思ってる。

 

 

伊地知潔高

 

寝てるところを主人公のメールで叩き起こされた。

伏黒甚爾に前世の記憶が戻ったと聞いて無量空処。

圧倒的な強者感に内心冷や汗が止まらない。けど必要以上に顔には出さないメンタル強者。

それを伏黒に見抜かれてて、「弱っちいのにこいつやるじゃん」と実は思われてるとに気づいてない。

どうしようもない危険人物だと聞いていて警戒しているが、縛りがあるのと、主人公とはそれなりの信頼関係があるのを見て、ひとまず共闘関係を結ぶことには同意した。

家はそっと抜け出した。早朝にランニングとかをしてるので、親も気にしない。

常に真面目なので全然疑われない。

 

 

伏黒甚爾

 

記憶が戻った理由を聞き出すために、主人公達と話したが何も分からなかった。

主人公の仲介で出会った七海と伊地知。弱い雑魚と思いきや、メンタルはナイロンザイル製だし、今回の星漿体の作戦に関わってたと聞いた&立ててくる作戦がなかなかに根性座ってるで評価を改めた。

そして、主人公と同じで呪力がない猿の自分にもフラットに接してくるので、結構気にいる。

夏油より実は評価が高い。

最近の呪術界のガキどもやるじゃねーか。

なお、五条が潔乃のことが好きとヒモの直感で即気づいて、徹底的に揶揄ってから海外へ旅立っていった。

 

 

天内理子&黒井美里

 

主人公かの祝福のキスに、マジでドキドキして別の性癖が目覚めそうになったのは内緒。

リアルオスカルなんだもん!!!イケメン女子なんだもん!!!

別人となり海外へ旅立っていった。これ以降、別人として幸せに暮らす。

なお、主人公達との交流は一生続く。

 

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