とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

星漿体任務後から玉折までの間の日常回その①

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・ネタまみれです
・通常より、激しい捏造、妄想含みます
・今回も激しいオリジナル解釈や展開になります。苦手な方は要注意


転生者、メンタルケアを開始する

「音声は聞こえてますか?」

『おう、聞こえてるぞ』

 

ローテーブルの上に置いたPCのマイクを調整しながら話しかけると、伏黒の呑気な声が聞こえてきた。

伏黒の背後の雑音交じりのざわめきが、室内というよりは外の喧騒のように聞こえる。

そして、なんか少し物騒な気配だ。

 

「周りが騒がしいですが、どこにいるんですか?」

『あ? 適当に引っ掛けた女の家。さっきから外でデモやってら』

「相変わらずクズ極めてますね……」

 

呆れたように七海が額を押さえる。

そんな七海を揶揄うような声色で、伏黒が続けた。

 

『テメェもいい面してるんだから、使わねぇと人生損だぞ?』

「結構です」

 

七海の釣れない返しに、伏黒がゲラゲラと品のない笑い声を上げる。

声が無駄に大きくて音割れしている。勘弁してほしい。

その音声に、伊地知もさすがに嫌そうな顔で眉を顰めた。

 

「私の兄をクズ男の花道に引きずり込まないでくださいよ」

『もったいねぇなぁ。まぁいいけどよ……で、五条と夏油は大丈夫か?』

「繁忙期なので、二人とも馬車馬のように働いてますよ」

 

私の返答に、伏黒は興味なさそうに「ほーん」とだけ返した。

そして続ける。

 

『伊地知はともかく、お前ら兄妹はどうした? 高専所属のお前らも繁忙期だろ?』

「だからですよ。馬車馬のように朝から働いた結果、今から高専に戻るには遅すぎる。

……ってわけで、今日は実家に泊まると外泊申請出しました」

『なるほど、だから邪魔が入らないわけだな』

「そうそれに、伊地知君も呼べますからね」

 

そう言いながら七海が伊地知に視線を向ける。

タイミングを見計らったように、伊地知がメガネの位置を直しから話し始めた。

 

「では、始めましょうか。今回の進行は私、伊地知が務めます。

それでは──記憶持ちの定例会、第5回を始めたいと思います」

 

そう、今回の集まりは「前世の記憶持ちによる情報共有と今後の立ち回り」を目的とした会議だ。

基本は週1回、Skypeでの音声通話。

高専の寮に住んでいる私と七海は、テキストチャットで参加することも多い。

 

先ほど伏黒が五条と夏油を気にしたのもそのためだ。

夏油は伏黒にやられたことを根に持っていて、彼にしては珍しく何かと突っかかってくるし、五条は妙に伏黒に張り合っている。

最初のうちは、隠すつもりもなく伏黒に天内たちの様子を聞くため、普通に国際電話をかけていた。

けれど、それに気づいた五条が、あからさまに嫌な顔をして通話を切ってきたのだ。

曰く、「俺が様子を確認するから、お前はやらなくていい」

 

……いや、そういう問題じゃないんだけど。

このままじゃ伏黒と通話する機会がなくなる!と焦った私は、いつもの三人──七海と伊地知と私で相談した結果、

Skypeでの連絡に切り替えることにした。

 

もともと「記憶持ち」同士で情報共有する必要もあったから、結果的にこの“定例会”の形に落ち着いた。

今ではすっかり、内緒の秘密の交流会だ。

 

それにしても、あの時の電話は本当に最悪だった。

伏黒が「嫉妬する男はモテないぜ?」なんて煽るもんだから、五条の機嫌が見事に急下降。

 

その後、丸一日、めんどくさい空気が高専を支配した。

その日に限って私達は任務はないわ、でも担任どもが任務でいないわで、みんな同じ教室や談話室にいるっていう。

夏油は「潔乃ちゃんが責任とって機嫌取って」と丸投げ。

家入はタバコをふかしながら、ニヤニヤ笑って高みの見物。

七海は「我関せず」で完全スルー。

 

──おい、兄貴!!

 

極めつけは灰原だ。

「今日の晩ご飯、潔乃が『五条さん、一緒に食べよっ』って誘ったら、すぐ機嫌なおるよ!」

満面の笑みで親指を立てて言いやがった。

 

……ほんと、勘弁してほしい。マジでめんどくさいんだけど。

ちょっと容姿が良くなったからって、前世で見なかったタイプの執着されるのはなぁ……

 

ちなみに、灰原案を採用したら、本当に機嫌が直って、嘘だろと。

 

その瞬間の五条の顔が、犬のしっぽでも見えるくらい嬉しそうで、こっちが気まずくなった。

一緒にカツカレーの大盛りを食べながら、申し訳ない気持ちになる。

……あーうん、なんかごめん。

お詫びにカツを一つあげたら体調を心配された。

五条あんたの中で、どんだけ私食いしん坊キャラなんだよ。

 

まぁ、そんなことはどうででもいいや。とにかく今日も“隠れ定例会”が始まる。

 

『俺の方だが、星漿体(天内)メイド (黒井)は上手くやってるぜ。語学習得も順調で、来年には学校に通えるくらいには上達してる。

今のところ、追手や暗殺者がうろついてる様子もねぇ』

 

まずは伏黒からの報告。特に天内達の周りに異常はないらしい。

情報漏洩で追っ手や暗殺者が現れる懸念もあったが、それもなさそうだ。

五条の伝手──というか、五条関連企業の職員は口が硬い。

さすが五条のワンマンチーム、五条家といったところだ。

まだ当主就任前、五条家を掌握し切ってはいないと思っていたが、そうでもないらしい。

 

「ありがとうございます。続きましては七海さんお願いします」

 

伊地知が進行を進める間、私が議事録としてサラサラとノートに、クセのある汚い文字で英語で書き進める。

私は記憶が消えないけれど、何があるかわからない世界だ。だから議事録は取ることにしている。

ちなみに、誰が読んでも意味わがわからないように、固有名詞は変更済み。

今回はみんな大好きオサレ先生の描くBLEACHの二次創作風だ。

五条は日番谷で夏油は雛森だ。悪意があるって?

そりゃ当然でしょ。面白いからいいだろ。

ちなみに伏黒は更木剣八だ。

そして、作者名の欄には私と七海と伊地知の名前。

万が一バレたら「三人で恥ずかしい二次創作書いてました」って言えばいい。そう決めてある。

七海は「本気で嫌です」と顔を引きつらせていたけど。

……バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ。

 

「私の方は術式の解釈の拡大と基礎スペックを上げるための体づくりがメインです。

また、来年の産土神信仰について任務の間に郷土資料をなどを読んで準備をしています」

 

七海は私とほぼ同時に記憶を取り戻し、早い段階から将来を見据えた体づくりを始めた。

その成果かまだ10代のため線は細いが、前世より上背が高くなった。

今では190センチに届きそうな勢いだ。

前は五条とかなり差があったのに、今世では「五条の方がちょっと高いかな?」くらいの差。

もともと恵体だったのに、ますますフィジカル強者になっていて、正直ちょっと羨ましい。

これ大人になったら以前よりゴリラになるだろう。前々世の七海の女たちごめん。

いや、むしろ喜ぶのか?

 

「産土神信仰については、私の方の調査でもすぐに資料が出てきました。

やはり、あの任務は仕込まれたもので間違いないでしょうね」

 

心底腹立たしそうに、七海が拳を握りしめる。

 

「五条さんに対する嫌がらせか、将来、五条派閥になりそうな人間を削る意図か……

あるいはその両方──ろくなもんじゃないですね」

 

五条が可愛がってる後輩3人組。

痛い目に合わせて心を折ってもよし、うまくすれば排除できるかもしれない。

ほんと最悪だ。

 

「灰原さんはどうですか?」

「一緒に鍛えています。フィジカル面では私に付き合ってもらっているので、彼も前回よりはかなり実力が上がっています。

術式の解釈も一緒に進めていく方向で、今ちょうどその段階ですね」

 

七海の報告を聞きながら、私は小さく息を吐いた。

 

このままシナリオ通りに進むと、灰原は死ぬ。

だからこそ、本人の底上げは絶対条件だ。

それを七海が主導で進めてくれているのは、本当にありがたい。

本当は、私も一緒に混ざって鍛錬したかった。

……したかったんだけど。

七海と灰原と乱取りをしていたら、なぜか途中で五条が乱入。

徹底的に可愛がりを受けるハメになった。主に私が。

 

五条は訓練に関しては、とても厳しい。

実力不足が死につながる世界なので、容赦ない。

でも、今思えばまだ甘かったんだと痛感する。

 

星漿体の任務を終えてから、五条の訓練の難易度が明らかに跳ね上がった。

体術では容赦なく転がされ、何度も地面に叩きつけられ、たまに骨も折れる。

家入が控えているのをいいことに、本当に一切手加減がない。

 

星漿体の任務で私の評価が彼の中で変わったんだろうか?うーん。

五条は強者が好きだから、なんらかの形で認められたのかもしれないな。

完全に今回五条すら出し抜いたわけだし。そういった意味で評価されてるのなら嬉しい。

でも、可愛がり(鬼のしごき)はあまり嬉しくない。

訓練のあと、流石にキツくてブツブツ文句を言うと、五条はニヤニヤ笑いながら言うのだ。

「さっさと強くなれ」──と。

ついでにアイアンクローをお見舞いされるのも、もう恒例行事。

 

……この暴力男め。

 

とにかく私は、灰原たちとの訓練とは今や完全に“別枠扱い”になってしまった。

灰原の訓練に関われていないのは、正直かなり痛いが、もう七海に任せるしかないだろう。

 

「私の方ですが、今まで通り基礎体力とフィジカルを鍛えているのは変わりません。

あとは調査ですね。◾️◾️県の◾️◾️市、旧◾️◾️村については、孔さんを介して調べてもらいました」

 

内心で舌打ちをしていると、伊地知が自分のノートPCを叩きながら、画面を確認して報告を続ける。

 

「この村は、なかなか厄介ですね。村で悪いことが起きると、誰かを“厄落とし”としてターゲットにして村八分にしていたようです」

 

「うへぇ……」

「最悪ですね」

『……チッ』

 

三者三様の反応だが、感想は一致。

嫌なタイプの田舎特有のステレオタイプに、思わず露骨に顔をしかめた。

見えないけど、伏黒ですら顔を顰めてると思う。

 

「えぇ、本当に。そして──枷場美々子・菜々子の母親も呪力を持っており、術式の片鱗もあったようですが、そのせいで村中から虐げられていたそうです。

……体を壊して、つい先日、病死したとのことです」

 

「チッ」

 

今度は七海が舌打ちし、私は思わずため息をついた。

 

「でも、残念ながら現時点では介入できません。法的な保護者もいますし、呪霊の発生も確認されていない。高専として動く理由がないのです」

 

淡々と説明する声とは裏腹に、伊地知の表情は明らかに怒っていた。

彼もまた、理不尽を見過ごすのが嫌いな人間だ。

 

……やはり、彼女たちを救うのは来年が最善か。

 

「伏黒さん、来年の九月に一時帰国、お願いできますか?」

 

『可能だが──夏油の任務に同行しろってことか?』

 

こちらの意図を察してくれるのは助かる。

私は頷き、言葉を続けた。

 

「その通りです。夏油さんは嫌がるでしょうけど、万が一の場合には、夏油さんの凶行を止めてください」

 

『その時、止めるだけで済むのか?』

 

「……夏油さんが呪詛師になった要因はいくつもありますが、その一つに“疲労による思考の鈍化”があります。

肉体的にも精神的にも疲れ切った状態で、人間の汚い部分を見てしまった。

そして──数ある己の選択肢な中から、禁忌肢を選択してしまった。

結果として、その道を歩まざるを得なくなった……そういう部分があると思うんです」

 

そう続けると、七海が静かに頷いた。

 

「あの年の夏は、本当にひどかった。呪霊がウジのように湧いていました。

私たち2級術師も、ほとんど休みなしの任務漬け。

特級の五条さんや夏油さんは、さらに酷い詰められ方をしていましたね」

 

「夏油さんなんて、私の3級や4級任務にも付き合わされてましたから。

今になって思えば──あれ、夏油さんの心を折って五条と袂を分かせるために、羂索が仕組んだんじゃないかなって思います」

 

原作者も確か、

“全てが羂索の掌の上にあっても成立するように描いた”

と語っていた。

おそらく、夏油の肉体を手に入れるために、まず五条と引き剥がす必要があったのだ。

五条が夏油と揉めれば、彼の弱体化にも繋がる。──狙いはそこだろう。

 

「つまり、夏油さんのメンタルを保てばいいんです。

幸い今回は星漿体・天内理子が生きていますから、前回よりは精神的に余裕があるはずです」

 

『そんな甘っちょろい精神で、よく呪術界に入ったもんだ』

 

「呪術師の家系出身者のメンタルがおかしいだけだと思いますよ……」

 

伏黒の呆れ声に、伊地知が力なくツッコミを入れる。

私も、全面的に同意だった。

 

「夏油さんのメンタル維持については──ちょっと私に考えがあります。

それを、試させてください」

 

 


 

 

まず、私がやったのは──夏油との交流だ。

 

夏油が呪詛師になるのは来年の九月。

まだ時間的な猶予はある。

 

『懐玉・玉折』のエンディング映像を見る限り、繁忙期以外の時期は彼らもちゃんと“学生”をしていた。

体育祭のようなイベント、学園祭のような催し、任務の合間に撮られた写真、バカみたいに笑い合ってる写真──

あれは確かに、青春そのものだった。

 

星漿体の任務を終えたあとも、その日常は変わらなかった。

だからこそ、夏油が呪詛師になった一件は、本当に魔が差したという表現が近いのだと思う。

 

この時期の五条は、まだ夏油の異変に気づかず、

自分の才能を伸ばすことに夢中になっていた。

家入はその希少性ゆえに、危険な現場にはほとんど出ない。

 

──なら、現場で夏油を一人にしないのは、私たち一年の役目だ。

 

灰原にはそれとなく言った。

「夏油さん、最近一人任務多いみたいだね」

あとは、寂しくないのかな?という空気を漂わせれば、それで充分。

 

太陽の子 ( 陽キャの灰原)は、さすがの行動力で、七海と私を引きずって、夏油に声をかけまくってくれた。

元々、夏油派の灰原だ。原作でも彼の存在は夏油の心の救いになっていた。

やっぱり本物の陽キャはつよい。

 

私はというと、さらに直接的に絡みに行く方法をとった。

夜蛾にさりげなく頼み込み、夏油との合同任務を増やしてもらう。

 

実際、五条より夏油の方が現場での破損率が高かったりする。

その修復に私の術式は最適で、現場ではやたらと相性が良かった。

 

夏油が呪霊を祓い、私はその跡を術式で修復する。

「もうちょっと丁寧に祓ってくださいよ」と文句を言いながら、二人で高専に戻る。

──そんな日々が少しずつ増えていった。

 

任務帰りの車の中で、私は疲労と呪力の消耗でぐったりしていた。

そのときに懐から出すのは、いつもの“いちごミルク飴”。

 

最初は「お腹すいた。エネルギー切れです」と言いながらながら、ゴリゴリとこれ見よがしに噛んでいた。

夏油はすぐ隣で呪霊を取り込んでいる。

美味しくないよねそれ。口直しのひとつも欲しくなるだろう。

言わないけど原作知識でそれを私は知っている。

 

だから私は、心優しい後輩の顔で笑いながら言う。

「夏油さんも、どうぞ?」

 

これを断れる人間は、そうそういない。

 

「ありがとう。潔乃ちゃん」

 

彼は少しだけ柔らかく笑って、同じように飴を口に入れた。

カリ、カリ、と静かな車内に響く音。

くだらない世間話をしながら、二人で同じ味を噛みしめる。

 

──たったそれだけのこと。

けれど、そういう小さな時間が、人の心を支えるんだと思う。

 

高専の廊下を、任務の報告書について話しながら歩いていた時だった。

いきなり腕を引かれて、思わず蹈鞴を踏む。

 

「っ──!!!」

「遅かったじゃねーか、傑、潔乃」

 

頭上から聞こえた声に顔を上げると、五条がいた。

次の瞬間、背中から抱きしめられ、ぽすんと五条の頭が私の肩口に乗る。

 

──重い。あと、顎が刺さって痛い。距離が近すぎる。

 

「五条さん、重いですし、顎刺さって痛いです。あと、いきなりは危ないって!」

「悟、潔乃ちゃんが困ってるよ」

「あ? 一人寂しく任務してきた俺に対して、その態度はなくね? お前ら最近、二人任務多すぎだろ」

 

私を後ろから抱きしめたまま、不服そうに文句を垂れる五条。

 

「術式の相性がいいんですよ」

 

私は肩口の五条をちらりと見上げ、腹部に回された逞しい腕をポンポンと軽く叩いて宥めた。

 

「俺ももっと、器物破損してやろうか」

「それやったら、口ききませんからね」

「……傑だけずりぃ」

 

唇を尖らせて私の肩にぐりぐりとひたいを擦り付けてくる。

190センチ越えのでかい男がやっても可愛くねーんだわ。どけ。

ひっぺがそうとしても、もちろんひっぺがせるわけもなく……

 

「夏油さーん助けてー」

 

早々に夏油に助けを求める。

 

「報告書出したら晩ご飯だから、一緒に食べに行こう」

「…………」

「潔乃ちゃんが、食堂の材料でなんかデザート作ってくれるって」

「ちょ、待って! 私お菓子作るの苦手!」

「しゃーねぇな。ほら、とっとと報告書浴びてこい」

 

言うなり、私の頭頂部にキスを落としてから、五条はようやく離れた。

 

「五条さん、セクハラはやめてくださいって!」

「こんなのセクハラに入んねーよ」

 

ヒラヒラと手を振りながら、自由人はそのまま去っていく。

残された私と夏油は、同時にため息をついた。

 

「最近、五条さんの距離感近いんですけど、なんとかなりません?」

 

正直困惑している。

こうして五条から夏油との任務の行き帰りに会うと、こうしてウザ絡みされるのは日課になりつつある。

五条曰く「お前らが二人で歩いていくの見ると、ムカつく。俺一人で任務なのに」だそうだ。

 

前回でも仲良く距離なしではあったが、こんな執着と好感度高かったっけ?

やっぱ容姿が良くて、おっぱいが大きいと、五条ですら態度が違うんだなぁ。

 

五条は性的趣向こそあれど、人の見た目はあまり拘らないタイプと思ってたんだけど。

残念だよ。所詮お前も面食いでおっぱい星人だったか……

前は貧相すぎて女扱いされてなかったしなぁと内心でため息をつく。

 

それにしても、今の五条の態度は好感度の高い女子に、ちょっかいを出すそれにしか見えなくて困る。

 

 

「潔乃ちゃんが悟と付き合ったら落ち着くんじゃない」

「おあいにく様、そういうのは興味ないですね」

「悟のやつ可哀想に……そういえば、洋服買いに行くデートには行った?」

「え、面倒なんで、適当にはぐらかして、まだ行ってないです」

「悟、本当に可哀想に……」

「大事なことだから、二度言ったみたいなの、やめてもらえます?」

 

ピシャリと話を終了させたあと、私はにっこり笑う。

私の笑顔に、何かを感じたのか夏油が引き攣った顔をしたが無視。

夏油の頬に手を伸ばし、おもっきりつねり引っ張る。

 

「潔乃ちゃん。なんで今、私の頬つねってるのかな?」

「私、お菓子作り苦手って知ってて言いましたよね?」

「あーうん、潔乃ちゃん料理得意なのにお菓子苦手だから、おもしろ──もとい、悟がお菓子作ってくれないって嘆いてたから」

「“もとい”の前が本音ですよね? つい出ましたよね?」

「あーうん、ごめんね。痛いから離してもらっていい?あと、そろそろ五月蝿いのがくるよ」

 

その瞬間、廊下の奥から五条の声が響いた。

 

「おい! お前ら、何いちゃついてんだよ!!」

 

私と夏油の様子に気づいた五条が、怒鳴りながら戻ってくる足音に、私は諦めて夏油の頬から手を離した。

 

 


 

 

その後、夜になり、食堂に用意されていた晩ご飯を、結局みんなで食べることになった。

七海、灰原、家入を含めたフルメンバー。

五条は夏油が一等大好きだが、このメンバー自体もなんだかんだ言って、大好きだ。

結果、食事する人数が増えて、めちゃくちゃ楽しそうだった。

 

で、私はというと。

……苦手なお菓子作りに勤しむ羽目になった。

 

料理は好きだ。

だが、お菓子作りが苦手な理由はただひとつ。

 

──計量が、面倒くさい。

 

前々世では外資系製薬会社の研究員で、毎日、電子天びん、分析機器、自動計量機、水分計などを使っていた。

だからこそ、家庭料理ぐらいは目分量でやりたい。

いや、むしろ目分量こそ正義だと思っている。

 

某料理研究家も言っていた。

 

『少々は味に影響しない。けど、気持ち入れろ』

『ひとつまみは、味が変わると思うくらい指三本でつまめ』

『適量は、自分が“うまい”と思うまで入れろ』

 

私はこれを信条にしている。

 

だからレシピ本なんて、見てもすぐ閉じる。

目で見て、手で感じて、感覚で作る。

毎回味が違ってても、それで美味しければそれでいい。

 

……つまり。

お菓子やパン作りとは、致命的に相性が悪い。

我が母(七海母)なんてパン作りが趣味なのに、ごめんよ。本当に面倒なんだ。

 

だってあいつら、たかだか料理のくせに、1グラム足りないだけで失敗するんだよ。

製薬( 仕事)みたいなことを家でもやりたくねぇ、って話。

 

──で、今に至る。

 

私が珍しく「デザート作る」と夏油と五条が言ったもんだから、全員が半信半疑で見守っている。

ならば見せてやろうじゃないか。私の計量をせずともお菓子を作る技量を!

 

了解も得ずに、みんなの食品ストッカーを漁る。

七海のストッカーからホットケーキミックスを拝借。

後で怒られるかもしれないけど──アイツも食べる側でニヤニヤ待ってるから共犯だ。

 

次に、夏油のストッカーにあったバナナを取り出す。

こっそり術式を発動し、瞬時にシュガースポットを浮かばせて熟成完了。

そのバナナとホットケーキミックスをアイラップの中でぐしゃぐしゃと混ぜる。

仕上げに、五条のストックから高級バターとチョコレートを遠慮なくいただく。

それらを全部まとめて混ぜたの、バターとホットケーキミックスだけのもの、2種類を鉄板の上に乗せて形を整え、トースターへ。

じっくり焼きながら、甘い香りが漂ってきたところで小さく頷く。

 

──うん、我ながら完璧。

見た目は家庭的すぎるかもだけど、味は保証する。

 

せっかくだから、簡単なソースも作ってやろう。

 

家入のストッカーからりんごをひとつ拝借。

芯を取ってザクザク切り、大量の砂糖と冷蔵庫のレモン汁を投入してレンチン。

あったかいうちに、さっきの五条のバターを混ぜ合わせて──即席アップルバター完成。

 

続けて、灰原の牛乳と砂糖を鍋に入れて煮詰め、手作りミルクジャム。

灰原、ごめん。明日の朝、牛乳ないかも。

 

分量? そんなもんは自分の舌を信じろ。

うまいと感じる分量が正しいんだよ。

 

焼き上がったバナナチョコスコーンとプレーンスコーンに、ココットに入れたジャムを並べてだした瞬間──

 

「「「「「おおーっ!」」」」」

 

…声が上がった。

うん、好評だった。

 

だろ? そうだろ?

今回は見た目も綺麗にできた。

目分量でここまでいけたら、もう十分でしょ?

 

みんな「美味しい」と言いながら食べている。

こういう光景を見るのは、嫌いじゃない。

やっぱり、人が笑ってるのはいい。

自分が作ったもので、少しでも笑ってくれるなら、それだけで報われる気がする。

 

──甘党の五条が、あまりにも幸せそうな顔で食べていた。

頬を緩ませながら、スコーンを割ってジャムをつけては、嬉しそうに「あーこれ好き」と呟いている。

 

目が合った。

 

その瞬間、五条は迷いなく、私のスコーンを皿ごと奪っていった。

文句を言おうと思ったが、すでに私のスコーンの大半は、五条のでかい口の中。諦めて五条の脇腹に軽く肘を入れてから、ため息をついたところでふと思う。

これ、チャンスでは?

 

「夏油さん、そういえば呪霊玉って今持ってます?」

 

七海が入れてくれた紅茶に手を伸ばしつつ夏油に話しかける。

視界の端で、私の意図を悟った七海の目の色が変わる。

前からこの作戦は話してたからね。微妙に嫌そうだが覚悟を決めてくれ。

冷たいものも飲みたいですね。と七海がさりげなく冷蔵庫から麦茶の入れ物を複数持ってきてくれる。

 

「持ってるけどどうしたの?」

「いや。ちょっと気になって、見てもいいです?」

 

夏油が首を傾げながら、小さな黒い呪霊玉を取り出して手渡してくれた。

ピンポン玉ほどのサイズの小さく黒い球体。

呪力、すなわち負のエネルギーの塊。

私はそれを手に持ちマジマジと見た後、おもむろにペロリと舐め────

 

「!!!!!!!!!!!」

 

呪霊玉を七海にぶん投げ、私は熱い紅茶をがぶ飲みして、五条の皿に残ってた食べかけのスコーンを奪い返し、口に突っ込む。

私の様子に慌てた夏油が冷たい麦茶を注いで渡してくれた。

 

「何やってるんだい潔乃ちゃん!これ飲んで」

「なんですか、このくっそまっっずいぃの!!!!夏油さんこんなの毎回飲んでたんですか!!!!!」

 

半泣きで叫ぶ私に、夏油が微妙な顔で苦笑いを浮かべた。

そのタイミングで、七海が小さくため息をつき、無言で呪霊玉を舐め──

 

「……っっ!!!!」

 

声にならない悲鳴を上げた。

顔をしかめ、舌を出しながら沈黙。

すぐさま隣の灰原に玉をパス。

 

「これは僕もいく流れ──」

ペロッ。

 

「…………!!!」

 

灰原、即・撃沈。

顔面蒼白になって麦茶のボトルを掴み、コップに注ぐ余裕すらなく、がぶ飲み。

 

一年三人が揃って床に沈んだ光景を見て、五条と家入も顔を見合わせ──

「そんなに?」と訝しげな表情をした後、同じように呪霊玉を舐めた。

 

「げほっ……!!!」

「……っっ!?!?!? !!」

 

家入が咳き込み、五条は口を押さえて呻く。

五条も家入も、ここまで酷い表情を見たことがない。

普段の余裕がきれいに剥がれ落ちていた。

 

「おい! 潔乃!! オマエ、なんでこんなもん舐めようとすんだよ!!」

「いや……ちょっと、味が気になって」

「やる前に言え、クソが!!!」

 

五条の怒声と同時に、頭にアイアンクローが決まる。

 

「勝手に舐めたの五条さんじゃないですか!痛いですって」

「あ゛?」

 

私は涙目になりながら、必死に弁明を続けた。

 

「ほ、ほら! 呪霊操術って、一度調伏させれば夏油さんの呪力消費は限りなく少ないじゃないですか!」

「それがどうしたよ!今関係ねーだろ」

 

本気で不味かったらしい。いつもより指の力が強い。痛い。

 

「だから! めちゃくちゃコスパがいいんですよ!

本人の呪力消費“なし”で、ほぼ無限に戦力を確保できるってことです!

なのに、デメリットがないんですよ!」

 

その言葉に、七海と夏油以外の全員が、ハッとしたような表情を浮かべる。

 

「たとえば──五条さんの無下限呪術は、六眼がないと成立しない。

つまり、精密な呪力操作が前提じゃないですか?

でも夏油さんの呪霊操術は、取り込むとき以外、そういう制御が必要ない。

もしかして……その“取り込む瞬間”が辛いんじゃないかなーって思って、

試しにちょっと舐めたら……」

 

「……お前なぁ」

 

私の言葉を遮るように、五条がアイアンクローを外し、私の頭をポンと叩いた。

そして彼は、夏油に視線を向ける。

 

「おい、外に行こうぜ……ちょっと付き合え」

 

「はぁ……了解。潔乃ちゃん」

 

夏油が諦めたように苦笑しながら立ち上がる。

 

「私の分のスコーン、灰原に食べられないように取っておいてくれるかい?」

 

こくこくと頷きながら、私はスコーンの皿を引き寄せた。

そのまま二人は食堂を出ていく。

 

──そして、数分後。

 

校舎の外から、轟音。

窓ガラスがビリビリ震えるような破壊音。

地響きで蛍光灯の光が、かすかに揺れる。

夜蛾の怒声も聞こえて気がする。

 

……でも、誰も顔を上げなかった。

 

「潔乃ってデザートも行けるなら、もっと作ってよ」

「面倒だから嫌です」

「潔乃さん、紅茶おかわり淹れましょうか?」

「あ、私が入れてきますよ。家入さんもおかわり紅茶いりますか?」

「うん、お願い」

 

外の地鳴りみたいな音を、まるで虫の声でも聞き流すように。

私たちは、爆音と振動を完全に無視して──

デザートタイムを続けた。

 

こういう時の話し合いは、最強の二人に任せるのが一番だ。

夏油も五条も、結局のところ“強者”と見なした人間の言葉しか届かない。

 

きっかけは作った。これは原作も前回も五条は知らなかった情報。

五条は原作より、私が知ってる前回より、人間味が増している……ような気がする。

前回の残滓がやっぱり魂に影響してるのかな。

だからこそ、今の五条ならこの情報の意味がよく、わかるはずだ。

あとは任せたよ、五条。

 

……それと、ちょっとしたお願いなんだけど。

校舎、あんまり壊さないでほしいなぁ。

 

 


 

 

主人公

 

五条の好感度と執着が以前より高くて首を傾げてる。

所詮、五条も面食いでおっぱい星人だったか……

星漿体の任務の後から五条の距離なしは加速している。

セクハラセクハラ言って牽制はしているが、基本なすがままで放置。力で勝てないので。

あと、五条の可愛がりが酷くなって、自分が実力を認められたのはなんとなく察したが、

疲労困憊でそれどころではない、多少は加減してほしいと思ってる。

 

この度、夏油のメンタルケアを開始した。

夏油と2人で歩いていると、五条が高頻度で絡んでくる。一人任務で寂しんぼかと思って、甘やかしている。

なんだかんだと五条に甘い。

夏油の呪霊玉の件はみんなに知らせるチャンスを狙っていた、今回到来したのでやったけど本当に舐めて後悔した。

また、翌日からの2週間、五条と夏油が破壊し尽くしたものを修復する羽目になり、ガチギレして修復が終わるまでの間、2人と口を聞かなかった。

 

 

五条悟

 

星漿体の任務で、完全に潔乃に出し抜かれ、潔乃を強者と認めた。

ので、呪術に関しては、原作でもあった、才能がある、期待してる人間には厳しいが発動中。

それ以外はもう、執着と好意が溢れまくり。

当人はなんとなく主人公がそれなりに好きだし、一緒に居たい、俺以外の男いるとムカつく、伏黒甚爾としゃべんな!!!というだけの感情なので、それが恋愛的な嫉妬と、まだ当人が気づいてないのが困りもの。

夏油と主人公が任務でずっと一緒にいるとムカつくのは嫉妬もそうだが、前世で五条をおいて夏油と主人公が立ちさった記憶が魂にこびりついているので、二人が目の前に歩いてると邪魔したくなる。

前世と異なり2人は笑って立ち止まり、主人公は五条を見るし、夏油は主人公の隣を譲ってくれる。

それが魂の救いになってるのは五条当人も、夏油と主人公も知らない。

呪霊玉の件を今回初めて知り、内心ブチギレで夏油を連れて外に出ていって大喧嘩。

拳で殴り合って、お互い納得する。が、主人公にキレられて無視されてだいぶまいった。

あいつ怒らせないように、なるべく破壊しないようにしようと心に誓った。

 

 

夏油傑

 

星漿体の一件で、天内が助かったとは言え、非術師の暗部を見てしまったので思うところはある。

が、原作よりはだいぶマシ。

そんな中で、1年ズが、夏油に素直に懐いてきて、ちょっと嬉しい。心が癒される。

五条の本命の主人公と任務が一緒になることが多くて、悪いね悟。と思ってる。

送迎の車の中で、クソまずい呪霊玉を食べてる側で、呑気に飴玉食べてる主人公にちょっとイラッとしたけど、

「先輩もどうぞ」で手のひらくるん。メンタル的に救われた。

その後、一緒の任務で飴玉食べるのが、ご褒美のように感じてちょっと楽しみにしてる、悟ごめんね。

今回偶然にも、呪霊玉の味の件が全員にバレて内心ため息、苦労は人に見せるもんじゃない、カッコ悪いと思ってるタイプなので。

ブチギレた五条に連れられていって大喧嘩。拳で殴り合って、お互い納得する。

が、主人公にキレられて無視されて、五条に八つ当たりされて、だいぶまいった。

怒らせないように、なるべく破壊しないようにしようと心に誓った。

 




深夜にUP作業してて、スコーンが食べたくなった。
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