とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

星漿体任務後から玉折までの間の日常回その②

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・ネタまみれです
・通常より、激しい捏造、妄想含みます
・今回も激しいオリジナル解釈や展開になります。苦手な方は要注意
・五条が本当にひどいノンデリです。夢見てる方は注意。


転生者、過去を刺激する

夏油の呪霊玉を取り込むのがゲロマズなことがバレた一件。

──その後、五条と夏油による盛大な大喧嘩が開催された。

私たちは、爆裂音や破壊音が響く中、一切聞かないふりをしてスコーンパーティーを続行。

紅茶を注ぎ、スコーンを割り、爆音を完全スルー。訓練された高専生の平常運転である。

 

1時間ほどして、ズタボロになった二人が夜蛾に連行されてきた。

最強の親友コンビの間でどんな会話があったのかは知らない。

ただ、あれだけボロボロなのに、二人とも妙にスッキリした顔をしている。

……まぁ、いい方向に転がったと思いたい。

 

そのあと夜蛾の“指導”という名のゲンコツが炸裂し、二人は食堂の隅で正座。

夏油が怪我だらけでボロボロなのはわかる。

だが、反転術式を使える五条まで怪我だらけなのは、たぶん「イーブンにしよう」と思った結果だろう。

妙なところで誠実さ出さんくてもいいのに。クズなんだから。

私たちは遠巻きに眺め、完全無視したり、ため息をついたり、ニヤニヤしたり、煽るように写真を撮ったり。

基本、高みの見物。

 

そんな怪我だらけの2人を見て、家入は「1週間は治さない」宣言。

そりゃそうだ。任務の怪我ならともかく、ただの痴話喧嘩の治療なんてごめんだ。

 

青タンだらけで、顔中腫れ上がってて、イケメンの顔が台無し……でもまぁ、たまにはいい薬かもね。

 

なんて余裕ぶっこいていた私。

次の日になって、夜蛾から頭を下げられた。

「高専の施設、修理してくれないか」と。

 

破壊し尽くされた施設や設備は朝になって確認した。ひどいもんだった。

いや絶対に嫌だ。何日徹夜になると思ってるんだ?

 

「五条家に出させて、業者入れてましょうよ、あいつらが悪いんですし。

私がこれにとりかかったら、他の任務が滞ります!」

 

 

と突っぱねた私のもとに──翌日届いた。

五条家からの正式な依頼書。

上質な和紙に毛筆。現当主直筆。しかも達筆。

……最悪だ。五条家直々の依頼を一般家庭出身の私が断れるわけないでしょ。

すまないと顔を顰める夜蛾と、その後ろから様子を伺う五条と夏油を含めたいつものメンツ。

 

本来行くはずだった任務は当然中止や延期。

修復任務は基本私しかできないので、補助監督に頭を下げスケジュールを再調整。

祓除任務は他の術師をアサインしてもらう。

補助監督も高専側も事情はわかっているので同情されつつ、私はその仕事に取り掛かった。

ブチギレた私は、それから五条と夏油を完全無視した。

というか、相手をしている余裕がなかった。

本当に容赦なく破壊し尽くしたせいで、重要施設まで被害を受けている。

 

本当はすぐ治せるんだけど、わざと呪力を循環させて効率を落として──ほんと厄介だ。

羂索とか上層部とか御三家の目がなかったら、さっさと直してやるのに!!!

 

エナジードリンク、カロリーメイト、10秒チャージ、チョコレートなど吸収率がよく、高カロリーな食べ物を摂りながら毒づく。

まともにご飯を食べる時間すらない!術式使うとすぐエネルギー切れになるから、甘いもの食べまくり。

ちょっとだけ五条が甘党にならざるを得なかったのがわかってしまう。

これは思い込みでも好きにならないと辛い。

 

とはいえ、さすがに十日を過ぎたあたりで嫌になってしまった。

そこでちょっとペースを上げ、連続で術式を回して「まあ効率化したでしょ?」とだけ装う。

それでも追加で四日かかり、ほぼ二週間の徹夜の末、すべての施設と設備を修復し終えた。

五条家宛にPCで作って印刷した慇懃無礼な領収書を送り返し、相変わらず様子を窺うようにしている五条と夏油を完全に無視して──私は自室にこもり、布団に沈んだ。

 

──おやすみ。しばらく起こすな。起こしたら殺す。

 

 


 

 

目が覚めたら、世界がやけに輝いて見えた。

昨日までは世界が私を呪ってたけど、今日は祝福している。

──睡眠って、ほんと大事。

こんなに寝なかったのって、前回の“伊地知潔乃”ぶりじゃないだろうか。

 

洗面所に向かい、鏡を覗き込む。

若さゆえに、睡眠での回復がえげつない。

昨日夜寝る前は、ひどい隈があったけど綺麗に消えてる。

……けど、ちょっとだけ肌荒れてるなぁ。

 

七海潔乃は、西洋の血が混じってるせいか色白だけど、肌のきめ細かさなら──伊地知潔乃の方が上だった。

 

あの、東洋人特有のもっちりとしたきめの細かさ。

今思えば、あれは立派な美徳だった。

 

常に寝不足で、荒れっぱなしだったから、気づいてる人なんていなかったけど。

そもそも、肌のきめ細かさを知ってるのなんて家族くらいっていう悲しさ。

 

恋愛する余裕なんて、あるわけなかった。

 

──やっぱり、呪術界はクソ。

 

シャワーを浴びて、保湿を念入りに済ませる。

軽く整える程度にメイクをして、制服に袖を通して鏡の前に立つ。

なんだか人間に戻った気がした。

 

今日は平日だけど、授業は免除されている。

……が、目が覚めてしまったものは仕方ない。

のんびりと静かな校舎の廊下を歩き出す。

時間はちょうど昼前。もうすぐお昼だ。

 

今日は灰原と七海と三人で、ちゃんとしたご飯を食べよう──そうニマニマしながら教室に入った。

……誰もいない。

あちゃー、二人とも任務か。残念。

 

自分の席に腰を下ろし、机の中から教科書を取り出して自習を始める。

私は一応、“高専卒業後、呪術師にならずに外部に出る可能性あり”という前提で入学している。

前々世の記憶があるので、正直、受験勉強なんて不要だ。

国立薬学部卒をなめんな。理系で数Ⅲ・Cまでガッツリやってきた。

まぁ、この時期の内容なんて基礎の基礎。懐かしくて、むしろ癒やしだ。

 

ちなみに私は理系を出ているけど、本当は文系の方が好きだ。

理系は“答えがひとつ”だけど、文学や芸術は“解釈がいくつもある”。

それに触れる人や時代によって変わる、その曖昧さが好き。

 

だから、現代文で「作者の気持ちを答えよ」とか出されても、

問題としては解けるけど、意味わかんないと思ってる。

 

たくさんの答えがあっていいじゃない。

本当の答えなんて、作者しかわかんないんだから。

 

そんなこと考えながら、シャーペンを走らせていると、ガラッと教室の扉が開く音。

横目でそっと見ると、五条と夏油だった。

繁忙期もそろそろ終わりかけだし、私の様子を見に来たんだろう。

 

……なんかいい匂いさせやがって。任務帰りに早いお昼食べてきたな、この野郎。

当然、無視。

 

「あー潔乃?全部修理終わったって五条家(実家)から連絡きた。お金はすぐ振り込むってよ……あー、悪かったな」

 

五条がそう言いながら、私の右隣に座り、椅子をずいっと寄せてくる。無視。

 

「潔乃ちゃん、修理してくれてありがとう。私達にはできないから」

 

夏油が言いながら、五条の隣の席の椅子を引きずって私の正面に座る。無視。

私がペンを動かしたまま視線すら上げないのを見て、二人は揃ってため息をついた。

 

「潔乃、とりあえずこれで手を打ってくれ」

 

どさっ。

ビニール袋が、私の教科書とノートの上に落ちた。

眉間にシワを寄せるが、ふと気づく。

──あのいい匂いの正体、これか。

 

「マックのビッグマックセットと、フィレオフィッシュのセット。組み合わせはコーラL、ポテトL。

ナゲットはマスタード。あとベーコンポテトパイ5個にパンケーキ。

フレッシュネスのフレッシュネスバーガーとテリヤキのセット、組み合わせはオニオンフライとレモネード。追加でクラムチャウダー付き!」

 

五条が得意げに言いながら並べる横で、夏油も同じようにどさっと袋を置いた。

 

「私は高専近くのいつもの弁当屋さん。カルビ弁当、唐揚げ弁当、茄子味噌豚バラ炒め弁当。全部大盛り。あと、コンビニのホットスナック、スイーツの新作だよ」

 

……どっちも分かってる。

私のご機嫌をとる1番の方法は『食い物で釣る』って、私の扱いを完全に理解してやがる。

 

前世で伊地知潔乃だった頃は、これが酒だった。

食べることは好きでも、油ものに弱い体質。

そのくせ、お酒はいくらでもいける口だったので、五条に何本、酒を貢がれたことか。

あー酒飲みたいなぁ。

 

そんな過去を思い出して、思わずため息が漏れた。

 

「二週間の対価にしては、少ないですけど」

 

二週間ぶりにしっかりと2人の顔を見て、口を尖らせながらそう告げる。

その瞬間、2人の顔がパッと明るくなった。

特に五条。見えない尻尾がぶんぶん振られてるのが幻視できるレベルだ。

 

「なんでも奢るから、とりあえずこれでな? な?」

「今日は任務もないし、あとで三人でご飯行こうよ?」

 

チャンスを逃すまいと必死に謝り倒す二人に、今度ばかりは笑いを堪えきれなかった。

 

「……私、町田にできたコメダ珈琲行きたいです」

「よっし、晩飯そこ行くぞ!」

「名古屋発祥の喫茶店だよね。任務で見かけたけど、入ったことないな」

「お昼食べました?まだだったら、食堂でこれ三人で食べましょうよ」

 

教室の机に積まれたマックと弁当とコンビニスイーツの山を指さす。

どれもこれも魅力的だけど、教室で食べるには非常識すぎる量だ。

流石に移動した方がいいだろう。

 

三人で顔を見合わせ、ケラケラと笑った。

 

ちなみにこのあと、食堂へ移動して三人でこれらを食べた。

……が、コンビニスイーツとマックのパンケーキは、すべて五条のお腹の中に消えた。

 

そして今、五条は夏油の買ってきた唐揚げ弁当を食べている。

……順番、逆じゃない?

 

それを見て、ビッグマックを齧りながら思わず呟く。

 

「……引くわ」

 

「フレッシュネス全部食べ切った後に、マック食べてる君も大概だよ……」

 

夏油が苦笑しながら返す。

 

うるさいな。

 

「夏油さんだって、弁当二つにコンビニのホットスナックまで食べてるじゃないですか」

 

そう言い返すと、

夏油はちょうどベーコンポテトパイに手を伸ばしていた。

……本当に大概だ。

 

すると、任務から戻ってきて一緒に食事をしていた七海が、

私のナゲットをつまみ食いしながら口を開いた。

 

「あなたたち三人と灰原は、胃袋おかしいですよ」

 

その視線の先には──

 

夏油が買ってきた弁当屋の、特盛カツカレー、特盛ハンバーグ弁当、特盛生姜焼き弁当にカップラーメンを汁物にして、幸せそうに頬張る灰原の姿があった。

 

……あれと一緒にしてほしくないなぁ。

 


 

 

私が施設を修復している間に、本格的な繁忙期はすっかり過ぎ去っていた。

多少の余裕が出る。そんな時期に学校行事が多くなる。

 

京都との交流戦がその代表だ。

他には一般的な体力測定に、ちょっと遅れた夏祭り、学園祭、球技大会。

人数が少ないため、全学年と補助監督を巻き込んでの合同行事が、繁忙期の合間を縫うようにして開催される。

 

前回、伊地知潔乃だった頃は、こうした行事をほとんど経験できなかった。

同級生がいなかったこと、そしてその年の夏に繁忙期が長引いたこと。

──何より、その時期に夏油傑の離反があった。

 

様々な要因が重なって、あの年はすべて中止になってしまっていた。

だから今は正直、楽しい。

高専に入ってから、一番“学生”してる気がする。

 

そんな風に任務にも余裕が出てきた頃、面倒くさくなってきたのが、五条だ。

 

「ワンピース買いに行こうぜ」

うるさいうるさい。ほんと、毎日言ってくる。

 

伏黒甚爾にワンピースを買ってもらったことを、まだ根に持っているらしい。

別に気にしなくていいと思うんだけどなぁ。

 

どうせ露出が高いものを買ってもうるさいし、地味なのを買ってもうるさい。

──要するに、何を着ても文句を言うタイプだ。

 

洋服くらい、好きなものを買いたい。

というわけで、適当な理由をつけてスルーしている。

 

「天気が悪いから嫌だ」

「風邪気味なので嫌だ」

「生理が重いので動きたくない(嘘)」

 

……流石にそろそろ、嫌がってることに気づいて諦めてほしい。

この業界はパフォーマンスが生死に関わるから、恥ずかしがらずに言う人多いけど。

女が“生理”を理由に出すって、よっぽどだぞ?普通、男に言わないからね?

そんなこんなで日々過ごしていると、

 

「おい、明日みんなでスイパラ行くぞ」

 

五条がいきなり、確定事項のテンションで言ってきた。

 

「え? 明日? 私、任務入ってます。終わってからならいいですけど……」

「その任務、俺が同行するから、そのまま行くぞ」

「えー……五条さん、物壊さないでくださいよ?」

「壊さねーよ」

 

べしん、と頭を叩かれながらも、思わず首を傾げる。

なーんか妙に機嫌がいいんだよな。

まぁ、いいけど──と呑気に構えていたのが悪かった。

 

任務は五条と手分けしてあっさり片付き、

補助監督が現地まで送ってくれるとのことで送ってもらい、車から降りた。

「へぇ、ここにスイパラあるんだ~」なんて考えていたら──誰もいない。

 

「おら、行くぞ」

 

五条に手を繋がれ、そのまま引きずられるように入ったのは、

某高級デパート。

 

「あの……五条さん、スイパラ……?」

 

まさか、とは思いつつ声をかけると、

五条は悪びれもせず笑った。

 

「銀座にスイパラなんかあるわけねーだろ」

 

ですよねぇぇぇぇ……知ってた。

 

「五条さーん」

 

恨みがましい目で睨むと、五条はまるで悪びれずに笑った。

 

「お前、服買ってもらうの遠慮しすぎなんだよ。飯は奢られるくせに。

ほら、どんなのが好みなんだよ?」

 

好みって言われても……素直に言ったら文句言われるに決まってる。

 

私はせっかくこのスタイルのいい体を活かせるような、

体のラインが出る服を以前は好んでいた。

日本人体型離れしているから、海外メーカーの服を選ぶと自然とそういうデザインが多くなる。

 

でも、その手の服は、すこぶる五条の反応が悪い。

 

胸や尻を軽く叩かれて、

「はい、アウト」みたいにパーカーを被せられたり、

高専の学ランを肩に掛けられたり、

そのまま腰に腕を回されて、そのまま固定されて、その服装で出かけることを封じられたりと、やりたい放題。

 

露出を嫌う父親か、兄弟か、はたまた嫉妬深い恋人か──

どれにしても、正直うんざりである。

 

……伊地知潔乃の時は何も言わなかったくせに。

 

内心で愚痴りながら考える……そうだな。

 

「正直、ワンピースよりも普段着れる服がいいです。ブランドなら、XXXXとか」

 

私が挙げたのは、男女問わず人気のあるユニセックスブランド。

ダボっとしたシルエットで体型も隠しやすく、

しかも高身長向けのラインまである。完全に私向きだ。

 

「それだけでいいのか?」

「あと、せっかくなので下着買いたいです。これは自分で払います」

「別に俺が払うけど?」

「流石に恥ずかしいんで! 下着買う時はどっか行っててください!!」

 

話はまとまり、五条と一緒にそのブランドで服を選ぶ。

私の要望を伝えると、意外にも五条はちゃんと聞いてくれて、

「これとこれ合わせるといいじゃん」と、ちゃんとバランスまで見てくれる。

 

同じブランドでも生地や縫製をしっかり見て選ぶあたり、やっぱり目が肥えてる。

こいつ、正真正銘の坊ちゃんだ。

 

私はここまで高い組み合わせは絶対買わないけど、

坊ちゃんの五条が「奢る」と言ってるので、ありがたく数着買ってもらった。

 

素直にお礼を言ったあと、

デパートのレストランフロアで食事をすることになった。

 

もちろん、五条の奢り。

“スイパラのお口”だったので、洋食のレストランに入る。

 

五条は私の希望を聞きながら、自分が食べたい物を含めメニューをたくさん頼んでくれた。

相変わらず注文が豪快だ。まあ、五条も大柄な体だけあってたくさん食べるからね。

スイパラみたいに爆食はできなかったけど、やっぱりデパートのレストランは美味しかった。

五条が、ニコニコしながら私を見て言う。

 

「お前、ほんっと美味しそうに食べるよな?」

 

そう言われてオムライスを食べる手を止める。

いや、それ、アンタが言う?

デザートを食べてる時の五条の顔だって、誰よりも幸せそうだと思うんだけど。

 

 

その後は、一時解散。

私は某ブランドの下着ショップへ向かう。

サイズを測ってもらったら──カップ数が上がっていた。

 

……嘘だろ。

これ以上上がると、値段も上がるしデザインも可愛くない。

伊地知潔乃の頃はユニクロのブラトップで良かったのに、

今はそれじゃ形が崩れる。

頭を抱えながら、店員さんと相談して「なるべく可愛いっぽいもの」を選び、試着室へ。

 

身につけて鏡を見る。

……うん、やっぱり微妙。

ため息をついた、その瞬間──コンコンとノックの音。

 

「はい、どうぞ」

 

店員が確認にきたんだろう。反射的に返事をする。

次の瞬間、ガチャリ。

扉を開けて入ってきたのは、よりによって五条悟。

 

「は?? は???」

「カップ、入りきってねぇじゃん」

 

私の下着姿をまじまじと見て、そう言うなり、悪びれた様子もなく私の胸元に手を突っ込み、

肉を集めカップの中にぐいっと整えるように押し込んだ。

 

「これでよし!んーやっぱデザイン微妙だな。これつけてみろよ」

 

別のブラを手渡し、あっさりドアを閉めて出ていく。

 

……沈黙。

 

「は? は?????」

 

頭が真っ白になって、思考が10秒くらい遅れてやってくる。

今の何!? いや、何!? え? は!?!?

 

試着室の中で、しばらく硬直したまま固まった。

……何、今。私の胸、胸触って──はぁぁぁぁ????

 

「どうだ? つけたか?」

 

外から、呑気な声。

怒りがじわじわと沸き上がってくる。

 

このノンデリやろう……!

 

「店員も気にしてっから。別のブランドショップから持ってきてもらったんだぜ」

 

何得意げに言ってやがる。

羞恥やら怒りやら、あらゆる感情で手が震えながらも、

五条が持ってきたブラジャーを身につける。

 

──ちくしょう。確かに可愛い。

そしてサイズもぴったりだ。くそ、ムカつく。

 

「……店員さん呼んでください。五条さんは、入らないでください」

「は? 何」

「入ってきたら、一生口ききません!!」

「……お、おう」

 

ドスの効いた声で言ったら、五条が一瞬たじろいだ。

どうやら今になって、ようやく私が“本気で怒ってる”ことに気づいたらしい。

 

呼ばれた店員さんが入ってきて、柔らかく笑った。

 

「このブラジャー、彼氏さんが選んでくださったんですよ」

 

──ニコニコ営業スマイル。

ちくしょう。

彼氏じゃねーよ。

 

そもそも、制服着た10代男子が下着売り場うろついてて、よく追い出されなかったな?

顔か? 五条が美形だから許されるのか?

 

……理不尽すぎる。

 

ムカついたので、デザインが微妙なのも含め、試着したもの全部を買うことにした。

高級ブランドだけあって、つけ心地は抜群だからね!

もちろん、支払いは五条のマネーで。

 

「へー、あんな布っ切れなのに結構するんだな」

 

なんて言いながら、デビットカードをノータイムで出す五条。

流石に未成年だからクレジットカードは持ってないみたいだけど、

今日だけで結構な金額を払い続けてるのに、顔色ひとつ変えない。

 

……無駄に腹が立つ。

思わず、睨みつけた。

 

ああ、もう。何か言ったら負けだ。

 

そのあとは無言で高専に戻るだけ。

通勤ラッシュからズレているから、そこそこすいた電車内。

座席に並んで座るけど、私は徹底的に無視を貫いた。

怒ったから無視するとか子供じゃないしやりたくないが、流石にあれは無しだろ。

今は五条とは何も話したくない。

 

数駅ほど過ぎたころ、五条がぽつりと口を開いた。

 

「わりぃ。俺んち、呉服屋とか下着屋が家に来て、それが男の場合もあるし、

家族があんな風にサイズ測ってるの見てたから、それが普通だと思ってた」

 

……五条家ならありそう。さすが坊ちゃん……

 

隣の席で、五条は珍しく肩を落としている。

どうやらメールで家入や夏油に相談して、ようやく私の“怒りポイント”を理解したらしい。

 

……ほんとに悪気なかったんだな。

分かってはいたけど、だからこそムカつくんだよ。

 

「私、男の人に生胸触られたの初めてです。どうしてくれるんですか?お嫁に行けないです」

五条の肩がピクリと動いた。

 

「な、生むね……嫁……」

 

小声で繰り返したあたり、本格的に動揺している。

童貞でもないくせに白々しい。女の胸なんて揉みなれてんだろうが。

 

「……悪気はなかったのは、わかりました。でも、もう二度としないでください」

 

「……ごめん」

 

短く、それだけ。

五条の声は、いつもの軽さが消えていた。

視界の端に映る五条の横顔は、珍しく気まずそうで、言い訳ひとつ出てこない。

 

「だいたいですね。普段から私の胸とかお尻とか叩きすぎなんですよ。

そういうのは、五条さんの“奥さん”とか、“好きになった人”とか“恋人”とかにだけしてください」

「…………」

 

言葉が出ない五条を見て、ようやく少しだけ溜飲が下がった。

五条が、そっと私の手を握ってきた。

 

「……五条さん?」

 

五条は、何も言わなかった。

ただ手を離さず、静かに俯いている。

 

──はぁ。

 

思わずため息が漏れる。

呪術師としては最高峰の男なのに、こういう時の五条はどうしようもない。

 

前回の五条だったら、もう少し上手く立ち回ってた記憶がある。

出会ったのはもう一年後だったし、付き合いが長くなってからの印象の方が強い。

 

こっちの五条は、まだ子供だ。

夏油と出会って一年ほど。

情緒面でいえば、小学生みたいなもんかもしれない。

 

「とりあえず、五条さんは私に詫びるべきなのです。

そうだなー……ミスド食べたいです。奢ってください」

 

「何食いたい?」

 

いつもの軽い声色。

五条が、ほっとしたように笑う。

 

──あーもう、わかりやすい。

こうして助け舟を出してあげるあたり、私も五条に甘い。

 

「とりあえず、パイ系は全部。

どうせなら高専戻ってみんなと食べ合いっこしたいので、ケースの端から端まで全部種類!」

 

「強欲だな。でも、おもしれーじゃん。みんなで食べようぜ」

 

握っていた手が離れたかと思うと、

今度は肩に腕を回して抱き寄せられる。

 

……さっきの注意、あんまり通じてないなー。

そう思いつつも、苦笑が漏れる。

 

まぁ、これが五条の距離感なんだろう。

夏油とかにも普通にやってるし。

 

「絶対にチョコレートと、ココナッツチョコレートと、ゴールデンチョコレートは食べたいです」

「チョコばっかじゃん」

「好きなんですもん。いいじゃないですか」

「俺も好き。たくさん買おうぜ」

 

肩を寄せ合いながら、どれがいちばん美味いかを真剣に語り合う。

どのドーナツが“王者”か、お互いにプレゼンし合って笑い合って──

 

そして、気づけば二人の腕の中には、ケースの端から端まで買い尽くした大量のドーナツ。

あと、五条に買ってもらった私の服と下着。

それらを抱えて、夜風の中を並んで高専へと戻った。

 


 

 

「五条さん、正座してください」

 

高専に戻るなり、半ギレの七海が私たちを出迎え、

問答無用で五条を正座させていた。

 

というか──なぜか夏油と家入と灰原までいる。

 

どうやら“下着屋の一件”がもう伝わっていて、全員がマジ説教モードらしい。

あーあ、ザマァ。

 

内心で笑いながら、五条への説教は任せることにした。

五条の言い分に、みんな呆れつつもドン引きしている。

……まぁ、五条家の資産家っぷりによる、世間ズレは異次元すぎるから、仕方ない。

 

ちなみに、もう三十分は説教されているはずだけど、

正座慣れしている五条は屁でもない顔。

 

アレ、説教するほうがイラッとするだろうな。

 

夏油と七海はネチネチと嫌味ったらしく説教しながら、怒りで声が震えているし、

冷静に見える家入は、嫌がらせのように無言でタバコの煙を吹きかけ、根性焼きを作っている。

 

五条も家入も反転使えるからって、怖すぎ。

 

灰原は、定期的に目だけ笑ってない笑顔で五条の頭をスパーン、スパーン。

結構力が入っているらしく、五条の体が左右に揺れていた。

 

……やっぱ呪術師って、イかれたやつしかいない。

 

視線を逸らしながら立ち上がる。

さてと、そろそろドーナツ食べたいし。

 

みんなの分のコーヒーや紅茶を手早く用意した。

家入と夏油にはアイスブラック、

私と七海はアイスレモンティー、

灰原にはコーラ。

 

グラスを並べ終えて、声をかける。

 

「そんな最低野郎はほっといて、ドーナツ食べません?」

 

五条が、ほっとしたような顔でこちらを見る。

 

──が。

 

「あ、五条さんは正座しててください」

 

そう簡単に許すと思うなよ、クソが。

 

「おい!! 俺も一緒に食べるって!!」

「私は“詫びにミスド奢れ”と言っただけですよ」

「さっき電車の中で、“ミスドのドーナツ王者はどれだ?”って話しただろうが!」

「話しましたね。でも、“みんなで食べる”とは言いましたけど──

その中に五条さんが含まれてるとは、一言も言ってませんけど?」

 

五条の前に立ち、腕を組んでにっこりと見下ろしてやる。

 

唖然とする五条。

思わず吹き出す夏油と家入。

小さく肩をすくめる七海。

そして、早速ウキウキでドーナツを物色し始める灰原。

 

うん、みんなとても塩対応。

切り替えも早くてナイス。

 

「オールドファッション貰うね」

「私はこのポン・デ・リングをもらおうかな」

「私はそうですね。このミートパイを頂きます」

「僕はそうだな! このエンゼルクリーム!!!」

 

みんなが好き勝手に選び始める中、五条が立ち上がりかけて叫ぶ。

 

「おいテメェら! 俺のチョコレートブラザーズ残しとけよ!!!」

 

完全に、負け犬の遠吠え。

 

「チョコレートブラザーズって何?」

 

私が入れたアイスコーヒーを飲みながら、家入が不思議そうに言う。

 

「チョコレート・ゴールデンチョコレート・ココナッツチョコレートの三つのことかと。

電車の中で“これだけは外せない”って話してたので」

 

自分の分のゴールデンチョコレートをとって、パクッとかじる。

うん、この黄色い謎の粒々が美味いんだ。

 

「へえ、それそんなに美味しいんだ。あまり食べた記憶ないな。ちょっともらっていい?」

「どうぞどうぞ」

 

家入は甘いものが苦手なはずだから、少しだけ割って手渡す。

それを受け取って口に運び、「うん、甘いけど、美味しい。ちょっとならいける」と。

 

その様子を見て、五条がなんか言ってるが──みんな気にしない。

 

それを見ていた夏油も「ちょっと貰っていいかい?」と言ってきて、

結局みんなで仲良く分け合いっこ。

 

ドーナツを半分ほど食べたところで、五条に視線を向ける。

歯ぎしりしながらも、まだ正座してる。

……反省してるな。

 

みんなで視線を合わせて、そろそろかなと頷き合う。

なんだかんだで、私が食べた分以外、五条が“本当に楽しみにしてた”チョコ系ドーナツには誰も手をつけてない。

みなさんお優しいことで。

 

「コーヒーのストック、もうないみたいだね」

「別の飲み物も飲みたくなりますね」

「コーラ以外の炭酸が欲しいな!」

「私もタバコ切れそう」

 

みんなの意見をまとめて、私はにっこり。

 

「──五条さん、一走り。買ってきてください。

そしたら、ドーナツ一緒に食べましょう」

 

「最後のタバコは高専の自販機で売ってねーから無理だろ!お茶でいいな? 

ひとっ走り行ってくるわ!!」

 

立ち上がり、文句を言いながらも食堂を走り去っていく。

……素直か。

それを見送って、全員でため息。

そのあとはもう、五条の世間擦れについての愚痴だ。

 

「潔乃、あの最低野郎こんなんで許していいワケ?」

 

家入がタバコに火をつけながらぼやく。私は灰皿を差し出しながら

 

「責めてもしょうがないかなって。何も知らない子供怒ってるみたいだし」

 

「僕は、もう少し怒ってもいいと思ったけどね!」

 

この件で灰原も珍しく怒っていた。妹がいるから、重ねちゃったかな。ごめんね。

 

「まぁ、でも五条さんだし」と言えば、灰原も苦笑していた。

 

「ところで、今日は悟とデートだったんだろう?どうだった?」

 

ニヤニヤとしながら聞いてくる夏油に、首を傾げる。

 

「楽しかったですよ。服買ってもらって、ご飯奢ってもらって、ランジェリーショップ巡っただけですけど」

「十分、買い物デートだね」

「オチが最悪ですけどね」

 

そう言うとみんなげんなりした顔になった。

 

「まぁ、オチはともかく、散々貢がせたんだろ?ラッキーだったな」

 

言いながら美味しそうにタバコをふかし、ニィッと笑う家入。

あまりにも美味しそうに吸うので、つい

 

「家入さん、1本ちょうだい」

「珍しいね。はいどうぞ」

 

夏油と灰原は、ぽかんとした顔。

七海がいやそうに眉をひそめたが、知らんぷりして一本もらう。

 

タバコ自体は嫌いじゃない。

酒とタバコはセットみたいなものだ。

ウイスキーを飲み、タバコを燻らせる──

伊地知潔乃だった頃も、バーに行った時だけはそんな楽しみ方をしていた。

 

……最後に吸ったの、いつだったっけ。

ああ、そうだ。

“五条だけを弾く結界”を張った百鬼夜行のあの日。

 

ちょっと、嫌なこと思い出しちゃったな。

 

タバコを咥え、シガレットキスで家入から火をもらう。

細く、長く、煙を吸い込んで──むせることもなく吐き出した。

ゆらりと揺れる白い煙が、天井へと溶けていく。

 

「潔乃ちゃん、なんか慣れてない?」

 

夏油の言葉はスルー。

七海がしっぶい顔してるのも、スルー。

 

たまにタバコ吸うくらい、いいじゃん。

あー、でも美味い。最高。

 

なんて思っていると──

ガコン、ガコン! と、金属が転がるような大きな音が響いた。

 

みんな驚いて、音のした方を振り向く。

食堂の入り口に、五条が立っていた。

 

足元には、コーラやジュース、お茶やコーヒーの缶やペットボトルが転がっている。

手にはビニール袋。中身は、スナック菓子。五条の部屋から持ってきたのか?

それが、ぐちゃぐちゃに潰れていた。

 

呆然とした様子で、五条はその場に立ち尽くしている。

 

「……悟?」

 

夏油が立ち上がり、心配そうに駆け寄ろうとする。

だが五条は、それを完全に無視して真っ直ぐこちらへ。

 

無言で、私の手からタバコを奪い取り──そのまま握りしめた。

ジッ……と音を立てて、灰が落ちる。

 

「ちょ、五条さん!!」

 

自分の手のひらに、ためらいなく根性焼きを作る五条に、思わず叫ぶ。

 

「おまえは……タバコ吸うな!!!」

 

怒鳴り声が、食堂の空気を裂いた。

ガラスが震えるような、呪力混じりの声。

 

全員が息をのんで静まり返る。

 

「……え? え?」

 

呆気に取られる私の肩を、五条が両手で掴む。

その手が熱い。まだ火傷の熱が残っているのに。

 

「いいから吸うな!! わかったな!!!」

 

必死な目。

まるで、とても苦しいものを見るような──そんな顔。

 

思わず、コクコクと首を縦に振る。

その瞬間、五条からあふれていた呪力が一気に弾け、

食堂の古い電球がチカチカと瞬いたあと、

空気がふっとやわらいだ。

 

「……はー……頼むよ、マジで……」

 

私を抱きしめながら、その場にへたり込む五条。

 

いや、こっちが頼むよマジで。なんだけど。

 

五条の腕の中、心の中でそうぼやいた。

 

 


 

 

シャワーを浴びて、寮の自室に戻る。

ベッドに腰を下ろした途端、今日の出来事が一気に頭に浮かんだ。

 

潔乃とデートして、飯食って、下着屋でやらかして、ミスドの話して──

……はぁ。

 

思わずため息が出る。

楽しい一日だったはずなのに、最後の最後で全部ぐちゃぐちゃにした気がする。

 

潔乃がタバコを吸ってる姿を見た瞬間、カッとなった。

なんでか分からない。

でも、あれだけは──絶対に許せなかった。

 

「硝子は平気なのに、な」

 

呟きながら、天井を見上げる。

硝子が吸ってるのを見た時は、「ガラ悪ぃな」くらいで終わったのに。

潔乃のときだけ、頭が真っ白になった。

 

案の定、傑と硝子には散々イジられた。

 

「悟、気持ちはわかるけどね」

「七海よりお兄ちゃんしてるとか、ウケるんだけど」

 

……うるせぇ。

 

潔乃も、心配そうに俺の顔見てくるし。

あーもう、ホントしくった。

 

こんな日は、さっさと寝るに限る。

明日になれば、この微妙な空気も抜けてるだろ。

 

ベッドに寝転び、右手を開いたり閉じたりしてみる。

……焼けた痕はもうない。

あの後、潔乃が泣きそうな顔をしてるから、サッサと反転で治した。

 

「せっかく胸触ったのに、全然覚えてねぇ。もったいねぇ」

 

独り言のつもりが、声になってた。

もし潔乃に聞かれたら、間違いなく“最低”って言われるやつだ。

 

あれは本当に、ブラを直すだけだった。

でも今思えば、もったいなかった──いや、そういう問題じゃない。

 

ふぅ、と息を吐いて、枕に顔を埋める。

 

あいつ、スタイルいいもんな。

今日はラフな服だったけど、次は……もうちょい大人っぽいやつ。

そうだな、やっぱりワンピースとか。色気出るやつ。

伏黒のオッサンよりもいつに似合うやつ買ってやろう。

そして、次の俺とのデートで着てもらおう。

それがいい。

 

そんなことを考えながら、瞼を閉じた。

 

 


 

 

そこは、真っ暗だった。

 

さっきまで自分の寮の部屋にいたはずだ。

誰かの生得領域とでも繋がったのか?

 

じっと周囲を観察する。

だが、何の気配もない。

六眼にも反応はない。

 

──夢、か。

 

明晰夢なんて珍しい。

目が覚める気配もないし、さてどうしたもんかと考えながら視線を巡らせる。

 

……遠くに、青い焚き火が見えた。

 

何もない闇にいるよりはマシだろう。そう思い、そこへ歩き出す。

 

焚き火の前には、黒髪の女が座っていた。

黒いスーツ。細い肩──補助監督か?

 

どこか、伊地知に似た雰囲気を感じた。眼鏡もかけてるし。

こんだけ近づいてるのに、この女、俺に気づいているはずなのに、一瞥すら寄越さない。

黙ってタバコをふかしている。

 

夢の登場人物だとしても、シカトされるのは妙にムカつく。

それ以上に、この女がタバコを吸っているのを見ると、焦燥感のようなものが湧いてくる。

タバコを吸っていることをすごく不快に感じる。何でだ?

とりあえず、声を掛けようとした瞬間、女が立ち上がり、タバコを地面に落とす。

 

そして、青い炎を──踏みつけた。

 

「っ!!」

 

青い炎が一気に女の体を包む。

その瞬間、ようやく気づく。

 

青い炎の中に張り巡らされた、緻密な術式の構造。

ただの火葬ではない。

──“この世から消し去る”ための火だ。

 

なぜか、胸が締めつけられた。

慌てて駆け寄ろうとするが、結界が発動し、女のもとへは近づけない。

 

そこで気づく。

青い炎の中、女の髪が変化していく。

 

黒から、満月のような金色へ。

 

そこにいたのは──

 

そこで、目が覚めた。

 

息が荒い。

シーツは汗でぐっしょり濡れている。

 

右手のひらが、じんじんと熱い。

まるで、夢の中で感じた青い炎の余熱のようだ。

 

「……なんだよ、これ」

 

思わず呟く。

けれど、答える声はない。

 

夜の静寂だけが、俺の部屋を満たしていた。

 

 


 

 

シャワーを浴び、寮の部屋に戻りベッドの中でゴロゴロとする。

さっきの五条の様子を思い出す。

 

──あの後、ひっそりと七海が聞いてきた。

 

「あの拒否反応は異常です。前世関連で、タバコで何かなかったですか?」

 

そう言われて、私も考えた。

前回、私はタバコを核にして、五条だけを弾く結界を張った。

あれは自作のタバコ。結界の力を持つ宝石を粉末化し、煙草葉に混ぜ込んだものだ。

燃えている間だけ、そして“五条悟だけ”を完全に弾く。

それ以外の誰も通れるが、五条だけは通れない。

五条ですら砕けなかったその結界の中で──私は青い炎に包まれて焼死した。

 

今日のあの過剰反応。

もしその時の“残滓”が五条の無意識に触れていたとしたら──

 

激しく、やらかした。

 

布団の中で深呼吸を三回。冷静に状況を分解する。

 

五条はタバコそのものには寛容だ。硝子の煙草も平気だった。

でも、私が吸った“瞬間”だけ理性が飛んだ。

=原因は「タバコ」ではなく「私×タバコ」の組み合わせ。

 

明日は、甘いのでも買っていこう。

まず「ごめん」って言う。

それから、「もう二度と“私×タバコ”はやらない」と約束する。

これで五条のメンタルが落ち着くなら安いもん──

 

そう考えていたとき、寮の扉がガチャンと開いた。

 

え、鍵かけてたはずだけど?

慌てて身を起こすと、五条が立っていた。

 

……えぇぇ。

この五条も、勝手に鍵を開けて入ってくるようになったの?

前世の「入り浸り五条」を思い出してしまう。

 

「五条さん、どうしました? 鍵、かけておいたはずなんですけど!!」

 

とりあえず、自分の感情は出さず、いつもの私を装う。

五条は無言のまま部屋に入り、ベッドのそばに来た。

寝癖のついた髪、Tシャツにハーフパンツ。

寝巻き姿のまま飛び出してきたようだ──何があった?

 

「五条さん?」

 

顔を覗き込もうとした瞬間、五条がベッドの上に乗り、私を抱きしめてきた。

 

「え……? ちょ、五条さん!!」

 

こいつ、昼間言ったこと忘れたんか???

股間を蹴り上げてやろうとしたその時、気づく。

 

──抱きしめている五条の腕が、小刻みに震えていた。

体全体も震えている。

顔を見ると、血の気が引いて真っ青だ。

 

……悪夢でも見た?

 

あまりに様子がおかしい。

とりあえず、そっと五条の頭に腕を回し、髪を撫でてやる。

 

「何かありました?」

 

「なんでもねぇ。何もしねぇから……今夜はこうさせろ」

 

私を強く抱きしめ、首筋に顔を擦り付けてくる。

その腕の震えは、まだ止まらない。

 

絶対に、夢の中で“あの時に関する何か”を見たんだ。

はっきりと理解できなくても、強い不快感や不安を五条に与えたのだろう。

──これは、私の責任だ。フォローも、私の仕事だ。

 

「今日だけですよ?」

 

五条の頭を撫でながら、そのつむじにそっと顔を埋める。

五条の体臭と、ほんのり香るシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐった。

もう片方の手を背中に回し、優しく、するすると撫でてやる。

まるで母親が子供を寝かしつけるように。

 

何度でもいうが、これで五条のメンタルが落ち着くなら、安いもんだ。

 

やがて、五条がギュッと力強く私を抱きしめたまま、

首筋に顔を埋め、震えが少しずつ収まっていく。

 

そのまま、静かな寝息に変わるまで、私はただ黙って見守っていた。

 

五条の意外と穏やかな寝顔をそっと覗き込みながら考える。

──記憶を取り戻していないのに、明らかに前世の影響を受けている。

 

五条だからまだいい。

けれど、これがもし呪詛師堕ちした夏油だったらと思うと、背筋が冷えた。

前世の記憶が下手に作用すれば、また同じルートを辿りかねない。

 

せっかく順調に進みそうだったのに。

穏やかな寝顔を見つめながら、私は深くため息をついた。

 


 

 

主人公

 

五条と夏油の破壊した施設設備を治すために頑張った。

五条と夏油の貢物のうち、ビックマックセットと、フレッシュネスバーガー全部、ベーコンポテトパイは主人公が食べた。

今回過去最大のセクハラ被害を受けた被害者

流石にマジギレしたけど許す辺り甘い。

そして、五条が前世の記憶にがんじがらめだと気がついた。

 

 

五条悟

 

やらかすたびに主人公へ貢ぎ物をして許しを請う常習犯。

デザート系全部+唐揚げ弁当+ベーコンポテトパイを平らげた。

この人も立派な“大食いその1”。

過去最大のセクハラ&ノンデリ行為をやらかし、周囲から総ツッコミ&説教を食らう。

しかし本人曰く「実家の仕立て屋が女性陣にも普通にやってた」ため、悪気ゼロだった模様。

……いや、プロとお前は違う。

最終的に許してもらえたのでヨシ。

主人公のタバコをきっかけに、魂に刻まれた前世のトラウマが呼び起こされる。

起きた時、夢の中の内容はよく覚えていない。

でも“主人公が酷い目に遭っていた“ことは覚えていて、飛び起きて主人公の部屋に突撃。

結果、そのまま抱きつき添い寝コースへ。

お察しの通り、このあとも常習化する。

 

 

夏油傑

 

やらかして一緒に主人公に貢いだ。大食いその2

カルビ弁当とナス味噌バラ炒め弁当、コンビニホットスナックとベーコンポテトパイは食べた。

五条が主人公に気持ちが伝わらない様子を笑って見てる。

けど、下着屋の一件は許せないので説教した。

その後、タバコのくだりは首を傾げてる。なんで?

 

 

七海建人

 

黙って大食い三人を見ていたが、こいつも地味に食べている。

サンドイッチ3つ、バケットサンド、ピザパン。

静かに食べて静かに説教する、“常識人枠”という名の胃袋ブラックホール。

下着事件では、ガチトーンで五条を叱った。

 

 

灰原雄

 

大食いキング

たくさん食べるの大好きです。

妹がいるので、実は一番下着屋の件で怒っていた。

でも、五条さん潔乃のこと好きだしなぁ。と絆されるのも早い。

 

 

家入硝子

 

お前ら全員食欲魔人だよ。胃もたれするわ。

下着屋の件はメスで五条の五条を切り刻んでやろうかと思うレベルでおこ。

術式解かせて、根性焼きだけにした私って優しい!

まぁ、五条が主人公好きだし、主人公も悪く思ってないならいいんじゃない?と思ってる。

タバコの件は、五条にも主人公にも驚いた。主人公絶対タバコ吸ってたただろ!

 

 




大食いランキング
灰原>>主人公>>>>>>五条≒夏油≒七海

※甘いものオンリーになるとダントツで五条が1位
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