とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

懐玉後の日常④
玉折①

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・ネタまみれです
・これまでで最も、激しい捏造、妄想含みます
・今回も激しいオリジナル解釈や展開になります。苦手な方は注意
・今回、主人公の主張や解釈などで、厳しい表現含みます。苦手な方は注意


転生者、バチバチにやり合う

翌日──

 

破壊し尽くされた高専の施設を前に、私は無言で青筋を浮かべた。

……まぁ、原因は分かっている。昨夜のアレだ。

 

呪霊玉の“味問題”の解決方法を伝えたあと、夏油がほんの一瞬だけ涙ぐんでいた。

私は見なかったことにして、早々にコーヒーを淹れにその場を離れた。

男って、泣き顔を見られるの嫌がる人多いしね。

 

私がコーヒーを淹れて戻ってきたときには、もういつもの夏油だったけど──

それでもテンションは上がっていたんだろう。

何年も彼を苦しめてきた問題が、ようやく解決したんだから。

 

そして出た、夏油のあの冗談。

 

「悟と別れたら、私と付き合ってよ」

 

努力とか必死さとか情けない部分とか、そんなものを隠したいタイプの夏油らしい照れ隠し。

五条や私が本気で呪霊玉の件に向き合って、解決方法を見つけたのが伝わったんだろうな。

 

……で、そのあとはもう、“お決まりのコース”。

 

五条がキレて、夏油が煽って、二人が外でドッカンドッカン。

だんだん破壊音が大きくなってきて、私は遠い目になった。

 

そのうち夜蛾の怒声も響きはじめた時点で、私はテーブルのお菓子を片付け、

歯磨きをして、耳栓をして、布団に潜り込んだ。

 

──朝まで現実逃避したい。

 

そして今、私は青筋を浮かべながら修復作業を開始している。

 

夜蛾と五条と夏油が、本気で申し訳なさそうな顔で頭を下げてきたので──

とりあえず、五条と夏油の股間を順番に蹴り上げてから、作業に入った。

 

もちろん、五条には事前に術式を解かせた上でだ。

崩れ落ち、悶絶する二人を、私は絶対零度の目で見下ろす。

 

呪力は込めなかった代わりに、全力でいかせてもらった。

女の細い足でも容赦はしない。バスケ部でガッツリ鍛えてる黄金の右足だ。

言ってわからないなら、動物と同じで躾が必要だ。

同じことを繰り返すアホには、肉体言語で語るしかない。

 

これに懲りたら2度すんなよ?クズどもが。

足に当たった時の「ぐにっ」とした気持ち悪い感触を思い出して身震いする。

伊地知潔乃時代から処女拗らせてるっつーのに、

うん10年ぶりに触ったのがコイツらの股間って、どんな罰ゲームだよ。

 

一瞬遠い目になった。

 

なお、股間を押さえ、うずくまる二人の足元には、普段の三割増しの金額を記載した領収証を、

無言で放り投げておいた。

ついでに夜蛾へ、

 

「仕事の調整は、私じゃなくて高専側でやってくださいね?」

 

と笑顔で圧をかけたところ、渋い顔をしたまま即OKが出た。

前回もそうすりゃよかった。

そういえば、 伊地知だった時も、

平均睡眠時間1〜2時間、ラスト5日は完徹、そして20連勤したとき──

半ギレで夜蛾に仕事の話を持っていったら、

普段なら渋い顔される無理筋な内容だったのに、あっさり通ったんだよね。

 

そのあと仕事が一段落したら、珍しく有給を3日連続で許可してくれて、

というか、強制的に休めと言われた。

 

……そんなに疲れ切った顔してたのかね、私。

 

確かあの時は、休んだら仕事がより詰まると断って仕事しようとしたら、

五条に頭を「トン!」っとされて──原作で虎杖が昏倒させられたあれね。強制的に眠らされた。

んで目が覚めたら医務室で、家入の監視つきで丸一日だらだらして、

翌日、自室に戻って「せっかくの休みだから」と夜更かししてゲームやろうとしたら──

 

五条がまたやってきて、再度「トン!」。

朝になって気がついたら私はベッドの中。

五条はいつものように、テレビをラジオがわりつけながら、私の買ったジャンプを読んでダラダラしてた。

勝手に私の牛乳を紙パックからそのまま直飲み、お取り寄せして隠してた、福砂屋のカステラを一本喰いしてたっけ。

一気に目が覚めて文句言ったよね。

その後も、規則正しくダラダラさせられたあの日を思い出して、ため息が出る。

 

……まぁ昔の思い出は、いいや。

私はこの崩壊し切った高専施設という現実と向き合わないといけない。

 

「なーにが、『……ま、校舎を破壊しない程度に付き合うよ』ですか。どの口が?」

「なーにが、『俺たち最強だから』ですか。一度これ自力で直してから言えよ」

 

たらたら術式で修復しながら、わざと“聞こえるように”デカい声で独り言を言う。

 

……うん。

私の様子を伺うように、巨体二人がそろって縮こまってるの、ちょっと可愛いと思った私も終わってる。

いや、見た目は全然可愛くないよ? ゴツいし、二人ともゴリラゴリラゴリラだし。

 

ただ、この頃の五条も夏油も図体はでかいけど、私からするとどうしても“メンタルが子供”なんだよな。

 

五条は御三家の育ちで、術師としての教育は完璧だけど──

“一般的な義務教育“や“普通の家庭で育つ経験”、いわゆる一般的な情操教育をほぼ受けていない。

そのせいで情緒が十分に育っていない部分がある。

……前回の──私が最後に出会った頃の五条は、歳をとった分だけ、今よりはだいぶマシだった記憶がある。

 

夏油は一般家庭育ちだから情緒はあるし、根は優しい。

でも術師としての教育を受け始めて、まだ二年目。

術師としてのメンタルは育ちきっていないし、

未熟なメンタルを自分で支えきれるほど、精神の強さもまだ追いついていない。

 

結局、二人とも──

“特級や1級”なんて肩書をつけられているだけで、中身はまだ子供の精神(メンタル)なんだよ。

 

高専って、任務漬けばかりの環境に見えて。

それでも文化祭とか球技大会とか、妙に“学生らしいイベント”が存在するのは、

たぶん誰かがその事実をちゃんと分かっていて、

 

「彼らが今はまだ“子供のままでいられるように”」

 

そう思って動ける、良心のある大人がまだ何人か残ってるってことなんだろう。

 

まぁ、そんな大人がいても、焼け石に水みたいに大量の任務が降ってくるんだけどね。

 

子供相手に怒り続けるのも酷か。

施設の修復が終わったら、ご飯奢ってもらって手打ちにするか。

 

そんなことを考えつつ、私は嫌味を言い続け、二人に圧をかけ続けた。

 

──そして修復完了後。

 

五条からは高級焼肉、夏油からは“回らない”お寿司を奢ってもらい、私はようやく溜飲を下げた。

うん、これくらいの贖罪は必要だよね。

 


 

 

家入の誕生日は、高専メンバーで盛大に祝った。

五条と夏油の仕切りに、私たち一年トリオも巻き込まれた形だけど、家入には世話になっているので全力で協力した。

こういうのに全力投球な灰原はもちろん、私も七海も異論はまったくない。

 

私は酒のアテ……もとい、みんなで摘めるオードブル担当。

七海は甘くないパンケーキを焼き、灰原は主食担当。

豪快なステーキ丼を作っていて灰原らしい。いや、お前が食べたいだけだろ、と全員が思った。

まぁ、家入もステーキは酒の当て……もとい、いいご飯のおかずになると喜んでいたので問題ない。

 

家入は「本日の主役」の襷をつけさせられ、五条と夏油に両脇を挟まれて、

むさ苦しそうにしつつも、嬉しそうだった。

なんだかんだ、家入も付き合いがいい。

 

12月は五条の誕生日、そして2月は夏油の誕生日なのだが──

見事に消し飛んだ。なぜかって?

 

そりゃあ、年末の繁忙期が鬼のように忙しくて、そのまま2月末まで続いたからだ。

 

2005年は災害から事件・事故まで大量発生した年だった。

その反動で、2006年は術師の稼働が史上最悪レベルに跳ね上がった。

 

特に西日本で災害が多発したため、特級の五条と、1級の夏油、そろそろ特級への話が出てる──は西日本方面へ“飛びっぱなし”。

本来西日本方面は京都高専所属がメインの担当のはずなんだけどね……

主役がいないので、もはや誕生日会というよりは、

「とりあえず高専にいるメンバーでただの楽しい食事会」

ただし途中で任務が入って抜けたり戻ってきたりする地獄の形式。

そんな感じで終わった。

 

そして、誕生日を出張先のビジネスホテルで一人で迎えた五条からは、

深夜に電話がかかってきて大変だった。

 

「潔乃の作るご飯と、ケーキを食いたい」

作るとは一言も言ってない。勝手に決めるな。

 

「潔乃と一緒に寝たい」

言い方!健全に同衾してるだけ!!

ていうか、勝手にベッドに入ってくるな。

そういうのやめろって言ったでしょ。

 

「潔乃とデートしたい」

デートする約束なんてしてないんだよ。

まぁ、上手い飯奢ってくれるなら付き合うけど。

 

……ツッコミどころ満載だった。

 

夏油も誕生日に仕事だと任務に出る前に愚痴っていた。

ただ、当日に高専にいることができたので、灰原から誕生日プレゼントを渡され、

嬉しそうにそれを受け取り任務に向かっていった。

その日の0時までには戻って来れなかったけど、料理は残しておいた。

ので同じく夜中に戻ってきた五条と一緒に食べたらしい。

アオハルじゃん。

 

夏油に関しては誕生日パーティーができなかったことより、別件が問題だった。

忙しい=五条と、そして私と一緒になるタイミングが極端に少ない。

その結果、呪霊玉の取り込みを一人でやることが増え、あのクソまずい味と延々付き合う羽目になり──

まぁ、鬱々とした様子っぽかった。

 

普段は比較的穏やかで理性的な夏油が、最近は呪霊玉の“味問題”だけは負の感情を隠さない。

そりゃそうだ。

あんなもん、正気で毎日口に含む味じゃない。

呪霊玉対策してない呪霊を取り込む頻度が増えると、その分だけ食欲が落ちていくらしい。

そうなってくると好物の蕎麦以外食べる気が起きないらしく、

無言で延々と蕎麦を啜っている夏油を見て、なんか……申し訳なくなった。

 

中途半端に味変だけできるようになってしまったせいで、

余計に“本来のマズさ”が際立つんだよね。

 

……ほんと、ごめん。

 

繁忙期がようやく落ち着いたタイミングで、

私は五条をとっ捕まえて自室に引きずり込み、

 

「お、積極的じゃん。俺と付き合う?ヤる?天国見せてやるけど?」

「付き合いません。ヤりません。セクハラやめてください」

「好きならいいんだろ?いい加減付き合えって」

「はいはい、私も好きだけどちょっと違うかなー……んで、協力してもらいたいことが」

「マジなんだけど……チッ、なんだよ」

 

という、毎度のくだらない会話を交えつつ、呪霊玉改造の最終調整を行った。

 

数日かけて微調整した結果──

オブラートに五条の反転術式の呪力を“薄く”混ぜ込むことで、

後から呪霊玉を包み、味覚だけを完全カットすることに成功した。

 

「このオブラートで包んでください。

私と五条さんがいなくても、クソまずはカットできるようにしました。

ただ、オブラートの味しかしないので味気ないのは本当にごめんなさい」

 

と夏油に言ったら、両手を握られてブンブン振られながら喜ばれた。

 

夏油は五条と違って、女性との距離感はちゃんと心得ている。

そんな彼がこうやって距離なしで喜ぶんだから、本当に嬉しいんだろうなぁ。

思わずこっちまでニッコニコになる。

 

……で、その和やかな空気を秒でぶっ壊したのが、この嫉妬深い男。

 

「おい傑テメェ!! 気安く触れてんじゃねーよ!!」

 

はい、来ました。

お約束その1。

 

「悟ぅ。嫉妬深い男は嫌われるよ?

まぁ、私にはチャンスができるからいいけどね」

 

照れ隠しで五条を煽る夏油。

お約束その2。

 

あーはいはい、このまま放っとくと校舎破壊しだすやつね。

 

なので私は無言で、二人の間の壁に──

壁ドンならぬ、“黄金の右足”で全力壁蹴りをぶちかました。

 

ゴンッ!!!!

 

綺麗に穴が空いた私の部屋の壁を顎で指し、ふたりを見て、ニコリと笑う。

……その瞬間、二人ともビクッと肩を震わせ、スッと冷静になったようだ。

ちょっと顔色悪くない?思い出したか、あの痛み。

 

やっぱり肉体言語って大事だね!

 

 


 

 

4月になって五条と夏油は3年に。私は2年に進級した。

そして元兄の伊地知潔高も高専に入学してきた。

ようこそ呪術会(ブラック社会)へ。待ってたよ潔高 (兄さん)

 

原作よりちょと垢抜けて、身長も少し高くなってるけど、その精神や有能さは全く変わらない。

むしろ前世の記憶がある分、大人の思考になっていてかなりキレもの。

でもそれを人の良さそうな気弱そうな容姿で隠し切ってるあたり、さすが潔高(兄さん)だわ。

 

原作で高専を陰から、裏から支え切った男!!!

私は喜色満面で伊地知を迎え、全力で大新入生歓迎会を開催した。

あまりの歓迎っぷりに灰原が驚いていたけど、

私と七海の幼なじみで、五条たちとも顔見知りだと説明したら──

 

「ずるい! 僕以外みんな顔見知りじゃないか!」

 

と、珍しく拗ねた。

正直、めちゃくちゃ可愛かった。ごめんよ灰原。

 

……ほら七海、

“適当に理由つけて灰原と、もっと早い時点で接点作っておけばよかったのに”

って視線を向けたら、スッと目を逸らされた。

 

おい、逃げるな。

 

ちなみに、伊地知は“元兄”なので、私との距離感は近い。

ぶっちゃけ──七海より近いかもしれない。

 

七海は前世の記憶があるから、「先輩としての距離感」がどうしても残っていて、

今は、もうちゃんと兄だと思ってるんだけど、たまに前世の距離感が顔を出す。

七海も、それをわざと出して、私に説教してくるときすらあるしね。

 

でも、伊地知は違う。

あれはもう、“兄”だわ。兄でしかない。今世では赤の他人なんだけど。

 

向こうもそう思っているんだと思う。

明らかに他の女性と接するときとは距離感が違う。

あの伊地知ですら、家族や妹にしか見せない“気安い部分”があるんだよ。

ほんと、家族にしか分かんない微妙な変化だけど、

それを私にだけ見せてくる。

 

なので、私が唯一、名前を呼び捨てにする相手でもある。

 

余談だが、七海はお互い基本的に「建人さん」「潔乃さん」だ。

ケンカした時など呼び捨てにすることもあるが、普段はお互いなんとなく落ち着かないのでこの形になった。

 

まぁ、そういう理由があるので、夏油や家入、灰原はその距離感に驚いていた。

そして、ちらちらと五条の様子を伺う視線を投げてくる。

 

……が、五条はまっっったく気にしていない。

 

むしろご機嫌で伊地知に絡み、

原作で見せていたような“ウザ絡み”をやっている。

 

夏油が代表して尋ねた。

 

「悟、私や灰原には嫉妬するのに……なんで伊地知にはしないの?」

 

五条は即答した。

 

「だって伊地知だし」

 

その一言で、みんなが「……まぁ、そうか」と納得してしまうあたり、

伊地知の人徳よな……。

 

あと、多分だけど、五条の魂の中に前世の記憶の残滓があるんだろうなぁ。

 

前世では私は“五条に、双子の兄がいる”と話して、写真を見せたこともある。

私と伊地知は、男女の違いはあれど「コンパチ」と言われるほど風貌が似ていた。

私がトレースのために寄せていった部分もあるけど、元の顔の作りがそっくりだったのだ。

 

私を男性にしたら頬のこけていない伊地知になるし、

伊地知を女性にしたら頬のこけた私になるだろう。

 

“伊地知潔乃の風貌にそっくりな伊地知潔高”。

五条は無意識のうちに「潔乃の兄」という存在を覚えていて、

警戒心がないんだと思う。

ちなみに今は七海の「コンパチ」だってことはここに捕捉しておく。

分け目が七海と逆で目の色の緑が薄い方が私ね。

 

そして──五条と伊地知が揃えば、

五条の無茶振りに振り回される伊地知ってのは、

もはや運命(Destiny)、いや悲劇的な運命(Fate)かな?。

 

案の定、今日も五条の無茶振りを受けている。

あー今日は、一発芸を所望されるのね。

それで慌てている伊地知を見て、私は苦笑した。

……あーあ、原作でもありそうな展開だ。

五条は滑り芸も結構好きだから。

一生懸命にシュールな滑り笑いを提供する伊地知とか。

もうツボ以外の何物でもないよね。

 

ちなみに前世で伊地知枠は私だったので、ああいう扱いを受けるのは私の役割だった。

助けを求める伊地知の視線を、七海と一緒にスルーしつつ、心の中で手を合わせる。

 

許せ……その役割は私は卒業だ。

あとは伊地知(兄さん)に任せた。

 

……って思ってたけど、結局私もウザ絡みされるんだよね。

別ベクトルで(好き好き言われて) しつこく付きまとわれてるし。解せぬ。

 

 


 

 

伊地知が入学してきたのは、本当に喜ばしい。

補助監督の進路に進むことは確定しているけれど、一応しばらくは“術師として”頑張るらしい。

 

「術師の動きがわからないと、補助監督としても良い仕事はできませんから。

 現場を知らないと、判断を誤ります」

 

──と、伊地知は真顔で言った。

 

……だから、いちいち“仕事できるアピール”を自然に出さないでほしい。

前世の私が普通に劣化版だったと痛感してしまうから。

ほんとやめて、元兄。

 

ただ、伊地知の入学は嬉しいだけじゃない。

灰原死亡、夏油離反──それが迫っているという意味でもある。

 

私と七海と伊地知、そしてオンライン参加の伏黒で行っている“記憶持ち定例会”は、

ここ最近は特に頻度を上げていた。

お互いのやったことの報告と、直近に迫ってきた、

灰原が死亡する産土神(うぶすながみ) 信仰の任務の対応についてがメインだ。

 

伊地知はその人当たりの良さを武器に、色々と調査をしている。

一般人出身の“何も知らない新入生の顔”をしながら質問すると、

みんな驚くほどベラベラ喋ってくれるらしい。

……理解できないと思われてるからね。

相変わらず立ち回りが上手いわ兄さん(潔高)は。

 

そして私は灰原と七海を守るための防御をUPする結界の宝石を作成している。

コチラは、強力すぎても目をつけられるので、強すぎず弱すぎずいい塩梅の出力を調整中になる。

あと私個人がやったことはフィジカル強化。

これに関しては忙しいはずの五条が、結構付き合ってくれる。

だが、鍛錬モードに入ると五条は容赦ない。

女だろうと関係ない、徹底的に扱き抜かれる

普段の軽薄なセクハラをして好き好き言ってくる姿から一変し、粗暴で冷徹な術師の顔を覗かせる。

 

女だろうと関係なく、拳で顔を殴り倒される。

呪力込みで腹部を殴られてゲロを吐いたこともある。

関節を決められ、骨折も何回したかわからない。

 

その綺麗な白髪を引っこ抜いて、バーコードすだれ頭にしてやろうかと思うくらいムカつく。

 

……ただ、結果は出ているから何も言えないのが悔しい。

 

七海潔乃の身体は、本当に才能の塊だ。

鍛えれば鍛えるほど強くなる。

そのおかげで、最近はたまに五条の顔面に“ガチの殴り”を入れられるようにもなった。

 

進歩でしょ。

 

……でも、そのたびに五条がさ。

 

原作を読んだ人なら分かると思うんだけど──

渋谷や新宿での、あの“ガンギマリ”した目で、心底楽しそうに笑うんだよ。

 

やめてくれ。

地味に……いや、マジで怖いから。この戦闘狂 (バトルジャンキー)め!

 

術式に関しては結構拡張を広げたし、

あとは強固なイメージ(クレージーダイヤモンド)があるので、それに近づけていくだけだ。

特に人体修復に関しては原作のあのイメージに近づけていきたい。呪力消費がネックだけど。

ま、いろいろと手段は考えている。

 

 

七海は灰原とともに術式理解とフィジカルを鍛えまくっている。

この時点で七海は形式上は2級術師だが、1級並みの力をつけている。

十劃呪法ですでに拡張術式・瓦落瓦落も実はモノにしてるし、「時間」による縛りも既に入れている。

今は学生なので学生としての授業時間以外は、呪力がUPするようにしてあるらしい。

 

そして肝心の灰原、彼自身も2級術師だ。

そして術式は『水操呪法』。

まぁ、その名の通り水を操る術式。この術式強い。

人間……対呪詛師相手は無敵と言っていい。

相手の体内の水を操るだけで捕縛できる。

水以外の体液や、ジュースやコーラなどの飲料も“水扱い”で操れた。

太陽みたいに明るい性格なのに、実は最強の雨男。

雨の日はあちこちに水が溢れてるから、全てが灰原のフィールドになる。

 

 

晴れの日は体内の水分や持ち歩いている飲み物を、

それを高速で水流カッターのように使ったり、防御の膜として展開したり、

水を飛ばして牽制したりと、遠近両方うまく立ち回れていたようだ。

 

これは前世でも知っていた。

 

今世で七海と一緒に術式の分析を進めると、

“水の定義”が意外なほど曖昧なことが分かった。

 

ガソリン、液体金属、つまり“水っぽいもの”も操れた。

これに関しては、水という言葉は、広義には水以外の液状のもの全般を指すこともあるので、それでかな?

さらに、水の状態変化──水蒸気や氷でも操作可能だった。

これに気づいたのは雑談から。

 

「H₂Oの化学式が変わらないから行けるんじゃない?」

 

なんて私と七海が話したら、早速試す灰原。

そして本当にできて、灰原が子供みたいに喜んだ。

 

……この術式、本当に強い(2回目)。

 

七海の術式よりよっぽど強いし汎用性が高い。

そりゃ、五条派閥に入ったら面倒だから消されるわ……と納得感しかなかった。

ちなみに私もそうだが、七海も灰原も、この時点で“まだ正確な実力を隠している”。

五条や夏油の前でも、術式に関しては全力は出していない。

 

この件については、

「呪術界ってさ、思ったよりヤバくね?」

と、七海と灰原の二人だけの時に話した。

 

「先輩や夜蛾先生は信頼できますが、上層部は……」

と七海が渋い顔で言葉を濁すと、灰原が明るい笑顔で

 

「うん、信用できないね」

 

とハッキリ言うものだから、思わず笑ってしまった。

 

一般家庭の私たちは、控えめに、目立たないようにしておくのが一番。

でまとまり、特に今回判明した灰原の術式周りは、特にヤバいってことで3人でお口チャックしている。

……黙ってるけど、五条や夏油、夜蛾あたりは察してるっぽい。

「術師らしくていいんじゃね?ただし、なんかあったら言えよ?」なんて五条に言われ、そばにいた夏油も頷いてたし。

夜蛾も「学生はいつでも大人を頼れ」と言ってくれてる。ほんと呪術師のくせに人格者だよ。

 

まーとにかく、灰原の強化関連はそんなとこ。

 

伏黒に関しては、今はまだヨーロッパでヒモ生活……もとい天内と黒井の護衛生活を続けている。

プライベートは競馬以外にもカジノで楽しんでいた様子。

だけどそのギャンブル生活も終了。そろそろ日本に戻ってきてもらう予定だ。

8月に入る時点で、伏黒には日本に帰国してきてもらう手筈になっている。

最強のジョーカーカードがこちらの味方であるのは、本当に心強い。

 

……とはいえ、だ。

 

縛りはがっつり結んでいるし、

天逆鉾などの致命的な呪具も取り上げ済み。

対価もちゃんと払っている。

 

それでも伏黒甚爾が、ここまで“協力的”なのは、正直意外だった。

 

クズ代表で、自分も他人も尊ばないこいつが、

なんでここまで全面協力してくれるんだ?

 

本当の事情を知らない五条や夏油はともかく、記憶持ちの私たち全員がそう思っていた。

協力体制のきっかけになった私でさえ、イマイチ理解できなかった。

 

……なら聞いてしまえ。

こいつは捻くれてるが、ストレートな質問には案外素直に返すタイプだ。

 

「で、なんでここまで協力してくれるの?」

 

定例会でそう尋ねると、七海と伊地知は息を呑んだが、

伏黒甚爾はニヤリと笑い、心底楽しそうに言い放った。

 

「あの、六眼と無下限を抱き合わせた五条悟が──

() の力を認めた”。

五条悟()と契約しよう”って言いやがったんだぞ。

現呪術界最強の男が、呪力のないただの猿を”価値ある”と認めた。

呪術界の上層部も禪院家も、面子丸潰れだ。

こんな面白ぇこと、他にあるか?

それにな……

あの五条悟が、一人の女相手に右往左往してるのを見れるのも最高だ。

俺は酒で酔えねぇから嫌いだが──

お前ら見てると、酔えねぇのがもったいねぇって初めて思うぜ?

酒のアテになるってこういうこと言うんだろ?

俺の今の人生はボーナスゲームみたいなもんだ。せいぜい楽しませてもらうぜ」

 

伏黒の言葉は、皮肉と悪意と楽しさでできている。

ほんとしょうもない人間だ。

でもだからこそ、“敵ではない”という確かな意思もはっきり見える。

私は小さく笑いながら、こう返した。

 

「私は迷惑してるんで、適当に諦めさせる方法知りません?」

「ありゃ〜無理だな」

「チッ」

 

短いやり取りだったが、それで十分。

直後、

「いきなりすぎます!」と伊地知が私の頭を軽く叩き、

「相変わらず暴走しますね!」と七海が頬を摘んでくる。

 

痛いって、痛いって!慌てる私を見て画面の伏黒がニヒルに笑った。

ちくしょう、イケメンめ!

 

このメンバーでなら、

灰原を死なせる未来も、夏油が離反する未来も、

きっと変えられる。

油断しているわけじゃないけど、そんな気分になった。

 

 


 

 

あれからすぐに例年より早い繁忙期へ突入し、夏油が特級に上がった。

五条も夏油も、もう“単独任務”が当たり前の世界線だ。

五条は術式の研究が楽しくてしょうがない、夏油は任務に追われつつも前回よりメンタルは安定している。

たまに非術師に対して嫌なこともあるようだが、一般的な範囲なので特に問題はなさそうだった・

私たち一年の三人単独任務可能な階級のため、自然とバラバラの任務が多くなった。

 

そして──

伊地知潔乃だった時、五条と仲良くなるきっかけになった“あの遊園地の任務”が回ってきた。

 

よりによって、伊地知潔高の3級討伐任務に、同行者として私が行くという形で。

 

あー……はいはい。

アレやっぱり、五条悟への嫌がらせだったんだな。

目の前で後輩を殺したり、大怪我をさせようとしてたのかな。

羂索あたりの仕込みくさいな……なんて思いつつ任務へ向かった。

 

案の定、1級呪霊が出た。

 

慌てふためく伊地知を尻目に、私はさっくり祓わせてもらった。

一応、私は2年で唯一の“準1級”なので、ギリギリのラインで対応できる、という体になってる。

 

そのあと、

ズタボロに怪我したフリをしつつ、

メリーゴーランドを呪霊が破壊したことにして、

宝石で徹底的に骨組みをぶっ壊しておいた。

これで残穢から、私がやったとわからなくなる完璧な仕事だ。

 

前回の五条と同じように、私は同行の補助監督に向かって、

 

「3級任務で1級が出るってどういうことですか!!」

 

と、しっかりと圧をかけた。

そのままサクッと現場離脱。

 

補助監督が呼んだタクシーに乗り込んで一息ついたところで、

私は平然とこう言った。

 

「高専に払わせて修理させればいいですよ。依頼来ても私は絶対修理しないからね、アレ」

 

すると隣の伊地知が、天井を仰ぎながら深くため息をつき──ぼそり。

 

「……潔乃、メンタルが強くなりすぎです。五条さんにそっくり……」

 

おい。

それは私に失礼でしょ。

五条と一緒にしないでほしい!

 

……でもまあ、

10年以上この呪術界にいるし、染まりすぎてる自覚はある。

 

「これくらいじゃないとやってけないよ」

 

そう伝えると、伊地知はさらに長い溜息をつき、

胃のあたりを押さえながら呟いた。

 

「……胃が痛い……」

 

神経質だなぁ、伊地知(兄さん)は。

 

私は窓の外を眺めながら小さく笑った。

 

 


 

 

8月になった。

五条の術式がオートマになった。

前回はその話は家入から聞いたが、今回は五条がわざわざ下級生がいた食堂で実践を見せてくれた。

スゴいスゴイと手を叩く灰原、目を見開いて驚く伊地知。

前回のことで知ってるので、しれっとした顔で紅茶を飲む七海兄妹。

それに五条が反応が薄いとキレて面倒だった。

いや、リアクション取ればいいのにって?

って、だって、繁忙期で任務が続きすぎ&灰原夏油対策で疲れてんだよこっちは。

伊地知潔乃の時にこの時期の繁忙期に文句を言ったけど、アレはまだマシだった。

あの時の自分をぶん殴りたい。

 

伏黒が極秘帰国し、先日、最終打ち合わせまで調整し終えた。

今はそのまま孔に依頼し、潜伏してもらっている。

 

そんな中で──

“流感を振り撒く呪霊”が出現し、これは私の単独任務となった。

 

呪いに当たってインフルになる前にサクッと祓って、高専へ戻る。

 

七海と灰原には、すでに“防御力強化の宝石お守り”を渡してある。

あとは、当日の任務に私や伊地知が直接絡めるかどうかだが……

こればかりは状況次第で、まったく読めない。

 

七海曰く、産土神信仰の呪霊に関しては

「あの時と同じなら、今の私たちの実力なら余裕で払える」

とのこと。

 

……まあ、“あの時と同じ”とは限らない。

油断は禁物だ。

 

ようやく繁忙期が多少落ち着いてきたこともあり、

私は宝石の作成を進める傍ら、

五条と時間が合うタイミングで夏油用の“味カット用オブラート”の在庫を増やしつつ、

静かに──その日を待った。

 

 


 

 

とうとう来た。産土神の任務。

明日、七海、灰原、そして私で任務が決まった。

私も任務に混ざれるのはラッキーだ。回復役がいるといないでは生存率が変わる。

そして明日任務ということは──

 

「あ‼︎夏油さん」

「今日は高専に戻ってたんですね」

「灰原、潔乃ちゃん……」

「「お疲れ様です‼︎」

 

夏油はここ数日出張で高専外にいたため、流石にちょっとだけ疲れた様子だ。

でも、原作ほど荒み切った様子はない。ただちょっと疲れてるだけに見えるのでホッとした。

 

「何か飲むか?」

「えぇ⁉︎悪いですよ。コーラで!」

「私は冷たいお茶でお願いします」

 

遠慮なく飲み物をたかる私たち2人に夏油が優しく笑う。

 

「明日の任務、結構遠出なんですよ」

「そうか。お土産頼むよ」

「了解です‼︎甘いのとしょっぱいのどっちがいいですか?」

「私と硝子にはしょっぱいので。甘いのは潔乃ちゃんが買って悟に渡した方が喜ぶよ」

「え、私が買うんですか?」

「そうだよ。任務に出ずっぱりで機嫌が悪い悟の機嫌をとってくれると助かるかな」

 

原作と違う話の流れだ。

夏油は疲れてはいるけど穏やかで、病んだ目つきはしていない。

その様子に再度ホッとした。

 

「……灰原、潔乃ちゃん。呪術師やっていけそうか?辛くないか?」

 

おっと。この質問は、あるんだ。

 

「そー…ですね。自分はあまり物事を深く考えない性質(タチ)なので、

自分ができることを精一杯頑張るのは、気持ちがいいです」

 

灰原が言い切るのをみて優しく笑う夏油。そのあと私にチラリと視線を向けてくる。

 

「潔乃ちゃんは?特に君にしかできない任務が多いから」

 

確かに私のメインは修復任務。

呪霊に襲われる心配は少ないが任務数は多めだったりする。

 

「んー私は一応、外部進学も考えて高専に入学してきてます。

正直今は迷ってますね。一般的なお勉強にも、まだ未練も興味もあります」

 

「え、マジ?」

「そうか。そうだな……悟が寂しがるから残って欲しいけどね」

 

そんなことを話してるとゴツゴツとブーツの音を高らかに鳴らしてあの人が現れた。

金髪長身。スタイル抜群。

おそらく東堂の性癖を根本的に決定させた爆美女──九十九由基。

うわーほんとにスタイルいいな。

と考えながら九十九を見上げ、首をかしげるふりをしておく。

原作で知って入るけど初対面だしね。

 

「君が夏油くん?そして、そっちが潔乃ちゃんかな?」

 

あれ?なんかセリフがこっちも違うぞ?

え、私?私も聞かれるのこれ???

 

「どんな女と男が好み(タイプ)かな?」

 

 


 

 

「どちら様ですか?」

 

穏やかながらも、警戒心を隠さない夏油の声。

私も“不審者を見る目”で九十九へ視線を向けた。

知らない人間に名前を把握されてるのは普通に怖い。

……まあ、原作で知ってるけどね。

 

そんな空気を、一瞬でぶち壊す男が隣にいた。

 

「自分はたくさん食べる子が好きです‼︎」

 

「……灰原」

 

原作通り、ここで空気を読まない。

夏油が本気で呆れた声を出す。

 

「…私の隣に座って置いてか?」

「?…ハイ‼︎」

 

そして皮肉もあっさり無視する灰原。

レスバ強すぎというか、叩いても響かないのでこちらが負けるのよ。

 

私が思わずくすくす笑うと、九十九も笑い出した。

 

「あっはっはっ!君、今のは皮肉だよ」

 

灰原は気にするでもなく軽く手を振った。

 

「夏油さん、潔乃、僕は明日の準備あるので先に行くね。失礼しまーす」

 

空気はちゃんと読むのほんと不思議。

 

私はというと──

本当は残るつもりだったけど、九十九から質問を振られたおかげで自然に残れた。

正直助かる。

“まだ警戒してますよ”という顔のまま、ペットボトルのお茶を飲んで夏油にあとは任せる。

 

灰原が座っていた位置に、九十九がどかっと座り込んだ。

 

「後輩? 素直でかわいいじゃないか」

 

「術師としては、もっと人を疑うべきかと」

 

夏油が淡々と言うと、九十九は肩をすくめて笑った。

 

「で、夏油君と、潔乃ちゃんは答えてくれないのかな?」

「まずはアナタが答えてくださいよ。どちら様?」

 

夏油の言葉に頷き、敢えてジトーッとした視線を向ける。

それに九十九は綺麗な(おとがい)を煽るようにあげ、

 

「特級術師・九十九由基って言えばわかるかな?」

 

「‼︎ アナタがあの⁉︎」

 

名前に驚いた表情を浮かべ、私と夏油はそろって九十九の顔を見る。

 

「おっ、いいねその反応。どのどの?」

 

九十九が嬉しそうにしているが──

 

「特級のくせに任務を全く受けず、海外をプラプラしてるろくでなしの……」

「何してるかわからない、肩書だけの役員みたいな」

「潔乃ちゃん、役員はいるだけで意味があるから失礼だよ」

「そうですね。どこかの団体の名誉会長とかにしておきましょう」

 

辛辣な反応を、これでもかと返してやる。

お前が仕事しねーから五条も夏油も忙しいんだよ。

 

「私、高専って嫌〜い」

 

だらりと拗ねたような表情を見せる九十九。

……が、すぐにケロッと表情を変えて話し出す。

 

「冗談。でも高専と方針が合わないのは本当。

ここの人たちがやってるのは対処療法。私は原因療法がしたいの」

 

「原因療法?」

「呪霊を狩るんじゃなくて、呪霊の生まれない世界を作ろうってこと」

「!」

 

原作同様、夏油が強く食いついた。

私は特に大きな反応は見せず、チラッと視線を向けるだけにとどめる。

 

「少し授業をしようか。まず──呪霊とは何かな?」

「人間から漏出した呪力が澱のように積み重なり形を成したモノです」

その通り(エクセレント)。では呪霊の生まれない世界の作り方は二つ。

① 全人類から呪力を無くす

② 全人類に呪力のコントロールを可能にさせる

①は結構イイ線いくと思ったんだ。モデルケースもいたしね」

 

禪院甚爾──伏黒の名が出た瞬間、夏油の反応が明らかに揺らぐ。

一瞬こちらを見るな、夏油。九十九の前だぞ。伏黒生存はまだ秘密なんだから。

 

説明が続き、そして一番厄介な話題が出る。

 

「知ってる?術師から呪霊は生まれないんだよ」

「!?」

「もちろん術師本人が死後呪いに転ずるのは除いてね。

術師は呪力の漏出が非術師に比べて極端に少ない。

術式行使による呪力の消費量や容量の差もあるけど、一番は流れだね。

術師の呪力は本人の中をよく廻る。

大雑把に言うと──

全人類が術師になれば呪いは生まれない」

 

さすがの夏油も動揺した表情を漏らす。

今しかない。私は口を挟んだ。

原作を読んでいた時から思っていたことを言わせてもらう。

 

「仮にですけど、非術師を皆殺しにしても無理ですね、それ」

「え?」

「そうかい?」

 

夏油は驚き、九十九は面白そうに目を細める。

 

「一番簡単(イージー)な方法だと思うけど?

非術師を間引き続け、生存戦略として術師に適応してもらう。

進化を促すの。鳥が翼を得たみたいに、恐怖と危機感でね。

……でも私はそこまでイカれてないよ」

 

いや、その思考が出た時点で十分イカれてると思うけど?

 

「いやー、イカれてるとか以前に“ダメ”ですね。問題点が多すぎます」

 

「問題点?」

 

私は人差し指を立てる。

 

「まず1点。非術師を全員間引いたとしても、

術師からは必ず非術師が生まれてきます。

人が人である限り、術師と非術師は必ず両方存在します」

 

禪院家を含む術師のどの家系からも、非術師が出ていること、

そして術師が存在しない家系からも、術師が生まれていること、

その時点で、もうこれは人間の遺伝子の根っこの部分の問題だ。

 

九十九は楽しげに次の提案をする。

 

「それを間引き続ければ?」

 

私は2本目の指を立てた。

 

「2点目。

人が減りすぎて繁殖が難しくなります。

近親交配を避けるため最低50人必要ですが、

遺伝的多様性を保つには500人以上が必須です。

術師・補助監督・窓・呪詛師・呪力保持者……

全員が全員子供を作れるわけじゃないですからね。

結果、ちょっとしたことで滅びます。

そうですね、新型インフルエンザとかかな?

致命的な感染症が発生したら、あっという間に蔓延して全滅へまっしぐらですよ。

そして3点目」

 

3本目の指を立てる。

 

「非術師を間引くと、文明社会を捨てることになります。

呪霊はいないけど、原始生活ですね。

永遠にアウトドアでキャンプかな?楽しそうで何より」

 

九十九が口を開きかけたところで、私は4本目を立てた。

 

「4点目。

進化って、どれだけ時間がかかってるか知ってます?

鳥が翼を獲得するまで数千万年〜1億年以上。

人がチンパンジーから分岐したのが700万年前、

ホモ・サピエンス誕生は30万年前。

……壮大な計画ですね?」

 

沈黙。

 

そして九十九が微笑む。

 

「さっきから思ってたけど、潔乃ちゃんって私のこと嫌い?」

「はい、嫌いです」

「ちょ、潔乃ちゃん!」

「いいよ続けて」

 

夏油が慌てる一方、九十九は本当に楽しそうだった。

 

「原因療法、素晴らしいと思いますよ。結果が出せればですが。

企業でも、研究開発は安定した利益を生む他部署があるからこそ続けられます。

対処療法の何が悪いんです?

原因療法に拘って“今できる最低限”をやらない人って大嫌いなんです。

理想?素晴らしいですね。気持ちいいですね。オナニーですね。

力のあるあなたが本来やるべきことをやらないことで、

五条さんと夏油さんにどれだけ負荷がかかっているか。

一人で理想を抱えて溺死してください」

 

ニッコリ笑顔を貼り付けたまま言い切る。

最後の言葉は某アニメキャラからの引用だけど、ほんと今の気持ちにぴったりすぎてナチュラルに出てしまった。

いい煽り文句だよね。

夏油はもう顔面蒼白になってる。

ちっ意外と根性ねーな。

呪詛師落ちするより、こういう問答する(言葉で殴り合った)方 が楽だと思うんだけどなぁ。

 

「ハッキリ言ってくれるねぇ。やっぱ君、面白いよ。

修復術式も良いし、君、高専を卒業したら私のところに来ない?

あと、ちょっとは好きになってよ?アタシって魅力的ないい女でしょ?」

 

ここまで言い切っても九十九はめちゃくちゃ楽しそうだった。

あー、さっき「嫌い」と言ったけど、実は本当は嫌いじゃない。

原作読んでて好きだったんだよな、この人。

 

つい、思わず苦笑して答えた。

 

「九十九さんが高専の任務を受けてくれたら考えますし、大好きになりますよ?」

 

 


 

 

「じゃあね。本当は五条くんにも挨拶したかったけど……間が悪かったようだ」

 

高専の門の前で、バイクに跨る九十九を夏油と一緒に見送る。

 

「これからは特級同士、三人仲良くしよう」

「悟には私から言っておきます」

 

夏油が落ち着いた声で返す。

 

九十九は、今度は私に視線を向ける。

 

「潔乃ちゃん、高専出たら、ほんとに私のところにおいでよ」

「任務受けてくれたら考えますね」

「高専嫌いだから嫌〜」

「残念です〜」

 

──バチバチにやり合った。

いや、正確には私が一方的にキレてただけなんだけど。

それなのに、なぜか九十九に気に入られた。解せぬ。

 

まぁ、今回夏油の件があるから、あえて真正面から喧嘩売ったし。

さっきも言ったけど、九十九嫌いじゃない。

キャラとしてはむしろ好きだ。

 

九十九はふっと表情を変え、最後に一言。

 

「ちぇ、残念。……あ、そうだ最後に。

潔乃ちゃんの術式はレアだ。使い方には本当に気をつけた方がいい。

あと、星漿体のことは気にしなくていいよ。

あの時、もう一人の星漿体がいたか、すでに新しい星漿体が生まれたのか……

どちらにせよ、天元は安定しているよ」

 

そう言って、バイクを軽やかに走らせ去っていった。

いやー美人とバイクって似合うね。私もバイクの免許持ってるし、九十九さんと今度ツーリング行けないかな?

 

九十九が今やっているのは研究者のそれだ。

私の術式が“時間操作系”なこと、呪力宝石の本当の威力のことを探るために接触してきたのかな?

そんなことをぼんやり考えながら見送っていると──

 

「でしょうね──

当人が星漿体を逃すくらいなんだから」

 

隣で夏油が、私にしか聞こえない小さな声でつぶやいた。

 

……さて、九十九とのイベントも終わったし、

部屋に戻って明日の準備でも──と振り返った瞬間。

 

がしっ。

 

「……え?」

 

夏油の手が、がっしりと私の頭を掴んでいた。

 

「潔乃ちゃん。

いきなり特級術師に喧嘩を売るなんて、どういうことかな?」

 

ものすごく座った目で、夏油が見下ろしてくる。

 

「え、あ、いや……なんかムカついちゃってですね」

 

え? なんかキレてる? キレてるよねこれ?

夏油はさらに目を細めた。

 

「あと……“九十九さんのところに行く”って?

悟が許すと思う?

外部進学ですら、どうやって悟を説得すればいいのか分からないのに。

他の術師のところなんて行ってごらんよ?

私たちがどれだけ苦労すると思う?」

「え、それ私関係なくないです?」

「………………」

 

無言の圧。いや無言が一番怖い。

 

「いたたたたたたた!!

ちょっ、手に力入れるのやめてくださいギブギブギブ!!!!」

 

ギリギリと頭を締め付けられ、私は悲鳴を上げた。

五条より痛いし、容赦もない。

 

なにこの理不尽保護者ムーブ!!

これから数分間、夏油が許してくれるまで私は甲高い悲鳴を上げ続けた。

 

 


 

 

主人公

 

忙しく過ごしている。

五条と夏油の施設破壊の修復だけはマジで無駄なので一番嫌い。

なので黄金の右足が炸裂した。

伊地知が入学してきて嬉しい。実はお兄ちゃん大好きっ子。

でも五条のウザ絡みからは助けない。だって、伊地知ってそう言うポジだし。

灰原と夏油の救済に向けて準備をしこたまやった。

呪力宝石とオブラートは大量に作ってる。

フィジカルも忙しい五条にお願いして相当扱いてもらった。

やることやった上で、九十九と対決。主人公にしては珍しくかなりバチバチにやり合った。

でも、なぜか好感度高くなって首を傾げる。

そういや、夏油と九十九の好きなタイプ聞いておけばよかった。

 

 

 

五条悟

 

クソ忙しくて誕生日も祝ってもらえなかった人。

戻ってきて主人公にダル絡みして、ホットケーキを焼いてもらったりしてた。甘やかされてる。

九十九の件はその日のうちに夏油からメールで聞いて、夜めちゃくちゃ主人公に電話してキレまくった。

お前な!外部進学はともかく、他の術師のところはダメだからな!!!

それなら五条家でやとう。は?そもそも雇われたくねぇって?おまえ高専戻ったら覚えてろよ。

好きなタイプ?え、潔乃だけど。

 

 

 

夏油傑

 

原作よりだいぶメンタルが安定している人。

それでも「呪霊がいない世界」は魅力的だった。

一瞬クラついたが、主人公がいきなりバチバチと理詰めで噛みつき始め、

さらには「嫌い」とか言い出すからかなり焦った。

しかもそのあとは、なぜか九十九に好かれてスカウト受けてるし、気が気じゃなかった。

ほんと勘弁してほしい。

そういや、主人公の好みのタイプってどんなんなんだろう?

聞ければ悟のことからかえたのに。

 

 

 

七海建人

 

灰原救済のために体を鍛えまくり術式解釈広げまくりやってた。

灰原の術式の汎用性の高さに、頭を抱えてる。

これは命を狙われると理解、

救済した後は、灰原には呪術界をやめてほしいと思っているが、当人にその気がなさそうだと感じ取り、

五条の保護を求めるしかないと思ってる。

好きなタイプ?なんであなたに教えなければいけないんですか?

 

 

灰原雄

 

存在しない術式が生えた人。

太陽みたいなキャラなのに、雨の日最強。

クソチート。遠近両用いける。

そりゃー上層部からしたら潰される。

今回は七海がなんかすごくやる気があるので、一緒に訓練してたらどんどん強くなってる。

男の子なので、友人が頑張ってたら一緒に頑張っちゃうよね。

自分が死にかけてると気づいてない。みんな君のために必死だよ。

次回、君は生き残れることができるか。

 

 

 

伊地知潔高

 

高専入学しました。

元妹と七海から大歓迎を受けました。二人とも大好きなので嬉しい。

妹は大好き。血が繋がってなくても妹。

そして五条のウザ絡みが本格的に始まり、胃が痛い。

妹も昔より、だいぶはっちゃけてることに気がついて、胃が痛い。

ため息をつきつつも、しっかり原作の伊地知ルートを極め始めている

好きなタイプですか?好きになった方が好きなタイプかと思います。

 

 

 

伏黒甚爾

 

ヒモとギャンブル漬けの生活から、日本に戻ってきた。

競艇と競馬漬けの生活を今は送っている。

軍資金?そんなの五条と潔乃からもらってんに決まってんだろ……俺の雇い主だからな。

おい、潔乃次の重賞レースの予定空けとけよ。

本来は、自分も他人も尊ばない人生を送るつもりだったが、

作中にあるように呪術界最高峰の人間から、自分が認められたということが面白くて仕方ない。

そのため、意外なことに『どんだけお金を積まれても、絶対に裏切らない枠』になってる。

好きなタイプ?女ならなんでもいいけど?

 

 

 

九十九由基

 

特級2人と、準1級の主人公に会いにきた。

主人公の宝石の報告書を読んで、威力が低いので一旦スルーしかけたが、

術式を聞いてその報告書を読んで、これは時間操作系では?と気がついた。

呪霊がいない世界に生かせないかと思いつなぎを作りにきた。

そしたら、盛大に喧嘩売られてこの子好き!ってなった。

連絡先は交換済み。定期的にスカウトして五条にうざがられる。

って、二人のタイプ聞いてねぇ……

 

 

家入硝子

 

誕生日パーティーを盛大にしてもらった。

最高に楽しかった!

好きなタイプ?ハッ(鼻で笑う

 




難産だった。
灰原の術式は以前から決めていたが、出すかどうか迷って迷って、
それで今回作者は書くのを苦労した。
ファンパレとかで灰原の術式が実装されたら全部描き直しになるので、
頼むから出てこないでくれと言う気落ち。
でも灰原も使いたいよねー
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