とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

渋谷事変②

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラでます
・ネタまみれです
・これまでで最も、激しい捏造、妄想含みます!!(ここ最近ずっと言ってる)
・屁理屈まつり開催中。無理やりな展開だよ。深く考えたら負けだよ!
・コロコロ視点変わります。
・R-15 程度の描写があります。苦手な方は注意。


転生者、渋谷事変に参加する②

意識がぼんやりしている。

フワフワした意識のまま、誰かに抱き上げられ移動している。

たくましい男の体の感触にホッとする。

ベッドに運んでくれるのかな。そのまま泥のように眠りたい。

 

唇に当たる柔らかい感触。

応えるように、薄く口を開くとぬるりとした感触が触れ合った。

歯列をなぞられ、舌を吸われる感触に、甘い痺れが走った。

 

 

——気持ちいい。もっと、気持ちよくなりたい。

 

 

水音を立てながら、こちらからも舌を絡める。

そして、男にすがりつくように、胸を押し付けた。

私の意図を察したのか、唇を浮かせた男が首筋に吸い付きながら、柔らかく乳房を揉む。

突起の先端を指ですられ快楽に身を捩る。

 

——気持ちいい。もっと欲しい。

 

男の後頭部に甘えるように腕を回し——

 

 

「潔乃!!!!!!!」

 

 

その声に意識が覚醒した。

目をぱちりと開くと、見慣れた夏油傑(メロンパン)が私の胸に顔を埋めてた。

ぐいっと後頭部を鷲掴みにして、もう片方の肘で頭を殴り飛ばす。

 

「何してんですか。気持ち悪い」

「痛いよ白菊。君だって、ノリノリだったじゃないか」

 

呪力込めて全力で頭を殴ったので、それなりに痛かったのだろう。

乱れた頭髪を直しながらぼやく羂索。

 

「セフレと勘違いしたんですよ……あー頭痛がする。」

 

脳内で鐘をつくような鈍痛に頭を軽く振る。

この感じ、薬物や物理じゃないな。

 

「呪具で無理やり眠らせたからだろうね。ごめんね。

ところで、セフレって君、処女でしょ」

「全然悪く思ってないのが丸わかりな謝罪、辞めてくれます?

あと、心のセフレ居たってことで」

「処女拗らせて、頭おかしくなった?」

「ぶん殴りますよ」

 

あー最悪。唇を拭いながら周りを見渡す。

ここ、副都心線のホーム? 五条がさっきまで戦っていた場所だ。

 

突っ立ったままの人と、転がった死体と、改造人間の死体。

——こんな所で、今、私は何をしてる?

改造人間が一人も立っていない!つまり領域展開後だ!!

五条はどうなった……?

 

理解が追いつくより先に、背筋が冷えた。

五条が戦っていたホームに、私はいる。慌てて視線を走らせる。

 

そして、数メートル離れた位置にいる五条と目が合った。

 

「「……」」

 

背後で手首を拘束され、さらに6本の拘束が、五条をその場に縫い付けている。

つまり、獄門疆に囚われている。

 

「何とっ捕まってんですか!五条さん、あんた馬鹿ですか!!!!」

 

思わず絶叫した。

 

「あ”ぁ”ん? ふざけんなよ!!! てめぇ!」

 

ツカツカと歩み寄って、私は五条の胸ぐらをつかむと、ギラッとした六眼に睨みつけられた。

でも、五条は動けない。

何もできやしない睨みつけなんか、怖くねーんだよ。ヴァーーカ!!

 

「六眼でその危険性わかってたでしょ!! マジでバカですか!!

なに?六眼って青いビー玉か何か?」

 

至近距離で揺さぶりながらキレる。

 

「逃げようとしたらお前と、その偽物の夏油が濃厚なラブシーン始めるからだろ!!」

「ヤリチンのくせに、童貞みたいなこと言うの辞めてもらえます?」

 

五条の頭を平手で叩く。

「痛ぇな!俺はヤリチンじゃねぇ!」と切れる五条を無視して、こちらもキレ返した。

 

「私の11年の努力 is どこ? 人の苦労、無駄にすんなどアホ!!

何のために情報こそこそ流ししてたと思ってんですか!!!最悪だ!」

 

吐き捨てて、足元の獄門疆の拘束部分を蹴りつける。

 

「白菊、何らかの手段で情報流してたの知ってるけどさ。堂々と暴露しすぎだよ」

 

私たちの様子に、呆れたように笑う羂索。

うっせぇ黙ってろこのセクハラメロンパン。

もう五条が獄門疆に囚われた時点で、お前との縛りは解消だ。

いくらでも暴露してやる!

 

「眼の前で惚れた女がそんなことし始めて、冷静で居られるか!」

「学生時代の同級生がAV出てたと思えばラッキーじゃないですか、ズリネタ増えますよ」

「そういう問題じゃねーだろ!使うけど!」

「え、使うの?君ってNTR好きのドM?」

 

私と五条のくだらない言い合いを聞いて、羂索が楽しそうにカットインしてくる。

……まぁ、こんな楽しそうな話、羂索の性格上だと入りたいよね。

一気に萎えた私は掴んでいた五条の胸ぐらから、手を離す。

 

「それにしてもさ。だめじゃないか悟。戦闘中に考え事なんて」

「で、誰だよオマエ」

「夏油傑だよ。親友の顔を忘れたのかい?悲しいね」

「そもそも傑は別任務で東京離れてんだよ。あと、傑の額にそんな傷ねーわ」

「でも私はどう見ても夏油傑だろう?」

 

その言葉に心底嫌そうな顔をする五条。

眼の前の羂索を厳しい表情で睨みつけ、六眼の視線が容赦なくなぞった。

 

「……肉体も呪力も、この六眼()に映る情報は、オマエを夏油傑だと言っている。

だが、俺の魂がそれを否定してんだよ。さっさと答えろ!! オマエは誰だ!!」

 

低く怒鳴りつける声。

今回は本物の夏油が居るからわかりやすいけどさ、

原作でそれがわかったのは、ほんと夏油への愛だよね。

 

「キッショ。なんで分かるんだよ」

 

羂索は笑って、頭蓋を外し――中の脳を晒した。

生理的な嫌悪が喉の奥を押し上げてくる。

原作でもあったシーン。

 

私自身、彼のこの行動を数回見ているが、何度見ても気持ち悪くて吐き気がする。

隣の五条が、歯をギリッと噛み締めるのがわかった。

 

「そういう術式でね。脳を入れ替えれば肉体を転々とできるんだ。

もちろん肉体に刻まれた術式も使えるよ。夏油の呪霊操術とこの状況が欲しくてね。

本当は夏油を殺して肉体を手に入れようと思ったんだけどね……」

 

羂索が私に視線を向ける。

 

「白菊——君の呼び方だと、七海潔乃。

彼女が夏油傑の肉体を用意してくれたからね。助かったよ。

彼女自身もかつての盟約を守って私サイドに付いてくれたしね」

 

「おい、潔乃。オマエなんで白菊なんて呼ばれてんだよ」

 

五条に視線を向けられてため息。それ今説明しなきゃだめ?

そんな視線を五条に向けるが、隠し事を許しはしないという視線を受け、更にため息をつく。

 

「白菊はかつて私の親友の名前さ。その転生体が七海潔乃」

 

言い淀む私の代わりに、羂索が淡々と説明を始める。

 

「彼女が死ぬときに縛っててね。転生体を見つけ出すから、また会おうってね。

そして、記憶を取り戻させたら私の言うことを一つ聞いてもらうって。

私の願いは言わなくてもわかるだろう?」

 

五条の“それは本当か?”という視線に、私は小さく頷いた。

 

「親友ってところは疑問がありますが、既知なのは事実です。

かつての私は平安の世に生きていました」

 

五条が息を呑み、再度歯を噛み締める気配。

こっわ。とてもじゃないが顔を直視できない。

 

「ま、君と七海潔乃が出会う前から、私達は運命で結ばれた仲だったってわけ。ごめんね。」

 

羂索は頭蓋を戻し、位置を調整しながら、話を続ける。

運命とか言うな、気持ち悪い。

 

「心配しなくても封印はそのうち解くさ。100年、いや1000年後かな。

君強すぎるんだよ。私の目的に邪魔なの」

 

頭の糸を張り終え、余った糸をピンッと切った。

 

「大丈夫。君の想い人は、私の親友だから大事にするよ。

おやすみ五条悟。新しい世界でまた会おう」

 

その言葉に薄ら笑いを浮かべた五条。

私に視線を流してくる。

 

「おい、いつまでいい様にされてんだ。潔乃」

 

そして、ドスの利いた声で私を煽ってきた。

あぁん?その言葉にカチンと来た。

頭に血が上り、再度、五条の胸ぐらを掴んで視線を合わせた。

 

睨みつけた五条は、表情は抜け落ちているのに、その六眼だけがギラギラとしていた。

瞳孔が完全に開いていて、まるで獣のような瞳。

 

「誰のせいでこうなってると!!!」

「知るかボケ!おい、後で覚えてろよ」

 

五条が、噛みつくみたいに吐き捨てる。

 

「あの偽夏油殺したら、今度こそ俺と付き合え。んで、セックスするぞ」

「え、ヤダ。殺すのはともかく、五条さんとお付き合いしたり、セックスするのはちょっと」

 

マジレスを返したら五条がまた噴火した。

 

「なんでだよ、さっきアイツとキスしてただろうが!」

「不可抗力です。意識失ってたんで」

「俺とはしたこと無ぇのに!!!くっそ、ビンタできねぇ」

 

完全に口調が高専時代のものに戻ってて、ブチギレてるのが、嫌でも分かる。

それを見て、なんだか逆に冷静になってきた。

 

……あーもうしょうがないな。

 

これ以上この男に喋らせたら、余計な地雷を踏み抜く。

それはあとが怖い。とりあえず黙らせるか。

そして、こちらとしても好都合。

 

五条の後頭部に手を回して、口付けた。

チュッと唇を合わせた後、五条の薄い唇を舌で割る。

その刹那、五条の目がわずかに見開かれた。

目を合わせたまま、舌を絡め角度を変えて、唾液を送りつける。

たっぷりと口内を堪能し、最後に唇を甘く噛んでから濡れた唇を浮かせた。

 

「……ん、これで文句ないでしょ?イーブン」

「…………………………って、文句しかねーわ!!!オマエ、キスうっま!

え、なに、オマエ実はビッチ属性?は?どこの誰に仕込まれてんの?平安テクニック??」

「そんなのどうでもいいじゃないですか」

「うっせー!絶対次あった時、ブチ犯すからな!!!」

 

数秒、五条が呆然としてから、怒りのボルテージがまた跳ね上がる。

勘弁してほしい。耳が痛い。

 

「さっきまで私といちゃついてたのに、女は変わり身が早いね。真人よーく見ておくんだよ。

これが初恋拗らせた男の末路だよ」

「ふーん、人間ってダッサ」

 

いつの間にか、夏油の側に真人が来ていた。

人間から生まれた呪霊で、人間の感情を理解していても、呪霊の本能で感情を理解できない真人。

ただ、面白がることだけが異様に上手い。

真人は心底不思議そうに首を傾げて、それから鼻で笑った。

 

「呪霊相手に人間の感情の繊細さや、機微なんて教えても無駄でしょ」

「役に立つよ?人を殺す時に」

「あっそ」

 

五条から身を離しながら真人とやり合ってると、五条が心底つまらなそうに息を吐いた。

 

「おーい、やるならさっさとしてくれ。潔乃以外ムサ苦しい上、眺めも悪い」

 

「こちらとしては、もう少し眺めていたいが。そうだね何があっても嫌だし——『閉門』」

 

羂索の言葉が落ちた瞬間、獄門疆が応えるみたいに軋んだ。

獄門疆の6つのパーツが閉じていく。

 

ごめん五条。こうならないようにしてたつもりだったけど、結局こうなった。

その代わり羂索との縛りは解けた。必ずあんたの封印を解くから。

 

完全に封印されるまでの間、私と五条の視線は合わさったままだった。

怒りの奥の、もっと深いところ。

六眼の青が、逃がしてくれなかった。

 

 


 

 

アレから、体感時間で30分ってとこかな。

獄門疆の中は物理的時間が流れていないから多少曖昧だけど、概ね間違ってないっしょ。

僕は潔乃からもらった資料に一通り目を通し終えたところだった。

 

……なるほどね。

11年前に高専を去ったのもそれが理由。縛りのせいで僕とは話せない、接触できない。

そりゃ西新宿で会った時、必死だったんだろうなって納得がいった。

そのまま一緒にいたら、いつ縛りが発動して死ぬか分かんねーしな。

概ね僕が予想した通り。潔乃は縛りでがんじがらめだったってわけだ。

 

ガシガシと頭を掻きむしった後、周りでガタガタうるさい骸骨を横薙ぎに殴りつけた。

が、ガシャリとパーツがばらばらになるだけですぐ復活して、側でまたカタカタ言い出す。

うっとおしいな。

 

この獄門疆の中は呪力が全く使えない。

時間の経過はないのと、六眼と腹に入れている蟲は機能しているのが救いか。

時間経過がないから蟲は必要ないかもだが、どれだけこの中に閉じ込められるか分からない。

脱出した瞬間に餓死なんてなっても困るからな。

 

「しっかし、恐ろしい女だね潔乃。こうなることを予想して準備してたんだろうね」

 

いきなり口付けてきたと思ったら、何かを口移しで渡された。

視線で「黙って飲み込め」って言われたから、その場では飲み込んだ。

 

封印されてから吐き出してみると——それは伏黒のオッサンが持ってるのと同じタイプの格納呪霊だった。

道理でクソまずいわけだ。

呪霊はビー玉サイズ。口移しで渡せるくらいのサイズまで縮んでいた。

あいつ、準備が周到すぎる。

 

その格納呪霊は潔乃に命令されてたんだろう。

僕に渡すべきものを吐き出して、すぐ消滅した。

 

獄門疆の中は呪力を完全に押さえつける。

呪霊は負の呪力の塊だ。この場に“存在する”ことすら許されなかった。

あるいは、この獄門疆は「一人しか封印できない」という制約——潔乃の資料に書かれていた。

呪霊が人数カウントされて弾かれた可能性。

 

……どっちにしろ、消えた。

 

この呪霊は結構レアだから、なるべく返してくれって書かれてたけど。

ごめん。でも僕悪くないから!僕のせいじゃないから!

脳内でプンプン怒る潔乃に謝り倒す。

 

潔乃から手渡された呪具で脱出を試みたが、

呪力を抑えつけられてるため、本来の効力を発揮できず空振りに終わった。

さっきも試したけど、僕も呪力を練れない。当然、術式も発動しない。

 

潔乃の手紙には複数のパターンが書かれていた。

その中に「封印直後に解除を狙う」って項目もあったけど、

これだけ時間が経っても何も起きないってことは——それは失敗したんだろうね。

その後も僕の封印解除の作戦が幾つか書かれていたけど、難しいだろうな。

 

骸骨を雑に蹴り飛ばしてスペースを作り、僕はその場に横たわる。

ここで焦っても、できることは増えない。

 

つまり最悪のパターンになりつつある。

「数週間程度かかるだろうけど、脱出まで待機してろ」ってやつだな。

 

いちばん厄介なのは、こういう“待つしかない”状況だ。

 

「まずったよなぁ。色々とヤバイよなぁ。

……ま、なんとかなるか。

期待してるよ——皆」

 

ここはまともな空間じゃない。

暗いだけじゃない。

時間がないのに、思考だけが擦り減っていく。

周りで骸骨がカタカタ笑うたびに、神経がヤスリで擦られたように、ザラつく。

 

人間たった一人で暗闇に閉じ込められると、数十分で発狂する。

それが狙いなんだろう。

 

獄門疆が一人専用なのは、縛りで封印の強度を上げるためだけじゃない。

放置しておけば、中にいる人間はそのうち勝手に自死する。

確殺できるってわけだ。

 

……ほんといい趣味してるよ。

 

それにしても、まともに思考すると疲弊するだけだな。

ここしばらく忙しかったし、ちょっとボーっとさせてもらうか。

僕の頭は、勝手に“現実逃避の材料”を探し始めた。

 

…………11年ぶりの潔乃、綺麗だったな。

 

袈裟なのは意味わからないけど、和装も似合ってた。

髪もロングになってて、金色がホームのライトに反射して——目が痛いくらいに眩しかった。

頬に触れた金糸が柔らかくて懐かしかった。

あの頃みたいに髪を指で梳いて、顔を埋めたかった。

 

それで、俺と同じ匂いの香水。あれはすぐ分かった。

惚れてる女と同じ香水とか最高じゃん?

それにしても、潔乃なんだかんだ言って僕のこと好きでしょ?

そうでなきゃ同じ香水つけないでしょ?

 

メイクも大人っぽいものになってて……正直、心臓に悪い。

あのリップの色、似合ってた。

高専の時、あんな色つけてなかっただろ。

今度会えたら、別の色も試させたい。僕が贈るから。

僕が贈ったリップつけさせて、その唇を貪りたい。

 

あー、11年経ってもやっぱ潔乃のことが好きだ。

潔乃、オマエはずっと否定してたけど、やっぱ恋愛感情だよ。

あの翡翠の瞳を見るたびに、その気持を自覚する。

 

アレから時間が経って、僕だって大人になった。

あの頃より自分の心を理解してる。

やっぱり、オマエのことが一番大事で、一番好きだよ。

一人の男として、オマエのことを愛してる。

 

……にしても。

 

オマエ、あの一瞬で“仕込み”を通すとか、そんな手段どこで覚えたんだよ。

戸惑いなくキスしてくるから、僕のほうが面食らったよ。

 

そして、あのキステクニックどこで仕入れた?

正直役得で、キスを楽しませてもらったけど、アレおかしいだろ。

アイツ、何あのテクニック。

キスの主導権、百戦錬磨の僕と奪い合うとか、マジかよ。

今度会った時、ぜってー問い詰めてやる。

 

誰に教わった。何をしてきた。

……俺以外の男の影しか感じねーんだけど。許さねぇ。

 

強い思考はそこまでにしてストップ。

僕は、脳内の潔乃を抱き寄せ、まどろむ妄想に浸ることにした。

 

 


 

 

「それ、もう使えないんだっけ?」

「あぁ、定員1名。中の人間が自死しない限り使用不可だ」

「ふーん。つまんな。ま何はともあれ」

 

——獄門疆が、完全に“閉じた”。

さっきまでそこにあった五条の気配が、ぶつりと途切れたみたいに消えた。

 

封印完了——五条の封印は完了した。

 

前回、私が死んだ後の渋谷事変にて、

スターブルーサファイアで獄門疆を回避したとは聞いていた。

ただ、あの宝石の効果は大きい。

今回使い捨てるべきではないという判断で使わなかったが……結果こうなってしまった。

本当は封印そのものを回避できた方が良かったが、仕方ない。

 

切り替える。

プラン②だ。

 

羂索がいきなり身を翻し、呼び出した呪霊で身を守る。

轟音が響き、ホームのコンクリートが抉れ、破片が雨みたいに降った。

私も咄嗟に呪力宝石で結界を張る。数瞬遅れていたら、こちらにも直撃していた。

 

「来ると思っていたよ。天与呪縛のフィジカルギフテッド!」

「ちっ、予想済みってか」

 

天の逆鉾を構え直しながら、乱入した伏黒甚爾。

私に駆け寄り、俵のように軽々と持ち上げる。

 

「撤退すんぞ。オマエを守りながら五条の奪還は厳しい」

 

畜生。プラン②も失敗だ。

 

五条が封印された直後。

人間は目標を達成したと思った瞬間が、一番油断する。

原作の五条の宿儺戦がいい例だ。普通の人間でも同じ。

 

例えば登山でも有名な話だけど、遭難事故は下山時に起きやすい。

疲労だとか、午後の方が天候が荒れやすいとか色々理由はあるが、

一番の理由は油断だ。

 

『後はもう下るだけ』

 

その安心感で注意が散って、道迷い、滑落——致命的な失敗をする。

 

羂索も人間だから、そのタイミングを狙った。

……が、甘かったようだ。

 

天与の暴君、伏黒甚爾への警戒が全く薄れていなかった。

ちっ。失敗した。

 

私を殺すことはないが、高専側にそうやすやすと素直に引き渡すのも嫌だろう。

この場に居たら、手足の1本や2本もがれて嫌がらせされるに決まってる。

反転で治せばいいとニッコニコでやる羂索が想像できる。

 

そろそろ漏瑚や脹相も目を覚ますはずだ。

 

さっさと退散するに限る。

 

懐から呪力宝石を取り出す。

私を警戒する夏油と真人を嘲笑うように、天井からいくつもの光が降り注ぎ——爆ぜた。

白い閃光、遅れて熱風。視界が煙と粉塵で潰れる。

 

その爆発に乗じて、私たちは副都心線のホームから脱出した。

 

 


 

 

「ちっ! やるじゃないか。与幸吉を逃がしたのはこのためか!」

 

渋谷駅の地下五階にまで届いたレーザー攻撃に、羂索が笑いながら称賛する。

相変わらず、白菊は用意周到な女だ。

その頭の回転を評価しつつ、内心で舌打ちする。

 

——どうせなら真人や漏瑚にも当ててくれれば、取り込みやすかったのに。

 

「どうする? 追いかけよっか?」

 

真人の言葉に、羂索は首を横に振った。

 

「ほっといていいさ。白菊は、ほぼすべての情報を高専側に流し終えているだろう。

五条悟の解放を狙っているだろうけど——獄門疆がここにある限り、解放はできない」

 

そこで言葉を止め、羂索が視線を横に流す。

 

「伏黒甚爾が持っていた天の逆鉾も壊せたしね。助かったよ、脹相」

 

「……当たりが良かっただけだ」

 

ボソリと不機嫌そうにつぶやき、視線を逸らす脹相。

 

「その“やる気”を毎回出せと言うに」

 

漏瑚も無量空処から復帰し、普段から熱のない脹相を小突くように言った。

無表情のまま受け流す脹相。

——先ほど放った穿血が、伏黒甚爾の天の逆鉾を砕いた。

 

それを回収しようとする白菊を、伏黒甚爾が押さえつけ、そのまま脱出していった。

的確な判断力と、あのフィジカル。

 

呪力がなくてもアレなら、ぜひとも手に入れたい。

……残念ながら天与呪縛なゆえ、羂索自身の術式がどう作用するか分からない。

そのため、危険性が高く手を出せなかった。

それでも惜しいと思ってしまうのが人間だ。

 

「世の中ままならないものだね」

 

羂索は内心で、短く息を吐いた。

 

「それにしても、与幸吉め。生きていたとは。

おい、真人。オマエ、また適当に処理をしたんだろう!」

 

「きちんと殺したけど? どうせまた白菊がなんかやったんでしょ。

あの時、一緒についてきてたし。あーもう、あの女厄介。殺しちゃだめ?」

 

「駄目だよ。宿儺の“持ち物”だからね」

「ちぇ……それにしてもさ、ナニコレ。どういうこと?」

 

漏瑚との言い争いに飽きた真人が、ホームのコンクリートに食い込んだ獄門疆を指差す。

サイコロのような正方形の物体が“地面に縫い付けられている”みたいに、びくともしない。

 

「封印は完了している。だが、まだ獄門疆が五条悟という情報を処理できていないんだ。

しばらくは動かせないね」

 

 

ー͗́̊̆͗́̒̑͊̚͞ー̿͛̇̍̚͝ー̏͊͐͑̅͑̅͋͒̚͡ー̽́̈̓̄̀̈̋͋͊͠ー̐͊͋̌̽̀̉͗̈́̚͝ー̅͋̀͆̽̈́̽͒̀̀͡ー̾̔͌̔̌̄̕ー͐͌̇̋͌͑̐̽̉̿͑̕̚ー͗́̊̆͗́̒̑͊̚͞ー̿͛̇̍̚͝ー̏͊͐͑̅͑̅͋͒̚͡ー̽́̈̓̄̀̈̋͋͊͠ー̐͊͋̌̽̀̉͗̈́̚͝ー̅͋̀͆̽̈́̽͒̀̀͡ー̾̔͌̔̌̄̕ー͐͌̇̋͌͑̐̽̉̿͑̕̚ー͗́̊̆͗́̒̑͊̚͞ー̿͛̇̍̚͝ー̏͊͐͑̅͑̅͋͒̚͡ー̽́̈̓̄̀̈̋͋͊͠ー̐͊͋̌̽̀̉͗̈́̚͝ー̅͋̀͆̽̈́̽͒̀̀͡ー̾̔͌̔̌̄̕ー͐͌̇̋͌͑̐̽̉̿͑̕̚

 

 

耳をつんざくようなノイズに、伏黒も私も耳を押さえて顔をしかめる。

原作と同じなら、真人が気づいて破壊したんだよな。

やっぱアイツ嫌い。

 

ま、これだけ情報が集まれば十分。

結果として、ほぼ原作と同じ流れだ。

 

「与君の傀儡が破壊されましたね。もうちょっと引っ張りたかった」

『こんなに早く破壊されるとは……』

「十分だよ。ありがとう与君。サポート頼むね」

『了解だ』

 

与幸吉がなんで生きてるかって?

そりゃ私が手を回したからに決まってるだろ。

 

10月19日の深夜。某ダムにて、真人に殺される与幸吉。

羂索とともに何度も接触してきたけど、あっちも同じように私をよく観察しに来ていた。

もちろん傀儡で、だけど。

 

私はそれをあえて無視して、高専サイドへ情報を流し続けた。

おそらく、それが伏黒甚爾経由で高専へ回っていることも知っていたはずだ。

まぁ、去年の百鬼夜行以降はそれもできなくなって、イライラしてるのも見られてただろうけど。

 

とにかく。

与幸吉は間違った手段を取ったとはいえ、人を愛する心を持った人間だ。

そう信じたから、私は“スパイ傀儡”の存在を見て見ぬふりし続けた。

 

交流会の後、与幸吉の傀儡が私に接触してきたときは、思わずアロエリーナを掲げてくるくる回ったよね。

一分後に我に返って、ベッドでジタバタしたけど。

 

話を戻す。

 

まずは情報のリークを進めた。原作は情報を渡す前に死んでたしね。

悪いけど、最悪の事態に備えて“情報だけ”は先に渡してもらうことにした。

一応、裏切り者なんだからそれくらい危険な橋は渡ってね、ってことで。

 

そのうえで——策を提供した。

 

傀儡操術は、呪いの込められた無生物の「呪骸」や傀儡を操る能力。

与幸吉は自分でメカ丸まで作る天才だ。

なんだよあのエヴァンゲリオンもどき。原作で見たとき思わず笑ったからな!

 

それに、天与呪縛で日本全域に傀儡を飛ばせる化け物。

そこを利用しない手はない。

 

私が与えた策は——

「自分の偽物の傀儡を作って、“生きてるように”動かせ」だ。

 

何言ってんだって?

私もそう思う。けど私の術式を思い出してほしい。

 

精巧な“偽物”を作れる私。

それを与幸吉が傀儡化して動かせば、実質、本物と同じに見える。

本体の与幸吉は別の場所から操ればいい。

 

羂索は術式に関して鋭いが、六眼ほどの精巧さ目利きはない。

真人は魂を知覚するが、本物と同じ肉体にはいった当人が作った呪骸の(呪い)

だとしたら?

おそらく区別はつかない。

 

真人を倒せればラッキー。

倒せなかったときは、死亡偽装で切る。

偽物とバレた時は、まぁ頑張って逃亡してくれ。

そういう算段。

 

……でも、それだと与幸吉の身体が元に戻らないって?

はい来た。

 

私の術式を思い出してほしい(2度目)

 

紙ナプキンを合成させたみたいに。

“死体側”の傷を回復させた後、生きている与幸吉と合成すればいい。

 

うん、分かる。悪魔の発想でしょ?

でも私は「できる」って確信があった。術式がそう囁いてくる。

不思議なもんだね。こういう直感は当たる。

 

一応、与幸吉にはリスクがあることも含めて説明した。

そして彼は選択して、賭けに勝った。

 

私、頑張ったよ?

 

真人に負けて“失敗した”与幸吉の死体を、

私が「憐れんで弔う」と言って一人で残り、回収して、

伏黒甚爾から譲り受けた格納呪霊に取り込む。

 

あとは、与幸吉の本体とこっそり接触するだけ。

 

……この“接触”が、一番大変だったわ!

 

接触に関しては、伏黒がまたもや大活躍してくれた。

鍵になったのは——伏黒甚爾の義理の娘、伏黒津美紀だ。

 

百鬼夜行の後、私たちは特定の宗教団体の施設には住まず、ホテル暮らしになっていた。

たぶん羂索が「固定住所があると情報を流しやすい」って気づいたんだろうな。

そのせいで、伏黒と私は互いの存在を認識できていても、なかなか接触できずにいた。

 

ただ、ホテル暮らしには利点もある。

一人の時間が格段に増えたことだ。

 

ホテルの近くの公園やショッピングモールくらいなら、外に出られるようになった。

呪詛師の監視は付いてるけど。

 

……監視と言っても、トイレの中までは入ってこない。

女性の呪詛師も一応いたけど、面倒くさそうに入口でスマホいじってて、ラッキーだったんだよね。

相手が警戒してるのは“呪力あり”の人間。呪力なしはノーマーク。

あ、もちろん伏黒甚爾や別ね。最大警戒されてたわ。

 

そこで登場するのが、一般人——伏黒津美紀、ってわけ。

 

ショッピングモールのトイレで津美紀を見た時は、正直、口が開いたまま塞がらなかった。

お前、なに義理の娘を巻き込んでんだよ……!

思わず天を仰いだ。

 

でもこの世界線の津美紀は、呪物を取り込んでいない。

伏黒甚爾が生きていたのが大きいんだろう。たぶん、取り込ませる隙がなかった。

 

それからもう一つ。

伏黒が引き取った——かつて虐待されていた枷場美々子と菜々子の存在も大きい。

 

彼女たちは高専に入らず、津美紀と同じ高校に通っている。

かつて非術師を蔑んで夏油を崇拝していた二人が、今は津美紀にべったり懐いてるそうだ。

さすが伏黒恵が認めた善人。津美紀、荒んだ双子の心まで溶かしたか!

 

完全に同い年のお姉ちゃんっ子になっていて、一般人である津美紀が心配で同じ高校に進学したらしい。

確かに禪院家の酷さは、養父の甚爾や、夏油の親友である五条から聞いてるだろう。

そりゃ、津美紀のことを心配する。

 

正直、GJとしか言えない。

 

……呼び方だけは相変わらずで、夏油様、伏黒様、伊地知様。

あ、私も未だに七海様って呼ばれてるってさ。崇拝が熱い。

 

そんなこんなで、万に寄生されることを免れた津美紀は、元気いっぱい幸せいっぱいの高校生活を送ってたわけで。

だからこそ、一般人巻き込むなよって私がブチギレたのは許してほしい。

伏黒、今度会ったらぶん殴る。

 

ただ——正直、助かった。

 

私は津美紀から“飛ばし”のスマホを受け取り、直接連絡を取れるようにした。

津美紀は高専関係者じゃない。だから、縛りにも抵触しない。

 

そして、羂索が離れている数少ない隙を狙って、滞在しているホテルに呼び寄せ——与幸吉の身体を修復した。

これを成したのが10月26日。ギリギリのタイミングだった。

一日でも遅れていたら、31日の準備で時間が取れず、たぶん間に合わなかった。

 

——そういう訳で、与幸吉は今、私たちの強い味方だ。

 

「これから私と伏黒さんは別行動しますので、与君。サポートそれぞれお願いしますね」

『了解だ。任せろ』

「オメーも気をつけろよ」

「分かってますよ。ここからが本番です」

 

走るのをやめた伏黒の肩から降りる。

私を担いで結構走ったのに、息一つ乱れてない。

……フィジギフって、エグいわ。

 

「じゃ、これ終わったら焼き肉でも食おうや」

「やってる店あるんですかね?」

「そこらの高級店から肉、盗ってくるか」

『電源が絶たれて腐ってるだろうが……』

「肉は熟成したほうがうめーんだよ」

 

手を軽く振りながら渋谷の雑踏へと消えていく伏黒に背を向け、私も渋谷の街を走り出した。

 

 

 


 

 

 

主人公

 

意識を失ってるうちに羂索とキスしてた上に、目を覚ましたら五条が封印されててバチギレした。

私の11年の努力!!ぶん殴るぞゴルぁ!

羂索とキスしまくってたが、気持ち悪いな程度。

恒例の前世の記憶で出産経験ありのそれなりの年齢の女性だったことから、あまり気にしてない。

ちなみに、七海潔乃としてもファーストキスでもない。

記憶を取り戻す前の子供の頃に、デンマークに行って近所の子とチュッチュ可愛らしく済ませている。

五条は一生知らないほうがいい。

そして、今回も暗躍しまくり、与幸吉を実は救済してた。

当人の行動でしらないうちに、伏黒津美紀と枷場美々子・菜々子も救済している。

 

 

五条悟

 

11年ぶりに出会った想い人のNTRシーンを見せつけられて、封印されちゃった人。

主人公にバチギレしてる。

見せつけられたのもそうだが、いきなりキスされてそれが鬼テクニックでビビった、

は?どういうこと?え?俺以外の男と?

バチギレしつつも、口移しで渡してくれた情報はありがたく読ませてもらった。

羂索ぶっ殺す。ぜってぇブッ殺す。

あと、主人公とあったら絶対付き合って、抱き潰す!と勝手に決めてる。

 

 

伏黒甚爾

 

ジョーカー

マジでこれをぶん投げて捨てた禪院家は滅ぶべし。

何にでも使えるので作者の便利カードとかしてきて、困ってる。

 

 

与幸吉

 

運命変えて生き残った人。

主人公に素直に助けと協力を求めてたのは、正解。

主人公は、求めなければ見捨てるつもりだった。

危険すぎたので。

だが、主人公がそれでも手助けしてくれた。

それを察しているので、一生頭が上がらない。

三輪のことをいつの間にか知られていて、今後擦られまくるが頭が上がらない。

なお、現在は渋谷近辺のホテルに滞在し、大量の傀儡を渋谷中にばら撒いて、情報収集や索敵などを行って情報共有している。

 

 

伏黒津美紀

 

キーパーソンの子供もキーパーソンだった。

養父が困った空気を出していることに気がついて、手伝いを申し出た。

何もわからないけど、直感。

実は主人公とは離反前に何度かあって懐いていた。

(恵はギリギリ記憶に残ってない。だから忘れてる)

ので、今回あえて嬉しかった。

 

 

枷場美々子・菜々子

 

伏黒家で幸せに暮らしていた。お姉ちゃん大好き。

今回、伏黒様の仕事に姉が関わると聞いて、心配して遠くからの護衛をしていた。

懐かしい、もう一人の恩人七海様がいて、こっそり二人で泣いた。

 




今回、与の喋り方はあえて、「ダ」などは使わないで人間味を出す感じにしてみたけど、やはりメカ丸ふうに寄せたようが良かったかなぁ。
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