とある転生者、2周目   作:kotedan50

28 / 33
if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

渋谷事変③

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラでます
・ネタまみれです
・コロコロ視点変わります




転生者、渋谷事変に参加する③

21:41 首都高速3号渋谷線 渋谷料金所

 

家入は渋谷の夜景を眺めながらタバコの紫煙を吐き出した。

眼下に広がる街並み。

いつもはネオンでギラつきうるさい街なのに、今日は異様な静けさに包まれている。

 

「学長〜これ相当やばくないです?」

「あぁ、分かっている。現着したはずの悟からの連絡もまだない」

 

同じく夜景を眺めたまま夜蛾が切り捨てる。

 

「……五条のやつ何やってんのよ」

 

家入が苛立たし気にタバコを唇で噛み締める。

あの男が連絡を寄越さないということは、それだけ事態が切迫しているということだ。

 

「重症者が運ばれてきたら頼むぞ、硝子」

 

ちらりと家入に視線を向ける夜蛾。

目の下に張り付いた隈を見て、夜蛾は内心でため息を吐いた。

そして、ふと七海潔乃の存在を思い出していた。

七海潔乃の本当の術式と、彼女が作成する宝石の呪具があれば——教え子(家入)の目の下の隈は今より薄かっただろう。

潔乃は外部進学希望だった。だが、かなりのお人好しの性格だった。

意外と人情派な(七海)と同じように、いずれ呪術界に戻ってきたに違いない。

夜蛾は軽く苦笑する。

潔乃が高専から失踪して何年経ったか。今更だ。

何故そんな事を今思い出したのか——

 

「誰だ!!」

 

人の気配に、夜蛾が警戒態勢に入る。

その人物は何かを抱えて、首都高の明かりの上に立っていた。

逆光でよく見えないが、袈裟を身にまとっている。

 

呪術師——いや、呪詛師か?

 

その人物が首都高の明かりからふわりと飛び降りる。

重力を無視したような、滑らかな動き。

音もなく着地すると、金髪の髪がキラキラと光を反射させた。

その袈裟の人間が抱えていたものは、人だった。

横抱きにされているその人間は……

 

「伊地知!!」

 

家入の叫びが夜気を震わせた。血塗れの伊地知に警戒のボルテージが上がる。

補助監督を抱えた呪詛師——敵意の有無は不明。

その人物は袈裟とおかめの面を被っている。

七海の報告書にあった。

 

——特級呪霊とつながりのある謎の人物、桜里高校の件で報告が上がっていた奴か?

 

髪の色は違うが、おそらく同一人物だろうと夜蛾は判断する。

家入を守るように夜蛾の呪骸が前に出る中、その人物は伊地知を地面にゆっくりと下ろした。

怪我人をいたわるような丁寧な所作。

 

敵じゃないという風に両手を上げた後、自分の胸を指差すジェスチャー。

そっと袈裟の合間に手を入れる様子に一瞬身構えるが、懐から取り出したのは、ちいさな巾着袋だった。

袈裟の人物はもう一度、こちらに攻撃するなとジェスチャーで伝えてから、

巾着を開き、中から一つの宝石を取り出した——それは淡い光を放っている。

その見覚えのある光景に、夜蛾は目を見開いた。

袈裟の人間は伊地知の腹部にその宝石を置いた後、巾着を夜蛾に向かってぽいっと投げる。

緊張感のない、どこか軽い仕草。

反射的にそれを受け取った夜蛾に手を振り、踵を返してその人物は渋谷の闇に消えていった。

 

その瞬間、家入が駆け寄り伊地知の容態を確認する。

 

「伊地知!! 血塗れだけど——思ったより傷は浅い。って、この宝石は呪具? 伊地知の傷を治してる……!」

 

家入の声に驚愕が混じる。

治癒ができる呪具など、そうそうあるものではない。

 

「……潔乃だ」

 

夜蛾が呟いた。

 

「学長、伊地知を運ぶの手伝ってください!」

 

夜蛾の呟きが聞こえなかった家入が、怒声を飛ばす。

夜蛾は呪骸に手伝うように指示を出しながら、袈裟の人物が消えていった渋谷の闇を見下ろした。

かつての教え子に何があったかは分からない。

だが、昔と同じお人好しの一面は変わって無いらしい。

 

「潔乃……今度会った時は、指導だ」

 

その言葉が、叱責なのか安堵なのか、夜蛾自身にも判然としなかった。

 

 


 

 

ミッションコンプリート!

伊地知を家入に渡すついでに夜蛾に呪具宝石を渡した。

巾着には「中を見ろ」と書いたガムテープを貼ってあるし、巾着の中にはメモも入れてある。

夜蛾が私の指示に従ってさえくれれば、上手くいくはず。

あー頼むから、お願いだからメモに従ってね? 私の字ってわかるでしょ? 

そうでないと救済難しくなっちゃう。

まぁ、悪い呪具じゃないってのは、分かってるはずだから——お願い、Trust me!Believe me!

 

呪詛師って思われてるだろうけど、いや、呪詛師じゃねーから。脅されてたから。

もう高専側の人間だけど、今、私と接触すると羂索が牛耳ってる上層部からどんな横槍が入るか分かったもんじゃない。

だから表向きは接触していない。

夜蛾にさえ私の存在が伝わればそれでいい。

 

いや、羂索には分かってるだろうけどね。

でも、アイツは私を殺さない。一応親友らしいからね。

夜蛾に関してもおそらく大丈夫だろう。

理由としては、興味がないことと、言っては悪いが夜蛾は脅威ではないからだ。

 

 

そう判断したのには理由がある。

羂索は夜蛾に関して、積極的に介入した様子がない。

夜蛾の作成したパンダのような完全自立型呪骸——総監部としてはその情報は欲しかったようだが、羂索はそうではなかったのだろう。

興味があるなら、もっと手段を選ばず強引な手段で、その情報を手に入れたはずだ。

だが、そうしなかった。

 

羂索は過去に術師たちと契約し、魂を込めた呪物を作っていた。

完全自立型呪骸は魂の複製を使用する。

つまり羂索にとって既知の知識だった。ゆえに興味を示さなかった。

呪物を作れるようになった時点で、魂の研究はもうやり切ったのだろう。

死んで輪廻を巡る私の魂を見つけ出したくらいだからね。

 

そして夜蛾は傀儡操術の使い手で、呪骸が主に戦闘を行う。当人はさほど火力があるタイプではない。

総監部が恐れる完全自立型呪骸だが、簡単に大量生産できるものではない。

敵にならないと判断すれば、こちらから攻撃さえしなければ羂索は捨て置く。

 

というわけで、上層部に私の存在がバレないようにすればいいというわけだ。

 

「与君、状況は?」

 

走りながら耳元に張り付いた、与のミニ呪骸に確認をする。

 

『概ね想定通りだ。呪骸を通じて各班には状況を伝えてある。

気づいているだろうが、虎杖・伏黒・猪野さんがちょうど術師を阻む結界を解除した。ただ、猪野さんが負傷した。

今、伏黒が家入さんの救護班へ運んでいる。虎杖は渋谷駅に入った——その先、改造人間が30体ほどいる』

 

 

与幸吉は渋谷にミニ呪骸をばら撒いてそれを操り渋谷の全情報を入手している。

原作でも羂索がやりたがったこの運用。私が利用させてもらっている。

ただ、ここまでの運用はこの渋谷のみだ。

 

理由は、与幸吉の天与呪縛を私が解いてしまったから。

あの莫大な呪力も、日本全国を射程に捉える力ももうない。

ただ、彼を縛った17年と5ヶ月13日で得た呪力を消費している。

彼はそれをこの渋谷で使うことに同意してくれた。

……感謝しかない。

 

猪野さんは原作の修正力かな。まぁ、伏黒や虎杖と居ると格上との戦闘に巻き込まれる。

現状、力不足なのでいいタイミングでの退場かもしれない。

新宿での宿儺戦が発生する場合、彼は戦力の一つだ。今ここでの退場は困る。

 

そんな事を考えながら、宝石で改造人間を殲滅しつつ駆け抜けた。

投げた宝石が爆ぜ、改造人間が次々と崩れ落ちる。

 

『伊地知さんを刺した重面春太は七海さんが殴り飛ばしていたが、おそらく生きている』

 

「チッ!! アイツは殺せって言ったのに」

 

『おそらく術式の関係だろう。見失ってた。七海さんも舌打ちしてたぞ。今は七海さんは予定通り禪院班に合流している』

 

重面春田はラッキーマン的な術式だったな。畜生。

アイツのせいで宿儺が大暴れして渋谷の被害が広がるんだよ。

 

「冥冥さんは?」

 

『羂索と接触して、今特級呪霊との戦闘中だ。おい、急げ。このままだと虎杖が脹相と接触するぞ』

 

「分かってる! 伏黒さんに予定通りって伝えておいて。あと彼らのサポートお願い!」

 

『承知した——その先、呪詛師が2人いるが気づいていない。このまま駆け抜けて大丈夫だ』

 

与のナビゲートを受けながら、渋谷駅構内へ入った。

 

 

 


 

 

 

渋谷駅B4F ヒカリエ改札内

 

「あの人は、オマエを殺すなと言った」

 

虎杖悠仁と会敵し、穿血と逕庭拳をお互いに打ち合った後、脹相が静かに口を開いた。

その声は静かだが、底に押し殺した感情が渦巻いている。

 

言ってる意味が分からず訝しげな表情を浮かべる虎杖。

あの人? 誰? 何の話だ?

 

「……必ず後悔すると。縛りがあるのか、言葉は少なかった。

嘘を言う人じゃない——」

 

脹相の声は、嵐の前の静けさを思わせる凪のようだ。

 

「だが、オマエは弟たちを……長男の矜持として許すわけには行かない!!

……オマエに聞きたいことがある。弟は最後になにか言い残したか?」

 

殺意と慈愛が入り混じった、複雑な感情が脹相の表情を歪ませる。

 

「弟……!?」

 

いきなり攻撃され、弟を傷つけたと言われ、心当たりがなくわからない虎杖は眉を寄せる。

何を言っているんだ、この男?

 

「チッ……お前たちが殺した、二人の話だ」

 

その言葉に虎杖の脳裏に蘇る。

 

八十八橋。

あの日、釘崎と共に戦った受肉体。

壊相と血塗——確かに、二人だった。

 

「……別に。何も」

 

虎杖の声が小さくなる。思い出したくない記憶だ。

 

「でも、泣いてたよ」

 

ポツリポツリと零れ落ちる虎杖の言葉。

その瞬間、脹相の中で何かが弾けた。

 

「壊相!! 血塗!! 見ていろ!! これがオマエ達のお兄ちゃんだ!!!」

 

慟哭の叫びと共に、脹相の呪力が爆発的に膨れ上がる。

弟たちへの愛と、目の前の少年への殺意——相反する感情が、脹相を突き動かす。

 

この男が、今から本気で自分を殺しに来る。

 

だが、虎杖も引くことは出来ない。

副都心線B5Fホームへ——五条悟の元へ行かなければ。

 

虎杖は構えを取り直した。

 

 


 

 

マークシティ内連絡通路——もとい、陀艮の領域内。

 

前回の反省点を活かし、自らを鍛え上げた。

力もつけた。

 

だが、領域展開をされる前に倒し切ることが、出来なかった

今回も領域を展開されてしまった。

 

七海には結界術の才がない。

努力はした。前回より強くなった。

それでも、簡易領域はまだ身につけていない。

渋谷まで間に合わなかった。

 

それでもその恵まれたフィジカルで、死累累湧軍(しるるゆうぐん)の猛攻を耐える。

 

伏黒甚爾経由で受け取った、潔乃作成の防御の宝石がポケットの中で砕けていくのを感じ、舌打ちをした。

相変わらず、式神の数が多すぎる。

 

前回より力をつけた七海の周りには、より多くの式神が襲ってきていた。

そして、七海は知らないことだが、白菊——潔乃の兄と知られているため、彼女への意趣返しも含まれている。

 

だが、七海にとってもそれは好都合。禪院直毘人の右腕を持っていかれるわけにはいかない。

彼が五体満足であれば、あの漏瑚とも勝負になったはずだ。

 

——まずは、この猛攻を耐えなければ。耐えれば、援軍がある!

 

歯を食いしばった瞬間、領域の結界に穴が空いた。

 

「領域展開 嵌合暗翳庭(かんごうあんえいてい)!!!」

 

伏黒恵の領域展開。

前回と同じ、待ち望んでいた援軍だ。

与幸吉のナビゲートで無事ここまでたどり着いた恵に、七海は小さく息を吐く。

これで最低限、同じ土俵に乗った。

 

「真希さん!!」

 

影を使って禪院真希に特級呪具・游雲が手渡された。

その真希を屠ろうとして、領域の必中効果が消えていることに気づいた陀艮。

恵の領域展開との押し合いに勝つべく、まずは恵を倒そうと式神を飛ばすが——七海が切り払う。

 

「七海さん!!」

「二人は?」

「猪野さんはリタイア。虎杖は別行動です」

 

ナタを胸の前で構え、恵を守るように七海が立ちふさがる。

 

「……君は私が守ります。領域に集中してください」

 

同じく死累累湧軍(しるるゆうぐん)の猛攻を耐えた直毘人も戦線に復帰。式神を術式で拘束し砕いた。

まだ、彼の腕は無くなっていない。それを確認して七海の口角が上がる。

 

更にそれに合わせるように領域内の海水がうねり、陀艮が拘束された。

 

「何!?」

 

自分の絶対的な味方のはずの水からの攻撃。陀艮が驚愕の声を上げる。

 

「僕のフィールドだね。お互いの十八番(オハコ)で勝負と行こうか!!」

 

灰原雄が術式・水操呪法を使い、陀艮を拘束していた。

そう——彼も恵の領域展開に合わせ領域の入口が閉じるギリギリのタイミングで、陀艮の領域に侵入していたのだ。

 

「灰原!」

 

七海の声に、灰原がニヤリと彼らしくない笑みを浮かべる。

 

「遅くなってごめん!! 領域展開される前だったら、もっと楽だったんだけど。

恵君は僕が守るから3人は攻撃し続けて!! アイツの体力を削れば削るほど、恵君に余裕が出る!」

 

当初の予定では、七海とともに灰原も陀艮戦に最初から参加する予定だった。

だが、急遽発生した任務で遠方——山梨へ行っており、ギリギリのタイミングで間に合ったらしい。

 

周りの水を巧みに操り式神を打ち払い、陀艮を拘束し続ける灰原。

その制御は精密で、味方には一切干渉していない。

 

「2分です。2分で倒してください。それ以上は持ちません。その時は領域…この結界にわずかでも穴を開ける!!」

「僕もこの量の水を操るのはそれくらいが限界。なる早で頼むよ!!!」

 

いつもの冷静な声で恵が、いつもの軽い調子で灰原が。

でも二人の額には大量の脂汗が浮かんでいる。

その声を聞きながら七海が陀艮に向かい走り出す。

 

前回と異なり灰原が居る。その結果生まれた絶対的な好機——

これを逃すわけにはいかない。

 

七海の意図を瞬時に把握し、総攻撃に転じる直毘人と真希。

 

恵の領域と、灰原の術式による陀艮拘束と水の防御の破壊。そして味方の防御。

直毘人の速度によるハメ、併せて高火力の攻撃を繰り出す七海と真希。

式神の群れは灰原の水に阻まれ、陀艮は身動きが取れない。

完璧な連携だった。

 

一分四十三秒経過——

 

七海が振り抜いた鉈が赤黒い火花を散らした。

 

——黒閃。

 

領域を維持できなくなった陀艮。

 

領域が静かな音を立てて解除された。

 

 


 

 

 

荒い呼吸で、膝をつく恵と真希。

呼吸を荒くしつつも、両足でしっかりと立っている七海、灰原、直毘人。

 

正直ギリギリだった。

 

内心でそう思いながら、額の汗を拭う灰原。

山梨で1級呪霊を払った後、夏油から借り受けた呪霊で移動してきた。

その呪霊が風圧を遮る結界を貼ってくれるタイプで助かった。

かなりの猛スピードで移動してきたので、どこかの誰かに見られていないことを、ひっそりと灰原は祈った。

 

消えゆく陀艮の体を視界に捉えながら、唾を飲み込む。

 

この後、漏瑚という高火力の特級呪霊の襲撃があることは、七海と潔乃から聞いて知っている。

宿儺の指7、8本分ほどの強さがある特級呪霊。

 

腰のホルダーからミネラルウォーターの蓋を開け、一口飲み込む。

 

「恵、大丈夫か?」

 

真希が未だ荒い呼吸を続ける恵に声を掛けたその時——

 

「逝ったか……陀艮」

 

——空気が、変わった。

 

唐突に現れた圧倒的強者の気配。

それは陀艮とは比べ物にならない、桁違いの呪力。

 

灰原の背筋を氷のような悪寒が駆け上がる。七海の顔から血の気が引く。

 

全員が硬直した。

 

息をすることすら忘れそうになる、圧倒的な格の差。

 

その呪霊は消えゆく陀艮の身体を見つめ、小さく呟く。

 

「後は任せろ。人間などに依らずとも、我々の魂は廻る……百年後の荒野でまた会おう」

 

陀艮への別れを告げた漏瑚が、ゆっくりと振り返る。

恨みがましい呪いのこもった視線——その眼光に、真希が息を呑む。

 

「さて……」

 

——来る!

 

前回と同じなら、七海が真っ先に狙われる。

灰原は呪力を練って七海に水の防御を張ろうと——

 

「一人目」

 

——違う!

 

漏瑚の姿が掻き消えた。

次の瞬間、漏瑚の手のひらが灰原の腹部に当てられた。

 

——ッ!読み違えた。

 

「灰——」

 

七海の叫びが遠い。

 

灰原の身体が業火に包まれる——

 

その瞬間、

 

漏瑚の身体が横薙ぎに吹っ飛んだ。

 

漏瑚が為す術もなく吹き飛び、轟音を立てて連絡通路の壁に激突する。

 

「ワリィ、遅れたわ」

 

低く、やる気のなさげな気だるい声。

 

気づけば、いつの間にか真希の手から游雲が消えている。

その游雲を軽々と片手で持ち、チャリチャリと鳴らしている男——

 

「親父!!!」

 

「「甚爾!!!」」

 

「「伏黒さん!!!」」

 

5人の声が重なった。

 

伏黒甚爾が、そこに立っていた。

 

ちらりと灰原に視線を向ける。漏瑚の火球を無事避けたことを確認して、口角を上げる。

そして——ベチン、と遠慮なく灰原の頭を殴った。

 

「油断すんな」

 

「いっ……すみません」

 

灰原が頭を押さえながら小さく謝る。

 

甚爾は恵と真希の様子をちらりと確認し、冷たく言い放った。

 

「お前ら下がってろ。足手まといだ」

 

顎をしゃくって退避を促す。

こういう時の甚爾は、普段以上にストレートで容赦がない。

 

恵と真希は唇を噛みながら距離を取る。

 

壁から身を起こした漏瑚を見据え、甚爾が不敵に笑う。

 

「よぉ、富士頭。さっきぶりだな? オマエ倒すと雇い主からボーナス出んだよ」

 

「……呪力もない猿風情が!!!」

 

游雲を肩に担ぎ、戦闘態勢に入る。

 

天与の暴君と、特級呪霊——

桁違いの存在同士の、睨み合いが始ま——

 

——瞬間、漏瑚の動きが止まった。

 

何かを察知したように、漏瑚が別の方向を向く。

その表情に、驚愕が浮かんだ。

 

次の瞬間、漏瑚が音もなく離脱した。

 

游雲を鳴らしながら、甚爾が苛立たし気にぼやく。

 

「潔乃の奴、早ぇーよ。小銭稼ぎすら出来やしねぇ」

 

漏瑚を本気で狩るつもりでいた甚爾が、ぼやきながら真希に游雲を放り投げて返す。

 

「お前ら、一旦救護班のところまで離れるぞ」

 

「は?」

 

「なんでだよ」

 

「ふむ、理由がわからんと動けんな?」

 

事情を知らない恵と直毘人が問い返す。

真希も訝しげな表情を隠さない。

 

「恐らく宿儺が出る。場合によっちゃ、ここら一帯廃墟になるぞ」

 

七海が小さく舌打ちをし、灰原が頭を掻いた。

 

二人は知っている——潔乃が漏瑚をここから引き剥がすために、宿儺の指を出したことを。

そして恐らく、脹相との戦闘で、虎杖悠仁は重症を負っている。

漏瑚によって宿儺の指を飲まされ、呪いの王が渋谷の地に一時的に降臨することを。

 

 

 


 

 

 

主人公

 

与幸吉のサポートを受けながら、渋谷中を走り回っている。

副都心線B5Fホームで五条が封印されてから逃げ出し、

宮下第一歩道橋で刺された伊地知を助け、

首都高速3号渋谷線渋谷料金所にいる家入に伊地知を担いで連れていき、夜蛾に巾着を渡し、

ヒカリエ改札内で戦っている虎杖と脹相の元へ全力疾走。

疲れるわ!!!

やることが、やることが多すぎる!!

 

 

七海建人

 

努力をしたが、簡易領域は未だに習得できていない。

1周目の本編ルートで習得できたのは、身体入れ替え訓練と主人公による最大効率化トレーニングがあったから。

原作より強くなっていたことで陀艮の攻撃頻度は上がっていたが、フィジカルと術式の理解が深まっていたため、前回よりは余裕があった。

五体満足で陀艮を撃破できた。

 

漏瑚の攻撃が来ると身構えていたが、1人目が灰原に向かって焦った。

後日、潔乃にそれがバレて説教される。

 

 

灰原雄

 

生き残った結果、鬼のように強くなった人。水の呼吸を極めた水柱(違)

陀艮の領域が自分の術式との相性が良いため参戦が決まっていたが、まさかの当日に別任務が入る。

夏油に頼み込んで高速移動できる呪霊を借りた。

夏油も五条の封印が計画されていることは知っていたので、快く貸してくれた。

ギリギリ間に合ってあのタイミングとなった。

 

陀艮撃破後、漏瑚の攻撃が自分に来るとは全く思っておらず油断していた。

後日、潔乃にそれがバレて説教される。

 

 

伏黒甚爾

 

またしてもMVP。

到着が原作より遅れたのは、与幸吉からの情報共有で灰原が先行していることを知っていたから。

「アイツがいるなら大丈夫だろ」

というわけで、他の強そうな呪霊(甚爾基準だと雑魚)を屠りながら現地に向かっていた。

一般人を助けたらボーナスを出すと潔乃から言われているので、やる気を出しまくった。

 

あと、あえて遅れて漏瑚を強襲しようとしていた。

ただ、予定外に灰原が攻撃されたため、トドメを刺すほどの攻撃にはならなかった。

なんだかんだ、七海が攻撃されるという事前知識があったため、さすがの甚爾も手元が狂った。

 

游雲は真希に高額でレンタル中。真希がその金額の高さに定期的にキレている。

 

 

与幸吉

 

こちらも大活躍。

渋谷中に小型呪骸を飛ばし、主要人物には個別で呪骸を張り付かせ情報伝達を担っている。

主人公によって肉体の天与呪縛はなくなっているため、日本全土を捉える射程や強大な呪力はもうない。

今は、彼を縛った17年と5ヶ月13日で得た呪力を消費している。

 

それを使うことに異論はない。

主人公に対する恩と、三輪に笑ってほしい——そのために頑張っている。

 

 

夜蛾正道

 

巾着から取り出した淡く輝く宝石を見て、潔乃だと確信した。

かつての教え子が生きていて嬉しい。が、また何やら厄介なことをやっている。

そういえば、潔乃も大概トラブルメーカーだったことを思い出して内心で頭を抱えている。

ガッテム!!!

 

渡された巾着を確認してため息。

中身については後日、本編で。

 

 

家入硝子

 

伊地知の治療で必死。

運ばれてきた猪野の治療で必死。

潔乃には気づいていない。

 

 

伏黒恵

 

猪野を家入に届けた後、与幸吉のサポートを受けて陀艮の領域へ侵入した。

皆が守ってくれたが、領域の負荷は高くかなり疲弊した。

 

そんな時に、自分の父親が——自分たちが苦労してなんとか倒した呪霊より格上を、あっさり吹っ飛ばすのを見て歯ぎしり。

クソ親父。

 

 

禪院真希

 

いつ游雲を奪われたのかも分からなかった。

使用者の力を純粋に反映する游雲。同じ游雲での攻撃なのに、甚爾と自分では威力が違いすぎて歯ぎしり。

 

同じ天与呪縛のフィジカルギフテッドなのに……私が一番弱い。クソが!!!

ていうかレンタル料高すぎだろ甚爾!!

 

 

禪院直毘人

 

原作では死累累湧軍(しるるゆうぐん)で右腕を食いちぎられていたが、今回は七海が原作より強くなったこと、白菊(潔乃)の兄として陀艮のヘイトが向いたことで、攻撃が緩み右腕が無事だった。

 

漏瑚の攻撃も食らっていない。

原作の運命を変えて生き残った。




渋谷は調べ物が多くて、第三者視点が多くて辛い。
アホな一人称のパッパラパーな話が書きたくてしょうがない。と連載中になってた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。