とある転生者、2周目   作:kotedan50

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渋谷事変④

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラでます
・ネタまみれです
・これまでで最も、激しい捏造、妄想含みます!!(ここ最近ずっと言ってる)
・屁理屈まつり開催中。無理やりな展開だよ。深く考えたら負けだよ!


転生者、渋谷事変に参加する④

与のサポートを受けながらヒカリエ改札内を駆け抜け、長いエスカレーターをアニメの虎杖と同じように一気に飛び降りる。

着地と同時に視界に入ったのは——トイレ入口に座り込んだ虎杖だった。

混乱した脹相がガラスを叩き割る。粉砕されたガラスがあたりに飛び散った。

 

『すまない。サポートしたが重症を負わせてしまった』

 

耳元から聞こえる与の謝罪、そして私の舌打ちが重なった。

くっそ、間に合わなかった。

できれば重症化は回避したかったけど……

慌てて虎杖に駆け寄る私すら気付かない。それほど混乱した脹相。

原作通り、存在しない記憶に脳を焼かれたのだろう。

呆然とした顔でフラフラと、足取りも危うげに立ち去っていく。

 

「与君、念の為、脹相を監視しておいて。万が一の時はサポートを」

『承知した』

 

与に監視を依頼することで、一旦脹相から意識を切る。

原作通りなら、例の存在しない記憶で自分で虎杖との関係性に気づくはずだ。

羂索との縛りがあったから強くは言えなかったが、できる範囲で警告はした。

 

絶望しきった顔しやがって、チッ!胸糞悪い。

 

私の術式で虎杖の時間を操作して怪我を治す事もできるが、今回はしない。

虎杖の中に両面宿儺がいる以上、私の術式が与える影響が読めない。今の虎杖には使えない。

さらに言うと、呪力宝石で回復するのもNGだ。

 

高専側は、一部の人間——五条や夜蛾、七海達を除いて回復呪力宝石の存在なんて知らないからね。

 

高専時代から、ブラフをはってある。

五条経由で高専に流したものは、本当に日常使いの威力が弱いもの。

3、4級術師が持っていると役に立つ、その程度の威力があるものしか流通させなかった。

前世( 伊地知潔乃)時代は、五条経由で知らぬ間に高威力のものが意図せず流通していた。

その経験があったから、今回は早めに五条に高威力は流通させるなと交渉ができて良かった。

だから、高威力のものは私と五条しか所持しておらず、使ったのも監視の目がない場所で数えるほど。

 

つまり、羂索ですら本当の私の呪力宝石の威力を知らない。

今日は使いまくってるけど、いずれも羂索の目がないところでのみだ。

平安時代はまともに宝石も手に入らない環境だったため、呪力宝石を作ることが出来なかったことも幸いした。

つまり宿儺や裏梅も知らない。これはアドバンテージになる。

 

切り札は先に見せるな、見せるならさらに奥の手を持て。

 

どこかの漫画のキャラも言っていたけど、本当にそう思う。

だから、今後のことを考えると呪力宝石は使えない。

 

ちっ、脹相のやつマジで原作通りに、徹底的にやりやがって。

今度会った時に顔面ぶん殴ってやる。

焦りながら止血をする。一旦家入のところに運ぶか?

いや、この出血だと間に合わない。

 

「白菊、さっさと出せ。気配で分かっている」

「っ!!」

 

思わず手が止まった。

虎杖の頬に口が浮かび上がる。宿儺だ。

ちくしょう、このタイミングで出てくるなよ。

ゴクリと唾を飲んでから口を開く。

 

「……なんで分かるんですか?一応きちんと封印してるんですが」

「自分の魂が分からぬわけがなかろう。さっさとしろ。白菊」

 

宿儺の言う通り、私は宿儺の指を1本確保している。

この11年の間に伏黒甚爾に全国を走らせ、原作で裏梅が見つけ出したもの1本を手に入れていた。

渋谷にて、漏瑚を七海達から引き剥がす。そのためだけに手に入れたものだ。

虎杖が脹相戦で重症化しなかった場合は、チラ出しして宿儺に飲ませず、虎杖とともにこの場所を離脱。

宿儺が渋谷での大量虐殺を回避する予定だった。

原作と異なり伏黒恵は降霊甚爾と戦闘はしていない。

摩虚羅戦に関しては回避できるだろう。

だが、もう漏瑚戦は無理だ。

こうなってしまっては仕方ない。今、虎杖に死なれては困る。

渋谷にいて巻き込まれる一般人達……ごめん。

懐から封印布に巻かれたソレを取り出し、布地をゆっくり開く———宿儺の指。

 

「ほれ、さっさとしろ」

 

この状況は与経由で、漏瑚と対峙中の七海達には伝わっているはずだ。

大丈夫だ。彼らは巻き込まれない。

奥歯をギリッと噛み締める。

覚悟を決めて、宿儺の口に指を放り込んだ。

 

 


 

 

宿儺の指を食わせたことで、虎杖の顔に宿儺の文様が浮かんでいる。

宿儺の力が強まり、出血が一気に収まり傷がふさがり始めるのを見て小さく息を吐いた。

 

「チッ! 白菊!指を何本食わせた!!」

 

漏瑚、来るの早いよ。

呆れた顔をしながら視線を向ける。

 

「1本だよ。文句なら脹相に言って。虎杖悠仁を殺しかけたからね」

 

両手を降参のように上げて話を続ける。

 

「私も虎杖悠仁には死んでほしくない側だから。一応、これで死なないと思うけど」

 

舌打ちをしながら虎杖悠仁に歩み寄る漏瑚。

私と呪霊側はお互いに不戦の縛りがあるため、直接殺し合うことは出来ない。

間接的になら殺しあえるのだけど、今はその間接的要素も無い。

お互いに殺したくてしょうがないが、虎杖生存を願う者同士、漏瑚と私は利害が一致している。

 

「指食べさせるの? 止めておいたほうが良いと思うけど」

「黙れ白菊」

 

念の為、声をかけてみるが、やはり原作通り虎杖に指を食わせるらしい。

 

本当は漏瑚が宿儺の指を食べさせるのを無理やり止めたいが、不戦の縛りがあるためそれも出来ない。

次々と漏瑚に指を飲まされるのを、内心でため息をつきながら見つめる。

虎杖の手の甲に浮かび上がった宿儺の口が弧を描くのが視界の端に見えた。

漏瑚は気づいていない。

宿儺の呪力が高まっていくのを感じながら、私は片膝をつき頭を垂れた。

 

「1秒やる。どけ」

 

圧倒的な宿儺の呪力に息が詰まる。

漏瑚もあっという間に距離をおく。

その気配を感じながらも、私は虎杖悠仁———もとい、両面宿儺の隣で頭を垂れた体勢を保つ。

視線なんか上げてみろ、腕か足、あるいは両方が切り飛ばされる。

 

「頭が高いな」

 

次の瞬間、破壊音が響いた。

原作通り宿儺が漏瑚に向けて解を放ったのだろう。

 

「オマエごときが片膝で足りると思ったか?実る程なんとやらだ。よほど頭が軽いと見える」

 

宿儺の視線が私に向いたのが分かった。全身の毛が総毛立つのを感じる。

懐かしすぎる。五条とは違った圧力に冷や汗が吹き出す。

 

「白菊、指1本分、褒めてやる」

 

その言葉に、忌々しいと思いながらも更に深く頭を下げる。

宿儺の声がやけに楽しそうだ。ちくしょう。

 

「面を上げろ。俺を直接見ること、そして発言を許す」

 

その言葉に恐る恐る上体を起こし、宿儺に視線を合わせる。

 

「お久しぶりです。宿儺」

 

次の瞬間、解が飛び私のおかめの仮面と、頬を浅く切り裂いた。

仮面が顔から滑り落ち、地面に落ちる。

同時に痛みと血が吹き出すのを感じるが、表情には出さない。

手足を切り飛ばされるよりは痛くない。平安の拷問に比べたら可愛いもんだ。

 

「俺の従者(玩具)のくせに、相変わらず礼儀を知らんやつだ」

 

「雇用契約は前世で終了したと思ってたので」

 

「今世でもオマエは俺の従者(玩具)だ。努々(ゆめゆめ)忘れるな」

 

「拒否権は……」

 

呟いた瞬間、解でもう片方の頬と耳が切り裂かれた。

 

「……チッ」

 

舌打ちしつつ再度頭を下げると、宿儺がゲラゲラ笑い出した。

いやマジカヨ。羂索が言った通りじゃないか。

宿儺の従者契約、マジで拒否権なんてねぇだろこれ。

しかも、拒否権について口にした途端、心臓が嫌な音を立てて鼓動した。

アレは何だ?嫌な予感がする。

 

「オマエは俺に基本的に逆らえん。そうなっているはずだ」

 

その言葉に、先程、裏梅の言っていた言葉が蘇る。

 

『宿儺様が復活した時は、姉上も従わざるを得ないのですから』

 

あの時は、ただの裏梅の嫌味だと思っていた。

違う、そうじゃない。アレは事実を言っていたんだ。

最悪だ。

羂索だ。

羂索がなにかしたに違いない。

私の魂に宿儺に逆らえないように、何らかの枷を掛けた。きっとそうだ!!!

再度顔を上げ宿儺を睨みつける。

 

「強制されるなら、私は自死を選びます」

「平安の世ならそうしただろうな? 今のオマエはそれができるか?」

 

愉悦の表情を浮かべる宿儺。

虎杖の中からすべてを見ていたのだろう。

高専メンバー、特に五条や七海達と私が親密だったことも、私が呪霊サイドに渋々いる理由も——頭の良い宿儺のことだ、羂索に聞かずとも概ね察している。

そして、私の性格もよく知っている。

心臓が嫌な音を立てる。

私が死ねば五条がまた苦しむ。

また五条の魂に、トラウマを刻みつけることになる。

 

死ぬにしても、それは今じゃない。

どうせ五条のトラウマになるなら、それを避けられないなら、もっと効果的な時に———

 

ギリギリと奥歯を噛んで睨みつけると、宿儺が一層、愉悦の滲んだ笑い声をあげた。

 

「前回と同じようにせいぜい足掻いて俺を楽しませろ、道化」

 

 


 

 

ひとしきり私を嘲笑した宿儺がふっと笑いを止めた。

次の瞬間、不機嫌な表情で視線を流す。

 

「次はオマエだ呪霊、何のようだ?」

 

「用は……無い!!」

 

「何?」

 

「我々の目的は宿儺、貴様の完全復活だ。

今は虎杖の適応が追いつかず、一時的に自由を得てるに過ぎない。

それは自身が一番分かっているハズだ。

虎杖悠仁が戻る前に、やつとの間に”縛り”を作れ!! 肉体の主導権を永劫得るための”縛り”を!!」

 

原作通りの流れを聞き流しながら、先程の動揺を抑えるように深呼吸を繰り返す。

考えろ私。動揺して思考を止めるな。

ゲームのスピードランと同じだ。

突発の事態で、チャート変更なんてよくあることだ。

現時点での私の目的は、渋谷事変での犠牲者の減少、死滅回遊の阻止、新宿での五条の死亡を回避することだ。

 

渋谷の犠牲者に関しては、原作で死ぬはずだった七海を救えたので概ね達成した。

夜蛾に関しても布石は打った。問題なく進めばあちらも大丈夫だろう。

一般人の犠牲者に関しては、ある程度もう目を瞑っている。

渋谷事変が始まってしまった時点で、もうしょうがない。

五条が封印され、宿儺が復活した今、一般人の犠牲者は更に増えるだろう。

 

死滅回遊で発生する死亡者については、これからの行動次第だが五条奪還が叶えば可能。

色々布石は打ったが、五条奪還に向けて五条に格納呪霊を手渡せたこと以外は、現時点で全部失敗している。

このまま行くと、もう原作通りの流れになる可能性が高い。

ならば、ゴールセッティングを変更。——”新宿で五条悟を死なせない”のみに目的を変更する。

 

宿儺を復活させなければベスト。宿儺が復活しなければ、私は自由に行動できる。

原作通りに宿儺が復活したとしても、まだ時間はある。

それまでに、宿儺の完全復活自体に備え、やるべきことをやれば良い。

そして、宿儺が復活した後は、獅子身中の虫になれば良い。

 

”縛り”の条件の詳細はわからないが、宿儺の命令に逆らわないということだろう。

宿儺の性格上、細かく指示は出さないはずだ。ただ、嫌がらせで側に留めることがメインになるだろう。

私の悪あがきも、道化がなにかしてると、楽しみ、基本捨て置く。

直接命を狙うなどしなければ強くは咎めないはずだ。折檻はされるだろうが。

裏梅は基本宿儺様絶対主義者なので、嫌な顔しつつも宿儺に同調するだろう。

 

うん、それが五条の救済につながれば、それでいい。

 

「虎杖の仲間が渋谷(ここ)に大勢きている!! やり方はいくらでもある!!」

 

漏瑚の言葉を聞きながら、次の展開を思い出す。

この言い方は宿儺の好む言い方じゃない。

自分に利がある言葉でも、命令されるなんて”天上天下唯我独尊”かつ”天邪鬼”拗らせてる宿儺は聞く耳持たないだろう。

 

「必要ない」

 

ほらね。こういう奴だよ。こいつは。

これに関しては呪霊側に同情する。

羂索は宿儺と既知の仲。宿儺がこういうのも分かってるけど、もちろん呪霊側には知る由もない。

アイツの口八丁で丸め込んだんだろう。

五条悟の封印ついでに、特級呪霊を取り込みたいだけの羂索。

いいように利用されて、もう一度言うが、本当に同情する。

 

「俺には俺の計画がある。だがそうか……ククッ、必死なのだな呪霊(オマエら) も」

 

宿儺の不機嫌そうだった表情に、先ほどとは違う種類の愉悦が浮かぶ。

悪趣味な悪戯を思いつき、興が乗った。そういった風の。

 

「指の礼だ、かかって来い。俺に一撃でも入れられたら、呪霊(オマエら) の下についてやる。

手始めに、渋谷の人間を皆殺しにしてやろう。二人を除いてな」

 

「……二言はないな」

 

特級二人の会話を聞きながら、生唾を飲み込んだ。

両頬の傷を術式でそっと治し、身構える。

天井組の大バトルが始まる———

 

 

 


 

 

 

結界術を行使しながら、宿儺と漏瑚のバトルを見守る。

壊れるビル。中には一般人が沢山いただろう。

私は凡人だ。

五条ですら全ての人間を助けられない。

私も同じ。

いや、五条が救い上げれる人数よりも、ずっとずっと少ない。

でも、私にやれることは全力でする。

 

「白菊。昔より結界術の腕を上げたな!! 四方一町の範囲を切り離したか!!」

 

漏瑚を切り刻み、ビルの壁を貫通させながら、実に楽しそうに宿儺が笑う。

完全に舐めプ。

珍しく私を称賛しながら、適当に漏瑚をあしらっている。

 

「結界術で俺達を閉じ込め、現実の渋谷と空間を切り離すことで座標をずらし、現実世界の物理的呪力的な干渉を消す。

この結界内でいくら破壊し尽くそうと、結界を溶けば元通りというわけか。

クククッ、被害を拡大させない結界か。無駄に器用なことを思いつく、道化め」

 

そう私は、被害を少なくする目的で、こんな無茶をやっている。

術式を使わず残穢を残さないでなるべく潜んでいたけど、これでパーだ。畜生。

宿儺を復活させたのは、虎杖悠仁を死なせたくないという私のエゴのせいだ。

原作が崩壊するとか、色々理由をつけているけど結局、ただのエゴだ。

あの時点で虎杖悠仁を見捨てれば、宿儺の指、6本がこの世から抹消されていた。

宿儺の弱体化に間違いなく繋がっていた。

でも、それよりも虎杖悠仁の生存を私は優先した。

その結果、発生したことの責任、ケツは拭かないといけない。

つまり、両面宿儺が渋谷で行う大量虐殺の人数を、私ができる範囲で少なくする。

 

だから、今こうして脂汗を垂らしながら、無理やり結界術で宿儺と漏瑚のいる空間を切り離した。

 

なんでこんな事ができるかって?

白菊時代の記憶を取り戻したのと、この11年羂索と一緒に居たからだよ。くそが。

白菊時代の記憶を取り戻した時に、羂索から学んだ呪術、特に結界術関連の知識が復活した。

平安の猛者たちと戦った経験値も同様。

 

更に、11年間ここぞとばかり羂索に師事し、呪術、特に結界術の教えをさらに受けた。

羂索はサイコパスのドブカスだが、呪術、特に結界術は天元に次ぐ実力の持ち主だ。

そんな彼から学ばない手はない。利用できるものは何だって利用する。

素直に教えるかって?

 

羂索は術師らしく狡猾で、冷徹で、残酷な男だが、面白いことが大好きな男だ。

そして、ああ見えて彼は前向きに進歩しようと努力する人間が好きだ。あんなサイコパスなのに。

呪術を学びたいと、私が素直に頼み込めば面白がって色々教えてくれる。

教えてくれなさそうな部分の知識は、現代知識で羂索が知らない辺の知識を出して知識欲を刺激したり、

私の術式の研究と言えば、面白いように私に知識を授けてくれた。

 

……すごくわかりやすかった。

原作で呪術廻戦を読んでいた時を含め、ここまで教えるのが上手い人間に会ったこと無い。

受験の時に会いたかった!

すっげーわかりやすいんだよマジで。

 

うん、ぶっちゃけ五条より先生らしいんだよな。こういうところ……

サイコパスのドブカスうんちなのが悔やまれる。

呪術絡まなかったら性格が悪いだけで、好奇心が旺盛で何事も楽しめるポジティブな男なのに。

……いや、こいつが現代に居たら、MADサイエンティストになって、悪の科学者になってたんじゃね?

人間が破滅するウィルスを考えて、そのワクチンを作る。

その理論が正しいか、ワクチンの効果があるかを確かめるために、そのウィルスを世界中にばら撒くタイプだ。

どこの20世紀少年だよ。

 

こんなアホなことを考えながら、更に脂汗を垂らす。

アホなこと考えて現実逃避でもしないと、キツくてしょうがない。

 

こんな高度で広範囲な結界術、技術はともかく、本来なら私の呪力のキャパをとうに超えている。

袈裟の内側で呪力宝石がパリンパリンと音を立てて崩れるのを感じる。

呪力をパンパンに詰めた呪力宝石から呪力を逆流させ、取り込み体内に循環させる。

私専用の呪力バッテリー。呪力が逆流する苦痛に歯を食いしばりながら結界を維持する。

この結界は、対象を現実から少しだけ軸をずらして配置するだけのものだ。

それだけでも世界そのものに干渉するので呪力の消費は半端ない。

それでつじつまを合わせている。

バッテリー呪力宝石の量的に、さほど時間は持たないがやらないよりはマシだ。

 

渋谷の路地に漏瑚のマグマが溢れ出し、宿儺の解で街が切り刻まれる。

あーまたビルが丸ごと一つ壊れた。

私の結界内だから良いが、現実世界だったら大惨事だ。

 

今頃、宿儺はネットミームにもなってた「頑張れ頑張れ」とか言ってんだろ。多分。

百鬼夜行で夏油と乙骨の戦いを見たときも思ったけど、特級はほんと化け物。

特撮の大怪獣バトルだよほんと。

象がタップダンスしてるのをアリンコの立場で、見守る側の気持ちにもなってほしい。

 

……でも、ここまでくれば状況的にはあと少し。

漏瑚の極ノ番「隕」の巨大隕石、そして最後の火力勝負でこの二人の勝負は決する。

呪力枯渇で震える指先で手印を結び、結界を維持し続けた。

 

 


 

 

 

膝から崩れ落ちた。

そのまま地べたに横たわるようにして倒れ込む。

同時に私の結界が解け、灼熱の焼け焦げた渋谷が消失し、現実の渋谷に戻る。

身体が酸素を欲し、荒い呼吸が止まらない。

まるで、フルマラソンを全力疾走しきったあとのような疲労感。

なんとか、宿儺と漏瑚の戦闘による渋谷の大破壊を阻止した。

 

呪力の使いすぎでの身体の負荷がヤバい。明らかに呼吸がおかしい。

呪力バッテリーの宝石からの呪力吸収で、体中の呪力回路が傷ついており、激痛が走る。

くそ、羂索にバレないようにしか研究ができなかったから、ここらの副作用の調整ができなかった。

 

渋谷のアスファルトの冷たさが心地よい。

ぐったりと横たわったまま、宿儺と漏瑚の様子を見守る。

燃え尽きる漏瑚と宿儺の最後の会話シーン。

原作で見た時はいいシーンだったと思ったが、今は正直、殺意しか無い。

お前等が大暴れしたせいで、この有り様だ。

全身の激痛だし、頭痛もひどい。さっきから筋肉の痙攣が収まらない。

呪力枯渇と無理やり呪力宝石でブーストした時の諸症状だ。

あまりのキツさに内心で舌打ちしていると、アスファルトに影がさした。

 

視線を流すと裏梅だった。すっごい不機嫌そうな顔。

宿儺様の前で不敬だとでも言いたいんだろう。うるせーよ。

宿儺に言え、宿儺に!

 

でも、私が疲弊しきってることは分かっているらしい。

特に何も言わず、視線で状態をサラッと確認。概ね問題ないと判断したのだろう。

視線をそらして宿儺の側に歩み寄り、片膝をつき頭を下げる。

 

「誰だ」

 

戦いの後の高揚感を邪魔された宿儺の不機嫌な声。

 

「お迎えに上がりました。宿儺様」

 

静かな声。

あー元姉だから分かってしまう。

裏梅は本当に今嬉しくてしょうがない。感極まったのを抑えてるときの声だ。

そんな裏梅に、ジロリとした視線を向けたあと、宿儺がかすかに目を見開く。

 

「裏梅か!!」

 

こちらはこちらで、本当に嬉しそうな声。

声に再会の喜びがにじみ出てる。

ここまで、ご機嫌な宿儺の声なんて殆ど聞いたことがない。

 

「お久しうございます」

 

最悪の主従の再会シーンをアスファルトに横たわったまま眺めていると、宿儺が私のそばに歩み寄ってきた。

 

「いい加減おきろ道化。主人の前で不敬であろう?」

 

私の頭をグリグリ踏むのやめてもらえませんかね。

スニーカーの靴底が地味に痛い。

さっきまで私を優しく癒やしてたアスファルトにゴリゴリ擦れて、それも痛い。

それを見て、裏梅が楽しそうに笑う。なんで笑うのよ。

 

「……まぁいい。この3人が久方ぶりに揃っためでたき日だ。許す」

 

ガツンと強めに頭を蹴り飛ばした後、裏梅に視線を向ける。

裏梅は心得たとばかりに、私を抱き起こし、座らせ何らかの薬湯を渡してくる。

素直に受け取り、一気飲み。うげ、まずい。

 

「先程の結界は姉上が? 何をしたのですか?」

 

結界の外にいたので効果がわからなかったのだろう。

口直しのペットボトルの水を私に渡しながら、訪ねる裏梅から視線を逸らす。

言いたくねー、絶対バカにされるだろ。

 

「この道化、俺と呪霊の戦闘から街を守る結界を貼りおった」

 

言いたくないと思ってたら、速攻宿儺がバラした。勘弁してくれ。

これまた心底楽しそうに私を馬鹿にした口調で話す宿儺に、裏梅の表情が固まる。

数拍おいて座った目で睨まれる。

 

「姉上、貴方は阿呆ですか?」

 

ほんと、私の元弟は、人の心がねーわ。

じろりと睨みつけてから、ペットボトルの水を口に含んだ。あー生き返る。

裏梅の薬湯の効果だろう、荒い呼吸と筋肉の痙攣が収まり始めた。

持たれていた裏梅の腕の中から、離れふらつきながら自分で座り直す。

 

「みっともなく結界を維持する様子は、愉快な見ものだった———」

 

楽しく私をバカにしていた宿儺の言葉が途切れる。

今までのとは違う、戦闘中に見せる鋭い表情。

え、ちょっと待ってすごく嫌な予感がする。

 

「宿儺様?」

 

「急用だ」

 

裏梅がその変化に気づき、訝しげに宿儺に声を掛ける。

その問いかけに、背中を向けあっさりとした返答をする宿儺。

え、まさか、ちょっと待て、この展開は!!

 

「……左様で…」

 

ほんのりと落ち込んだ様子の裏梅をよそに、そっと耳に装着している、与幸吉の通信呪骸———

それを髪をかきあげるふりをしてタップした。与からの音声がONになる。

 

先程までは戦闘が続いていたため、意図的に音声を切っていた。

基本骨伝導だから聞こえないはずだけど、万が一も有るからね。

だが今はソレどころじゃない。情報が欲しい与なら知ってるはずだ。

私にしか聞こえない音量で、与幸吉の声が聞こえる。

 

『まずい状況だ。伏黒恵が両面宿儺の気配を察知し、虎杖悠仁を心配して七海さんたちから離れた。

結果、重面春太に奇襲されて重症。今、魔虚羅の調伏の儀を行ってる』

 

恵のアホ!!!! なんで突っ走るかな! 私ちゃんと甚爾経由で状況伝えたよね???

そして七海のバカ!!!! 重面はアレほど殺しておけと!!!!

心のなかで伏黒恵と七海を罵倒しまくる。

 

「俺が自由になるのも、そう遠い話ではない。ゆめ準備を怠るな。またな、裏梅、白菊」

「……御意に。お待ち申しております」

 

宿儺についていきたいが、呪力も体力もすっからかん。

座り込んだまま、裏梅とともに宿儺を見送る。

 

もう先程と同じ結界は貼れない。

 

私が守りきった渋谷のネオンを見上げる。

全身が軋む。指一本動かすのも億劫なのに、思考だけがぐるぐると回り続ける。

 

なんとか、このエリアの崩壊は回避した。

でも、これから発生する、宿儺VS魔虚羅の大破壊に関しては、もう私は何も出来ない。

虎杖に指を食わせたのも、宿儺が渋谷で暴れたのも、全部——私のエゴの結果だ。

そのエゴの結果、虎杖にトラウマを刻むことになる。

 

ごめん、虎杖。

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