渋谷事変⑥ 閉門
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラでます
・ネタまみれです
・これまでで最も、激しい捏造、妄想含みます!!(ここ最近ずっと言ってる)
・屁理屈まつり開催中。無理やりな展開だよ。深く考えたら負けだよ!
・コロコロ視点変わります
新田に釘崎を任せ、そこで別れた。
新田には簡単に、「敵方に狙われている。だから、私の名前はなるべく出さないように」とだけ伝え、今は一緒に行動できない旨も告げてある。嘘ではない。
残念そうにしながらも素直に頷いた姿を見て、前回——伊地知潔乃だった頃に、補助監督の後輩だった新田明を思い出した。
姉弟だけあって、根っこの善性はよく似ているらしい。
今世ではまだ会ったことはない。それでも、多分前回と同じように、ちょっとヤンキー気質だけど気持ちのいい人間なんだろうと、自然にそう思えた。
歩きながら、再度日常使いの宝石から呪力を吸収する。
呪力タンク用の宝石よりも少ない呪力の逆流だが、それでも痛いもんは痛い。
インフルとかのワクチンの注射を打つ時にあるじゃん?
アレって、刺される瞬間の痛みより、薬液を入れられる時が痛いでしょ?
そして、注射のあとも地味にじんじん鈍く疼くやつ。
あれと似た種類の痛みが——ただしそれより激しい痛みが、ずっと全身を苛んでいた。
もう全身痛すぎる。
早くお風呂に入って、酒をかっくらって、布団に入って寝たい。
ぎゅーっとヨギボーを抱えて、頭を擦り付けて痛い痛いと愚痴りながら寝たい。
ため息をつきつつ、虎杖&東堂vs真人の戦いで荒れた連絡通路を進む。
彼らの足跡を視線でなぞり、後を追うように歩きながら、与に状況確認をする。
『伏黒恵は家入さんの治療を受けて無事だ。
禪院班のメンバーは、みな渋谷料金所まで下がった。宿儺と魔虎羅の戦いを見て皆唖然としてたぞ。
伏黒さんは予定通り動いてる』
虎杖たちが戦うA0出口方面通路に移動してる最中に与から、重体の伏黒恵がいつの間にか渋谷料金所の壁に配置されていたと連絡は受けていた。
原作通りに宿儺がきちんと恵を治療してくれたおかげで、家入の治療も間に合ったらしい。
原作ブレイクを回避できてホッとする。
「建人さんと灰原さんにも、予定通りに動いてと伝えてください。
あと、そろそろ与君も準備を、その後は予定通りに撤退してください」
『承知した。
——死ぬなよ』
地上へ続く大穴を見上げる。
原作で真人が開けた大穴だ。戦場はすでに地上へと移っている。
原作通りなら、おそらく戦いはクライマックスだ。
何かを叩きつけるような音、呪力のぶつかる気配。
虎杖と真人の声が聞こえる。
「……お互い生きてまた会いましょう。じゃ、私は予定通りに向かいます」
瓦礫を伝って地上に出ながら、与との通話を中断した。
22:28
渋谷駅 B3F
田園都市線ホーム
整備用の非常口のくぼみに身を埋め、俺は震えていた。
訳が分からない。
存在しないはずの記憶が、俺の脳を焼く。
木漏れ日が差し込む庭。
仲良くテーブルを囲む俺たち。
紅茶を飲む壊相がいて、料理に目を輝かせる血塗がいて、
「ほら、兄ちゃんも!!」
何故。
何故、
150年暗闇の中、
封印されたままの暗闇と寒さに耐えられたのは、兄弟たちがいたからだ。
そして今回、偽夏油の手によって受肉した時のことを、思い出す。
偽夏油の手で受肉した、俺たちの肉体。
それを用意したのは白菊だった。
生きた人間そのものではなく、白菊が複製した肉体。
維持装置でかろうじて生命活動をしているだけの、魂のない器。
最初は生きた人間を使う話だったらしい。
だが白菊が「実験したい」と言いだし、それを面白がった偽夏油と真人が乗った。
そして、それが実行されたと、真人から聞いた。
「恐ろしい女だよね。優しいんだか残酷なんだか……全く分からなくてあー気持ち悪っ」
真人はそう言っていた。
だが、違う。
——きっと白菊の優しさだ。
人を奪わずに済むように——そうしたのだと、今なら分かる。
白菊は心底、呪霊側に居ることを厭うていた。
口にも態度にも、それが出ていた。
彼女は俺達の三兄弟の立場を理解したうえで、わざわざあの肉体を用意してくれたのだ。
人間側に立てるように。
そして、白菊が作った肉体を使って受肉した俺達三兄弟は、白菊との繋がりができた。
だからこそ、俺の術式の副次効果で白菊の存在を強く感じるのだろう。
白菊が用意した肉体だが、受肉体としての適性があるわけではなかった。
そのため、俺達は生前の半呪霊としての姿そのままだった。
壊相と血塗は、生前の呪霊側の特徴が色濃く現れていた。
この姿では人の世界では生きられない。
それを、偽夏油の目を盗んで、ひっそりと幻覚の呪力宝石——普通の人間に見えるように——を渡してくれたのも彼女だ。
彼女はいつだって、俺達三兄弟が人間側に紛れ込めるようにしていた。
それでも——
「
「大丈夫かな。アイツら胡散臭いよ、兄さん。信用できるのは
「兄者、
肉体を作ってもらった恩、そしてさりげない白菊の優しさには、2人も気づいていた。
だから、壊相も血塗も白菊を母と呼んだ。
「……白菊に恩があるのは確かだ。だが、呪霊が描く未来のほうが、俺達にとって都合がいい。
ただそれだけの事だ。受肉の恩は忘れろ」
だが、俺は恩義を感じながらも、繋がりを感じながらも、呪霊側につくことを選択した。
真人からのお願い事を聞き、八十八橋に向かう二人見送りながらため息をつく白菊。
「脹相さん。あなた、この日のこと後悔しますよ。賭けてもいい。
縛りましょうか。
後悔しなかったら脹相さんの勝ち。何でも言うこと聞きます。
でも、後悔したら私の勝ち。私の言うこと聞いてくださいね」
結果、壊相と血塗は虎杖悠仁と接触し、殺された。
「虎杖悠仁を殺すな。と言っても、長男ですからね。
縛りを破ってでも聞かないでしょうね。
なら、なるべく必要以上に人を殺さないで。必ず後悔するから」
怒りに震える俺を見て、白菊は悲しげに、どこか諦めたように目を伏せた。
「……詳しくは言えないけど、本当なら虎杖悠仁も殺さないほうがいい。
——必ず後悔するよ」
今になって、その言葉を思い出す。そして——
「どったの兄ちゃん。具合悪い?」
存在しない記憶の中で、虎杖悠仁が心配そうに俺を見ていた。
「行かなければ」
ゆっくりと身を起こす。
「虎杖悠仁、オマエは何者だ。
知らなければ、俺は何だ?」
そして、
地上に出た私はまっさきに東堂の下へ向かう。
魂の喝采の直後なのだろう、横たわったままぐったりした様子の東堂の容態を確認する。
「Ms.潔乃か。先程は失礼した。はじめまして東堂葵だ」
普段あんなに気持ち悪いくせに、こういう時にまともなの、やっぱ狂ってるな東堂って。
原作通りだ。
「九十九さんから聞いてるかもだけど、私は七海潔乃。改めてよろしく」
苦笑しながらも応え、チェックを続ける。
手の爛れを確認する。これは痛いだろう。
「俺の
手のひらを見つめ、どこか諦めたような表情をしている東堂。
術師らしく戦った結果。
とはいえ、ずっと自らとともに合った術式が失われるのは辛いものがあるだろう。
——まぁ、実は生きてるけどね。原作では。
あと、私なら治せる。
私はしれぇっと何でもないように言葉を紡ぐ。
「それ、治せますよ」
「は?」
私の言葉にぽかんとする東堂。
肉体修復できるのを知ってるのは、限られた人間だからな。
これに関しては、九十九すら知らなかったか。
羂索のもとで何回か使ったはずだけど。それ天元見てるはずなんだけどな……
天元の中の星漿体達、ほんと好き勝手喋ってるんだろうな。
興味のない話はしないのかもしれない。
そういえば星漿体って天内みたいな年頃の子なら、そうなるか。
東堂とこうして繋がれたのは、本当に偶然に近かったのかもしれない。
「術式も、腕も治せます。
が、一つ確認をさせてください。
これ本当に治していいんですか? 私これチャンスだと思ってます」
原作の東堂は片腕を失ったことで……うん、あの絵面のひどいビブラスラップを片腕につけた、愉快な人間になっていた。
見た目は愉快だが「不義遊戯」改はエグい。
発動条件の拍手を、金属片と木箱の衝突に変更。
1秒間に約50回の入れ替えを行うとか。
あの両面宿儺ですら入れ替えに慣れるのは不可能と断言していたレベルだ。
羂索を乙骨が倒した時も、東堂の術式による入れ替えで、有利に戦闘を運んでいた。
そして、「
なので、正直この術式がなくなるとすっごく困る。困るんだが……
私の術式を知ってる人間からしたら、なんで東堂の腕を治さない案件になっちゃうんだよね。
「私は人の体を直すことができるので何となく分かるのですが、まだ術式は完全に死んでない感じがします」
もちろん嘘だ。ただの原作知識からの補完。
実際に東堂の術式は完全に死んでない。その事実に気づいて、ビブラスラップのアレが爆誕したわけだし。
私の言葉に驚いたように目を見開く東堂。
「術式が完全に死んでないなら、片腕を失った不利を縛りにして、新しい拡張術式の足がかりにする。
とかも可能と思いますが、どうしますか?」
だから、こんなふうに一応、腕を修復させないように、あるいは拡張術式にたどり着くように、べらべら喋っている。
「拍手が発動の条件ですよね。
それ、拍手以外でも……たとえば連続して振動を起こせる道具とかなら、いけるのかな?」
IQ53万の男だから、気づいてくれないかなー
そう思いながら独り言でブツブツ喋っていると、東堂がハッとした顔をした。
「Ms.潔乃。ぜひ、腕を直してくれ!!
面白いことを思いついた。俺の不義遊戯は更に進化できる」
あ、不確実なそっちの方にいっちゃったか。
まぁ、しょうがない。
腕を直しても東堂ならやってくれる。
なんかそんな感じあるし。
若干現実逃避はありながらも、原作者から絶対に死なない男認定されてたやつだ。
メタ知識を信じよう。
「いいですよ。ただ一つだけ条件をつけさせてください。それは——」
私の条件に、東堂が案外あっさりとOKを出したのは助かった。
お互い縛りを結んでから、治療を開始する。
呪力は日常使いの宝石で回復させているが、通常よりかなり少ない。
それでも、他人の身体の時間を戻す程度なら問題ない。
無機物よりは消費するが、11年間の修行で呪力の効率はだいぶ上がった。
腕と術式が修復されていく様子——正確には時間が巻き戻っているのだが——に、東堂が驚愕の表情を浮かべる。
それをガン無視して、治療を終えた。
修復された腕を確認するように、己の術式を確認するようにグーパーを繰り返している東堂。
ま、無理もないか。これは驚くよね。
さてと、次に行かねば。
「じゃ、手筈通りに。私は行くところがあるので」
「ちょっと待ってくれMs.潔乃。聞きたいことがある。大事なことだ」
立ち上がったところで、東堂が声をかけてきた。
東堂がやけに真剣な表情で私を見上げている。
九十九から何か聞かされていたか?
ちらりと視線を向ける。
「なんですか?」
「どんな男が
「……」
スンっとなる。
あぁ、コイツそういうやつだった。
そういえば、原作でもそうだった。
呆れつつ東堂を見下ろす。
そういや、今思い出したけど、コイツの好きなタイプって
……私じゃん。
たぶん、東堂の性癖は九十九からきてるんだろ。
七海潔乃の私は、九十九と同じような高身長、私は177センチの爆裂スタイルだ。
そしてお胸もお尻もたっぷりな方だし。更に同じ金髪だしな。
前回、伊地知潔乃の時は、
『死にゲーを一緒にやってくれる人。フロムゲー信者だと尚良し』
っと素直に答えて、なんか気に入れたんだったな。
東堂の好みどストライクな今、ここでコイツに余計に好かれても面倒だな。
前回と違う、こいつが絶対に気に入らなそうなタイプを言っておくか。
「渋いオジサン!
ま、これも嘘じゃない。
見た目的な
22:36
渋谷警察署宇田川交番跡
「助けてあげようか。真人」
低く落ちたその声は、場違いなくらい穏やかだった。
地べたに這いつくばる真人。
その前に、袈裟姿の男が静かに立っている。
見覚えのある顔だった。
五条と仲が良く、同じ高専教師の夏油傑。
ただし、虎杖の知る夏油とは決定的に違う。
夏油はこんな笑い方をしない。
夏油の額を走る生々しい傷痕なんてない。
強烈な違和感。
与幸吉から聞かされていた通りの男。
偽夏油。五条を封印した張本人。
「…返せ。五条先生を返せ!!」
叫ぶと同時に、虎杖は地面を蹴っていた。
「鯰が地震と結びつけられて、怪異として語られたのは江戸中期。
地中の『大鯰』が動くことで地震が起こると信じられていたんだ」
偽夏油は、襲いかかられながらもまるで授業でもするみたいに話す。
次の瞬間、虎杖の足元に大きな穴が開いた。
「な!?」
反射的に身を固くする。
落ちる、と思った。
だが、次の瞬間には背中が地面を打っていた。
何が起こったか分からず呆然とする虎杖。
落ちたと思った。
でも、気がついたら、ただその場でひっくり返っていただけだった。
「落ちたと思っただろう。傍から見れば、君が勝手にひっくり返っただけなんだがね」
穏やかに淡々と語り続ける偽夏油。
予定通りの反応だと言わんばかりの口調だった。
「呪霊操術の強みは手数の多さだ。準一級以上の呪霊を複数使役し、術式を解明・攻略されようとも、また新しい呪霊を放てばいい。勿論その間を与えずに、畳み掛けるのもいいだろう」
ただ虎杖の正面に立ち、呪霊操術の有用性と戦い方を説明する。
予備動作も無く、百足のような呪霊を呼び出し、真っすぐ虎杖へと向かわせる。
回避するまもなく、虎杖はそれに絡みつかれた。
「んなもん!!」
天性の強い肉体で百足の呪霊を引きちぎろうとした瞬間、再度足元に大穴——鯰の呪霊を呼び出し虎杖の体勢が崩れた。
それを何の感慨もないように眺めながら、話を続ける。
「去年の百鬼夜行に出た呪霊。アレを放ったのは私だけど、ちょっと数も質も中途半端だったね。
もともと高専の非常時の動きを判別するために行ったからいいんだけど、
流石に高専側に1人の死者すら出ていないとか。
我ながら甘かったと認めよう——君には関係のない話だったかな」
百足の呪霊に身体を食いつかれ全身血まみれになっても、虎杖は意識を保っていた。
「…返せ!!」
喉の奥から搾り出すような声だった。
「我ながら流石というべきか。宿儺の器タフだね」
自分の実験の結果が予想以上に上手くいっている様に、思わず称賛の声をあげる。
虎杖のその頑強さに目を細め、心底嬉しいという笑みを浮かべる偽夏油。
白菊とは今度話さなくっちゃ。私の作った最高傑作の出来について。
作り方とかも共有しないとね。
内心で親友の不機嫌そうな顔を思い浮かべ、偽夏油は笑う。
彼女は彼の行いに眉をひそめるが、その技術自体については否定しないし、理解も早かった。
宿儺のように術式マニアというわけではない。
ただただ、元の気質が研究者なのだろう。
新しい知識があると、本質的に分析し解析し、自分の中で腹落ちさせる。
技術の使い方に対する倫理観が硬い部分はあるが、技術そのものは否定しない。
彼が白菊を気に入った一端がそこにある。要するに、研究者仲間として話していて居心地がいいのだ。
そんなことを考えている偽夏油を狙い、不意打ちをかける真人。
だが、あっさりと偽夏油に躱された。
その行動は完全に予想されていたらしい。
あまりにも簡単に、その呪霊操術に囚われていく。
夏油先生の偽物なのに、マジで術式まで使えるのかよ!
与幸吉から情報としては聞いていても、その事実に愕然とする。
夏油の身体。夏油の術式。けれど中身はまったく別物。
そんなものを前にしている現実が、どうしようもなく気色悪かった。
真人の身体が圧縮されるように歪み、黒く凝縮していく。
あれほど好き勝手に人を弄んでいた呪霊が、人の手でただの球体になっていく。
その光景には、ざまあみろという気持ちすら湧かなかった。
ただただ呆然とそれを見守る虎杖。
目の前であの真人が真っ黒な玉になったところで、ゆっくりと再び虎杖に視線を向けた。
「続けようか。これからの世界の話を」
「『極ノ番』というもの知っているかい? 『領域』を除いたそれぞれの術式の奥義のようなものだ。
呪霊操術極ノ番『うずまき』取り込んだ呪霊を一つにまとめ、超高密度の呪力を相手にぶつける」
偽夏油の講義は続いていた。
その状況が自分でも面白くなったのか、偽夏油は思わずクツクツと笑いをこぼす。
虎杖には分からないだろうが、偽夏油は、最高傑作である自らの息子を前に、術式を教えるのが楽しくて仕方ない。
かつて虎杖香織として虎杖悠仁を産み、柔らかな赤子を腕に抱き、母乳を与え、おしめを替えた日々を思い出す。
そして今、世の母親らしく、子供に物事を教えている。
そんなことをしている自分が、面白くて楽しくて仕方なかった。
「……何笑ってんだよ」
虎杖は苛立ちを抑えられない。
「いや、すまない。急にらしいことを始めてしまったなと思って。『うずまき』の話だったね。
『うずまき』強力だが、呪霊操術の強みである手数の多さを捨てることになる。だから始めはあまり唆られなかったんだ。ただの低級呪霊の
虎杖は仲間たちが駆けつけて来る気配を感じ、ただ、黙って偽夏油の話を聞いていた。
今は…待つ!!
顔には出さず、ただ偽夏油を睨みつける。そして、チャンスを待つ。
「でも違った。その真価は準1級以上の呪霊を『うずまき』に使用した時に起こる、術式の抽出だ」
ゴクリと呪霊玉を飲み込む偽夏油。顔色一つ変えずに天を見上げる。
「馬鹿だな。君が感じた気配に、私が気づかないと思ったのかい?」
西宮の合図に、加茂の弓矢による攻撃。
間髪入れず、真依の遠隔からの狙撃。
見えない角度から、絶妙な間合いで重ねられる連携。
だが、それらを偽夏油は軽く防ぐ。
まるで予想していたとでもいうように、危なげなく捌いていく。
続けざまに飛び込んだ三輪のシン・陰流「抜刀」すらも素手であっさりと受け止めた。
掌で刀身を握り込み、そのまま力任せに砕く。
偽夏油は無表情で三輪を見下ろし——
「極ノ番『うずまき』」
「待て!!」
虎杖が絶叫し走る。西宮が三輪の救護に向かう。
だが、それが届くより早く、轟音を立てて極ノ番『うずまき』が三輪を飲み込んだ。
「……シン陰か…よかったよ。少しは
日下部が極ノ番「うずまき」を刀一本で受け止め、三輪を守りきっていた。
同時に前線へ出てきた庵へ、三輪が怒鳴りつけ、そのまま口喧嘩が始まる。
傷だらけの虎杖のもとへは、パンダと京都校の加茂憲紀が駆けつけていた。
見慣れた夏油の姿を前に、パンダも加茂も困惑を隠せない。
偽物であり、獄門疆を持っていると分かっていても、その中身が何者なのかはまったく分からない。
混乱の熱は、ますます高まっていた。
脹相がその場に駆けつけたのは、ちょうどそのタイミングだった。
「やぁ、脹相」
薄い笑みを浮かべ、偽夏油が脹相を見る。
それだけのことなのに、脹相は全身の血がざわつくのを感じた。
胸の奥に沈んでいた不快感が、ぬるりと這い上がってくる。
嫌な予感がした。
理由は分からない。
だが、本能に近いところが警鐘を鳴らしている。
心臓が、どくん、どくんとやけに大きな音を立て始めた。
「アイツは…!?」
虎杖が脹相に気づき、驚いた表情を浮かべている。
視界の端でその顔を捉えていても、それに構う余裕はなかった。
鼓動はどんどん速くなる。
目の前の男から、目が離せない。
俺には4人の親がいる。
母。
母を孕ませた呪霊。
今回、受肉体を用意してくれた白菊。
そして、産みの母と、母を孕ませた呪霊、その間に血を混ぜた、
母を弄んだ、憎むべき――
偽夏油の顔と、憎むべき男の面影が一致する。
容姿は全く違う。
だが、その目つきが。
その笑い方が。
——額を走る生々しい傷痕が。
「気づいたようだね」
「そういうことか!! 加茂憲倫!!」
叫んだ瞬間、腹の底に沈んでいた憎悪が一気に噴き上がる。
周囲がその名にざわめく。だが、それを気にする余裕はない。
脹相は術式の影響で、血のつながった弟たちの異変を感じ取ることができる。
そして、「死」それは生物にとって、最期にして最大の異変。
脹相はあの時、虎杖悠仁の「死」を強烈に感じ取ってしまった。
つまり悠仁も、血の繋がった俺の弟……!!
「よくも……!! よくも俺に!! 虎杖を!! 弟を!! 殺させようとしたな!!」
激昂する脹相から加茂憲倫を庇うように、裏梅が滑り込んでくる。
「引っ込め三下。これ以上私を待たせるな」
「どけ!!! 俺はお兄ちゃんだぞ!!!」
脹相の「穿血」を合図に、戦闘が始まった。
その穿血の速さに、裏梅ですら手のひらで受けることしかできない。
脹相はその勢いのまま押し切り、偽夏油――加茂憲倫へと襲いかかる。
穿血、血刃、苅祓を巧みに使い分け、偽夏油との距離を一気に詰めると、そのまま肉弾戦へと持ち込んだ。
「無理するなよ。疲れているだろ」
加茂憲倫が薄く笑う。
「だから何だ。それが弟の前で命を張らない理由になるか?」
脹相に迷いはなかった。
弟を前にして、退くという選択肢そのものが最初からない。
激しい二人の戦闘を見ながら、パンダが困ったように虎杖へ尋ねる。
「一応聞くけど、他人だよな?」
「他人どころか一回殺されかけてるよ」
すでに服としての機能を失った布切れを、腕から取り外しながら虎杖が答える。
まったくもって訳が分からない。
首を傾げつつも、先程までとは違って脹相から殺気を感じないのは確かだった。
「東堂といいヤバいフェロモンでも出てるんじゃないのか?」
「だが、おかげで場が乱れた。この機に乗じるぞ」
呆れたパンダが軽口を叩き、加茂がこの好機を逃すまいと身構え得る。
虎杖もそれに同意し、それぞれが体勢を整え始めた。
パンダの作戦に皆が同意し——
「なんとしてでも、獄門疆を奪い取るぞ」
攻撃に移りかけた、その瞬間だった。
全員が同時に、ぞくりとした悪寒に襲われる。
「氷凝呪法『霜凪』」
裏梅の氷の術式によって、脹相も虎杖たちも含め、辺り一帯が一気に氷結した。
下手に動けば身体が割れる。そう直感できるほどの冷気に、誰も動けなくなる。
「殺すなよ。
「全員生かす理由になるか?」
加茂憲倫が裏梅に注意するが、裏梅にはまったく聞く気がないらしい。
脹相の穿血で受けた手のひらの傷を反転術式で治しながら、不機嫌そうに応える。
それでも脹相は赤鱗躍動で氷を溶かし、拘束を破ろうとする。
その脹相に裏梅がとどめを刺そうとした瞬間、宿儺の器であるがゆえに氷結が甘かった虎杖が、無理やり氷を砕いて動き、その一撃を逸らさせた。
空中にいて『霜凪』を回避していた西宮が、付喪操術『
かまいたちのような斬撃が2人を襲うが、裏梅が軽く素手で軽く払いのけた。
「クソ!! 」
苛立ちに舌打ちする。
素手で払われるとか溜まったもんじゃない。
それでも、先輩らしく虎杖に作戦を伝える。
「虎杖君!! 今動けるのは私達だけ。歌姫先生の準備ができるまで時間を稼ぐよ!!」
だが、裏梅がさらに動いた。
白菊の心をいつまでも繋ぎ止める高専関係者が、気に食わない。
「
この際だ。
ここにいるのは、虎杖悠仁以外、全員殺してしまえばいい。
「氷凝呪法『直瀑』」
再び全員の身体が氷によって縫い止められる。
直後、頭上から氷柱のように鋭い氷塊の雨が降り注いだ。
殺られ――
その場にいた全員が、思わず目を固く閉じた。
だが、いつまで経っても衝撃が来ない。
薄っすらと目を開けると、
脊椎骨が連なったような宙を舞う式神と、タコのような呪霊が、虎杖たちを氷塊の直撃から守っていた。
「本当に夏油君と同じ顔だね。君にも聞いておこうか、どんな女が
「やれやれだ。私の顔を使って、悪事を働くのは止めてもらいたいね」
「九十九由基!! 夏油傑!!」
二人の特級が、虎杖たちを守るように立ちはだかっていた。
全く持って面白くない。
群馬の任務から飛んで帰って——本当に呪霊で飛んで戻ってきた——けど、本当に私と全く同じとはね。
本当に自分と全く同じだった。
違うのは、身にまとっているものが高専の任務服か、五条袈裟かという点だけだ。
まじまじと目の前の男を見つめ、やれやれとでも言いたげな仕草を取る。
薄っすらと笑みさえ浮かべた夏油が、あえて軽い口調で話し出す。
「ところで、何が目的なんだい?私の顔を使ってまでやりたいこと、教えてもらいたいね」
調査をしていた元盤星教の団体で、自分とそっくりな人間が居ることに気がついた。
そして、その人間に潔乃が関わっていることも。
七海・灰原・伊地知・伏黒の話を盗み聞いて、それが確定情報だということも。
知ってはいた。
その時も不快に思った。
だが、眼の前で実際に見る不快感は、その比ではない。
表情には出さず、内心で舌打ちする。
しょうが無いとは言え、潔乃ちゃんも厄介なことをしてくれたよ。
今度あったら悟みたいに私もデコピンでもしようかな。
それくらい許されるだろう?
「君の顔を使いたかったわけじゃないけどね。まぁ、いいか。
同じ顔の
夏油と同じように薄っすらと笑みを浮かべていた加茂憲倫。
その表情から笑みが消え、真顔になる。
「……私がやりたいのは呪力の”最適化”だ」
「人類の
理由を聞いたはいいが、加茂憲倫の言葉は夏油の中でいまひとつ像を結ばず、自然と眉間に皺がよる。
そこへ九十九が話題に加わったことで、ふと高専時代に聞かされた彼女のプランを思い出した。
あの時は、潔乃に徹底的に無理だと詰められていたはずだ。
まだ、あのプランを考えていたのか。
いや、そもそもあのプランは実現可能なのか?
側にいる虎杖は「…………いや、俺にはどっちもサッパリ」と顔をしかめてる。
「”脱却”プランね……」
小馬鹿にしたように、加茂憲倫が笑う。
「鼻で笑うけどね、”
海外では日本に比べて呪術師や呪霊の発生が極端に少ない。
最適化プランには天元の結界が必要不可欠なハズだ」
九十九の言葉に、夏油がはっとした顔をする。
「つまり、天元様の力を要するということは、呪力が最適化されて術師になるのは、この日本の人間限定ということか」
「
夏油のつぶやきに、パチンとウインクをひとつ飛ばしたあと、加茂憲倫に向き直り話を続ける。
「つまり、呪力というエネルギーをほぼ、日本が独占することになる。
彼の国は勿論、中東諸国が黙っちゃいない。生身の人間がエネルギー源なんだ。どんな不幸が生まれるのかは想像に易いだろう。
それは私が描く理想とは——かけ離れた世界だ」
九十九は特級術師だが、高専とスタンスが合わないため、高専依頼の任務はほとんど受けない。
かつて潔乃からそのことを責められたこともあったが、結局そのスタイルは変わらなかった。
それでも、日本が、日本人が不幸になる未来を見過ごすことはできない。
もともと彼女の思想は、呪霊のいない幸せな世界を作ることを目指したものなのだから。
それを聞いても、加茂憲倫は「それが何だ」と軽く受け流す。
「あぁ、私は呪霊のいない世界も、牧歌的な平和も望んじゃいない。
非術師、術師、呪霊、これらは全て”可能性”なんだ。”人間”という”呪力”の形のね。
だが、まだまだ、こんなものではないハズだ。人間の可能性は」
そう言って、自分の手を見つめる。
「それを自ら生み出そうともした」
一瞬だけ脹相に視線を流し、興味なさげにすぐに逸らした。
「だが、それでは駄目なんだ。
私から生まれるモノは、私の可能性の域を出ない」
それは、研究者としては敗北宣言にも等しい言葉だった。
「答えはいつだって、混沌の中で黒く輝いているものだ。
分かるかい? 私が創るべきは、私の手から離れた混沌だったんだ」
見つめていた手を、ゆっくりと掲げる。
そこへ呪力を込める。
再現性のない事象に期待するなど、実に情けない。
それでも加茂憲倫——羂索は見たかった。
自分ではたどり着けない、その先の可能性を。
「すでに術式の抽出は済ませてある」
その言葉に九十九の表情が変わる。
慌てた様子で虎杖に向き直る。
「真人とかいう呪霊が居るだろう!! 魂に干渉できる術式を持った奴!!」
「さっきアイツが取り込んだけど」
虎杖の言葉に悲鳴を上げる九十九。
「無為転変!!!」
羂索は手を地面につけ、術式を発動させた。
次の瞬間、地面と空に同じ文様が浮かび上がる。
「術式の遠隔発動!?」
空の文様を睨み、九十九はそれが天元の結界ではなく術式であると一瞬で見抜いた。
ちっと夏油が舌打ちする。
「礼を言うよ、虎杖悠仁。
呪霊操術で取り込んだ呪霊の術式の精度は、取り込んだ時点でその成長を止める。
君との戦いで真人は成長した。本当は漏瑚も欲しかったけど、まぁ仕方ないね」
「何をしたんだ」
警戒を露わに夏油が尋ねる
「マーキング済の2種類の非術師に、遠隔で『無為転変』を施した。
虎杖悠仁のように呪物を取り込ませた者、吉野淳平のように術式を所持しているが、脳の
それぞれの脳を術師の形に整えたんだ。
前者は器としての強度を、後者は術式を発揮する仕様を手に入れた———そして」
取り出した紐を解き、その場に落とすようにして捨てる。
「…今、その呪物たちの封印を解いた。マーキングの際、私の呪力にあてられて寝たきりになったものもいたが、じきに目を覚ますだろう。
彼らにはこれから呪力への理解を深めるため、殺し合いをしてもらう。
私が厳選した子や呪物たちだ。千人の虎杖悠仁が悪意を持って放たれたとでも思ってくれ」
「千人ね。だいぶ控えめだね。それに人間の理性ってそんなもんじゃないと思うよ。
力を与えただけで、人々が殺し合いを始めるとでも?」
夏油の言葉に、ニッコリと微笑みを返す。
「物事には順序があるのさ。その程度の仕込みを私が怠るわけがないだろう。
君、私と同じ顔で、考えなしの浅い質問をするのは止めてくれないか?」
完全に小馬鹿にした口調だった。
夏油の額に青筋が浮かぶ。
それを見て虎杖は思い出した。
そういや夏油先生、けっこう激情型でキレやすいんだよな……
虎杖が入学してからの数カ月の間でも、何度も見た。
五条や伏黒甚爾と肉体言語で語り合っているのを。
「!!」
その瞬間、水音を立てて虎杖たちを拘束していた氷が溶けた。
膝をつく裏梅。
「穿血で俺の血が混じったんだ。当然だ」
半呪霊の脹相の血は人間にとって毒だ。
受肉体も元は人間なのだから、その影響を受けたのだろう。
裏梅の氷結から解放された皆が立ち上がり、再度戦いの意思を見せる。
九十九は式神を寄せ、夏油は呪霊を無言で呼び出した。
それを全く気にしないまま、羂索は話を続ける。
「まだ話の途中だよ。
私が配った呪物は千年前から私がコツコツ契約した術師たちの成れの果てだ。
だが、私と契約を交わしたのは術師だけじゃない。
まぁ、そっちの契約は、この肉体を手にした時に破棄したけどね」
「まさか」
怖気が走るような壮絶な笑みを浮かべる羂索。
「これがこれからの世界だよ」
同時に羂索の足元から大量の呪霊が湧き出す。
夏油が舌打ちをし、呪霊操術ですぐに調伏にかかる。
だが、等級が高い呪霊も多く、その勢いをまったく抑えられない。
呪霊が湧き出すエリアが、羂索の足元から墨が滲むように、どんどん拡大していく。
「じゃあね。虎杖悠仁」
羂索はわざわざ獄門疆を取り出し、虎杖に見せつけて笑った。
呪霊の波の向こうへと、羂索の姿が遠ざかっていく。
「五条先生!!」
大量の呪霊に囲まれながらも、必死で羂索に手を伸ばす虎杖。
獄門疆へ——五条へ。
「君には期待しているよ」
彼にしては純粋で柔らかな笑みで虎杖を見た後、表情が消える。
その瞳は虎杖ではなく、その中にいる宿儺に向かっていた。
「聞いているかい?宿儺。始まるよ。再び呪術全盛、平安の世が…!!」
羂索の姿が掻き消える。
そう思われた、その瞬間――
いくつもの光が降り注ぎ、爆ぜた。
同時に、呪霊が別の圧力で吹き飛ばされていく。
目を見開く羂索の身体が水で拘束され、獄門疆を持っていた右手が切り飛ばされ、宙を舞う。
「…なっ!!!」
「迷惑行為は一人でやってろクソが!」
七海潔乃が、その獄門疆を奪い取っていた。
してやった。
この瞬間を待っていた。
心臓がうるさいほど脈打っている。
人間は目標を達成したと思った瞬間が、一番油断する。
原作の五条の宿儺戦がいい例だ。普通の人間でも同じ。
勝った、届いた、もう手の内に収めた。そう思った瞬間に、張り詰めていた意識は必ずどこかで緩む。
だからこそ、その一拍を狙う価値がある。
副都心線ホームでは失敗した。
あの時は羂索の警戒も高かった。
でも、今この瞬間なら通ると思った。
「無為転変」を掛けた直後。
さすがの羂索でも油断する。
そして、裏梅は脹相の毒でまともに動けない。
だから、渋谷事変最後の
与幸吉には直接、伏黒津美紀を通じて七海、灰原、伏黒甚爾に。
この瞬間、この場所で奇襲をかけることを伝えておいた。
狙い通りだった。
光が炸裂し、呪霊が崩れ、動きが乱れた一瞬を誰一人逃さなかった。
七海は正確に呪霊の群れを削り、灰原の水は羂索の動きを封じる。
そこへ伏黒甚爾が音もなく踏み込み、躊躇なく腕を斬り飛ばした。
羂索の腕を投げ捨て、獄門疆を袈裟の内側に入れた。
奪った。
今度こそ、奪った。
五条を取り戻した!
早くこの場を立ち去らないといけない。
この中で一番早く移動できるのは伏黒甚爾だが、予想以上に羂索の復帰が早い。
斬られた直後だというのに、もう反転術式で腕を修復し、3人相手に戦闘を開始している。化物め!
今は羂索を止めることで精一杯だ。
ならば——
「白菊、動くな」
虎杖悠仁の頬に浮き出た口——両面宿儺が発した言葉に私の体は硬直した。
ぞわりと背骨を冷たいものが這い上がる。
ッ、畜生、想定外だ。
よりにもよって、このタイミングで。
両面宿儺に逆らえない縛り、それが今ここで邪魔するとは!
逆らおうとした瞬間、心臓が鷲掴みにされたみたいに痛んだ。
呼吸が浅く乱れ、肺がまともに空気を吸えない。
足に力が入らない。
視界がぐらりと揺れる。
我慢できずにその場に倒れ込んだ拍子に、懐から獄門疆が転げ落ちた。
最悪だ。
拾わなければ。今すぐ。
そんな私に気を取られたのか、七海と灰原が羂索の操った呪霊に吹き飛ばされる。
動けない私へ呪霊の攻撃が向かうのを見て、甚爾は羂索から離れ、私を抱え上げて後ずさった。
舌打ちひとつする暇もないほど、判断が速い。
獄門疆に手を伸ばしたが、位置が悪い。
あと少し。ほんの少しで届く距離なのに、呪霊の攻撃を避けながらでは指先をかすめるのが精一杯だった。
「宿儺ありがとう。助かった」
ゆっくりと歩み寄り、羂索は再びその手に獄門疆を取る。
その動きには焦りがまったくなかった。
まるで最初からこうなると知っていたみたいに、当然の顔で拾い上げる。
甚爾の腕の中で痛む胸を押さえながら、私は羂索を睨みつけた。
失敗した。
失敗した。
失敗した。
せっかく通した奇襲も、重ねた連携も、掴んだはずの勝機も、全部この一瞬で零れ落ちた。
私のせいだ! 私がミスった! 畜生!!!
悔しくて、吐きそうだった。
そんな私を見て、してやったりと悪意の滲んだ笑みを浮かべる羂索。
私の失敗も絶望も、全部見世物みたいに楽しむ時の顔。
心底気色が悪い。
「白菊、なかなかいい連携だったけど詰が甘いね。
この甘さについては今度
ひらひらと手を振りながら、羂索は獄門疆を片手に呪霊の波の中へ消えていった。
呪術総監部より通達
一、七海潔乃の生存を確認。夏油傑と七海潔乃を渋谷事変の主犯と認定し、死刑を宣告する
二、五条悟を渋谷事変共同犯とし、呪術界から永久追放。かつ、封印を解く行為も罪と決定する
三、夜蛾正道を五条悟と夏油傑と七海潔乃を唆し、渋谷事変を起こしたとして死罪を認定する
四、七海建人、灰原雄、伏黒甚爾を犯人隠避及び、幇助の疑いで、総監部への出頭を命じる。出頭しない場合は捕縛対象とする。
五、虎杖悠仁の死刑執行猶予を取り消し、速やかな死刑の執行を決定する
六、虎杖悠仁の死刑執行役として特級術師乙骨憂太を任命する
一旦、連載の最新追いついたので、これ以降はゆっくりペースの更新になります。