渋谷事変〜死滅回游①
地獄(渋谷)が終わったら何が始まる?
知らないのか?
地獄(死滅回遊)が始まる。
今回はずーっとグダグダ話してる感じになります。
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラでます
・ネタまみれです
・これまでで最も、激しい捏造、妄想含みます!!(ここ最近ずっと言ってる)
羂索に獄門疆を奪われ、彼が大量の呪霊の奥へ消えていった。
歯噛みしながら、それを見送ったところまでは覚えている。
その後の私は、呪力も体力も精神力も限界を迎え、伏黒の腕の中で意識を失ったらしい。
そして、翌日の十一月一日。
一夜明けた早朝。
「……なるほどね。状況はわかったよ」
都内某所。
打ちっぱなしの内装が洒落た、地下のライブハウス。
普段は音と人の熱気で溢れ、むしろ狭く感じるほどの空間。
でも、人もいない今は無駄に広く感じる。
そんな場所で——
私は、正座をして震えていた。
痛みに震えているわけじゃない。
いや、痛いよ?
身体は正直、満身創痍だ。
呪力宝石の使用による、大量の呪力吸収。
そして、ブーストした呪力を使っての、広範囲にわたる高度な結界術の使用。
結果、体内の呪力回路はあちこち炎症を起こしている。
全身の痛みに、人目がなければのたうち回りたい。
ヨギボーを抱いて、痛い痛いとぐずりたい程度にはつらい。
でも、今、私が震えている理由は、それだけじゃない。
正座して震えている私の目の前で、長い脚を組む男がいる。
ライブハウスのカウンター席に腰掛け、うっすらと笑みを浮かべている、塩顔のイケメン。
「我ながら、情けなくて涙が出そうだよ」
その声は本当に穏やかで、
——穏やかすぎて、胡散臭いし、怖い。
そして、冷え切った中にも激情を感じさせる
指先だけが、カウンターを軽く叩いている。
ガチギレの声やん。
聞き覚えあるわー。
「こんな重要な記憶を忘れていたなんてね?
酷いじゃないか。前世は一緒に悟と高専を裏切った裏友なのに。
ね? 潔乃」
そう。
前世の記憶を取り戻した、夏油傑。
私が気を失った後、伏黒甚爾は近くにいた夏油に私を託し、
自分は羂索の放った呪霊の群れの爆心地にいる、七海と灰原のヘルプに走ったそうだ。
夏油は私を抱えたまま渋谷を脱出。
落ち着ける場所を探してたどり着いたのが、地下のこの無人のライブハウス。
ライブハウスの主か、あるいはビルのオーナーにそういう知見があったのか、簡易ながら結界が張られていた。
夏油はそれを強化し、休憩に入ったそうだ。
んで、なかなか電波の繋がらないスマホを片手に、あーだこーだとやっていたら私が目を覚ました。
——後は言わなくても分かるだろ?
まぁ、前から想定していた通りの展開だ。
目を覚ました私と視線が合った瞬間、夏油は呆然と私を見つめた。
かすかに震える薄い唇。
あー、いま、彼は前回を思い出している。
そう分かってしまうほど、辛く苦しそうな表情だった。
その唇から声にならない小さな息が漏れ、次の瞬間には瞳に力が宿った。
ぐっと唇を噛み締め、表情に力が戻り、今に至る。
つまり今、私は、夏油から前回+十一年分の説教を受けている。
うん、夏油が記憶を取り戻したと確信した瞬間、エクストリーム正座してたよね。
呪霊を相手にするときよりも、動きが速かったかもしれない。
ていうか、裏友ってなんだ。
裏友って。
ふたりは裏友ってか? プリキ◯アか?
アホな思考が捗る。
「それにしても容姿はだいぶ変わったけど、独りよがりな精神構造は変わらないね。あの時のままだ」
五条と違う種類の、ネチネチっとした説教。
あー懐かしい。高専時代を思い出す。
夏油と一緒に九十九に会った後、だいぶ怒られたな……
「独りよがりなのは貴方もでしょう?
第一、記憶取り戻してない人に話してもしょうがないですし、
そもそも、夏油さんには話すリスクが高すぎたんですよ。最悪の呪詛師さん?」
言われっぱなしも悔しい。
だから、私もニヤリと笑って、煽り散らかせてもらう。
煽り散らかして大丈夫かって?
この夏油は確かに過去を思い出しているけど、前回みたいな暴走はしない。
高専を離れる前に、あれだけ夏油が離反しないよう手を打ったのだ。
私がいなくても皆、特に灰原なら、夏油が危うく傾く前に気づく。
灰原は前回、空港で一番長く夏油といた人間だ。上手くサポートしたに違いない。
呪霊玉用のオブラートもたっぷり残した。なにより、夏油の側には五条もいた。
目の前にいるのは、原作のように追い詰められていた少年じゃない。
人生の酸いも甘いも、呪術界の光も闇も、それなりに噛み締めてきた大人だ。
——顔を見てたら分かる。
「言うねぇ。私の共犯者なだけはあるよ。今回は私は高専も裏切らなかったし、悟のそばを離れなかったよ?」
「そもそも、前回夏油さんが離反しなければ、今回こんなことになってないんですよ」
バチバチと音が鳴りそうなほど睨み合った後、お互いにため息をついた。
不毛な口論だということはお互いに理解している。
お互いに痛いところがありすぎる。
「潔乃さ、君が高専からいなくなった後、悟の荒れっぷり知らないでしょ?
本当に大変だったんだよ……」
それを言われると私は弱い。
思わず視線を泳がせて逸らしてしまう。
十年前、新宿で会ったときの必死な顔。
私を引き留めようとする姿は、原作で夏油が呼び止められたシーンの焼き直しのようだった。
昨夜、副都心線のホームで再会したけど、その時も同じ顔をしてて——
あー、あの顔思い出したくない。
怒っている顔ならいい。
恨んでいる顔なら、まだ言い訳もできる。
でも、あの顔は駄目。
「だから、反省してるから正座して聞いてるんですよ……」
私のつぶやきに、はぁぁぁっと深くため息。
何だよそのため息。私がそこに弱いのを、夏油は分かった上で言っているんでしょ?
「悟と再会した時は覚悟しておきなよ。悟も理由があるのは察してたけど、納得いくかは別だからね……
——無事で良かったよ。またこうして会えて嬉しいよ」
「私も嬉しいですよ。最悪の呪詛師になってない夏油さんに会えて」
「まだ言う? 相変わらず潔乃は厳しいね」
夏油の機嫌が上がってきたことを察して、視線で正座をやめていいかと聞くと、苦笑して頷かれた。
——あぁ、懐かしい、優しい先輩としての夏油の顔だ。
あのクソメロンパンと同じ顔なのに表情が違う。温かい。
内心でニコニコになりつつ、冷たいコンクリートの床から立ち上がる。
立ち上がった瞬間、呪力回路が悲鳴を上げた。ちくしょう、痛ぇ。
ひっそりと涙目になる。
そのまま、カウンター脇にある、ライブハウスの客席のソファーにぐったりと横たわった。
「……大丈夫かい? 呪力宝石からの呪力吸収は便利だけど、かなりリスクがあるね」
心配そうな視線を送ってくると同時に、カウンターの上に置かれていたペットボトルのお茶を投げてよこす。
ちなみに、夏油は私の現状をすでに把握済みとのこと。
甚爾が別れ際に軽く説明してくれたらしい。あのヒモ本当に仕事ができる。
……マジで味方で良かった。
「五条さんの顔面を、八つ当たりで殴りたい程度にはキツイですね」
それを受け取り、一口。お茶の苦みがすっと口内に広がって心地良い。
「悟とばっちりだね。私じゃないからいいけど」
相変わらずクズい部分も変わらない。
いや、久しぶりの私が萎縮しないように、あえてそんな空気を作ってくれているのかもしれない。
夏油は気遣いの人だから。
「まぁ、タラタラしてられないですし。三十分経ったら移動を開始したいですね……」
「もう少し休んだほうがいいと思うよ。ペットボトルへの反応鈍かったし」
ほんと、こういうところ五条と同じで鋭くて嫌になる。
「そうも言ってられないんですよ。なるべく移動したほうがいい。
夏油さんがいま一番ヤバいですからね。自覚してください」
指で夏油を指さして忠告すると、肩をすくめた。
羂索とは別ベクトルでムカつくな、もう!
ムカついていてもしょうがない。横たわったまま、目を覆うように腕を乗せる。
「一つ聞きたいんですけど、いいです?」
「何だい?」
「まだ、猿は嫌いですか?」
「……嫌いだよ。
非常識な
今の美々子と菜々子を見て、人の良い非術師達を嫌いになれるわけないだろう……」
腕をずらしてちらりと視線を向けると、本当に穏やかな顔をした夏油が私を見ていた。
私と視線が合うとにやりと人が悪い笑みを浮かべ、
「だから、伏黒甚爾は嫌いだね。今も」
あまりにも人が悪く、でも楽しそうな笑みなので、私も思わず笑って「でしょうね」と肯定してしまった。
夏油に頼らずとも、きっかり三十分後に目を覚ました。
まだ傷む全身に顔をしかめながら起き上がると、夏油が渋い顔でスマホを見ている。
「伊地知と連絡ついたけど、厄介なことになったよ。我々は渋谷の主犯らしい」
私にスマホを投げてよこすので慌ててそれを受け取り、目を落とす。
あー総監部からのクソ通達ね。
そのPDFが伊地知から送られてきていた。
こっちも仕事が早い。助かる。
私と夏油が主犯で、五条が共犯、夜蛾が唆したと。
五条がいなくなった途端強引な手段を取ってきたね。実に総監部らしいなぁ。
伊地知は術師としては雑魚だが、裏方としては優秀。
補助監督で、高専運営にも関わっている事務方なのでスルー。
七海と灰原と伏黒が犯人幇助ね。七海と灰原は私に対する抑えかな?
伏黒はパトロンの五条を抑えたし、利のない行動はしないと思われてるな。
だから、禪院家に対する削りだろう。五条家は五条悟を封印したことで急速に力を失う。
今後は加茂家と禪院家でやり合うってわけね。
相変わらず無駄な政治やってんね、この時期に。
スマホを夏油に投げ返す。
「大丈夫ですよ。夏油さん以外は多分問題ないです」
うん、ここまでは概ね予想通り。何の問題もない。
「潔乃、君も死刑宣告を受けてるじゃないか」
着物の襟元を直し、袈裟を整えていると夏油が、ちょっと怒ったように訴えてきた。
心配性だな。私は大丈夫だ、私は。
夏油を安心させるために口を開く。
「羂索は私を殺す気はないですよ。
私が前世で羂索と既知で、宿儺の従者だったことは知ってると思いますが……」
「は? ちょっと待って、情報量が多い!」
夏油が思わずといったふうに、カウンターの椅子から立ち上がる。
「いや、羂索に関しては空港で聞いたから分かるけどさ、前世ってなに???」
夏油が珍しく取り乱していて、声が裏返ってる。
あぁ、甚爾に口パクで伝えてる情報だから、そこまで詳細は伝わってなかったか。
七海や灰原と伊地知には伝わってても、会議の会話に出しづらいもんな。
伏黒津美紀経由で情報は伝えたけど、渋谷ギリギリだったし、上手く伝わらなかったんだな。
これはしっかり説明したほうが良さそうだ。
まぁまぁ、落ち着けと夏油の肩をポンポン叩いて、再度カウンターの椅子に座らせ、私も隣の椅子に座る。
「簡単に説明しますね、私、伊地知潔乃として死んだあと、平安に生まれまして。そこで宿儺の従者やってました」
「は?」
「そこで羂索とも知り合って気に入られました。
平安で死ぬ時に呪物化するの断ったら、輪廻を巡る私を見つけるから見つけたらご褒美頂戴と言われましてね……
その縛りの結果、高専を離れることになりました。
高専を離れる縛りの詳細に関しては知ってるみたいなので、割愛しますね」
「は??」
「んでもって、縛りの解除を目指したわけですが、簡単に縛りを解いてくれるとは思わないので、
とりあえず羂索と交渉して五条さんが何らかの形で行動不能になったら縛りが解除される、という条件を結びました。
五条さんが行動不能にならなければいずれ羂索を殺してたと思いますし、最悪封印されても解除すればいいだけですから。空港で話しましたけど、ある程度の未来、知識がある私にはそれが可能です。
んで、何とか羂索との縛りは解除成功したんですけど……」
「は???」
「おかしいと思ったんですよね。
私を野放しにすれば確実に敵対コース。五条さんの解放一直線なのに。
しっかり対策を打たれてまして、両面宿儺に逆らえないという縛りがいつの間にか結ばれてました。
私の魂を探すときに宿儺との縁を使ったらしくて、それでガッチガチに宿儺に縛られてるみたいです」
そこまで一気に話したが、夏油が眉間を押さえている。
はぁと深いため息をついて、ギロリと私を睨みつけてきた。うわ、またガチギレやん。
そのまま手のひらを地面に向けると、夏油の背後が黒く歪む。
『ねぇちゅ~しよ』
あ、すっごい覚えのある呪霊が出てきた。
思わずカウンターの席から飛び降りようとするが間に合わなかった。
その呪霊——チュー太郎が私に絡みつき、ベロンと頬を舐めてきた。
なんとも言えない生臭い匂いと、ヌトっとした感触に鳥肌が立つ。これはキツイ!!!!
「ぎゃーーちょ、ちょ、待ってチュー太郎はちょっとちょっと!!」
拳骨とか、デコピンとかしっぺとか、アイアンクローは想定してたけど、チュー太郎にベロベロン舐められるのは想定してない!!!
「私は今、コークンに心の底から同情してます」
「……コークンって誰だっけ?」
ライブハウスのおしぼりを何枚も使い、顔や髪を拭きまくりながら呟いた。
そんな私におしぼりのビニールを剥いて渡しながら夏油が首を傾げる。
おい、オマエ忘れたのかよ。
ちっ、だからクズなんだよ。
夏油による嫌がらせ『チュー太郎』のキス攻撃をたっぷり数分受けた後、解放されたが、本当に苦痛だった。
懐玉で呪詛師集団Qの構成員コークンは、数十分はアレをやられてたはずだ。ほんと同情する。
「しかし、潔乃、ほんと厄介な状況になってるね。悟にどう伝えればいいのさ……」
心底困ったような表情を浮かべる夏油。
夏油はこの十一年間五条に一番近い立ち位置だったはずだ。
渋谷で会った時の五条からして、私にまだ執着してるんだろうことはわかった。
そりゃーその状況だと、夏油は頭を抱えるだろう。多分、とばっちりは確定で受けるからね。
でも、それに関しては問題ない。
「あ、もう伝えてあります。副都心線のホームで封印直前に会ったので」
「羂索もいたんだろう? どうやって伝えたんだ?」
一瞬、ホッとしたような表情を浮かべた後、ギュッと眉間にシワが寄る。
夏油の疑問はもっともだ。これも説明する必要があるだろう。
「甚爾さんの格納呪霊覚えてます? 前回夏油さんも使ってましたけど」
視線を左上に流す夏油。人が何かを思い出すときの無意識の仕草。
そして、すぐに思い至ったらしい。
「……あーあれね」
今世は使っていないが、前回は彼もだいぶお世話になった、あのブサカワな格納呪霊を思い出したのだろう。
「同じタイプの呪霊を見つけて私も使ってました。
それに全部の情報をまとめたノートやらメモやらの書類、脱出用の呪具やらを格納させて、さらにそれを口移しで五条さんに渡しました」
「……口移し?」
「えぇ、ガッツリディープキスするふりして。いや、実際たっぷりねっとり濃厚なやつやりましたけど。
いやー五条さんキス上手いですね。羂索も特級呪霊も騙されてましたよ」
「……悟、可哀想に。いやラッキーなのか? いや、やっぱり可哀想だな。もう一回チュー太郎行っておくかい?」
「嫌ですよ。無駄に時間かかるからやめてください」
混乱気味の夏油がチュー太郎を再度背後の虚空から出そうとするが、私は慌ててチュー太郎の頭を押さえて押し戻す。
またベロンと舐められた。だからやめろって!
夏油の手からおしぼりを奪い取り再度丁寧に拭いていると、夏油がクツクツと笑っている。
今のは本気じゃなくて、マジの嫌がらせだな。
ほんと性格が悪い。軽く睨みつけると、夏油が肩をすくめた後、真面目顔になった。
「ところで、次はどうするんだい?」
「建人さんと灰原さんには甚爾さんがついていったんですよね?
彼らには高専の結界が緩んでることが確認できたら、高専に潜むように伝えてあります。
あの結界は緩んでいて、ほぼ機能しなくなってますから。詳細は未来視由来なので割愛します」
夏油になにか突っ込まれる前に、未来視と伝える。
別に話しても良いんだけど、サクサクと事を進めたい。
それにしても正確には原作知識なんだけど、未来視があったことは空港で伝えているので色々捗る。
「虎杖君には脹相がついてます。
——呪胎九相図の彼です。虎杖君のボディーガードとしては最適です。
両方とも出生に羂索が関わっているため、実質兄弟ですね」
「虎杖君を宿儺の器として作り出したのが羂索だったね。
……忌々しい。人をなんだと思ってるんだ」
本当に。
私も相槌を打って話を続ける。
「そして虎杖君の死刑執行人は乙骨君。彼は上手いこと上層部を騙くらかすでしょう。
だから大丈夫です。
つまり、最優先は夜蛾学長の秘匿私刑回避、そして夏油さん、あなたの生存です」
「私?」
「夏油さんを殺せば、今取り込んでいる呪霊たちが解放されます。
呪霊操術は手数の多さ。
羂索が欲しがるような呪霊もいっぱいいるでしょう。彼、コレクターですから」
もっと別の理由があるが、それは皆が揃った時に話したい。
「本当にアイツ忌々しいね……」
イライラとした様子で髪の毛をかきむしる夏油。気持ちはわかる。
私もこの十一年間何度も血管がブチギレそうになった。
そんなことを思い出しながら、ゴソゴソと着物の袖の中をまさぐる。
ひっそりと仕込んでおいた、それらを取り出す。
「そういうわけなんで——
とりあえず、見た目を手っ取り早く変えません?」
梳きバサミと櫛、そしてカラー剤を見せて、私はニンマリ笑った。
服装から。
まずは、夏油の高専の任務服をひん剥いた。
なんか悲鳴をあげてた気がするが気にしない。緊急事態だ。
あまりにもうるさいので、ロッカーの傍の壁を黄金の右足で蹴りつけたら穴が開いた。
股間を押さえて真っ青になり、大人しくなる。うん、高専時代に一度やられてるもんね?
ライブハウスの従業員用のロッカーを漁り、残っていたオーバーサイズのシャツを着せ、ワイドパンツを履かせ、デニムジャケットを押し付けた。
「これ私の趣味じゃ……」と言っているのは黙殺した。
ド派手なピアスは没収。
「……え、それお気に入りなんだけど」と嘆いていたのは無視した。
代わりに用意しておいたカフデザインのピアス——しかも十字架がぶらぶら下がってる厨二病満載なやつ——を手渡したら絶望的な表情をしていた。それも無視。
その後、微妙に嫌がる夏油の髪の毛をバッサリ切り落とさせてもらった。
「中学時代から伸ばしてるんだよ!」という夏油の嘆きは無視した。
切り落としたと言っても、結べる程度の長さは残してあるんだから、文句言うな。
さらにブリーチを取り出したところで、夏油が土下座した。
いや、マジで土下座した。あの夏油が。
「さすがにカラーだけは勘弁して!」
ちっ、根性ねーな。
ずいぶんとサッパリした髪型——どこにでもいそうな、少し胡散臭いバンドマン崩れ——になった夏油を見下ろして、舌打ち。
ちなみに私の格好も変わっている。
ロングの髪をバッサリ切り落として、ボブくらいに揃えた。
カラー剤を使い、金髪を茶色く染め、その後、従業員ロッカーから手に入れたオーバーサイズのタートルネックに、デニムを合わせた。
ダボッとしたサイズなので、中性的になった。
金髪と五条袈裟を取っ払っただけで、ここ数年の私が消えた。
パッと見は多分、七海潔乃とは気づかれないだろう。
私達の呪力を知ってる連中には意味がないが、見た目が変わってると、やっぱり騙されるんだよ、人間って。
「潔乃さ、高専時代より押しが強くなってるよ……」
心底疲れ、ドン引いた顔をする夏油。
「逞しくないとやってられなかったんですよ」
夏油は何か言いかけて、小さくため息。
結局、何も言わなかった。
よまなくてもいい、あとがきてきなもの
主人公
目を覚ましたら夏油がいて、ガッツリ視線があってエクストリーム正座した人。
いや、いきなり夏油居るとか聞いてない!となったけど、まぁ、結果オーライ。
羂索の縛りから解放され、一応、宿儺が近くにいないのでそちらからも解放されている。
フリー私はフリー!! 十一年ぶりのフリー!! 最高かよ!
全身ものすごく痛いが、実は開放感でちょっとテンション上がってる。
五条を封印されたのは痛い。が、策はある。
さらなる原作ブレイクを目指し暗躍予定。
夏油傑
死滅回游編に参加した男。
渋谷で自分の偽者にしてやられ、かつての後輩が現れ、大混乱のうちに逃げられた。
追いかけようとしたタイミングで、伏黒甚爾に主人公を託され(その時に呪力宝石で呪力回路オーバーヒートしてるから、しばらく目覚めないことを伝えられた)追跡は断念した。
甚爾が主人公を託さなければ、無理して追いかけておそらく羂索に殺されてた√にはいってたので甚爾に感謝したほうが良い。
大量の呪霊に流されるように渋谷から撤退したため、皆とはぐれて2人になった。
この度、主人公と視線を合わせて、とうとう
主人公がいなかったら多分、叫んで色々八つ当たりしたいレベルで内心混乱してた。
が、主人公がエクストリーム正座を決めたので、何こいつ?と冷静になって、何とか持ち直した。
前回の記憶を取り戻して、非術師が嫌いな気持ちは思い出している。
が、今世での記憶——非術師にもいい人が、術師にも最悪な人が居ることをよーく分かっているため、呪詛師落ちは今後もしない。
ここらはこの十一年間、七海、灰原、伊地知が頑張った。特に灰原がMVP。
ただ、今後は非常識な人間に対しては厳しくなるし、猿を見つめる視線になる。
なお、潔乃ちゃん→潔乃呼びに変わったのは前世を思い出したから。