とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、
 七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、死んだ目になる

あれから兄さん──伊地知とは隙を見て連絡を取り続けた。

幼稚園児が電車で単独行動なんて、そうそう許可が下りるわけもなく、

次にあの公園に行けたのは、秋になってからのことだった。

 

事前に電話で打ち合わせて、ほぼ同時刻に公園に到着する。

遊んでいるフリをしながら、こっそり打ち合わせをした。

そのとき私は、伊地知にすべてを伝えた。

 

自分に未来視があったこと。

壊滅的な未来を見たこと。

それを回避するため、いろいろ準備して、高専に入ったこと。

でも最終的に、自分の身すら駒にして、高専を裏切って死んだこと。

けれど、結局は回避しきれなかったこと。

 

全部、話した。

 

 

そして、その後だった。

母に「見えないところ」に連れていかれ、思いきりビンタされたのは。

 

……もちろん、子供の小さな手のひらのビンタだから、全然痛くなんかない。

でも、すごく堪えた。

 

善性の塊みたいな人が。

誰かを傷つけるなんて絶対にしたくない人が。

涙目になりながら、それでも私をビンタしてきたんだ。

 

……前世で、五条から圧かけまくりの説教は何度もくらったけど、

あれよりずっと、ずっとキツかった。

いや、誤解しないで。五条の説教が響かなかったわけじゃないんだよ。

ただね──『普段怒らない人に怒られる』って、アレ、ほんと心にくる。

 

「元兄として、放っておけません。私も高専に入学します。

潔乃は、放っておくと昔っからこうでした。

大人になって落ち着いたかと思ってましたが……」

 

子供らしからぬため息をつきつつそう言ったのは、伊地知だった。

その口調はいつも通り丁寧で穏やかだけど、言ってることは完全に『監視宣言』。

 

「助かります。この人の最大のストッパー、五条さんがいないので……

一人でやるのは、正直しんどかったんです」

 

そう苦笑したのは、今世の兄──七海建人。

こちらも落ち着いた口調だけど、たぶん内心では『やっと味方がきた』って思ってる顔。

 

……ちょっと待って?

いやいや、いやいやいや。

新旧の兄が並んで結託って何? 怖いんだけど?

 

仲がいいのは、うん、いいことだよ?

でも私、いま『完全包囲網』みたいな視線を受けてるんだけど。

これはさすがに、聞いてない。

 

「あの、ちょっと待って。目的、変わってませんからね?

最大の目的は、かつての仲間から死者を減らすこと。渋谷や新宿を回避すること、ですからね?」

 

念のため、きっちり念押ししておく。

が。

 

「わかってますよ。でも、潔乃はやらかしそうですから。

厳しく見てるくらいの方が、ちょうどいいと思います」

 

淡々と、まるで“当然の判断”かのように言い切ったのは、前世の兄・伊地知。

 

「同意見です。ちょっと締め付けてるくらいが、ちょうどいい」

 

こちらも落ち着いた声で賛成票を入れたのは、今世の兄・七海建人。

 

……いや、なんでそんな満場一致で“管理強化案”が通過してるんですか、私。

 

かつての兄たちからの信頼が、逆に厚すぎて。

思わず、天を仰いだ。

 

その後の打ち合わせは――驚くほど、とんとん拍子で進んだ。

新旧の兄たちは頭が良すぎる。説明は1割で済むのに、返ってくる理解度は10に近い。

 

そして、この時点での方針が決まった。

 

・同じ小学校へ入学すること

 

・術式が発現した場合、即座に情報共有

 

・私は呪力宝石をなるべく量産すること

 

・七海は、十劃呪法の解釈を広げるように考えること

 

・全員(特に伊地知)は今のうちから体力づくりを始めること

 

・将来的に3人とも高専へ入学すること

 

「じゃ、気合い入れましょ?」

 

私が手のひらを前に差し出すと、

七海はうんざりした顔をしながらも、ちゃんと手を重ねてくれた。

伊地知も戸惑った表情を浮かべながら、そっと自分の手を重ねてくる。

 

「くそったれな未来なんてクソ喰らえ!おー!」

 

「気が抜けまくるんですが」

 

「ははは、潔乃らしいですね」

 

七海と伊地知の反応が、あまりにも彼ららしくて笑った。

 

 


 

 

その後は、予定通り進んだ。

まずは私と七海が幼稚園から小学校へ進学した。

その1年間は、定期的に電話で連絡を取りつつ、各々の作業を進めた。

私たちが2年に進級すると同時に、親を説得し受験戦争を勝ち抜いた伊地知が入学してきた。

結構、倍率高いし、家柄も見られるような私立なので、入学難しいんだけど流石としかいいようながない。

 

同じ学校になったらこっちのもん、七海と伊地知は親友として基本一緒に行動し始めた。

伊地知は学年すら違うというのに、

「七海と顔見知りで、兄のように慕っている幼馴染」という立ち位置をあっさり確立していた。

……やっぱりこの人、やり手だわ。

 

私も、適度には混ざっている。

でも四六時中一緒にいるわけにはいかない。

 

まず、双子は必ずクラス分けされる。

そして──女には女の世界がある。

 

めんどくさいが、金髪翠眼で王子様みたいなイケメンの兄と、優秀で優しく穏やかな容姿の幼馴染。

そんな二人と常に一緒に行動してごらん?

小学生でも、女は女だ。

面倒ごとが起きるのは火を見るより明らか。

 

だから私は、あえて“適度な距離感”を保つようにしている。

その代わり、伊地知にはよくうちに遊びにきてもらっている。

礼儀正しくて真面目な伊地知と仲良くなったことに、両親は大喜び。

 

うん、記憶を取り戻してからというもの、

私も七海も、同年代の子どもたちと遊ぶことが極端に減った。

 

──特に、七海は。

 

まあ、それはもう性分というか……しょうがない部分もある。

私はその点、割と器用というか、アホの子をいくらでも演じられるし、

そうやって楽しめる分にはまったく問題ないんだけど。

 

でも、そうなると必然的に、七海を一人にすることになる。

だから結局、私も無意識に、同年代との接触を避けるようになっていった。

 

それに、親だって気づいていた。

心配されていたのも、ちゃんと分かってた。

だから本当にホッとしたんだろうな。七海に同世代の友人ができて。

 

今では、もう家族ぐるみの付き合いに近い。

……前世の両親から「他の家の子」として接されるのは、少しだけ寂しいけれど。

でも、それは仕方ないことだ。彼らにとっての“私”は、今世の私なのだから。

 

それでも──また、こうして親しくなれたことが、素直に嬉しい。

 

前世では、親不孝をした。

でも今世には、親不孝の原因だった伊地知潔乃(もの)がいない。

だからこそ、願う。

今度こそ、幸せになってほしいと。

 

 

 

 

学校生活では、伊地知は学校でクラブ活動で柔道部に入り、かつての伊地知潔乃()と同じように受け身を叩き込んでいる。

先日私達と一緒にいる時に、私や七海が下級呪霊を祓う現場を目の当たりにして、

「呪霊に襲われてからじゃ遅い」と、より自覚したらしい

それはもう、必死に取り組んでいる。

 

一方で、私や七海は柔道クラブには入らず、伊地知に付き合って見学だけ参加した。

お互いに家で組手やった方が効率が良さそうだからね。

 

……で、まぁ、うっかり私も七海も、見学時に受け身を綺麗に決めてしまった。

前世の経験か、今の肉体スペックかはわからないけど、どう見ても“初心者”の動きじゃなかったらしい。

 

もちろん即座に引き留められたが、

「他のクラブも見たいので」と笑ってごまかし、なんとかその場を逃げきった。

 

後日、伊地知がぽつりとぼやいた。

 

「肉体スペックが違いすぎます……」

 

いやいや、こっちからしたら、そっちこそ才能あるんだぞ?

呪力も、肉体も、頭もかつての伊地知潔乃よりいい。

どんだけ伊地知潔乃は、伊地知潔高の下位互換だったんだと涙目になる。

前世の伊地知潔乃()が嫉妬してる。

 

そして、伊地知が入学して数ヶ月後、七海が8歳の秋──術式が発現した。

七海曰く前回もこの時期だったらしい。ちょっと遅めでハラハラしたのは内緒。

 

前回と変わらず、『十劃呪法』。

あの、7対3の縛りを利用する術式だ。

まだ子どもだから威力も制御も未熟だけど、前回で術式を理解してるのが強い。

 

この術式、縛りさえ上手く組めれば『なんでもできる』可能性があると思ってる。

なので七海には、術式の理解と拡張を更にぜひ頑張ってもらいたいところ。

 

……と、そんな風に他人事のように構えていた私。

直後にまさかの──術式、発現。

 

正直、ビビった。

 

いや、もう完全に術式発現せずに、以前と同じ呪力ありだけど猿よりです!になると思ってたのに。

私の武器は呪力操作の精密さと、呪力宝石で騙し騙し何とかするもんだと割り切ってたのに……

私も補助監督ルートを狙っていたけど、これは術師にされる気がしてきた。

なぜなら五条に見抜かれる。

使い方次第でエグいことできそうだし。なるべく隠していきたいんだけど…

五条も完全に全部を正確に見抜けるわけじゃないのが救いか…

あーあの男どこまで行ってもめんどくさい。

チャートの修正をする必要があるかも…

 

嬉しいような、怖いような、なんとも言えない気分だ。

 

一方、伊地知はというと――今のところ術式は見られない。

呪力は感知できるし、呪力量もまぁまぁある。かつての呪力量カスカスの私とは違う。

それでも彼は黙々と鍛錬を続けている。

術式がないなら、ないなりにやれることを──その覚悟は、私がよく知ってる。

 

……ああ、やっぱりこの人は、伊地知潔高なんだなって。

 

七海のことは伊地知に任せて、私は少し体力をつけようと思ったのだ。

呪術師は、体力が資本。これはもう、常識だ。

 

もちろん、七海や伊地知と同じ運動をしてもいいんだけど──

どうしても性差が出る。筋力、スピード、持久力、色々と。

 

だったら最初から分けた方がいいよね、とちゃんと話し合ったうえで、

私はミニバスを始めることにした。

 

……これが、なかなか良い。

 

コートの中では、常に走りっぱなし。

ぶつかり合いも多くて、体幹も鍛えられるし、持久力もつく。

 

なにより、あの狭いコートの中じゃ、身長や体格だけじゃ勝てない。

小柄でも速ければ勝てるし、視野が広ければ仲間を活かせる。

 

その“理不尽さ”が、私にはちょうどよかった。

どこまでいっても呪術の世界は理不尽なんだから、慣れておくに越したことはない。

 

というわけで、ちょっと頑張ってみたのだが──

 

七海潔乃の肉体、スペックが良すぎた。

 

鍛えれば鍛えるほどグングン成長する身体。

身長はどんどん伸びるし、筋肉もきれいにつく。

そのうち動きやすさ重視で、ロングだった髪もばっさり切って、ベリーショートに刈り上げた。

試合中に引っ張られたりするしね。

 

……うん、制服が似合わない。

 

そして、なぜか男子より女子から黄色い悲鳴が上がるように。

「かっこいい~!」

……え、私そんな方向性で行く感じ??

 

気づいたらレギュラーに選ばれていて、都大会に出てて、

他校からスカウトの話まで舞い込む始末。

 

──あ、これ、やりすぎたな、とようやく自覚した。

 

そして、追い打ちをかけるように母が真顔で言い放った。

 

「中学は女子校に行きなさい。潔乃はちょっと男まさりすぎるから……心配なの」

 

流石にギョッとした。

 

慌てて「今の私立、持ち上がりがいいから!」と懇願してみたけど、

母の表情はカチカチに固まったまま。意志もびくともしない。

 

……どうしよう、これ、わりとマジでまずいやつでは?

 

「高校からは高専に行くんでしょう? 中学の間は、女の子らしいことをしてほしいのよ」

 

母の口調は優しい。でも、なんか譲ってくれる気配がない。

普段だったら私が甘えておねだりしたら聞いてくれるのに!!

 

……ちなみに、母にはもう“呪霊が見える”という話はしてある。

街中でわざと蝿頭を祓って、それを“偶然”見ていた高専関係者が家に説明に来た。

もちろん全部、仕込みだ。高専関係者がいることを確認して、3人で祓ったのだ。

ちなみに、伊地知の家にも同じ話が入ってて、彼も高専に入学が決まっている。

 

「専門の教育機関で学ぶ必要があります」と両親に説得してもらい、

高校から高専に進学する許可は無事もらえた。

 

でも――それと「母としての心配」は、別問題らしい。

 

「建人や潔高と一緒の学校のほうがいい!」

 

食い下がる私に、母はさらに柔らかい圧を重ねてくる。

 

「そんなこと言っても、最近のあなた、ミニバスばっかりじゃない。

お兄ちゃんも潔高くんも、寂しいと思うわよ?」

 

……ぐっ。

 

ちくしょう。ミニバスに力を入れすぎた。

伊地知潔乃のときより、体が動くから。つい、頑張りすぎたんだよな……。

 

小さくため息をつく。

どこの女子校に行かされるんだろう。

また受験勉強か……と思うと、正直憂鬱になる。

いや、学力は問題ないけどね。面接とかのプレッシャーが………

 

そんな私の様子を見て、母が「察し」の顔でパンフレットを取り出してきた。

 

「ここはね、お父さんのお姉さん、ほら〇〇伯母さんが卒業した学校なんですって。

素敵なところらしいわよ?」

 

……どうやら、コネもツテもあるということらしい。

逃げ道は、ない。

 

渋々パンフレットを受け取り、表紙を見て、そっと目を上げる。

 

『廉直女学院中等部』

 

──って、星漿体・天内理子の学校じゃないか……。

 

思わず、パンフレットを取り落としそうになった。

これはむしろチャンスでは?

顔見知りになっておいて、更に星漿体の任務に一枚噛むことあできれば。

私はため息をつきつつ、母に了承したふりをした。内心で、七海や伊地知に報告せねば!とウキウキしてたのはいうまでもない。

 

 


 

 

数日後、私の部屋にて。

 

七海と、遊びに来ていた伊地知と並んで、宿題の課題をやっている――という“てい”で、

廉直女学院中等部への進学の話を打ち明けた。

 

「……というわけで、女子校送りになりそうです。理由は“女らしくないから”だそうで」

 

言った瞬間、ふたりの反応は早かった。

 

「だから、女らしくしなさいとあれほど言ったでしょう?

母は可愛らしいものとかそういうの好きですからね。

ボーイッシュ通り越して、学校で王子様やってますからね。

流石に心配になったんでしょう」

 

即座に反応したのは、こっちは現世の兄・七海。

口調は丁寧、でも内容はきっちり刺してくる。

 

「潔乃って、外ではしっかりしてるのに、家の中じゃ、手を抜きまくりますからね……

そのうちノーブラ、ホットパンツで家の中を歩き出して、目のやり場に困ることになりますよ」

 

こっちは前世の兄・伊地知。まるで事務的な査定報告みたいな口調で、バッサリ斬ってきた。

 

……新旧の兄の評価、辛辣ぅ!!!!

 

誰より私のことをよく知ってる二人だからこそ、容赦も遠慮もない。

いや、わかってる。

わかってるけどさ!

確かに反論は難しい部分もあるけどさ!!

 

なんかこう……もうちょっとオブラートとか、優しさとか……ないの!?

いいじゃんか!! 家の中なんだから!!!

家族なんだから!!!

リラックスしてるだけじゃんかよぉぉぉ!!

 

ふと、七海が何かを思い出したように、静かに口を開いた。

 

「……あなた、高専時代も、その格好で寮の部屋にいたんですか?」

 

「え?そりゃそうでしょ。寮の部屋は私のプライベート空間ですよ?

自分の部屋でくらい、好きな格好して何が悪いんですか?」

 

反射的にそう返すと、七海はじっとこちらを見たまま、少しだけ眉をひそめて言った。

 

「……五条さん、あなたの部屋に入り浸ってましたよね?」

 

──あっ。

 

脳内に、過去の光景がフルカラーで蘇る。

メガネなし。ダサいタオルヘアバンドで髪を纏め、だるだるTシャツ、ノーブラにホットパンツでだらっと過ごす私。

そして隣には、当たり前のようにくつろぐ五条。

 

……やばい。色々と、やばい。

 

いや、いやいや!

確かにそうだったけど!

でも五条も私も、互いを性的対象の異性として認識してなかったからセーフだったし!?

大体、くつろいでるところに勝手に部屋に入ってくる五条が悪いんだよ!

鍵かけても意味なかったもん! 最終的にもう鍵かけてなかったもん!!

 

……でも、七海にバレたのはまずい。めちゃくちゃまずい。

 

その瞬間、七海の額にピキリと浮かぶ──

小学生らしからぬ、鋭い青筋。

 

「だから! 家の中でも、女性らしい慎みを持てと、あれほど言ってるんです!」

 

はい、説教モード入りましたー。

知ってたよ! 七海、そういうとこ律儀だもんね! でもさ!!

 

思わず、隣に座る伊地知に助けを求める視線を送る。

すっ……と、気配を消して視線を逸らされた。

 

おい。

こんにゃろう。

お前、前世では私の兄だっただろうが!!

 

 


 

 

女子校送りとなって数ヶ月が経った。

前前世で見た、マリ見ての世界がここにあったよね……

紅薔薇 (ロサ・キネンシス)とかは流石になかったけど、

先輩のことを「お姉さま」と呼ぶ生徒がガチでいた、

そして「ごきげんよう」で挨拶するのが当たり前の空気。

 

──見てて本気で鳥肌が立った。

 

いや、否定はしないよ? しないけどさ?

ていうか、現実じゃないフィクションの世界なら最高だよ?

可愛い子たちがうふふあははしてるのって目の保養になるじゃん?

 

正直、お遊戯踊ってる方がまだマシだった……

七海、ごめん。お遊戯くらい適当に流せよって内心で思ってたけど、

今ならあんたの気持ちが痛いほどわかる。

 

合わないものを受け入れ続けるって、ほんと、しんどい。

 

あぁ、前の私立学校が恋しい。

あそこは共学だったから、ここまで酷くはなかった。

 

今の学校の子たちに性格が悪い子はいない。

ミッション系スクールで偏差値高めのお嬢様学校。

みんなお育ちがよろしい。

金髪で目立つ私の容姿にも、「海外の血が入っている」と伝えてあるから変な噂も立たないし、

ベタベタした付き合いが苦手な私にも、適度な距離感で接してくれる。

 

──いい子たちなんだよ。みんな、すごく。

 

でも、それでもやっぱり。

根本的に、私はここに“合ってない”。

 

ああ、天内理子の入学まであと2年……私、耐えられるのかな。

 

本当は、運動系のクラブに入って気晴らししようと思ってた。

でも今は、その気力すら起きず、図書館で時間を潰して、なんとなく帰る。

 

でも、家に早く帰りすぎると親に心配されるしなぁ……。

 

ため息まじりに参考書をパラパラめくって、閉じて、ようやく帰ることにした。

 

前の学校は、家から徒歩15分強だった。

今は電車通学。駅からも遠いし、それだけでもなんだか憂鬱だ。

 

……結局、自分で「ここなら利用価値がある」って選んだ学校なのに。

文句ばっか言ってる自分が、ちょっと情けない。

 

電車を乗り継ぎ、最寄り駅に到着。

トボトボと歩いて帰宅している途中──

 

ゾワッ、と悪寒が走った。

 

気がつくと、周りに誰もいない。

 

おかしい。ここは駅のすぐ近くで、しかもまだ夕方。

人っこ一人いないなんて、ありえない。

 

……結界術? あるいは生得領域か?

いや、違う。これは、心象を具現化する“領域”にしては、あまりに普通すぎる。

 

ポケットに手を入れ、忍ばせた宝石の感触を確かめながら、周囲を探る。

 

呪霊か、呪詛師か――

 

そのとき。

目に入ったのは、ニタニタと笑う呪霊の姿だった。

 

……呪霊の方かー。

見た感じ、1級なりかけの2級ってところかな。

うわ、めんどくさ。

 

宝石を使う? ……まあ、術式の訓練にはちょうどいいか。

 

ポケットの中の宝石から手を放し、自分の術式に呪力を流し込む。

 

ピリッと走る感覚と同時に、視界がグッと広がっていく。

人間って、怒ると視野が広がるって言うけど、戦闘体勢でもたぶん同じ。

 

広がった視野で呪霊を観察する。

 

……なるほどね。

結界に人間を閉じ込めて捕食するタイプか。

なぜ私を狙ったのかは分からないけど──

 

……運が悪かったな。術式練習の生贄になってもらう。

 

 


 

 

私の術式は──

どうやら「触れた物体の“時間”をコントロールする」能力らしい。

 

術式の発現に気づいたのは、本当に唐突だった。

ある日、学校から帰ってきて、一人で宿題をしていたときのこと。

「あ、私、術式使える」──そう唐突に“理解”した。

 

その瞬間、とにかく試してみようと思った。

 

筋トレマニアの父が買ってきた、まだ青いバナナを一本もらい、

部屋で術式を使ってみた。

 

……結果、シュガースポットだらけの甘い完熟バナナが完成。

 

さらにその夜、母が「カビが生えてた」と捨てようとしたみかんを回収し、再び術式を発動。

すると、みずみずしい、カビのない綺麗なみかんに戻った。

 

……これ、どう使えばいいの?

 

正直、頭を抱えた。

 

とりあえず、バナナとみかんはおいしくいただいた。

とても甘くて美味しかったです。

食べ終わった皮をゴミ箱にぽいっと投げる。

 

術式が発現したら七海や伊地知に話すと約束はしているけど、

その前に、自分の術式とちゃんと向き合いたかった。

 

人の意見を聞いたら、それだけで能力が“固定”されそうな気がする。

そして私は、まだそれが怖かった。

 

時間操作系は絶対に強い。

縛りと解釈次第で、化ける。

 

私は学習机のチェアに座り、ゆらゆら揺れながら考える。

視界の端、机の上の文房具が目に入った。

 

ふと思いついて、シャーペンを全分解。部品を並べ、術式を発動。

 

スルスルと、シャーペンが元の状態に戻る。

 

次に、シャーペンを机に叩きつけて破壊。

再び術式を使うと、またもやスルスルと元通りに復元された。

 

なるほど、こういうこともできるのか。

 

さらに試す。

壊したシャーペンの隣に、別のシャーペンを置いて術式を発動。

 

すると──

二つのシャーペンが融合し、なんとも言えない「変なシャーペン」ができあがった。

 

「……なるほど?」

 

ならば、と。

その“融合体”に再度術式を発動。

 

すると──

破損したシャーペンと、もう一つの別のシャーペンに分かれて戻った。

 

「これだ!!!」

 

……うん、みなまで言うな。

覚えがあるって? そりゃそうだろうよ。私も思った。

 

──どこのクレイジー・ダイヤモンドかな? って。

 

私の貧困な発想力でそう思ってしまった時点で、

たぶんもう能力はこの方向で固定された。

 

というわけで、私はあらためて『クレイジー・ダイヤモンド』の能力を分析した。

 

原作での描写から考えると──

「触れた物を、損壊や怪我をする以前の状態に戻す」

あるいは「物質を組み直す(元通りに限らず、異なる構造にも可能)」能力。

 

一部の考察サイトでは、

「あれは一種の時間操作なのでは?」とも言われていた。

 

──解釈一致じゃん。完全に。

 

そうして私は、

自分の術式の発展形として目指す“最終系”のイメージを、はっきりと掴んだのだった。

 

最終系のイメージを掴んだ私は、さっそく七海と伊地知に術式の発現を報告した。

 

術式の基本構造と、「クレイジー・ダイヤモンド的な方向を目指したい」という解釈もすべて伝えたところ、

ふたりとも「それがいい」と即一致。

 

そこからは、いろいろな実験にも付き合ってもらった。

 

まず、「触れた物を、損壊や怪我をする以前の状態に戻す」──

この運用については、だいぶ上手く扱えるようになってきた。

 

ただし、やはり原作の“本家”と違って、私にはきっちり呪力消費が発生する。

 

無機物に関しては、呪力消費はかなり軽く、自然回復の範囲でまかなえる程度。

これは想定以上の“破格のエネルギー効率”と言っていい。

 

人間の怪我なども修復は可能だった。

ただし、こちらはそれなりに呪力を消費することが分かった。

 

──でも、たぶんだけど。

反転術式よりは効率がいいんじゃないかな、と思ってる。

……まあ、私は反転術式使えないから比較のしようがないんだけど。

 

そして「物質の再構築(組み直し)」についても検証した。

 

目の前にある物をわざと壊して、術式で再構築する。

このレベルであれば簡単にできた。

 

ただし──

“融合”や“構造の変化”を起こすには、

どうやら明確なイメージが必要だということも判明した。

 

組み直しの設計図が頭の中に描けなければ、術式がうまく動いてくれない。

 

うん、やっぱり時間操作系って一筋縄じゃいかない。

けれど──そのぶん、伸びしろがあるってことだ。

 

そして、もうひとつ大事なこと。

七海と伊地知と話し合って、ある結論に至った。

 

「時間操作系ということは、対外的には言わないでおこう」という認識で三人一致。

 

「物を直したり、破壊したりできる能力。

『ちょっとした分解と再構成』ができるってことにしておきましょう。

本当の力が総監部に漏れたらまずい。特に“回復できる”って点は、致命的です。

早く高専に入って、五条さんの信頼を得たら庇護下に入りましょう」

 

七海が真剣な顔でそう言い切ったあと、私の返事を聞く前に伊地知がそっと手を挙げた。

 

「……え、呪術界って、そんなに怖いところなんですか……?」

 

その小学生らしからぬ冷静なドン引きに、七海が黙って頭を抱える。

私は思わず苦笑い。そう怖いんだよ呪術界って。

闇より黒いんだよ。覚えといて。

 

 


 

 

さて、目の前の“1級なりかけ”呪霊。

今の私が確実に仕留めるなら──ポケットの宝石でポン!だ。

でも、それじゃ面白くない。せっかく術式が使えるようになったんだから、試したい。

 

それに、ここは23区内の駅近。

万が一、私がやられかけても、窓やら何やらを通じて高専に連絡が行くだろうし、術師もすぐ駆けつけるはず。

私の存在も、もう高専には知られてるし、バレても問題ない。

 

──つまりこれは、私が死なないようにだけ気をつけて術式の実戦テストができる、絶好の“鴨”。

 

ニタニタ笑う呪霊は、こっちが子どもに見えるせいか完全に油断してる。

呪力を抑えてるから舐められてるのかもしれないけど──それなら好都合だ。

 

静かに息を吐き、足に呪力を流し込む。

瞬間、一気に地を蹴って距離を詰めた。

 

「──ッ」

 

右手に術式を展開し、掌底を叩き込む。

手応えは、しっかりあった。

 

その刹那、声にならない呻きとともに、呪霊の姿がかき消える。

空間に張られていた結界が解除されたのか──ざわめきが、街に戻ってくる。

 

駅前の喧騒。帰宅中のサラリーマン、部活帰りの学生、飲食店へ吸い込まれていくカップルたち。

いつもの日常が、目の前に広がっていた。

 

「──ふぅ」

 

肩の力を抜き、術式で祓った初めての手応えを反芻する。

この感覚を忘れないようにしなきゃ。

早く七海に報告したいな。

鞄を持ち直し、帰宅へと歩き出した──その時だった。

 

 

「へー。ガキンちょのくせにやるじゃん」

 

 

軽くて、でも芯に冷たい響きを孕んだ声が、背中を撃ち抜いた。

 

足が止まる。呼吸も止まる。

耳が勝手にその声を拾って、脳が拒絶反応を起こす。

声色は違う。けど、その口調に聞き覚えがある。

 

「物体の時間をコントロールできる...ね。いいモン(術式)持ってんじゃん」

 

ゆっくりと、恐る恐る、声のする方へと視線を向ける。

嫌な予感が──的中した。

 

「呪霊の時間をコントロールして、発生前まで時間を戻し、その存在自体を抹消した。

……いいじゃん、その解釈。おもしれーじゃん。オマエ」

 

飲食店の壁にもたれて、ポケットに手を突っ込んだまま、にやりと笑う。

 

その姿は──

私がかつて裏切った男。

けれど、今の彼は私と出会った時時より、

少し若くて、

少年というより、子供で、

声変わりもしてない。

まだ“何も失っていない頃”の、五条悟だった。

 

「んで、オマエ誰?

高専にそんな術式持ってる奴がいるって、聞いたことないけど?」

 

軽く首を傾けて、六眼がじっとこちらを見つめていた。

 

 


 

 

主人公

 

術式が無事発現した。前世の術式と異なっているのは肉体が違うから。

今度の身体はフィジカルも術式も呪力もAAAで驚いてる。

伊地知潔乃の時にもAAAの術式はあったけど発現前に死んだので、当然知らない。

知ってたら、何でJOJO縛り?と首を傾げてたはず。

運動神経抜群でミニバスやりすぎた結果、女子校ルートへ入ってしまった。

強制的に女子校に通うことになりメンタルが盛大に削れてる。死んだ目になった。

ストレス発散に術式で呪霊をボコろうとしたのが運の尽き、

過去の最大のトラウマと早々に出会う羽目に。頭真っ白。さらに死んだ目になった。

 

 

五条悟

 

任務で東京に来てて、帰宅しようとしていたら、近くに呪霊が湧いたと窓から連絡が来た。

舌打ちしながら現地に向かったら、おそらく中学生の金髪の美少女が、さくっと呪霊を祓ってた。

手際の良さと、稀有な術式にワクワク。

一応警戒した声をかけているが、呪詛師にしては殺気が無いし、野良の一般人だろうなってのは把握してる。

 

 

 

七海建人

 

こちらも無事に術式が発言した。こちらは前回と同じ。

伊地知が初等科に入学してきてからは親友枠に。普通に馬が合う。

前回と同じなので、こちらは術式の解釈や肉体を育ていく方向で頑張っている。

まさかの主人公も術式持ちで、それがやっかいで伊地知と頭を抱えた。

これは高専に入学したら、五条の庇護を受けようと。

中学生になって嬉しいのは、お遊戯とかそういうのがなくなったこと!

やっとまともに静かに生活できると思ったら、主人公が女子校ルートへ行って呆れた。

どうせなら、一緒に通いたかったのにと思うくらいには、もう家族と思ってる。

パンの爆食は続いてる。

 

 

伊地知潔高

 

こちらは術式発現せず。

同じ小学校に入学後は七海と親友枠に。普通に馬が合う。

基礎体力向上と、受け身など生存戦略を上げるために日々頑張ってる。

呪力量やフィジカルは伊地知潔乃より上。

努力の結果、原作の伊地知よりちょっと上方修正されている。

主人公と一緒の中学に通えなかったのが残念。

生まれ変わっても、かつての片割れ、今も心の双子の妹だと思ってる。

パンの爆食に付き合わされている。




主人公の術式はなぜJOJO縛りなのか。
その秘密を探るため、我々はアマゾンの奥地へと踏み入って行ったのだった……
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