とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

五条との交流

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、
 七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、夕食を共にする

「まずは、オマエの術式の再確認からな」

 

ウキウキと、懐からメモ帳を取り出してる。

本当に尋問スタイルだ勘弁してほしい。

 

「えーっとその前に、ちょっと確認させてください」

 

「なんだよ」

 

「さっきから言ってる六眼ってなんですか……?」

 

五条が何言ってんのこいつみたいな顔をしてる。

いや、本当は知ってるけどさ、一般人のふりをしてるので聞かないわけにはいかないじゃん?

話の腰めちゃくちゃ折るけど!

 

「………………そこからかよ。これだから一般人(パンピー)は」

 

めっちゃ溜めてからの、うんざり顔。

メモ帳をカウンターの上に放り投げた。

でも、教えてくれる気はあるらしい。

さあ、知ってる内容を知らないふりで聞く、茶番の時間です。

 

「六眼ってのはな俺の実家、『五条家』の人間に稀に発現する特殊体質のことだ」

 

そう言って、五条はサングラスを外して、トントンと目尻を叩く。

現れた瞳は、宝石のように煌めいていた。

光を反射して、幾重もの青が揺れている。

いつ見ても幻想的で綺麗な目だなぁ。

 

「対象の呪力を読み取れるから、初見の術式でもある程度構成や条件を把握可能なわけ」

 

「だから私の術式がわかったんですね……それが六眼」

 

なるほどなるほど、と頷いてみせる。

 

「そういうこと。ちなみに俺の術式は無下限呪術って言ってな。

収束する無限級数みたいなもんで、俺に近づくモノはどんどん遅くなって

結局俺まで辿りつくことはなくなるの」

 

五条が手のひらを差し出してくる。

顎でしゃくって触れとアピールされる。

 

「ほら」

 

言われるがままに、そっと指を伸ばす。

 

──そして、触れられる寸前で、指先がぴたりと止まった。

まるで、見えない壁に阻まれているみたいに。

 

「おぉ……ATフィールドだ……」

 

何度か体験してるはずなのに、こればっかりは慣れない。思わず素の感想が漏れる。

前の五条は基本私に対しては無限張ってなかったからな……

それにしても本当に、『触れられない』という感覚がリアルで苦手だ。

 

「ATフィールド?知らねーけど、とにかく俺が強くて凄いの、わかった?」

 

「雑なまとめ方しましたね」

 

「いいんだよ、事実だし。

だからまあ──大人しく縛り結んで正解だよ、オマエ」

 

ドヤ顔。超ドヤ顔。腹立つ。

……でも、言ってることは正しいんだよなぁ。悔しいけど。

 

「ほら、この俺の術式バラしたんだら、さっさと吐け」

 

 

そう言ってフラペチーノを飲み干すと、五条は当然のように私の食べかけのタルトに手を伸ばす。

──ペシンッ。

手の甲を軽く叩くと、「ケチ」とかなんとか呟いている。

でも、手をさすりつつ、なんだか嬉しそうだ。なんでだ?

 

「簡単にいうと、『触れた物体の“時間”をコントロールする』が私の術式です」

 

見せつけるようにタルトにフォークを刺して、一口パクり。

舌打ちする五条を無視して、紙ナプキンを取りピリピリと破く。

そして、私は破れた紙片にそっと指先を添える。術式を発動──。

 

つん、と軽く突いた瞬間、破かれた紙ナプキンは、まるで時間が巻き戻されたかのように瞬時に元の形を取り戻す。

 

「へぇ……」

 

五条は興味深げにそれを手に取る。

しげしげと観察したあと、今度は模様が異なるナプキンを二枚取り出し、同様に破いた。

 

模様が違う紙ナプキンを2つ新しく取り出し、再度ビリビリと破く。

術式を再度発動し、二つの破片に触れる。

すると、模様の違うナプキンは不自然なくらい滑らかに融合し、ひとつの紙片として再生された。

 

「……マジかよ」

 

目を見開いて、それを確認している。

私はそのナプキンを彼の手からひったくると、再び術式を発動。触れた瞬間──今度は融合していたものが元の二枚の別柄のナプキンに戻る。

 

「は?」

「こんな感じです。

『触れた物体の“時間”をコントロールする』という術式を応用して──

破損した物を元に戻したり、異なる素材を“融合した状態で元に戻す”こともできます。再生も分離も、意図的に操作可能です」

 

「……は???」

 

思考が追いつかないという顔で、五条がぽつりと漏らす。

その反応をよそに、私は淡々と続きを告げた。

 

「ちなみに、人体にも適用可能です。

呪力消費は激しいですが」

 

言った瞬間、空気が一瞬、揺れた気がした。

さっきまで軽口を叩いていた五条の目が、ほんのわずかに細められる。

ふざけた笑みの下に潜む、“六眼”の本質。観察と解析の構えだ。

五条の声が低くなる。

 

「──どこまで?」

 

「壊死細胞の巻き戻し、断裂した筋肉の再構築、失った指の再生。

『なかったことに』することが可能です。たとえばそれ以前の時間に戻せば──『起きなかったこと』にできます」

 

言いながら、自分の手を見つめる。

術式の修行のためにざっくり切ったり、切り落としたりしたが私の手は傷跡ひとつない。

バスケ部でボールを触りすぎて指先が固くなってるくらいだ。

 

「致命傷は?」

 

五条の声色が、更に低くなった。

私は静かに首を振る。

 

「『死んだあと』は、戻せません。魂が肉体から離れた時点で、対象は“過去”ではなく“喪失”になりますから。

──でも、『死ぬ前』なら間に合います。

たとえば即死性の毒薬を飲んだ直後、即死する前に“毒が回る前の状態”に巻き戻して、毒素と肉体を分離させる。そういうことなら可能です」

 

一拍の沈黙。

 

「……マジかよ」

 

五条が、まるで独り言のように呟いた。

 

「ただの回復じゃない。分解、融合、状態の選別と再構築……

どんだけヤバいか自覚ある?」

 

五条が頬杖をつきながら、真剣に私を見つめていた。

 

「だからひっそりと黙って術式の把握に努めてたんです。

素人の私だってわかります。これはヤバいって。で、話続けますね」

 

食べかけのタルトにそっと術式を発動して触れてみる。

が、何も起こらない。

 

「……タルトは私が食べて、なくなってしまった。つまり……

『使用済み燃料』とか『消費されて既に消えたエネルギー』なんかは対象外です」

 

「そこらで術式の整合性とってんのね」

 

そう言いながら、五条が私の手からフォークを奪い取り、そのままタルトの最後のひと口をパクッと口に放り込んだ。

 

「あっ!」

 

最後に残しておいたのに……!

こんにゃろう、と恨めしげに睨むと、五条は得意げにベーッと舌を出してくる。

相変わらずの距離感ゼロ、ノンデリ。今の私らほとんど初対面なんだが?

ため息をつきながらカップに手を伸ばし、コーヒーをひと口。

 

「で、どうやって『六眼持ち』のあなたから逃げたのか、ですよね」

 

「そうそう。あの閃光玉の呪具な。

残穢がわけわかんねーくらい散らかってて、目がチカチカしたわ」

 

あれか……。

あまり出したくないんだけどな、宝石系は。

 

前に一度、五条に“それ”を見せてしまったら、実験に付き合わされる羽目になって、散々だった。

庇護してくれたし宝石のお金げでお金は潤ったけど、呪力が少ない私は毎晩呪力カツカツになってたからな……

──厄ネタ以外の何物でもない。

 

内心で舌打ちしながら、ポケットに手を突っ込む。

スペック低く見えるやつ……屑宝石なら大量にストックしてある。

あまり目立たず、でも効果はそこそこあるやつ──これでいっか。

 

「これです」

 

手のひらに転がしたのは、ごく普通の水晶。

一見なんの変哲もないそれを、五条がじっと見つめた。

 

「なんだこれ……呪力が込められてる。……これは、おまえが?」

 

「そうですよ。私が込めました」

 

「これ、光るの?」

 

「いえ、これは別の効果です。

宝石の種類ごとに属性的な効果があって、同じ種類でも個体差が激しいです」

 

そう言いながら、またコーヒーをひと口。

このやりとり──懐かしいな。

前にも似たような会話をしたっけ、と少し感傷に浸る。

 

「その水晶は、ちょっとした結界を張ります」

 

「へえ、ぜんぜん分かんね。宝石自体の効果だから六眼でみえねーのか?

……使っていい?」

 

前回も似たようなこと言ってたな。

そう思いながらどうぞ、とジェスチャーで促すと、五条が水晶に呪力を流す。

一瞬、空気が揺れた。

一般人には見えない結界が張られ、水晶は五条の手のひらの上で砕けて散った。

 

「……これは──2級は突破できるのもいそうだけど、3級以下なら寄ってこれねーな」

 

「流石の見立てですね。私もそのつもりで、この石は高頻度で持ち歩いてます」

 

本音を言えば、呪力ある人間に見られると厄介だからあまり使いたくはない。

でも、「あ、いそうだな」って場面で使えば、呪霊騒ぎはスルーできる。

 

「で、今使ってわかったと思いますが──

この宝石を使った際に広がる残穢は、私のものじゃなくて、“宝石由来の呪力”になります」

 

「──ああ、だから残穢がごっちゃになってたのか」

 

「そうです。で、その“発光する宝石”を使った直後、私はビルの外壁を“建設前”の状態に戻しました。

それで開けた穴から中に侵入して、また壁を元通りに戻した。

その後、自分の呪力を限界まで抑えて、あなたが立ち去るまで待って……

そっとビルから抜け出して、家に帰った。それだけですよ」

 

五条の顔がぐにゃりと歪む。

すごく嫌そうな顔してる。

 

「……オマエの残穢探してたから、ビルの中の人間の呪力なんて気にしてなかった。くそっ……

なんでそんな、六眼対策バッチリなんだよ」

 

「残穢さえ隠せば、逃げられると思っただけですよ」

 

──嘘だけど。

本当は、六眼の視点や、それを使う時の癖、その精度なんかは前世の五条から聞いて知っていた。

メタ知識で申し訳ないけどね。

 

一般の野良術師のくせに──と、五条がぶつぶつ文句をこぼして、頭を抱えた。

髪をぐしゃっとかき乱して、私のコーヒーカップに八つ当たり気味に手を伸ばす。

 

「それブラックですよ。あなた甘党でしょう?」

 

空になったフラペチーノのグラスと、私の盗み食いされたタルトの空皿を指差しながら言うと、舌打ちしながら手が下がった。

甘党なのも知ってるけど、いちいち理由付けするのめんどくさいな。

 

「いいところのお坊ちゃんのくせに、盗み食いは品がないですよ」

 

ちらっと軽口を飛ばし冷めたコーヒーを飲み干す。

そして、私はトレイを持って立ち上がった。

 

「さて──私はもう帰りますね」

 

今日話すべきことは話した。

 

「……は?もう帰んの?」

 

さっさとカウンターから席を立つと、不満げな声が背後から飛んできた。

振り返らなくても分かる。たぶん今、唇尖らせてる。

振り向かずひらひらと手を振って、

 

「話すこと、話しましたし」

 

私は返却カウンターにトレイを返す。

本当は、あと数分くらいは付き合ってもよかった。

でも、五条と話してると、昔の空気に戻ってしまう。

懐かしくって居心地良くって、でも、過去の私と今の私は違うのだから線引きは必要だ。

 

気持ちを切り替えるように、販売カウンターに並び直して、ケーキを追加で購入する。

盗まれた分+αでしっかり多め。

カロリー? 知らん。明日も部活あるし。

 

ケーキの箱を抱えてカフェを出る。

家までは徒歩で十数分。

さっさと帰って、冷蔵庫に入れておかないと──

 

「……なんでついてくるんですか」

 

隣に並ぶ気配。案の定、五条。

 

「喋り足りねぇから」

 

即答。悪びれた様子もない。

 

「家に帰ってください。門限あるでしょ、お坊ちゃん」

 

「俺の家は京都。今日は東京で泊まり」

 

「……ホテル帰ってください。もうすぐ夕飯の時間でしょう」

 

「オークラの飯、悪くねぇけどさ。飽きんだよね」

 

……畜生、良いところ泊まってやがる。

これが五条家の資金力かよ。

 

スタスタと早歩きで距離を取ろうとする私に、五条は余裕の歩幅でぴたりとついてくる。

この頃でも五条の方が背が高いし、脚も長い。

おまけにケーキを抱えてるからダッシュもできない。

 

じっとりと睨め上げると、ニヤリと笑ってきた。

ムカつく顔がもう、完成されてる。くっそ、むかつく。

 

……それにしても、なんでこんなに距離を詰めてくるのが早いのか。

 

五条って、本来はもっと警戒心が強いはずだ。

それが、自分の術式をあっさり見せたり、私の食べかけを迷いなく奪ったり、明らかに“らしくない”。

 

──前世の記憶はないみたいだけど。

それでも、魂のどこかに、残ってるんだろうか。

 

……考えても仕方ないか。

 

歩きながら携帯を取り出し、ポチポチと操作。

数回のコール音のあと、電話が繋がった。

 

「あ、お母さん?今日、晩ご飯もう一人分増やせる?

知り合い連れてくから」

 

うちの母は、海外の血が入ってるせいか、お客様が来るのが大好きだ。

でも私も七海も、伊地知以外に友達を連れてくることがほとんどないから、たぶんめちゃくちゃ喜ぶ。

──生贄、決定。

 

電話を切って、隣を見る。

 

……思った通り、驚いた顔してた。

 

「高級ホテルの料理とは違って、うちのは一般家庭のごはんですけど、それでよければ、どうぞ。

食べたあと、高専入学予定の兄や幼なじみとも話せますよ?」

 

そう言った瞬間、五条がぱあっと顔を輝かせて、

 

「いく!!!!」

 

満面の笑み。懐かしい五条が本当に喜んでる時の笑み。変わってないなー

まあでも、こうして『正式に』うちに招くのは悪くないかもしれない。

五条が妙にガード緩くて、しかもやたら好意的に絡んでくるなら──

別に、この時期から多少関係ができてても、おかしくない。

 

矯正役は、七海と伊地知も巻き込もう。

私ひとりで地獄を見るのは、さすがに割に合わない。

 

この先どう転ぶかは分からないけど、夏油や家入、夜蛾の苦労を少しでも減らしておくか……

 

 


 

 

家に入った瞬間、出迎えに来た母が固まった。

そりゃーそうだろう。

私が友達を連れて帰ってくるだけで珍しいのに、

連れ帰ったのが男で、しかも超絶イケメンなんだから。

 

「お母さん、知り合いの五条悟さん」

 

とりあえず雑に説明する。

 

「初めまして、お邪魔します」

 

五条の猫被りとか久しぶりに見た。

なんだかんだと旧家、躾は厳しくされているらしく所作が綺麗で腹がたつ。

 

「あと、これケーキ。一旦、私の部屋に行くから」

 

母にケーキを渡し、2階に上ろうとするが、ガシッと腕を掴まれた。

耳元でヒソヒソ囁かれる。

 

「なに、潔乃!!!こんなイケメンどこで捕まえたの!!!」

「この人は、高専関係者。たまたま知り合ったの」

「こんなイケメンもいるの!!」

「知らないよ。とにかく部屋にいるから」

 

適当にあしらって、五条を連れて部屋に入る。

 

「オメェの母ちゃんおもしれーな。全部丸聞こえなんだけど」

 

物珍しそうにキョロキョロしながら、ローテーブルの前のクッションを座布団がわりにして座る。

あーもう、前世の高専の部屋に遊びに来た時と同じ所作はやめてほしい。

 

「すみません。男友達を連れて帰ってきたことなんてないから、テンション上がってるんですよ」

 

私も座りながそう言うと、五条がニヤリと笑って、

 

「ふーん? オマエ、俺ほどじゃないけど美人だからモテそうなのに。特に女から」

 

……軽口は、無視。

あえて拾わず、話を続ける。

 

「そういうのより、部活が楽しいんで」

 

「何やってんの?」

 

「バスケ」

 

「──あー、だからそんなに身長デカいのか」

 

おおん?

喧嘩売ってんのか? それとも天然で言ってんのか?

睨むと、五条は悪びれずに話を続けた。

 

「オマエ、呪霊倒した時、一気に距離詰めてたろ?あれ、バスケの動き参考にしてるよな」

 

……驚いた。

図星だった。

 

私がバスケ部に入ったのは、身体能力の強化と瞬発力の向上のため。

ぶつかり合いも多くて、体幹も鍛えられるし、持久力もつく。

あの狭いコートの中じゃ、身長や体格だけじゃ勝てない。

勝つための戦略眼もつく。

戦闘に応用できるスポーツをと考えて選んだ結果だ。

 

「姿勢を低くして、重心下げてから一気に接近。

あれ、バスケでよく見る動きだけど、呪霊戦でも使えるよな。

ああやって身体を日常的から動かしておけば、いざという時も動く。

一般家庭でできる訓練としてはいいんじゃね?」

 

やっぱり天才なんだよな、こいつ。

 

私のバスケという一言から、戦い方を引っ張り出して、

そこから目的と鍛錬の意図まで見抜くなんて──

ほんと、才能に関しては文句のつけようがない。

 

「いや、すごいですね。その通りなんですけど、よく分かりましたね」

 

「俺は眼がいいからな」

 

五条がニヤッと得意げに笑った、そのタイミングで部屋がノックされた。

 

「潔乃さん、ちょっといいですか?」

 

「どうぞ」

 

七海の声だ。

思わず内心でニヤリとする。

──はい、来た。お楽しみタイム。

 

律儀に返事を待ってから、扉がガチャリと開く。

そして中を覗き込んだ七海が、ぴたりと止まった。

 

……固まっている。

目を見開いたまま、言葉が出ない。

当然だろう。自分の家の自分の妹の部屋に──

なぜか、五条悟がいる。

 

無言で、扉をそっと閉めた。

 

うは、ウケる。七海大混乱じゃん。

 

五条に「ちょっと待ってて」と言い残し、慌てて廊下に出る。

七海の部屋の扉を開けると──

 

七海はベッドで“考える人”のポーズで座り込んでいた。

 

……石化してる?

 

伊地知はローテーブルで参考書を開いたままキョトンとした顔でこちらを見ている。

いや、そりゃそうだよね。

家に五条がいるなんて、想定外にもほどがある。

 

「今、私は幻を見た気がします」

「残念ながら現実です」

 

そう答えると、七海はながーい、ながーい溜息を吐いた。

 

「……なんで、連れてきたんですか」

 

「いやもう、なんか流れで。というわけで、この部屋に連れてきますね」

 

何か言いかけた七海だったが、冷静な頭脳が「いま五条悟と繋いでおくべき」と判断したらしく、グッと黙った。

そのまま、私は隣の部屋に戻りながら──「友達がいるの知らなかったから驚いたみたい」と適当に誤魔化しつつ、五条を七海の部屋へ案内する。

 

「こちら、術師の五条悟さん。

で、この金髪が私の兄・七海建人。黒髪が幼なじみの伊地知潔高です」

 

とりあえず、3人を引き合わせた。

──正直、カオス空間極まりない。

 

「おう、よろしく」

 

「……よろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

五条はまじまじと七海と伊地知を見つめ、

その六眼で遠慮なく二人を“解析”するように観察して──にやりと笑った。

 

「へぇ、こっちは7:3で点を強制的に弱点に変える術式か。十劃呪法だったっけ?

んで、そっちは……術式なし。残念!」

 

相変わらずのノンデリ。初対面でこれ。ほんとどうしようもない。

私と七海の心の声が、同時に一致したのが分かる。

伊地知を見て目を細める五条。

 

「……ああ、でも呪力操作は、結構訓練してるだろ?」

 

「「え?」」

 

 

思わず七海と声が重なる。

五条にフォローっぽいことを言われるなんて、まるでバグ。

 

「え、なんで分かるんですか?」

 

伊地知が驚いたように聞く。

 

「俺、眼がいいんだよ。呪力の流れとか、そういうのが全部視える。

オマエのは少ないけど、流れがスムーズで安定してる。でも、体もやし過ぎんだろ。ウケる。

そこの──建人だったか? オマエのは、荒くて適当。パワーだけあってもしょうがねーだろ、直したほうがいいぜ?」

 

……あー。

やっぱノンデリだった。

 

七海、青筋浮いてる。

実際、七海はちょっとパワー型寄りで、その通りなんだけど──言い方ってあるじゃん。

 

「うん、どっちも雑魚。

 この中だと、まだ潔乃が一番強いな。なっさけね〜な〜」

 

ケラケラと笑いながら、容赦なく急所攻撃を連発する五条。

 

──初対面で敵を作る才能、間違いなく特級クラス。

 

「……喧嘩売りにきたんだったら追い返しますけど?」

 

「事実言って何が悪ぃんだよ」

 

「はーい、おかえりはあちらでーす」

 

「わかったごめんってば。謝るから」

 

「初対面なんですよね?そんなに馴染んでるんですか?」

 

呆れたように七海が言うと、私と五条が顔を見合わせ、同時に首を傾けた。

 

「さぁ?」

 

「ね?」

 

「……馬が合うってことなんですかねぇ」

 

と、伊地知がしみじみと呟いたところで、階下から母の声が響いた。

 

「──ごはん、できたわよー!」

 

四人が顔を見合わせ、しばしの一時休戦。

空気がふっと緩んで、誰からともなく立ち上がる。

私たちはダイニングへと降りていった。

 

 


 

 

夕食は、母お手製のミートドリアだった。

 

私と七海は、大食漢の部類に入る。

特に私なんて運動部所属なので、食べる量はほぼ“鬼”。

──昔、伊地知潔乃だった頃は胃腸が弱くて、そこまで食べられなかった。

だからこそ、こうしてちゃんと「食べられる」って、やっぱり幸せなことだなと思う。

 

テーブルに並ぶ皿は、なかなかの光景だった。

七海の前に3皿、私の前には5皿。

伊地知は1皿、五条の前には──母が体格を見て「まあ2つはいけるでしょう」と2皿を配置。

 

五条の「え、なにこの量……」という軽く引いた視線を感じるが、無視して「いただきます」。

さっそく、黙々と食べ始める。

 

……ふと横を見ると、五条が妙に慎重にドリアをすくっている。

まさかとは思ったけど──初めて食べる?

 

恐る恐る口に運んで、数秒後──

 

目が、キラッと輝いた。

 

「……うまっ」

 

その後は、あっという間に2皿完食。

見ていてあまりにも面白かったので、心優しい私は、追加で1皿と半分、譲ってやった。

あんなに嬉しそうに食べられたら、ね。多少は、ね。

 

それを見て、母は「あらあら、うふふ」と上機嫌。

七海は「甘やかしすぎです」という視線を投げてきて、

伊地知はというと、ただニコニコしていた。

 

食後は、私が買ってきたケーキタイム。

本来は、私が2つ食べる予定だったケーキだったが──

結局1個、譲ってやった。ちくしょう。

 

結果、夕食はにぎやかに終了。

 

母は気を利かせて、自分だけ先に食べ終えると、「あとはごゆっくり」と言い残して席を外してくれた。

ダイニングに残ったのは、私たち4人だけ。

 

意外と──いや、思った以上に、話は盛り上がっていた。

 

3人とも高専には進む予定だが、術師になるとは限らない──ということにしてある。

 

あくまで“術式の制御と適応訓練”が目的、という建前。

実際、原作の流れに寄せていくなら、私も七海も、一度は高専を離れた方がいいだろうという認識で一致していた。

 

だから、どちらにでも動けるように、そういう設定にしてある。

 

……そのあたりを説明したところで、五条が、本気で驚いた顔をしていた。

 

「もったいねぇって……あー、聞いてるこっちが歯がゆいわ。

いや、五条家関連企業雇えばいいか。縛りがあるから庇護下に置くつもりだし」

 

ケチをつけてるんじゃなくて、本気でそう思ってるのが分かる。

──まあ、そういう言い方しかできないのが、五条悟だ。

この人、気に入った相手には本当に全力なんだよなぁ。

昔もそうだったけど、五条の好感度は、いきなりガツンと上がったから、よくかわからん。

 

七海の縛りってなんですか?という視線が怖い。

と思ってたら五条が全て説明するから、ますます七海の視線が怖くなった。

いいじゃん、元々高専入ったら五条に保護求めるつもりだったんだから!!!

 

その後、七海が素直に「呪力操作の荒さをどう矯正すべきか」と尋ねると、

五条はあっさりとポイントと練習法を伝えていた。実践的なアドバイスを。

 

伊地知に対しても「体力は重要だからさ」と言って、簡単な運動プランを組んでみせていた。

「お前の筋力と体格なら、毎日このメニューで基礎固めて、補助的に呪力を回す感じで──」

まるで家庭教師みたいな口調で。そういやこいつ教師だった。

教えるの下手だと思ったけど、こちらから聞けば的確な言葉が返ってくるあたり、もっと上手く教師やれたんじゃない?

 

──そう、五条って、この頃から意外と面倒見がいい。

 

ノンデリのクソガキだけど、こっちが素直に頼めばちゃんと応えてくれる。

そういう意味では、伊地知との相性はやっぱりいいんだと思う。

 

……七海は、ちょっと半ギレになってたけど。

 

五条は七海の怒りっぽさがツボに入ったらしく、ずっとケラケラ笑ってからかっていた。

 

そんなこんなで、伊地知が帰る時間に合わせて五条も帰って行った。

しっかり私たちとメールと携帯番号を交換して、満足げに。

 

ちなみに、母からは「伊地知君と、五条君どっちが本命?」とお花畑なことを言われて疲れた。

勘弁してくれ、片方は元兄、片方はノンデリのヤリチン。どっちもタイプじゃねーわ。

 

 

 


 

 

 

主人公

 

五条とまだそれなりに距離おこうと思ってたけど、あっさり詰められて無理だと諦めた。

警戒心強いはずの五条があっさり好感度上がって意味がわからない。

前世の記憶は思い出してないけど、魂にでも刻まれてるのかなと予想してるが。正解。

まぁ、そっちから友好的にくるならと家に呼んだら、喜んでついてきた。

七海と伊地知とも繋ぎをとって、五条の矯正を一緒にやろうぜと巻き込んだ。

なお、五条はメール魔で鬱陶しいほどくだらないメールが来る。

 

 

 

五条悟

 

最初は興味本位、話してるうちにこいつ馬が合うなーと魂で悟った。

警戒心が薄いのは、前世のことが魂に刻まれているからというのと、

五条家を知らない一般出身だからなのもある。

五条悟に、文句を言い、手を叩く奴なんていない。もうそれだけで好感度UP。

この兄妹と、伊地知ってやつおもしれー

東京に来る機会があったら連絡して遊びに来るし、この頃から東京高専にいけばいいんじゃね?と思い始める。

外に出た時は洋食をちょいちょい食べてるけど、ドリアは初めてだった。

なにこれうめぇ。

 

 

七海建人

 

主人公の部屋に五条悟がいて無量空処くらった。

なお、五条に原作通りのウザ絡みをされて、かなり煽り散らかされ、血管がピキってる。

主人公が再会初日に五条の保護を勝ち取ってくると思わなかった。

主人公が自分のドリアを五条に分けてるのを見て、そんな風に甘やかすから執着されるんだと思うが言わない。

五条の警戒心が薄いのは気づいてる。が、主人公と同じくそちらが友好的ならそれはそれで。

五条のことはうっとしいとは思ってるが嫌いではないので、仲良くなれるのは嬉しい。鬱陶しいけど。

五条にアドバイスを聞くと意外と素直に教えてくれて、前世でもそれやれよと思った。

メール魔の五条のくだらないメール被弾率は七海が多い。定期的に「ちんこ」と書かれた意味不明のメールが来てキレ散らかす。

 

 

伊地知潔高

 

五条悟と出会って。七海や主人公が言ってた意味がわかった。

本当に失礼でデリカシーがない人だと。

でも、主人公や七海が五条のことを話してる時に、どこか楽しそうな理由もわかった。

どうしようもないけど、憎めない人なんだなと実感。

真面目に話したら的確なアドバイスがくるし、術師としては真摯なのは察した。

でも、めんどくさいし、鬱陶しいことに変わりはない。

五条にいじられながら、これを10数年続けてた主人公の苦労を思って、

また自分が同じ道を歩むと悟って胃が痛い。

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