とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

五条との交流②

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、
 七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、セクハラを受ける

五条と夕食を共にしてから、もう数ヶ月が過ぎた。

季節もいくつか巡り、私と七海はそれぞれ進級。伊地知が七海と同じ中等科に進学した。

 

──いいなぁ、同じ学校。

やっぱ私も元の学校が良かった……なんて思いつつも、それなりに学生生活を楽しんでいる。

王子様ポジションを確立してしまえば、それなりに楽なのだ。

必要以上に喋らなければ、なんの問題もない。

 

五条は最近では、東京に任務で来たついでに、時間があればちょくちょく七海家に顔を出すようになっていた。

 

話を聞く限りでは、伊地知家にも先日突撃訪問したらしい。

前の母も、五条の顔面偏差値にやられて、黄色い悲鳴を上げていたとか。

 

──まぁ、分かる。

前の母も相当な面食いだったし、外見だけなら、こいつ超一級品だもん。

遠くから見てる分には目の保養。近くに来ると災害。

台風の目の衛星写真って綺麗だけど、実際台風ど真ん中だと大変。そんな感じ。

 

そんなある日。

学校から帰ると、母がいつもの調子で朗らかに言った。

 

「五条くん来てるから、あなたの部屋に通しておいたわよ」

 

……いや、馴染み方が恐ろしい。

なんで勝手に私の部屋に通してんの。せめて七海の部屋にしろよ。

 

 

 

部屋のドアを開けると、そこには母お手製のメロンパンを頬張りながら、私の漫画を読んでいる五条の姿があった。

 

「よぉ」と軽く手を上げるその顔に、私も片手を挙げて、渋々挨拶を返す。

 

──うわ、既視感。

前世の寮の部屋でもよくやってたな、これ。

完全に入り浸ってるやつだ。

 

少しは遠慮しろよ……と思いながら、ため息をついた。

 

着替えたいけど、五条がいるとなると気を遣う。

仕方ない、脱衣所で着替えるか……と室内着を探っていた、そのとき。

 

 

 

「なぁ、お前処女?」

 

──開口一番、何言ってんだこいつ。

 

反射的にカバンを投げつけた。

もちろん、無限で阻まれ五条には当たらない。

 

「……あー、やっぱ処女か。じゃ、無理だな」

 

私の反応を見て察したらしい。

宙に浮いたままのカバンを手に取って、何でもないようにフローリングに置きながら続けた。

 

「なにがだよ!?いきなりのセクハラ発言やめてもらえます!?」

 

「いやさ、元服の儀式やることになってんだけどさ。夜伽の儀もセットであんのよ。で、相手どうすっかなって」

 

「……は? 元服? 夜伽??」

 

単語が意味不明すぎて、思わずポカーンとする。

とりあえず、クッションを抱えながら座って五条の話を聞く体制をとる。

 

「俺、東京高専に行くことにしたんだよね」

 

原作で知っていた展開とはいえ、この時期に進路決めてたのかと納得する。

家が嫌だってずっと言ってたもんな。

 

「え、京都じゃなくて?」

 

「実家にいるとさ、がんじがらめなんだよ。

因習まみれでオエーじゃん。だから高専で自由謳歌したいの。

実家から遠いほうが気楽でしょ?」

 

五条はそう言いながら、漫画のページをペラペラとめくる。

軽い口調とは裏腹に、内容はかなり重い。

 

「んで、実家が出した高専に入る条件が、その“元服の儀式”なわけ。

『五条家と俺は良好な関係です』って、御三家とか総監部にアピールするための、めんどくさい建前ってやつ」

 

御三家はそういう建前とかも必要なんだろう。

正直めんどくさくて大変そうだ。

 

「……なるほど?」

 

一応相槌を打ったけど、絶対まともな話じゃない予感がする。

 

「で、元服=成人=子作りできますって示すために、夜伽の儀式もあんの。

挿入して中出しして、それを見届け人の前でやるんだって」

 

……まだこの男、中三ぐらいのガキなんだけどな。

言ってる内容が常軌を逸してる。

 

「……うわ……引くわ」

 

心の底から出た素直な感想だった。

五条家、マジで引く。ドン引き。

加茂家や禪院家よりマシだと思ってたけど、五十歩百歩。

一般常識とかけ離れすぎてる。

 

「でさ、知ってるお前ならいいかなーって思ったんだけど。

でも処女なんだろ? そんな状態でセックスさせるの、俺でも可哀想って思うわけ」

 

なぜそこで“俺でも”が出てくるのか。

なんでもないようなトーンで話されるから、こっちの常識がおかしいのかと錯覚しそうになる。

 

「いや、よくないし。てか、なんで私??

処女じゃなかろうが、最低なこと言ってる自覚あります?」

 

怒りを抑えながら言い放つと、五条は本気で首を傾げた。

 

「え? なんで?俺とオマエ、仲良いじゃん。

俺イケメンだし、オマエ美人だし?」

 

いや、それ全然関係ないからな。

 

「なんで?じゃねぇよ。この最低野郎。

仲良くても、恋人とか夫婦とかパートナーじゃないとセックスはしないの!」

 

「……でも、セフレって言葉あるだろ?」

 

どこでそんな語彙だけ拾ってくんだこの男は。

 

「そういう人もいるけど、私は自分の体を安売りしません!!」

 

「へー。俺、精通してから適当に女あてがわれてるけど、それって一般は違うの?」

 

──は?

 

思わず天井を見上げた。

ほんとになんで?って顔してるのが、もう腹立たしい。

 

ダメだ。こいつには一から通常の性教育が必要だ。

前世でも性生活が爛れてたのは知ってたけど、実家の教育が原因だったとはな……

 

──よし、これは七海と伊地知に任せよう。中身は大人だし、大丈夫だろ。

 

「……女の私の口から細かく話すのはちょっと」

 

などと適当言って、二人に雑にぶん投げた結果──後日、見事に怒られた。

 

『あんな拗れた常識をどう矯正しろって言うんですか!?』

 

伊地知も伊地知で、困ったような顔をして深いため息をついていた。

 

──ごめんて。

でも、女の私がやるよりはマシでしょ?

 

 


 

 

今日は近所の運動公園に来ている。

七海と伊地知とこの週末は公園で軽く組み手をしようと、朝から出かけようとしてた。

そこに五条がやってきた。

五条は私たちにメールを送ったらしいのだが、朝から誰もメール見てなかった。

みんなそっと視線を逸らす。だって五条のメールは大抵くだらない内容なんだよ………

それを盛大に愚痴りつつ、俺が見てやるよと。

ニヤと笑った五条の顔を見た瞬間、私は内心で頭を抱えた。

七海も同じだったらしく、口元を引きつらせていた。

 

──これは、ヤバいやつだ。 

 

それでも訓練になるならと、私と七海はしぶしぶ了承した。

伊地知だけは、目を輝かせていた。

 

「五条さんが教えてくれるんですか? それは……光栄です……!」

 

……うん、まあ、そうなるよね。

知識としてしか知らないなら、その強さは魅力だろう。

私も七海も散々五条はすごいと話してるから。

 

 

五条はさっそく結界を張った。

公園の片隅のエリアを覆い、この中には一般人が入れないように。

その上で「じゃあ始めようぜ」と、軽いノリで宣言した。

 

 

──そして。

 

開始からたった数十分で。

 

気づけば、五条以外の三人が、全員地面に伏していた。

 

 

 

芝生に大の字で倒れて動かない七海。

目を開けたまま仰向けになり、呼吸すら怪しい伊地知。

そして私は、膝をついて前傾姿勢のまま、滝のような汗を滴らせていた。

ちなみに、五条は汗ひとつ書いてなく涼しい顔だ。

 

「おいおい、オマエら体力ねーな。

そんなんで術師やってけると思ってんの?」

 

上から降ってきた声に、顔を上げる。

 

──うん、知ってた。こうなるの。

 

あの時と同じ、“可愛がり”モードの五条悟。

高専時代に私をボロ雑巾にした、あの悪夢の再来である。

 

高専に入学したばかりの頃、五条に徹底的に“可愛がられた”のを思い出す。

「雑魚に男も女もねーよ」と言い放ち、徹底的に扱かれた。

散々私を投げ飛ばしたあと、関節決めて折れる寸前まで解放されなかった。

結局ボロボロになるまで付き合わされた日々。まさか、味わうことになるとは。

 

なんだかんだで、やっぱり五条は天才だったと思い出す。

術式なし、呪力も使わず、ただのフィジカルでここまで人を追い込めるとか。

私はバスケで徹底的に体力を鍛えてきたし、七海は一人で黙々と鍛錬をしていた。

伊地知も柔道クラブで昔よりはしっかり運動して鍛えてたはずなんだが…

これが生まれた時から術師として生きていくこと、最強になることが決まってた人間の強さか………

いや、たしか夏油は入学時は五条よりフィジカルが強いはずだったな。え、どんな化け物なの

特級に至る人らはやっぱおかしい。

 

この中で一番体力があるのは私だ。七海と伊地知はまだ成長期に入ったばかり。

女の私の方が成長し切ってて、3人の中ではフィジカルも体力あるんだが、手も脚も出ない。

分かってたことだけど腹が立つ。

筋肉をつけてきた分、瞬発力では負けはしないと思ってたのに、現実は非情だった。

もう何回転がされたか分からない。

 

それでも、と立ち上がった瞬間だった。

景色がぐるりと回る。

 

「っと」

 

軽く足を払われただけで、私は再度芝生の上をコロコロ転がっていた。

完全に子ども扱いだ。くそ、ちょっと反応が遅れた?いや違う、アイツが速すぎるんだ。

 

「胸と尻が重すぎて、動き鈍いんじゃね?」

 

後ろから軽口が飛んできた直後、

私の背中にずしりと重みがかかる。

どっかりと腰を下ろした五条が、にやつきながら見下ろしていた。

 

バシン、と乾いた音が鳴った。

振り向く間もなく、お尻を思いっきり叩かれた。

 

「……このセクハラ野郎……!」

 

怒鳴る声すら出ず、呻くように絞り出す。

背中にかかる五条の体温が、妙にリアルで、妙に腹立たしい。

 

「ん?怒った?」

 

楽しそうに、五条が私の顔を覗き込む。

ああもう、その顔が一番ムカつく。

 

「当たり前でしょ!!訴えるぞ!!」

 

「照れてんの?」

 

さらにパンパンとお尻を叩かれる。クソが!

 

「誰がだこの変態!!重いんだよ、どけ!!」

 

「身長的に俺とオマエ、今そんなに体重変わんないと思うけど」

 

ノンデリ!!! ノンデリ全開!!!

 

そう言ってなおもどかないあたり、性根が本気で悪い。

ていうか、「身長と体重」ってどこで測ってんだコイツは。私いつ言った!?

 

と、ふと横を見ると──

 

「ふ……ふふ……」

 

伊地知が笑っていた。

 

え。ちょっと待って。なんで笑ってんの。

 

顔色真っ青なのに、「五条に尻を叩かれる元妹」を見て壊れたみたいに笑ってる。

もう可愛がられすぎて完全にバグってるじゃん。

 

私と五条が顔を見合わせ、お互いに意見が一致する。

 

さすがにヤバい。

 

「休憩するぞ。おら、伊地知戻ってこい」

 

五条が休憩を宣言し、スポーツドリンクを渡しながら頭をペシペシ叩いてる。

私は七海の側に行き、スポーツドリンクを差し出すと、死んだ目で見られた。

 

──うん、地獄のような訓練だった。

 

 


 

 

五条矯正計画だが、進捗はまぁまぁと言ったところ。

期待していたほど進んではいないが、完全に無駄だったわけでもない。

現状維持。維持だけど、限界も見えてきた。

これ以上の進展は難しいだろう、というのが七海との共通見解だった。

 

その理由は、単純明快。

 

私たちが、まだ弱すぎるからだ。

 

おそらく今の五条悟にとって、私たちは“庇護対象”になってしまっている。

そしてこの時期の五条の性格を考えると、

そういう“格下”の意見なんて、根本では響くはずがない。

気まぐれで聞くことはあっても、本質的には「自分の判断が絶対」だ。

 

格下からでも──五条に「強い」と思わせなきゃ、真に言葉は届かない。

 

伊地知は術式なしなので論外。

彼はその誠実な人となりと仕事ぷりで、時間をかけて五条に認められるタイプ。

つまり原作コース頑張れってことだ。

 

七海の術式は、現時点では術師として未完成すぎる。

そして純粋に五条の術式との相性も悪い。

 

私は一度、五条を出し抜いている。

この一点だけで、五条の中では私の立ち位置は少しだけ特別だ。

他の二人より、わずかに“対等寄り”の枠にいる。

でもそれも、どうせ五条は思ってる。

 

「あの術式、もう読んだ。次は負けない」って。

 

舐めプあざます。

やり方はあるから、フィジカル鍛えまくったら、今度鼻っ柱叩き折ってやる。

それに、呪力宝石を使えば、さらにいける。

あれを使えば、さらに“五条悟の意表”を突ける。

ただし、これはまだ秘密。

切り札は最後まで見せるな。見せるならさらに奥手を持てって、どこかの漫画のキャラも言ってたしね。

 

それにしても、本当に夏油傑は優秀だったと痛感する。

フィジカルで五条悟と互角以上にやり合い、覚醒前とはいえ、

あの五条に「俺たち最強」と言わせるほどの実力を見せつけ、並び立った。

 

そりゃー羂索が体を狙う。

あんな便利で優秀な器、他にない。

 

今回、五条悟が初めて出会った“外の世界の人間”は、私たちだ。

術師以外の価値観や、日常のくだらなさや、普通の人の存在。

そういうものを、初めてリアルに与えたのは確かに私たちだ。

 

でも、まだたりてない。

その足りてないピースを埋めるのが、それが──夏油傑、なんだろうな。

 

言葉じゃなくて、対等な存在で分からせる。

引きずり込む。

五条の世界を、引き裂いて、並び立つ。

 

夏油傑ができたこと。

でも私たちには、まだできていないこと。

 

──それだけの話だ。

 

 

 

 

 

秋を過ぎたあたりから、五条は七海家に来ていない。

 

それまでのように、ふらっとリビングに現れては母の焼いたパンを貪り、

私の部屋で漫画を読みながら転がっていた、あの騒がしい日々がふいに途絶えた。

 

でも、連絡は途切れていない。

 

定期的にメールが届くし、どうでもいい愚痴の電話も相変わらずだ。

「実家とやり合っててさー」「説得めんどくさくて死にそう」とか、そんな内容。

どうやら、東京高専に通うために、五条家とあれこれ交渉中で、全く東京に行けないと嘆いてた。

あーそりゃ東京来る余裕ないよね…

 

 

そして、季節がひと巡った。

梅の花が咲き始めた頃、五条から短い報告が届いた。

 

「元服、済んだ」

 

その一文を見た瞬間、携帯を持ったまま、しばらく黙り込んだ。

 

……とうとう、やったんだな。

 

とりあえず、「おめでとう?」とだけ返しておいた。

正直、どう返していいか分からない。

 

あの、因習まみれの夜伽の儀式も──やったんだろうな。

形式とはいえ、あの家の人間なら避けて通れないだろうし。

女にこういう話をするもんじゃないって、前に七海から説教されてたから、私には濁してるんだと思う。

……まぁ、それくらいの常識は身につけたか。

 

とにかく、これで五条悟は“東京高専への入学”という自由を手に入れたらしい。

 

その直後、電話がかかってきた。

受話器越しの声は、いつになく晴れやかだった。

 

「これで東京行ける!マジで嬉しい!」

 

ほんと、子どもみたいな声で笑ってた。

私はひとこと、「よかったね」とだけ返した。

 

 

 

──そして、4月のある日。

 

突然、写メールが届いた。

添付された画像を開いた瞬間、思わず「おぉ」と声が出た。

 

そこに写っていたのは──

 

かつて、前前世の劇場版で見た、あのEDの写真の1枚。

 

 

 

五条は左端で、満面の笑みとピースサイン。

家入は大きなあくびの途中で、興味なさそうに視線を逸らしていて、

夏油はそっぽを向いて、カメラには一切目を向けていない。

 

 

 

……知ってる構図だった。

 

でもこれは、“かつて見た記憶のもの”じゃない。

今、この世界の“現在”として、五条から私に届いた“現実”だ。

 

 

七海を呼んで、黙って携帯を見せる。

画面を見た七海は、ほんの少しだけ目を細めて、静かに笑った。

 

「……五条さんの矯正役、やっと卒業ですね」

 

その言葉に、思わず吹き出しそうになった。

本当にそれ。

とりあえず、夏油に引き継いだ。

来年高専に入学するまでは、少しは楽ができる。

と思ったんだけど──

 

 

 

「黒井!早く茶を入れるのじゃ!せっかく七海先輩が来てくれたのに!」

「はい!理子様!」

「いや、そんなことしなくていいからね……」

 

 

 

──今、私は。

 

廉直女学院中等部に入学してきたばかりの星漿体、天内理子とその付き人・黒井とともに、

彼女たちが暮らすタワーマンションに来ていた。

 

ソファーに体を沈めて、豪奢な天井を見上げる。

 

なんなんだこの場は。

どうしてこうなった。

 

 


 

 

星漿体の天内理子が入学してくるのは、事前に分かっていた。

 

原作知識を持つ私にとって、彼女の存在は特別だ。

夏油傑の呪詛師になる原因の一つ。

彼女と黒井が死ぬことが夏油に影を落としたのは間違いない。

なるべく回避したいところだけど……

 

入学式当日に見た、校門から続く桜並木の中での姿。

三つ編みにヘアバンド。

その見た目は全く変わっていなかった。

間違いない。あれが天内理子だ。

 

ただ──問題は、どうやって接触するかだった。

 

気軽に話しかけられる間柄でもない。

中等部は上下の関係が意外と厳しく、かといって私のほうから妙に馴れ馴れしくするのもおかしい。

 

それに……バスケ部で王子扱いされてるのが、今となっては逆に足かせになっている。

部活で関わる生徒とは自然に会話がしてるけど、それ以外の生徒との距離は妙に空いている。

 

私が“壁”を作ってるように見えるんだろう。

本当は、ただ疲れるから無駄な愛想を振りまいてないだけなんだけど──

 

でもまぁ、見た目がこうじゃあ仕方ないか。

なんだかんだで、金髪王子は想像以上に目立っていた。

 

はぁ。やっちゃたな……と、ため息をつきつつ、帰り道。

 

昇降口で靴を履き替えながらも、つい視線を玄関のほうへ向けていた。

 

と、その時だった。

 

──あれ?

 

 

黒井だ。

 

凛とした立ち姿に、周囲へ無用な隙を与えない眼差し。

資産家や名家の子女が多く通うこの学園では、メイドや執事、専属の付き人の出入りも珍しくない。

黒井もそのひとり──天内理子の付き添いとして、この学園に出入りしているのだろう。

 

彼女は特別な術師というわけではなく、星漿体に使える一族だったはずだ。

原作だと黒井は短大を出た後、天内に仕えるようになったんだっけ。

 

そんなことを考えながら、私は靴の紐を締め終え、校門へと向かった。

 

黒井と天内の姿が、ちょうど私の視界の先に入る。

私との距離は、遠くもなく、近くもない。

けれど──出口へ向かうその“たった一瞬”、私たちの歩みが偶然にも重なった。

 

 

 

そのときだった。

 

 

 

ピリッとした空気の変化。

肌の表面を、何かがひっかくような感覚。

──呪霊だ。

 

どこからともなく、蝿頭と呪霊が数体、ふらふらと姿を現した。

 

黒井が天内を庇うように立ち塞がる。

天内理子は立ち止まり、息を呑んだ。

 

まずい、と思うよりも先に、体が動いた。

 

「……っ」

 

手を伸ばし、一番近くにいた一体をバシン、と掌で叩き落とす。

残りも術式を使うまでもなく、一拍の間にすべて払い落とした。

 

──しまった。

 

やってしまった。

 

私はこの学校で、呪霊の「じ」の字も話したことがない。

術師であることも、呪霊が見えることも、呪力があることも誰にも話していない。

 

一瞬の静寂。

天内と黒井が、私を見ている。

 

「………………」

「………………」

「………………」

 

無言のまま、私は視線を逸らした。

まるでブリキ人形のようにぎこちない動きで歩き出す。

 

……知らないふり、通じるか? いや、無理か……

 

「七海先輩!」

 

突然、後ろから元気な声が飛んできた。

 

「ありがとうございます。蜘蛛を払ってくれて! お礼をしたいので、ぜひ!!!」

 

振り返ると、星漿体──天内理子が満面の笑顔でこちらに駆け寄ってきていた。

その後ろには黒井もニコニコとした表情でついてきてる。

 

……いやいやいや、私そんなことしてないからね?

確かに別の“もん”は払ったけども。蜘蛛じゃない。呪霊だ。

虫系のフォルムしてるけど、蜘蛛じゃねえんだわ。

 

「えっと……いや……あれは、たまたま……」

 

言い訳にならない言い訳を口にしながら、私は一歩、また一歩と後ずさった。

その場からそっとフェードアウトを図るが──天内の勢いは止まらない。

 

「すごいですよね!反応速かったし!うちの黒井でも気づけなかったのに!」

 

「……理子様。七海様がお困りです」

 

黒井が諭すように小声で言うが、天内はぴたりと立ち止まってこちらをじっと見つめた。

 

「先輩……術師ですよね?」

 

──詰んだ。

 

内心で顔を覆いながらも、なんとか笑顔を作る。

そうして、私は観念したように息をついた。

 

こうして私は、星漿体の天内理子と、彼女の付き人である黒井との縁を持つことになった。

 

 

 

 

「七海先輩! 紅茶の好みは何なのじゃ!!」

 

いきなり元気な声が飛んできて、思わず背もたれに寄りかかっていた姿勢を正す。

視線を向ければ、ソファの向かいで天内がこちらに身を乗り出していた。目がきらきらしている。

テンション高いなぁ。

学校での落ち着いた態度とはまるで別人だ。

 

「特にないよ。それより……だいぶ普段と話し方が違うね、天内さん」

 

やんわりと指摘すると、天内は一瞬だけ「しまった」という顔をした後、堂々と胸を張った。

 

「術師相手に隠してもしょうがないのじゃ。七海先輩が術師とは知らなかったのじゃ」

 

原作通り、学校内では“普通の生徒”として過ごしているのだろう。

でも、こちらの正体に気づいた瞬間に、素を出してくるあたり、警戒心は薄い?

星漿体なんだから危機感持った方がいいと思うけど。黒井さんが苦労するわけだ。

いや、この天真爛漫な奔放さが“天内理子”という人間の本質なのかも。

 

「正確には、まだ違うけどね。高専に入学予定ってだけで」

 

私が肩をすくめながら答えると、天内は小さく頷き──次の瞬間にはニッと笑っていた。

 

「む、そうなのか……なら、ますます仲良くせねばならんのじゃな!」「七海先輩! 紅茶の好みは何なのじゃ!!」

 

──この子、本当に星漿体なんだよね?

そう疑いたくなるほど、距離感が近い。

それに、妙に懐かれている気がする。……いや、気のせいか?

 

「黒井! 七海先輩に最高のダージリンをお出しするのじゃ!」

 

「はい、仰せのままに」

 

黒井は静かに微笑みながら、手際よく茶器を用意する。

控えめなメイド服に、無駄のない動き。その所作の一つひとつに洗練された気配がにじんでいる。

 

思わず見惚れてしまった私に気づいたのか、理子が得意げに言う。

 

「黒井はすごいのじゃ! なんでもできるし、頭もいいし、運動もできるのじゃ!」

 

「いやいや、理子様。誇張はおやめください」

 

ティーカップを差し出しながら、黒井がやや苦笑気味に応じた。

 

──付き人、というより姉。いや、母親に近いか。

原作でもそうだったな。きっと、本当に天内のことを大切に思っているんだ。

 

カップに口をつける。

香り高く、味わい深いダージリン。うん、美味しい。

 

理子は無邪気に笑い、黒井は微笑みながら彼女を見守っている。

さっきまで、私に対して警戒の色を見せていたが──

たぶん、さっきの“トイレに立った間”に高専に連絡を入れたのだろう。

 

確認が取れて、ようやく“安全”と判断されたらしい。

今では警戒を解き、理子と同じように笑みを浮かべている。

 

「七海先輩。また一緒に帰ってくれるかの?」

 

そう無邪気に笑いかけられて、思わず肩の力がふっと抜けた。

 

「……部活がなければ、いいよ」

 

天内は目を輝かせて頷き、黒井は小さくほほ笑んだ。

 

──この小さな交流が、やがて予想もしていなかった“任務”に繋がるとは、このときの私はまだ知らなかった。

 

それは、天元様からの“直接指名”という、異例の通達だった。

在学中の間、星漿体・天内理子の護衛を担当するように──と。

 

 


 

 

主人公

 

五条にセクハラされたり可愛がりを受けたり散々だった人。

伊地知潔乃時代はされなかった種類のセクハラに戸惑い気味。

五条の矯正役を、夏油に引き継いで終わったと思ったら、

今度は天内理子の護衛役になって無量空処。

心が休まらない。

 

 

五条悟

 

セクハラしたりかわいがりをした人。

元服の時の夜伽の儀の相手役、どうせなら主人公で良くね?と思う程度には仲良いし、好感度高い。

女としても実は直球で好みの容姿だったりする。

結局、夜伽は家が用意した適当な女とやった。

本当に外に出るために義務的にやったので、顔どころか、名前すら覚えてないクズ。

相手の女性もこれで地位が上がるのでお互いWinWinだが、その情報すら五条は覚えていない。クズ

高専に入って、青い春が始まる。

 

 

七海建人

 

かわいがりを受けて、散々な目にあった人。

まだ成長過程とはいえ、この時期の五条にもフルボッコにされ、さすがにプライドが傷ついた。

再度鍛えようと思ってる。

高専入学時に覚えてろよ。クソッタレ。

術式の拡大解釈を、そういうのが得意そうな主人公と開始してる。

 

 

伊地知潔高

 

かわいがりを受けて、散々な目にあった人。

すごいと聞いてはいたけど、本当にすごかった。

そして、すごい可愛がりを受けた。疲労で疲れすぎて、

尻を叩かれている主人公をぼんやり見てたらツボに入った。

手荒いが真面目に五条に心配されて、やっぱこの人悪い人じゃないんだよなーと

五条に懐く善人っぷり。そりゃー五条の信頼も勝ち取る。

 

 

天内理子

 

実は、バスケ部の金髪王子様は知ってて憧れてた。

オスカルなのじゃ!リアルなオスカル様なのじゃ!!!

その人が、呪術師の世界を知っている?

お近づきになれるのじゃ!!!!強引に家に連れて帰ってお友達になってもらって満足。

後日、在学中は護衛をしてくれるとのことで、合法的に近くにいられるようになって歓喜する

 

 

 

黒井美里

 

バスケ部の王子様の話は天内から聞いてたし知ってた。

確かに宝塚的な…と思ってたら、目の前で呪霊を祓われて驚いた。

呪詛師か?と一瞬疑ったが、本当に高専入学予定の子だった。

話してみると面倒見の良い普通の女の子とわかってホッとした。

お嬢様に新たなお友達が!

天内が嬉しそうにしてるので嬉しい。

 

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