とある転生者、2周目   作:kotedan50

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if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、
 七海建人の双子の妹で、まさかの2週目
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、2度目の入学をする

伏黒甚爾とのカフェでの遭遇のあと、

五条からの着信に出たら、やっぱりビキニがどうだの学園祭がどうだのと、ギャーギャー煩い。

面倒くさくなって「なんか電波が……」と言い残し、適当に通話を切った。

 

そのままカフェでケーキをおかわりしつつ、ゆっくり二時間。

満足して帰宅すると、珍しく普段いるはずの伊地知の姿がない。

不思議に思いつつ2階の自室にカバンを置いたあと七海の部屋に向かう。

ノックをするとどうぞと言われ中に入ると、ぐったりと学習机の椅子に座って突っ伏してる七海がいた。

 

「……何があったんです?」

突っ伏して疲れた様子の七海に声をかける。

 

「……おかえりなさい、潔乃さん」

七海は顔だけこちらに向け、深くため息を吐いた。

 

どうやら、私が今日の放課後、外を出歩いている間に

五条が夏油さんと家入さんを連れて我が家に来たらしい。

しかも、私がいないと知ってもしばらく居座り、散々好き放題して帰ったとのこと。

ついでに、伊地知もその好き放題に巻き込まれ、疲れて今日は早く帰ったとのこと。

伊地知、お疲れ。これが高専の洗礼でこれからのお前の日常だ。

 

「え、夏油さんと家入さん来てたの?うわー」

軽くドン引きする私に、七海はさらに疲れた顔で追撃を放った。

 

「記憶はないようでした。五条さんと同じで戻りそうにないですね」

 

「なるほど、お疲れ様です。気を使ったでしょう?」

ローテーブルの前の定位置に座り、おそらく五条たちに出された残りのクッキーを摘む。

本日はカロリーオーバーだけどもういいでしょう。今日くらいは許して。

 

「えぇ、気は使いましたが、懐かしい先輩方の若い頃を見て、あの頃を思い出しましたよ」

 

七海が本当に懐かしそうな顔をする。

私もその一端にいたので、キラキラしてたのはわかる。

その後小さくため息

 

「夏油さんと家入さんの性格わかってると思いますが、あの人たちもなかなかクズでして」

「知ってます」

「あなたに会えないのを残念がってまして、その流れで、あなたの携帯の写真を見せる羽目になりましてね……」

「まぁそれが手っ取り早いですね」

「家入さんが勝手に操作して、色々とあなたの写真を皆に見せてしまったんですよ」

「あーそれで、ビキニやらチアやら、バニーやらうるさかったんだ五条さん」

 

納得する。

ここ最近の五条はマジでセクハラマンだ。

スカートが短いとお尻を叩き、胸元が開いていると胸を叩かれて「ガキが露出しすぎ」と怒られる。

自分が着ていたパーカーを私の腰に巻いたり、肩からかけてチャックを閉めたり──兄である七海や伊地知よりも世話焼きだったりする。

 

……しかし、うるせぇな。お前と一歳しか変わらんわ。

せっかく良いもの(良い胸とお尻)持ってるんだから、見せるファッションをして何が悪い。

こういう時にでも使わなきゃ、ただ揺れて重いだけなんだわ。だいたいオマエに見せてねーわ。

 

そもそも、日本人女性の平均身長をぶち超えてるせいで、海外メーカーの服を買うと露出が高くなるんだよ。

最近は服を買うのも面倒で、シンプルなシャツとデニムやパンツが多い。

ユニセックス万歳。……でもこれはこれで五条に「地味」と文句を言われるので、どうすればいいのか。

 

「いや、中学生だって、ビキニくらい身につけるでしょう」

 

五条のセクハラを思い出しそれを脳内から振り払うように言うと、七海はじっと私を見て、低く静かな声を落とした。

 

「そうなんですけど……五条さん、あなたに執着してますから」

 

低く抑えた声が、妙に耳に残った。

冗談で流そうと笑みを作るが、その視線は一切逸らしてくれない。

 

「以前から仲良かったですけど、こんなタイプの執着やらセクハラやらされなかったんだけどなぁ」

 

テーブルの上のカゴに入っていたクッキーをつまみ、かじりながらぼやく

バターの香りが口に広がる。

普段なら美味しく感じるそれが、話してる内容のせいか、くどく感じてしまう。

無理やり咀嚼して飲み込み、視線を上げると、七海は背もたれから身を起こし、肘を膝に置いてじっとこちらを見ていた。

 

「…………あなたが死んでいなくなったのが、魂に刻まれてるからこそ、今のこの執着でしょう」

 

七海の言葉にあの頃の記憶が、意識の奥をかすめた。

青い炎に包まれ、悲鳴のような五条の声。こんな嫌な記憶も薄れないんだから困ったもんだ。

 

「執着は……まぁ、私が悪いんで、しょうがないんですけど。このセクハラはやめてほしいなぁ」

「せいぜい妊娠させられないように気をつけてください。流石に学生結婚は反対させてもらいます」

 

真顔でそう言われ、思わず眉をひそめる。

「えぇ………私まだ中学生。

少しはヤリチンから妹を庇ってくれてもいいじゃないですか」

 

七海は表情ひとつ変えず、淡々と返す。

「女性がヤリチンとか言わないでください!

中身はいい年した女性なんですから、あんなクソガキくらい軽くあしらってください」

 

相変わらず七海は女性の下ネタに厳しい。

その癖して軽くあしらえって無茶振りしやがって。

七海がデスクチェアから降り、ローテーブルの向かいに腰を下ろす。

クッキーを一枚手に取りながら私を見た。

 

「……んで、今日のレースは?」

 

私が星漿体の任務に介入するための資金稼ぎとして競馬をやっているのは、七海も伊地知も知っている。

今日の帰宅が遅れた理由も、それが本当の原因だ。

きっと、私が戻るまでの時間を稼ぐために、五条たちを適当に誤魔化してくれていたのだろう。

本当に優秀な仲間たちで助かる。

 

「勝ちましたよ。払い戻しは98万、10枚買ってたので980万ですね」

「合計金額確か………」

「全部、なくなりましたけど」

 

クッキーを口に運ぶ七海の手が止まった。

視線が鋭くなり、口元の力がわずかに強まる。

 

「は?」

「伏黒甚爾と場外馬券売り場で接触しまして」

 

その名を聞いた瞬間、七海の瞳がわずかに見開かれる。

七海の背筋が自然と伸び、空気が一気に張り詰めた。

 

「!!!!」

 

「まぁ、バカ勝ちしてるのも、中学生だってのもバレましたね。

当然見た目を変えてたんですけど術式使用後の残穢を追われたみたいで。

完全にこれは私のミスです。すみません」

 

肩をすくめ、淡々と続ける。

 

「まぁ、仕方ないので交渉に切り替えました。この金額全部やるから──

『私に危害を加えない』『私が依頼をした時は優先して受ける』と縛りを結べと」

 

七海の表情が驚きから苦虫を噛み潰した表情に。

まだ少年の顔をしているのに、その目はあの大人の七海そのものだ。

 

「ダメ押しで、私は五条悟と懇意だ。手を出したらめんどくさいことになるぞ?と携帯の写真見せてやったら、上手くいきました」

「まったく貴方という人は無茶をする」

「好きでやったわけじゃなくて不可抗力ですからね?」

 

七海は身を乗り出し、私の頭の先からつま先まで、ゆっくりと視線を滑らせる。

外傷も呪詛も残っていないことを確認すると、ようやくホッとしたようだった。

 

「……何事もなくて良かった」

 

その声音に、安堵と苛立ちが混じっているのが分かる。

七海は冷徹そうな見た目と違って、情に厚い人だから。

 

「それにしても、よく咄嗟にその縛りを思いつきましたね」

 

身を戻しながら、ついでにローテーブルのカゴからクッキーを一枚取る七海。

いつもの落ち着いた姿に戻っているのが分かり、私も少しだけ肩の力が抜けた。

 

「……元々考えてはいたんです。

ただ、前にも話した通り、伏黒甚爾との接触は危ないと思っていたので、自分の中で没にしました」

「貴方のその参謀向きな思考回路、本当に怖いです。

本気で夏油さんの思想についていっていたら、勝っていたんじゃないですか?」

 

七海がちらりと視線を向けてくる。

 

「買いかぶりすぎですよ」

 

うん、多分、私が本気で動けば原作知識で夏油勝利まで持っていけただろう。

けれど、そんなことをするつもりもなかったし、考えたこともなかったので、とりあえず否定しておく。

 

「とにかく、これで少し余裕ができました。私との縛りがあるので、私は絶対に殺されません。

この状況は利用できます」

「そうですね。伊地知君も含めて、また検討しましょう」

 

お互いの話がまとまり、ふと沈黙が落ちる。

忘れていた携帯の電源を入れると、鬼のようにメールを受信し、その直後に着信が鳴り始めた。

もちろん相手はわかりきっている。

 

「………無視しちゃダメ?」

「傷が深くなるだけです。諦めてください」

「えぇぇぇ………」

 

 


 

 

あの後の五条の電話は、本当にしつこかった。

 

『おい、中学生(ガキ)があのビキニはダメだろ?』

「海外のビーチだったので、派手なのしかなかったんです」

『周りに裸の男もいんだぞ! んな危ないところ行ってんじゃねーよ』

「普通のビーチなんですよ。どこでも裸OKなんです。国に文句言ってください」

『チッ!』

「舌打ちしないでくださいよ」

 

『チアガールはなんだよ。オマエの学校、ミッション系だろ』

「クラスで決まったので、しょうがなくです。ちなみにあのチア服は既製品です」

『チッ!』

「だから舌打ちしないでくださいって」

 

『極めつけは、バニーガールだ。オマエの学校、マジでどーなってんだよ』

「それも、クラスでバニーガールカフェやるって決まったからです……」

中学生(ガキ)がやったらダメな格好だろ!! んなことすんな!』

「私に言わないでください。多数決です。私は反対しました!」

『チッ!』

「……うっぜーな」

『おい、オマエ今なんつった?』

「???? なんか電波が???」

『さっきから電波なんか全然悪くねぇだろ。切ったら今度マジでビンタするぞ!』

 

『だいたい、なんで伊地知は呼んでるのに、俺呼ばれてねーわけ?』

「こういうの、興味ないと思ってました……」

『あぁん?』

「あと補足すると──

家族以外の男性を呼ぶ場合は申請が必要。

その時、五条さんは京都に住んでいた。

そして去年は五条さんも高専入学前に実家とやり合ってて忙しかった。

とどめに、女子校なので“きゃーきゃー”“わーわー”言われますよ。そういうの嫌いでしょ?」

『……』

「以上、ご理解いただけましたか?」

『チッ』

 

「じゃ、そういうことで」

『……それでも、俺も行きたかった。今年は呼べよ! 絶対行くから!!!』

「……えぇ…来るの?」

『んだよその反応!!! ぜってぇ行くからな!!!!』

「いや、うん、来るなら来るでいいけど、バニーガールカフェじゃないかもですよ?」

『それでもいいから行く!』

「分かりました。詳細決まったら連絡します」

『おう!』

「あ、今日家に来てた、夏油さん? と家入さん? って人の分もいります?」

『マジで!いるいる!やるじゃん潔乃!!!』

 

 

 

こんな感じの会話をして、なんとか宥めすかした。

気を利かせて「夏油と家入の分もいるか?」と聞いてみたら、めちゃくちゃ嬉しそうな反応が返ってきた。ちょろい。

ちゃんと用意しておいてやろう。

 

この後もしつこいくらいに「今年は行くから!」と念を押された。

しかし意外だ。あの五条が学園祭を見に来たがるなんて。

五条は同級生や仲間たちとこういうイベントをするのは好きだが、他人のイベントを見たがるとは思わなかった。

 

しかも女子中学だぞ? あの五条の顔面偏差値で大騒ぎになるのは目に見えている。

懐玉・玉折の礼拝堂のシーンみたいなのが、あちこちで発生するだろう。

ライオンの群れに生肉を放り込むようなもんだ。女子校の出会いの無さを舐めんなよ。

 

ちなみに、去年は七海も囲まれた。

うん、学園の王子の私とほぼ同じだからね……

当時の七海は私よりも背が低く、まだ子供に近い少年顔。けれど顔立ちは私にそっくりで、

髪型も同じショートヘアで、分け目が逆なだけ。金髪に翠眼の、美少年だった。

女子中の王子様が二人いる状況。あとはお察し。

七海は身内だけがわかる、嫌な顔をしていたが、()のために頑張ってくれた。

 

そんな彼も、今年に入って成長期真っ盛りなのか、ぐっと背が伸びて今は私と目線が同じなので──177センチくらい。

顔も子供の丸みが取れ始め、高専時代の美少年のそれになってきた。

もちろん声変わりもしてて、可愛いショタボイスから、聞き慣れた七海(ツダケン) の声になってる。

我が兄ながらいい声してる。フロムファンとしては「卑怯とは言うまいな」とか言って欲しい。

いや、某社長の高笑い風も聞きたいな。七海では一生聴けないだろうから、そんなハイテンション高笑い。

 

──話が逸れた、つまり今年は去年以上に大騒ぎになるってことだ。

 

だから「来なくていい」と言ってあるんだけど、彼も来るらしい。律儀な男だ。

 

ちなみに、伊地知も七海ほどじゃないが囲まれていた。

穏やかで人当たりが良い。よく見ると、伊地知も整った顔立ちをしているんだよ。

周りが化け物クラスだから目立たないだけで。

あと、私と七海といる影響か、私立校に通ったので周りの影響か以前より、ファッションに気を使ってる。

髪型を興味持って変えたり、複数の眼鏡のフレームを持って状況によって変えたり、今後コンタクトも使って見たいそうだ。

ので、同じような格好をしてても、なんか原作や前世より纏う空気というか、雰囲気が垢抜けてる。それもあるのかも。

でも、こちらはまだ成長期が始まったばかり。

顔立ちもまだ丸みがあるし、声変わりし始めた感じかな。ちょっと声が掠れてる。身長も170に届くかくらい。

それなのに女に囲まれる。あ、だからより囲まれるのか。可愛いもん。

 

それにしても、いいねぇ君たち。見る目あるよ。伊地知はいい男だよ。

声帯もこっちも某有名声優 (兄貴)だしな。「さんをつけろよデコ助野郎!」とか言って欲しい。性格的に絶対言わないなぁこれも。

優しいし誠実だし、社畜になって五条にこき使われるけど、多分、家族は愛情深く大切にしてくれる。

元妹の私が保証する。

後方彼氏面でニヤニヤしてしまった。

 

というわけで、上記の二人に加え、五条が来るとより大変なことになるのは目に見えている。

五条自身も女の子にチヤホヤされるのは好きそうだが、大量に囲まれるのは流石に嫌がるはずだ。

それでも来るのか……来るのかー。

 

それでも見に来たがるってことは……

 

「五条さんって、年下好きのロリコンですかね?セーラー服萌えとか。

それとも女子校萌えですかね?清楚系や百合っぽい空気感が好きとか。

……五条さんの性癖ですかねぇ?」

 

電話の間もずっと隣にいた七海に、終了後そう話をふると、

彼はわずかに目を細め、深く息を吐いた。

 

その顔は――大人の時によく見せていた、心底呆れて軽蔑した表情。

……こういう話に七海は乗ってくれないんだよなぁ。悲しい。

ああ、こういうネタを全力で拾ってくれる家入が恋しい!!

 

 


 

 

部活も夏の大会が終わり引退した。

お嬢様学校なのに、都大会上位まで行けたのは良かった。

大会の後、いくつかの高校からスカウトの話がきたがサクッと断る。

高専いくしね。あくまで体力作りのためだったし。

私は受験勉強もないので、部活を引退した私の放課後の行動は4択。

 

・天内の家に行く

・場外馬券売り場に行く

・体力が落ちないようにジョギングして七海や伊地知と軽く組み手をする

・家で呪力宝石を仕込む

 

の4択だ。

ちなみに日曜の今日は朝から、競馬場にきてる。

そう競馬場!

芝と土の匂いと熱気のこもった空気。パドックの向こうから聞こえるアナウンス。

人の波が押し寄せ、紙の馬券とビールの匂い。

競走馬たちが駆け抜けていくのを見るだけでワクワクして、ちょっと体温が上がる。

 

「おい、次何番か教えろって」

 

伏黒甚爾が筋肉で隆起した腕を私の肩に置き、だる絡みしながら声を投げる。

そう──私は今、伏黒甚爾と仲良く競馬場にいる。

 

「さっきの3R教えたでしょ。今日はメインレースで勝ちたいんでしょう?

さっさと適当に負けてきてください。伏黒さん」

 

私はコースから目を離さず、バッサリと切り捨てる。

ちょうどゴール前──もう負け確な奴は黙って見てろ。

 

「ちっ、ケチくせーな」

 

次の瞬間、スタンド全体が沸き立つ。

近くで馬券を握ったおじさんがガッツポーズしていた。

お、おじさんも当てたのか、おめでとう。

私は今のレースで勝ったおおよその金額をメモ帳に書き込む。まだ最終確定ではない、目安だ。

 

「ギャンブルってのは痛い目を見るから面白いんでしょ?」

 

「ちげーねーな……おい、そういや呪具が壊れちまってよ。近々直してくれねぇか?」

 

伏黒甚爾がわざとらしく声を潜める。

背後を歩く観客のざわめきに紛れるような声だ。

私は無言で指を3本立てた。

 

「おいおい、300万は高すぎだろ。50万にしろ」

 

「寝言は寝ていってください」

 

私たちは観客席から売店の並ぶ通路へ移動する。

伏黒は人混みをその体格と堅気とは思えない圧力で割って進み、私はその後ろをゆるゆるとついていく。

漂ってくる焼きそばの香りが美味しそうだ。そろそろお昼だし買っちゃおうかな。

 

「じゃあ70ならどうだ?」

「他の呪具師に頼めばいいじゃないですか」

 

あーまだちょっと暑いしかき氷もいいな。あとで買うかな。

 

「足元見やがって!わーったよ。100」

「私、お腹空いたんでなんかご飯買ってきますね」

「200!」

「私の分の馬券も買ってきて受け取りまでやってくれるなら、更にサービスで170でいいですよ」

 

私はチラリと彼を見やって、にやりと笑う。

 

 

「チッ!!それでいい。この守銭奴め」

 

不満げに舌打ちするが、交渉は成立した。

今更もうこの人に舌打ちをされてもなんとも思わない。

お金が全てで、金次第で依頼人を裏切りそうな不安はあるが、そこはもう縛って対策済み。

そして当人が、一銭の得にもならないような殺しはしないタイプだ。

このくらいの軽口で人を殺す方が面倒だとわかってるので、気楽に喋れる。

 

「あなたに言われたくないですよ。伏黒さん何食べます?奢りますよ」

「たこ焼きと焼きそば。どっちも大盛り。串を適当に10本くらいと、イカ焼きも頼むわ」

「めちゃくちゃ集るじゃないですか。料理持ちきれないんで持ってくださいね」

 

伏黒がフッと鼻で笑う。

 

──伏黒甚爾とは、こんな感じでお金で繋がるドライな関係になっていた。

 

あの偶然の出会い以来、用心して行く場外馬券売り場も毎回場所を変え、目的のレースの数日前にまとめて馬券を買い、場外馬券売り場自体に行く回数を減らしていたんですけどねぇ………

 

人混みの向こうから現れたのは、あの天与呪縛のフィジカルギフテッド。

逃げようとした私の腕を容赦なく掴み、数日後のレースの馬券を覗き込んでニヤリと笑った。

 

──あのバカ、50万とか一気に買うもんだから儲けが減ったわ! クソが!

それ以降、味を占めたのか、高頻度で場外馬券売り場で会う始末。

もうその時点で、私がある程度あたり馬券をわかってると気づいたらしく、定期的に絡まれるようになった。

第三者から見れば、ゴツくてガタイのいいヒモっぽい男と、ド派手なセクシー美女──まあ、ヤクザと愛人だと思われても仕方ないだろう。

 

毎回勝ち馬にかけられると配当が減るので、

『会った時に1日2レースまで教える。その代わり何も聞くな、誰にも言うな、黙ってろ。私の代わりに換金して、手数料は1割』

という縛りを結んだ。

お互いにWin-Winな縛りだ。

伏黒は確実に勝てるレースを把握でき、私は年齢確認をせずに馬券を買え換金できる。

 

こうしてドライな付き合いを続けるうちに、私の術式も概ね把握したらしく、壊れた呪具の修理まで持ちかけられるようになった。

もちろんこれも他言無用の縛りを結んで依頼として受ける。

なんだかもう、ズブズブの関係だ。

高専で忙しい五条より、この伏黒甚爾(おじさん)と会っている回数の方が多いかもしれない。

 

「しかし、お前、本当に中学生か? 同年代と話してるような感覚すらあるぜ」

「伏黒さん、ヒモのくせに女性の扱い下手すぎません?」

「俺は女でも、ガキの扱いは苦手なんだよ」

 

伏黒は肩を竦めつつ、次のレース表に視線を落とす。

赤ペンで×が付いた馬名が見えた。

 

あ、負け馬にチェック入れてらぁ。ザマァ。

貯金が捗りますね。一生下ろせない貯金だけど。

 

「お前、ほんと幾つだよって、このレースで呪具の修理代取ってみせるぜ」

「伏黒さんが自力で勝ってるところ、ほとんど見たことないですけど」

「うっせー」

 

通路の奥から、スピーカーを通して響くアナウンス。

次レースの出走馬名が読み上げられ、観客たちがざわめき立つ。

 

そんな喧噪の中、私は声を潜めるでもなく、自然な調子で話し出す。

 

「伏黒さん、来年の6月ごろに呪術界で大きな”イベント”があります」

「あん?」

「500年に一度の大イベント」

 

──禪院家の出身のあなたなら、わかるでしょ?

そういう視線をチラリと向ける。伏黒は相変わらず興味なさそうにレース表を見ているが、そのペン先が止まり、こちらの話に耳を傾けているのがわかった。

 

「……………それが?」

「ちょっと関わってましてね。仮にあなたが敵方についてたとしても、依頼をぶん投げるかも」

 

私に視線を向け、露骨に嫌そうな顔をする。

 

「まぁ、あなたにも悪いようにはしませんから、その時は『縛りを忘れず』『絶対に』優先してくださいね」

「……………お前本当に中学生か?」

「ちょっと年上に見られますけど、ただの中学生ですよ」

「お前みたいなガキがいてたまるか」

「年相応のガキを相手したいです?したくないでしょ?」

「ちげぇねぇ。おい、このレース俺が勝ったら晩飯奢れ。高い焼肉。さっきのレースでもしこたま勝ってただろ!」

「じゃ、伏黒さんが負けたら奢ってください。高い焼肉」

「乗った!」

 

互いにニヤリとしながら勝負成立。

周囲では出走前の馬たちがパドックを回り、観客のざわめきが熱を帯びていく。

──こういう賭け事は金額より、勝った瞬間にドヤ顔で相手を見下すほうが楽しみだったりする。

 

ちなみに、その日に奢られて食べた高級焼肉の味は格別だった。

 

 


 

 

今日は天内のマンションにお邪魔している。

いつものように遊び──もとい護衛に来たわけではない。

今日は渡すべきものがあって来た。私の得意分野、呪力を込めた宝石だ。

 

伏黒甚爾は、天内理子を殺す際に呪力痕を残さぬよう、呪具を使わず現代兵器の銃を使っていた。

黒井に対してもおそらく同じだろう。「多分死んでる」というあの言葉が何よりの証拠だ。

素手で攻撃していれば「確実に死んだ」と断言できるはずだからだ。

あのフィジカルゴリラが一般人に毛が生えた程度の人間を、相手に殺し損なうはずがない。

 

現代兵器から身を守る程度なら、私の手持ちの宝石でも十分対応できる。

伏黒には直接『殺すな』と依頼するつもりだが、まだ詳細な行動は七海や伊地知と検討中だ。

連絡が遅れる場合も考え、事前に保険をかけておくべき──という結論で三人の意見は一致した。

 

天内用には、彼女がいつも身につけているヘアバンドと併用できるヘアクリップ。

黒井用には、メイド服の下にも忍ばせられるシンプルなネックレス。

 

そこに埋め込まれた宝石は4つ。

 

銃弾から守る純粋な防御力を上げる宝石

 

跳ね返した弾丸の軌道を制御する宝石

 

本人を睡眠で強制的に昏倒させる宝石

 

出血しているように見せかける幻惑の宝石

 

──狙撃や銃撃に特化した、完全防御型の呪力宝石セットだ。

 

ここまでやる理由は単純だ。

伏黒への依頼は、星漿体の護衛任務が正式に始まってからにするつもりだからだ。

呪術界の動きはほぼ羂索の掌の上にあると見ている。あまりに早く動けば、余計な警戒を招く。

任務開始後であれば、羂索の視線は星漿体と六眼、そして身体を狙っている夏油に釘付けになる。

そうなれば、私のような雑魚や、呪力を持たぬ“因果から外れた男”のことなど視界にも入らないだろう。

 

実は孔時雨とも伏黒甚爾経由ですでに繋がりがある。

縛りを結んだ上で呪具修理の依頼を数度こなし、腕は見せてある。

彼にしても、崩壊寸前の宗教団体よりも、希少な呪具を修理できる職人とのパイプを優先したいはずだ。

任務直前に連絡を入れ、「星漿体暗殺任務と共存できる」体裁で依頼を通せばいい。

 

そんな計画を胸の奥にしまい込み、私は何食わぬ顔で天内と黒井にアクセサリーを差し出した。

 

「私はちょっとした呪具の修理とかもするんですけど、これ、フリーマーケットで見つけたんです。

 修理してみたら思ったより守りの効果が強かったので、お二人に」

 

「潔乃先輩ありがとうなのじゃ!」

「私にまで……ありがとうございます」

 

二人は素直に受け取って、その場で身につけてくれた。

天内は髪にヘアクリップを挟み、鏡代わりにスマホで確認して嬉しそうに黒井へ見せている。

黒井もネックレスを首元で確かめ、天内に「似合いますか?」と微笑んでいる。

本当に親子のようで、姉妹のようで──見ていて思わず頬が緩んだ。

 

「一生懸命修理したので、ずっとつけていてください。

 私も、もう3月で卒業です。来年度からは高専に行くので、今までみたいに護衛もできなくなるからね。

 きっと、これが天内と黒井さんを守ってくれる」

 

「…………分かっていたけど、寂しいのじゃ」

 

口を尖らせ、寂しさを隠さない天内。

ああもう、可愛い。思わずその頭をくしゃっと撫でた。

──本当に、絆されてる。死んでほしくないなぁ。

 

……しかし、なんで私は天内とも伏黒とも顔見知りで、仲良くしてるんだ?

第三者から見たら完全にやばい。殺す人とも、殺される人とも両方付き合いがあるなんて、サイコパスの所業だ。

私も、そろそろ狂った術師の感性に染まり切ってきたのかもしれない。

 

内心ため息をつきつつも、まぁ──殺させなければいいだけだ。

生きてるだけで丸儲け。そう、考え直した。

 

そんな暗めの思考を、天内の明るい声があっさりと吹き飛ばす。

彼女はゲームコントローラーを高く掲げ、やる気満々で私に向かって宣言した。

 

「潔乃先輩!今日はぷよぷよで勝負なのじゃ!今日こそ黒井をギャフンと言わせるのじゃ!」

 

隣で黒井も静かにコントローラーを構えてる。妙に顔が真剣。

 

「今日も負けませんよ!」

 

この人、普段は控えめなのにゲームになるとガチになる。

私は思わずため息混じりにツッコんだ。

 

「いや、だから黒井さん、なんであなたそんなにゲーム強いんですか?」

 

 


 

 

桜が舞い散る春の日。

うららかで、でも少しだけ風の強い日。

前世で入学した時と同じような、空は花粉と黄砂で霞んでいる微妙な天気だった。

懐かしい気持ちになりながら、七海と共に校門の前に立っていた。

校門に刻まれているのは──「東京都立呪術高等専門学校」

 

「ここから二ヶ月ちょっとが勝負です。なんとしてでも上手くことを運ばないと」

「えぇ、このために我々は四歳の頃から仕込みを重ねてきたのですから」

 

制服は七海や家入と同じ学ラン型だが、私はスカートではなくワイドパンツ。

短いスカートだと五条にまた尻を叩かれるし、この身体の動かし方では何かと丸見えになる。

大きめのサイズを選べば体の線も隠せる──王子様路線、続行だ。

 

七海は前世の時と同じく、襟にボタンが増えた学ランにスッとしたパンツ姿。

恒例のナタ入りの鞄も健在だ。

 

さて──と息を合わせて校門をくぐろうとした、その瞬間。

 

「やっときたじゃん新入生」

 

後ろからガバッと私たち二人にのしかかってくる人物がいた。振り返らずともわかる。

 

「五条さん重いです」

「早く退いてください」

 

同時に抗議するが、返ってくるのはお構いなしの声だった。

 

「うるせーよ。久しぶりに会うんだから先輩の歓迎受けとけ。

特に潔乃、お前マジでいつも家にいなさすぎ」

 

私の顔を覗き込んで嬉しそうにニカっと笑い、ぐしゃぐしゃと、容赦なく頭をかき回される。

せっかく整えた髪型が一瞬で台無しだ。

 

確かに、五条が家に来るタイミングで私はほぼ家にいなかった。

部活、場外馬券売り場、星漿体の保護任務、呪具修理の依頼、宝石の仕入れ……

五条に頼らないとなると、フリマや宝石マルシェを回るしかなく、そんな日々が続いた。

 

そのせいで、夏油や家入とは直接会えず、なぜか電話とメールだけ交換してメル友状態に。

五条とこうして会うのは本当に久しぶりで──半年ぶりくらいか。

前に会った時よりも、少し背が伸びた気がする。

 

こういう時の五条は、やめろと言っても聞く耳を持たないのを知っている。

死んだ目で七海を見れば、同じ目で見返された。無言の諦めの合図だ。

 

「おら、行くぞ。夜蛾センが待ってる。案内してやるよ」

 

満足するまで私の髪を撫でくりまわしたあと、私と七海の腕を掴み、強引に歩き出す五条。

 

「ちょっと、五条さん。私たちは校門で待てと指示を」

「だいじょうぶだって。移動したほうが早いだろ」

 

全く人の話を聞かない背中に引っ張られながら、再び七海と視線を合わせる。

どちらもこの強引な五条に苦笑しつつ──懐かしい高専の敷地へと足を踏み入れた。

 

 


 

 

主人公

中学3年を忙しく過ごした。

部活・資金稼ぎ・護衛・宝石の仕入れと呪力込め・呪具修理・作戦立案

受験勉強なくてマジでよかった。部活も夏で引退でマジでよかったと。

前世の経験から裏工作作戦立案は得意。

3人の中で企画立案が一番得意だし、大胆だし、色々な意味でギリギリな案が多い。

意図せず、伏黒甚爾と仲良くなってしまったが、お互い良いように利用しあってる。意外と馬が合う。

なお3年の学園祭は、カフェの予定だった。ただし衣装はHOOTERS。

かなり際どくて五条に何か言われると分かってるので嫌だった。

が、台風直撃で学園祭自体が中止となって幻となった。主人公は歓喜した。

 

 

五条悟

高専入学して忙しいのもあるが、主人公と全く予定が合わない。

会いに行っても8割の確率で留守。親友と同級生を紹介しようとしても毎回いない。

そんな中、やっと学園祭で顔合わせられると思ったら、台風直撃で中止。

しかも、後でHOOTERSカフェだったと聞いて、膝から崩れ落ちた。

高専入学してきたから、構い倒してやろうと思ってる。

 

 

七海建人

中学3年をそれなりに忙しく過ごした。

こちらは自身の術式の解釈や、体を鍛える方面で忙しかった。

受験勉強がなくてマジでよかった。部活に入ってなくてマジでよかった。

3人の中で一番、バランスがいい立案をするが、平凡すぎる。

主人公の色々やばい立案を頭を叩いて止める役目。主人公の術師らしい気の狂った立案に頭を抱えた。

主人公の学校の学園祭が中止になってホッとした。

HOOTERSの衣装を家で着て見せてもらったがあれは事案だ。誰だ考えたやつ!

 

 

伊地知潔高

中学2年を穏やかに過ごしていた。

こちらも自身の体力を作るために柔道部を続けたり、自主鍛錬をしていた。

進路が決まってるから色々楽。

3人の中で一番、安全性のある立案をする、消極的すぎる。

3人の意見をまとめて、折衷案を立てるのが得意。

主人公の色々やばい立案には、私の妹こんなやばい人間だったの?と目を白黒させている。

主人公の学校の学園祭が中止になって、同じくホッとした。

HOOTERSの衣装を家で着て見せてもらったが、あれは五条さんに見せてはいけません。

あの学校、変態教師でもいるんですか?

 

 

 

伏黒甚爾

中学生に集りまくってるヒモ

同じくいいように利用し合ってる。馬が合うとこちらも思ってる。

高専に入ると忙しくて競馬場にこれねぇだ?チッやめてちまえ。呪術界はクソだぞ。

 

 

天内理子

先輩からもらったヘアクリップを大事に身につけている。

大好きな先輩が卒業してしまって寂しい。

儀式の前に最後に、さよならくらいは言いたいのじゃ……

 

 

黒井美里

主人公からもらったネックレスを大事に身につけている。

主人公は大したものじゃないと言うような口ぶりだったが、こちらは価値をきちんと把握して

本当に主人公が心配してくれたのを分かって感謝してる。

理子様とのお別れの前に、最後に3人でゲーム大会をしてあげられないかと思ってる。

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