Electriar Code 【夜明のスピカ】   作:鷹島 扇

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第2話 フリーマーケット

 

(鴨川を取り逃したあと)ミカ達は中心街にある大きな公園に場所を移していた。

 

巡回任務に定められルートはないため、エージェント達は各々が怪しいと思った場所に赴き、職務を行う。

 

今日の催しはフリーマーケットのようだ。

 

天気もよく、すでにかなりの人で賑わっている。

 

定期的に開催される人気の催しだが、規模が規模だ。

木を隠すなら森の中、とはよく言ったものだ。

 

出処が怪しいエレクトリア用パーツやスキルチップ、持ち主とはぐれた一瞬の隙に本体を強奪したり…事案を挙げたらキリがない。

 

ラクロアールの時と同じく「近衛の人間」が居るという姿を見せておけば、ある程度の抑止力にはなる。

 

ミカ「とにかく歩いて、怪しい人物や露店があったら接収しましょう。 セレナ、アクティブスキャン頼んだわよ。」

 

セレナ「了解、マスター。 近衛理研の商品管理リストにアクセス完了、要注意人物・指名手配リストを最新の情報に更新、アクティブスキャン準備完了。」

 

ミカは目視で、セレナはセンサーを使って怪しい人物や商品を探る。

 

いつの時代もメーカーを悩ませるのは「見た目が正規販売品とそっくりな粗悪品」いわゆるパチモンだ。

近衛インダストリアル社が販売している商品の意匠を侵害している場合、自警部で捕まえ、あとは法務部に引継ぎとなる。

 

…が、これがなかなか、褒められたものではないが本当に本物と遜色ないほどの出来のため素人や新人オーナーでは見分けがつかないのも納得してしまう。

 

今回もほんの数m歩いた時点で怪しい露店を発見した。

 

幾つかの正規品の中古と…

傷ありジャンクパーツ…

そして一層目を引く"本日の目玉商品"と書かれたバックパック。

 

ミカ「(セレナ、あれを見て。 エグザズ社の最新ブースターがあの値段で売られてるわ。 …どこからどう見てもパチモンよね…)」

 

セレナ「(市場を探してみたけど新古品の半分以下ね。 傷あり・なしにしても安過ぎるわ。)」

 

正規品のように見えるが、恐らく外箱だけだ。

中身は模造、似ても似つかない性能だろう。

 

セレナ「(…どうする? 接収する?)」

 

ミカ「───・・・やめときましょう。 近衛の商品でなければ無理に押さえる必要はないわ。」

 

セレナ「(了解。 エグザズ社の問合せフォームから匿名で通報しておいたわ。)」

 

他社製品のレプリカをどうこうするつもりはない。

意匠権やライセンスの都合上、他社と関わると面倒だ。

 

あくまでミカは「近衛インダストリアル」

他所は他所、うちはうち。

企業間の不可侵条約は、いつの時代も固いものだ。

 

……

 

再び歩を進めると、次はセレナのセンサーに反応があった。

…またRoMだろうか。

 

セレナ「(感あり。 要注意人物リストNo.90002130とパートナーエレクトリア、当該人物は昨夏に近衛が経営するビーチカフェにて禁止行為を行い店員やカスタマーとトラブルを起こしたと記録あり。)」

 

ミカ「禁止行為…?」

 

セレナ「(ナンパ。)」

 

ミカ「────・・・放置で。 また何かトラブルを起こしたら警告しましょう… 平和で何より…」

 

視線の先には日焼けサロンで焼いたであろう焦げた肌と、フリーマーケットに似合わない金のネックレス…

それに付随する… 片目に眼帯をつけたエレクトリア。

 

賑わう露店に目もくれず、周囲の女性に声を掛けている。

 

ミカはスルーしようとしたが────────

 

パシッ

 

チャラ男「HEY HEY!そこのめちゃくちゃナイスバディな彼女!よかったらコレからオレとお茶☆しない!?」

 

運悪く、とても運悪く、チャラ男は1人の女の手を握った。

 

握ってしまった。

 

ミカ「────あら、素敵なお誘いどうも。 近衛インダストリアルの取締室で出てくるお茶でいいかしら?」

 

握った手は、何を隠そうミカの手だった。

 

ココラ「ッ!? ダーリン!!この女はまずいのだ!!近衛インダストリアル社の自警隊なのだ!!!」

 

チャラ男「げぇ!? あ、ちょお姉さん巴投げはちょちょちょ待っア゙ア゙ア゙ア゙ア゙────────ッ」

 

ぶんっ

 

彼のエレクトリア、ココラが気付いた時にはもう遅い。

チャラ男は空高く宙を舞い、芝生の上に放り投げられていた。

 

地面に叩きつけられる寸前で、ココラとセレナがチャラ男の背中の下に入り、病院送りは避けられた。

 

ココラ「あ…っ あっっっぶねーのだ…! なんて女なのだ!!」

 

セレナ「すみませんね、うちのマスターが。」

 

やれやれと首を振り、セレナが謝る。

 

(ちなみにこの後きちんと謝ったのでチャラ男は無罪放免した)

 

……

 

30分後…

 

ミカ「特に目立った問題は無さそうね。 アトラクションシステムの異常もないし…あら? さっきより露店の数が減ったような?早々に店仕舞いかしら?」

 

一通り公園を回り、警戒活動を続けたがチャラ男以外に大きなトラブルはなかった。

露店に並んでいたインダストリアル社の模倣品は片っ端から開発部門の「近衛理研」に発送済みだ。

 

するとものの30分で怪しい露店はブースから姿を消した。

身の危険を感じたか、後ろめたい事でもあったのか…

 

セレナ「そりゃあれだけ片っ端から模造品を接収して、聴衆の面前で大胆な巴投げをキメたら悪徳業者は逃げ出すわよ。」

 

ポツポツと穴の開いた露店を横目にセレナからちくちくとトゲを刺される。

 

ミカ「よ…抑止力になってるならそれでいいじゃない!!それで街が少しでも安全になるならチャラ男の1人や2人投げるわよ!」

 

セレナ「(うーん… 猛獣のような我がマスター… …ん?)」

 

自分の持ち主が周りからどう見られているか心配になりつつあるが、とりあえず抑止力になってれば…まぁいいか。

 

ミカの肩に乗りながら、アクティブセンサーを続けるセレナ。

 

公園内の巡回もそろそろ終わりかと思いきや─────・・・

 

セレナ「(…ミカ、11時方向。 30m先の路地角に男性2名、リスト内には無い。こちらの探知を乱されてる、特殊な箱状の何かを持っているわ。)」

 

ミカ「…! まさか…裏取引…!?」

 

セレナ「(断定は出来ないけど、怪しいのは確かね。)」

 

ミカ「…追いましょう、セレナは戦闘行動待機。」

 

再び通信が入り、緊張感が高まる。

エレクトリアの探知を乱すほどの箱だ、中身は相当怪しいモノだろう。

 

脱法パーツか…

違法改造チップか…

とにかく怪しい…!

 

……

 

気配を消し、路地に近付く。

相手はまだコチラに気付いてない。

 

細身の男が2名…

服はよくあるカジュアル・ルック…

 

ミカ「護衛は?」

 

セレナ「(無し。)」

 

護衛のエレクトリアは無し、という事は個人制作か調整品…?

または闇サイトでオーダーしたモノか…

 

死角に入り、角から取引の様子を伺う。

 

片方がバッグから箱から出し…

片方は金を渡す。

 

──────・・・取引成立だ。

 

ミカ「動かないで!近衛インダストリアル特別自警統括部です!エレクトリア部品不正取引防止法第10条36項に基づく取調を実施します!少しでも怪しい動きをしたら強硬措置を講じます!」

 

男A「な…なにィ!?近衛インダストリアルだと!?」

 

男B「馬鹿な…!何故バレた!?」

 

壁際から飛び出し、啖呵を切ると男2人の身体が跳ねる。

ミカが近衛の人間とわかった瞬間、表情が強ばる。

 

ミカ「中身を確認させてもらうわ!妙な動きをしたら私のエレクトリアが拘束措置を執行します!」

 

謎の箱を取り上げ、中身を取り出す。

 

すると…

 

出てきたのは……

 

物凄く布面積の狭い………

 

エ レ ク ト リ ア の 用 の マ イ ク ロ ビ キ ニ だ 。

 

セレナ「(最低限のプライバシーしか守れない布面積… ギリギリ法に触れるか触れないあたりね… なんというか…その…とりあえず世に出したら駄目なやつね。)」

 

箱から現れたのは、明らかに法に触れるギリギリのライン、際どさに際どさを極めたようなデザインの下g…いや水着だ。

これをエレクトリアに装備させる…!?

倫理観はどうなっているの…!?

 

男A「く…ッ 無念だ…ッ 水中戦での速度低下を軽減させつつ最低限の原材料費で作成出来る最高の仕上がりだったのに…ッ!!」

 

男B「すまない…ッ 恐らく裏サイトを経由したのが失敗だった…ッ! まさか近衛インダストリアルに目をつけられるなんて…!!本当にすまない…ッ!!」

 

2人で涙を流しながら押収品に別れを告げる。

 

どうやらBがAに依頼していたオーダーメイド品らしい。

(こんな際どい衣装は)近衛インダストリアルで出していないし、意匠権の侵害も違法性もない。

 

 

…が、単純にコレはいただけない。

 

 

確かに幾つかのエレクトリア用の水着は際どいデザインで販売されているが、あれはあくまで規定規準を満たしているからであって、それ以下の布面積は極めてグレー…というかブラックだ。

 

 

ミカ「 最 低 。 」

 

 

ガシッ!!

 

ォ"ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!

ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!?

 

 

…この後起きた事は報告書には記載されていないが、

近衛に任意同行されてきた男性2名は両名共に背中を強打しており、両名共口を揃えて「巴投げのせいだ!」と供述しているが…

対応した水原 ミカは供述に対し否認、事実確認が取れないため不問となっている。

 

 

 

第2話 完

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