Electriar Code 【夜明のスピカ】   作:鷹島 扇

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第3話 野良エレクトリア

 

フリーマーケットの見回りを終えて、ミカは今日のランチをどうするか考えていた。

 

外回り、巡回警備をすると往々にお腹が減る。

巴投げを3回もキメたこともあり、いい塩梅の減り具合だ。

 

ミカ「今日のランチ、どうしようかしら。勤務中でなければ屋台で焼きそば、たこ焼きの気分だったんだけど。」

 

セレナ「残念ながら、どちらも近場で該当なし。 …と言ってる間にちょうどよかったわね、業務回線5番"カフェ"から通信よ。」

 

近場に狙いの場所はなかったようだが、待ってましたと言わんばかりのタイミングである場所から通信が入った。

 

業務回線5番

緊急性は無いが何らかの報告がある場合の回線だ。

 

発信元は近衛インダストリアルが経営する【エレクトリアカフェ】

人とエレクトリアが分け隔てなく働く場として近衛が設立した"調和"のシンボル。

提供される料理にはエレクトリアがイチから手がけるモノもある、そのクオリティはプロに比肩すると評されており、今やカフェの目玉商品だ。

フリーのバトルスポットも用意されているので、地域の交流の場としても親しまれている。

 

ニーカ《忙しい時にすまない。 緊急ではないが昨夜、野良を1人保護した、どこか寄れるタイミングで構わないから顔を出してくれ。》

 

声の主はそのカフェで働くエレクトリアのニーカだった。

 

どうやら"野良"のエレクトリアを保護したらしく、その対処についての連絡だったようだ。

 

───・・・人とエレクトリアの繋がりというのは、固い。

オーナー契約時の縛りも当然だが、絆や愛情の面でもそうそう容易く断てるものではない。

 

…が、当然、やむを得ない理由や当人らの意志に関係なく所有権が無くなったりオーナーと離れ離れになるケースは少なくはない。

 

そうして帰る場所を無くしたエレクトリアは"野良"となる。

 

オーナーを失くすとほとんどの権限を失うため、破損した際の部品交換や不調時のメンテナンスに支障をきたしてしまう。

 

自己防衛プログラムで適切な対処が出来ればいいが、全てのエレクトリアがそれを遂行出来る訳ではない。

 

彼女達は、感情あるが故に、判断を誤る時があるのだ。

 

中には死別した持ち主の傍らで悲しみのあまり自らシステムをフォーマットし、自身のメモリーを出荷状態に戻した事例もある。

 

同じような理由でひとりで悲しみに暮れている時に、前述のRoMに攫われたりしてしまう事もままある。

(通報が間に合えばGPSロガー等から近衛インダストリアルが追跡して回収するのだが…)

 

そうした身寄りのないエレクトリアが近衛認定の設備に訪れ保護を要請した場合、近衛の職員が迎えに行き、身の安全を確保する事が出来るのだ。

(いわゆるセーフハウスのような扱いだ)

 

ミカ「了解したわ、ちょうどお昼ご飯を何処にするか探してたところだから。 対応ついでにお昼もご馳走になろうかしら。」

 

そういった保護の要請があった場合、救護した施設のスタッフが連絡先に登録している近衛の職員に一報を入れる。

 

一応保護や回収専用の部署もあるが…

この部署はコノエメンテナンスサービスの管轄部署ゆえ、24時間ひっきりなしに働いているためなかなか手配がつかない事もザラにある。

内部からの依頼は後回し、一般の依頼が最優先という原則上、当然と言えば当然なのだが。

 

なのでニーカのように、見知った職員に直接連絡するという場合が早い。

 

ニーカ《ありがとうミカ、トッピングのサービスは任せてくれ。》

 

通信機の先で、気前のいい声が聴こえた。

トッピングのサービスがあるなら… うん、今日はパスタにしよう。当初の希望とは違うが、まぁいいでしょう。

 

ミカ「ちょうど手隙だから今から向かうわ。セレナ、到着予定時間を共有して、本社にも保護申請お願い。」

 

セレナ「了解、マスター。 ニーカに位置情報と到着予定時間を共有…完了。 本社PCにアクセス、保護申請承認番号Re:00032058996仮作成、承認依頼中。」

 

通信を切り、隣にいるセレナに声をかけるとミカのオーダーは瞬く間に処理された。

 

位置情報の共有と本社への申請、プロセスナレッジのないエレクトリアは処理や作成に手間取る事もあるがセレナの処理速度はほぼラグ無し、シームレスに複数の案件を処理出来る。

 

積み重ねた経験が活きてるからか、恐らくセレナの事務処理速度は他のエレクトリアに比べると群を抜いている。

 

ミカ「相変わらず仕事早いわね。優秀なパートナーを持てて幸せだわ。」

 

セレナ「…どうしたの急に? 何か後ろめたい事でもあるのかしら?」

 

ミカ「素直じゃないわね…」

 

セレナ「ふふ。 持ち主に似たんじゃない?」

 

憎まれ口を叩くセレナだが、その表情は柔らかい。

彼女自体もこのささやかな戯れを嫌ってはいない。

 

職務と喧騒に追われる日々の、僅かな癒しだ。

 

……

 

20分後、

エレクトリアカフェ

 

ニーカ「やぁ、よく来てくれた。早速で悪いが例の件、どうする?」

 

カフェの扉を開けると、メイド服を着た銀髪、褐色肌のエレクトリアが出迎えてくれた。

彼女が通信をくれたスタッフ、ニーカだ。

 

彼女も元野良エレクトリアだが、色々あって今はこうして近衛のカフェで店員として働いている。

保護される前は野良のコロニー内でもリーダー的な存在だった。

 

背中に背負った大型のレーザーキャノンは野良時代からのお気に入りだ。

 

ミカ「イカと明太子のバターパスタ、トッピングのイカとバターをマシマシで頼むわ。」

 

ニーカ「!? あ、あぁ、わかった!もちろん任せてくれ!」

 

開口早々に注文されて焦ったのかニーカは伝票を書き込みはじめるが…

 

セレナ「…ミカ、例の件って多分、仕事の話よ。」

 

それを見たセレナが冷静にツッコんだ。

そこはやはり近衛のエレクトリア、メリハリはしっかり、業務最優先だ。

 

数秒の間を置き、ミカは状況を理解したのか一気に顔が赤くなった。

 

ミカ「──────・・・す…すぐ案内してちょうだい…!」

 

表情こそ平静を装っているが、耳まで真っ赤になったミカを連れて、ニーカとセレナは奥のバックルームに向かった。

 

……

 

エルニル「あ、お姉様、お疲れ様です! …おとと、ミカさんとセレナ姉もご到着でしたか!」

 

バックルームに入ると今度は別のエレクトリアが出迎えてくれた。

紫色のショートヘア、大人びたニーカと比べて少し幼さを感じる面持ち。

彼女はエルニル、ニーカと同じ元野良エレクトリアだ。

 

快活な性格で、自身の身の丈程の大鎌を振るう近接戦闘の名手。

兵器開発の知識があるのか、目を離した隙に(珍妙な)オリジナル兵装を組んだりする。

 

ニーカ「…で? どうだエルニル。 あれから何かわかったか?」

 

エルニル「んー… さっぱりですね… 外見から獲られる情報だけだと私はもうお手上げです… 詳しいことはミカさん達にお任せですね…」

 

保護されたエレクトリアは救護用のベッドで眠っているようだが、その娘が「どういった娘」なのか、知識があるエルニルでもわからないような状態らしい。

 

ミカ「見てもいいかしら?」

 

ニーカ「あぁ、よろしく頼む。」

 

私服姿なのか、戦闘服なのか…

外傷があるか、ないか…

一般向けか、企業用か…

 

果たして──────・・・

 

 

セレナ「……!?」

 

ミカ「こ…これは…!?」

 

 

 

2人の目の前に現れたのは────────

 

 

 

 

 

第3話 完

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