地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい 作:抹茶好きの紅茶
「ツフル人に……復讐!?」
路地を進み、街灯の少ない郊外。バーダックから説明を受け、ノービルはポツリと呟いた。
話を要約すれば、4日後の夜にベジータ王主導の下、ツフル人を殲滅するとのことだ。理由は恨み辛み。よくある事ではあるが、なんともまぁ──
「なんつーか、随分と物騒な時期に来ちまったな」
「ま、無理に加勢しろなんざ言わねぇよ。そもそも、ベジータ王が勝手に奮起するってだけだ。だが、星中が戦場になる。もし戦う気がねぇなら隠れてろ。戦いの邪魔だ」
「アンタは戦う気か?」
「ああ。前々からツフル人の奴らは鬱陶しいと思ってたんでな」
……話していて、色々と察せた。どっちもどっちだなコレ。
どちらも野心家で、自分達の種族が優れていると思い込んでいる。そりゃ相容れず戦争になるだろう。
とはいえ、そうでない奴も中には居る。そこで呆然としているノービルとか正にそれだ。
「んで、ノービルは何でそんなになってんだ? さっきだって、ツフル人に殺されかけてただろ。居なくなって万々歳じゃないのか?」
「い、いえ……実は僕、ツフル人の方に色々と世話になってまして」
「あー、そりゃ、心境としては複雑だよな。親は?」
「死にました。僕が5歳の頃に」
「……すまん」
「お、お気になさらず。サイヤ人では、よくあることですから」
サイヤ人は戦闘民族、即ち命を懸けた戦いに身を投じる事の多い種族だ。少し考えれば察せただろうに。
なんというかこう、同じサイヤ人同士楽しく戦いまくろーぜ!ってのを期待していたんだが。こればかりは部外者──まぁ、アタシは一応部外者か? さておき、そんなヤツが首突っ込んで良いのかという話だしな。
はてさて、どうしたものか。
「ま、俺からの話は以上だ。嫌ならさっさと星を出ることだな──ただ、その前に、だ」
気を遣ってか、自己中心的な考えか。微妙に気まずい沈黙を破り、バーダックはアタシと向き合い、構えを取る。まるで、さっさと戦るぞ言わんばかりにギラギラとした鋭い眼光が此方に向けられていた。
「お、やるき?」
「ああ。テメェを見た時から、戦いたくてウズウズしてたんだ。大きな戦いの前だってのに、身体が鈍って仕方なかったしな」
「あっはは! いいね。ちょうど、下らない悩み事してて、ちょっぴり鬱憤が溜まってたとこだ」
「へ? ちょ、ちょっと待ってください今からですか!?」
「ああ? 何のために移動してきたと思ってる」
「バレたら不味い話をするためでは!?」
「ごちゃごちゃと。なんだ、お前もオレの相手をしてくれるのか?」
「いっ!? ち、違います違います!」
「悪いねノービル。危ないから離れてて」
「~~! あーもう、怪我しないで下さいね!」
そりゃ無理だろう。ともあれ、彼は小走りでこの場から離れてゆく。背負ってる最中に傷は治してやったし、まぁ心配はいらないな。
これで、邪魔するものは居なくなった。
行儀よく『よーいドン』なんて掛け声は無い。ただ、互いに後の先を取ろうと見つめ合い──
「──フッ!」
「だりゃあ!」
2つの拳が、交差する。
互いにフルスピードで接近、初っ端からクロスカウンター。両者、躱しきれずに相討ちし、2人して口角を上げる。
マジかコイツ!咄嗟に軌道をズラしやがった!いいねぇ!面白い!
距離を離さず、そのまま徒手空拳の打ち合いへ移行。
だが、なんとも厄介な相手だ。アタシが隙を作ろうにも、距離を離そうにも、自傷覚悟で邪魔してくる。戦闘力だけで言えば、アタシが間違いなく格上。だが、今アタシは守りに専念していた。
バーダックの戦い方は、実践磨きの喧嘩殺法スタイルだ。しかも、直感でアタシの方が強いと分かっているからか、此方に反撃を隙を与えないように戦ってやがる。そのうえ、惑星プラントはアタシが生活していた所よりも重力が凄い。だいたい10倍ぐらいか?お陰で戦いづらいったらありゃしない。だが──
「ッ……ケッ、化け物が!」
「バーダック、だったっけ? いいねぇ、正直舐めてたよ」
この星に着いてから大体1時間。流石に、慣れてきた。
猛攻を凌ぎ、ほんの僅かな隙を見つけ、バーダックへ拳を叩き込む。そんな攻防の繰り返し……だがしかし、どうだ。アタシの方がパワーもエネルギー量も多い筈なのに、未だこの男の猛攻から抜け出せやしない。実戦経験の差か、はたまた目の前の男が戦闘上手なのか。
なんにせよ、燃えてきた。
「へっ、良い面しやがる」
「どーも。アタシも、この顔は気に入ってんだ」
会話に注意を向けさせ、尻尾から不意打ち気味に光線を出す。チッ、外したか。随分と目がいいな。
「ッ! ハッ……! 御託は、勝負がついてからしやがれ!」
バーダックにより、全身を勢いよく岩肌に叩きつけられ、隙のない打撃群が襲い来る。だが、慣れれば此方のもんだ。反撃の隙を伺って、得意の空中戦に持ち込んでやる……!
「あわわわわ」
少し離れた場所。ノービルは一進一退の攻防を見守っていた。現在優勢なのはバーダックさん……というより、優勢でなくなれば直ぐにでも決着がつくと言う方が正しいが。
「──おいおい、随分と派手にやってるじゃないか」
「どこで道草食ってるのかと思ったら。ったく、ツフル人との戦いも近いってのに」
「えっ?」
2人の戦いを観戦していれば、背後から声を掛けられる。
咄嗟に振り返れば、そこには3人のサイヤ人が居た。
左腕に白い布を巻いた長身の男。ショートカットで勝ち気な顔の女性。ボサボサ髪で優しそうな顔をした女性。
話から察するに、バーダックさんの友人だろうか。
「おい、そこのアンタ。アイツの知り合いか?」
「あ、はい、一応……」
「ああ、すまん。此方から自己紹介すべきだよな。オレはトーマ、あそこで戦ってるバーダックとチームを組んでる。実はアイツと酒場で落ち合う筈だったんだが、時間になっても来ないもんだから探しに来たんだ」
「そうでしたか。あ、僕はノービルです。バーダックさんと出会ったのは──」
戦闘の光景を横目に、バーダックさんの知り合いと言うのならと、今までの経緯を簡潔に話す。返ってきた反応は三者三様。トーマさんはキドニィさんに感心し、ギネさんは飛ばし子のキドニィさんやリンチにあっていた僕に同情。セリパさんは、キドニィさんの強さに興味が湧いているようだ。
「──へぇ、あれが飛ばし子かい。それにしては随分と強いじゃないか」
「ああ、バーダックと互角。いや、それ以上か」
「だ、大丈夫かな、バーダック……」
「ま、大丈夫だろ。聞く限りじゃ、殺し合いって訳でも無さそうだ。ギネ、アンタの心配しすぎだよ」
他愛ない会話をBGMに、全員の視線が眼前の激しい戦いに向く。
それにしても、本当に凄いな。
バーダックさんの猛攻を受け続けても、キドニィさんは流血一つしていない。なんなら、バーダックさんの方が追い詰められているぐらいだ。
「でりゃああ!」
ただひたすらに、バーダックがキドニィへ攻撃を打ち込み続ける。これは言わば、どちらが先に音を上げるかのチキンレース。バーダックのスタミナが切れるのが先か、はたまた攻撃に耐えきれず倒れるのが先か。それは、思ったよりも早くに決着が着いた。
「っ、しまっ」
「ハッ、疲れを見せたね!」
バーダックの猛攻の隙をつき、キドニィはバーダックを空中に蹴り飛ばす。
空中に投げ出され、己が不利を理解したバーダックは、空中で翻り、キドニィへエネルギー波を放射した──が、そのエネルギー波は、キドニィにより放たれた更に強大なエネルギー波によって掻き消されてしまった。
キドニィはバーダックへ、次はどうする気だと言わんばかりの期待の込もった視線を向ける。
バーダックに残されているのは、もはや実戦経験というアドバンテージのみ。
「……へっ」
こんなにも、こんなにも不利な状況に、彼は無意識的に口角を上げていた。
沈黙が場を支配し、視線が交差する。
彼は、おもむろに右手へエネルギーを溜め、手のひらに渦巻く蒼白い球体を出現させた。
「これで、最後だ」
「いいね。好きだよそういうの」
キドニィも薄紫色のエネルギー弾を両手に纏わし、合わせ、バーダックに照準を向ける。
これは命の取り合いではない。力試しの喧嘩のようなもの。
だが、手を抜きはしない。互いに、今持てる全力の衝突。
その"勝者"は──
「……凄ェんだな、マジュツってのは」
「フフン、そうだろそうだろ? アタシの育て親達から、色々と便利なの教えてもらってんだ」
観戦していた4人の下へ移動し、トワやゴマーから教わった魔術を行使する。バーダックの傷を治し、服を万全の状態に変化させたのだ。厳密に言えば魔術とは少し異なった超能力らしいが、まぁ何にせよ。ふふふ、凄いだろう!
「惜しいな。お前、ツフル人との抗争に参加する気は無いんだろ?」
「ああ、今のところはね」
「そうか。それじゃあ、この星からは出ていくのか?」
「いや、落ち着いたらアタシも、この星で過ごしたいかな。サイヤ人同士、仲良くしたいし。何より、学べることが多そうだ」
元より、アタシが此処に来た理由は、サイヤ人同士仲良くしようなんて理由じゃあない。育ての親、未だ背中を追いかけているホオズキを超えるため、戦闘民族と言われる彼らから様々なことを学びに来たのだ。
「実行は4日後の夜だっけ? 頑張れよ、生きてたらまた手合わせしよーぜ」
「安心しろ、4日後は所詮テメェとの前哨戦だ。ツフル人なんざ、傷ひとつ負わずに1人残らず殲滅してやろうじゃねぇか」
殲滅ね。聞く人によれば野蛮な会話だが、それがサイヤ人の文化なのだろう。殺し殺されは大魔界に居た頃からあったことだし、アタシ自身、特段これといって思うことはない。
それこそ、事情を知らぬ部外者が突っ込む事ではないのだから。
しかし、この場に、そんな言葉へ難色を示す者が居た。
「ねぇ、バーダック。やっぱり、止めようよ。わざわざ殺すまでいかなくても、倒して無力化させたら良いじゃないか」
ギネが、そんなことを口にする。
その言葉の意味を理解したバーダックは、つい先程までの機嫌が良かった
「──ハッ、それじゃあテメェがツフル人全員を生かしたまま無力化させるってのか? 反対するサイヤ人も叩きのめしてな」
「それは……」
「チッ。戦いたくねぇんなら、戦闘員なんざやめちまえ。目障りなんだよ、クズが」
「おいバーダック、そんな言い方は無いだろう」
「フンッ」
バーダックの心ない発言を咎めるトーマだったが、そんなことを気にも止めず。彼は苛立ちを隠さずに、この場を去ってしまった。
「ぁ……」
「待ちなバーダック。チッ、聞いてないな。待てって!」
遠くへ飛び去るバーダックを追いかけ、セリパはこの場を離れてゆく。トーマは、去り行く2人を制止しようとするが、無駄だと察して此方に向き返り口を開いた。
「ああオイ──ったく、なんだってんだ……すまんな。折角の良い気分を壊しちまって」
「別にいいよ、気にすんな。それより、ほら。他の奴も待たせてんだろ? 行ってきな」
「あ、ああ……ギネ、あんまり気にするなよ?」
「う、うん」
申し訳なさそうな顔をして、トーマも飛び去ってゆくバーダック達を追いかけていった。荒野に残されたのは、アタシを含めて3人のサイヤ人。
それにしても、まぁ……この地獄みたいな空気を直してから行けよと悪態をつきたくなるが、そんな子供でもないのでグッと堪える。アタシも割とこういう状況は作る側の人間なので、人のことは言えないし。
「……あー、まぁ、なんだ。同じサイヤ人だってのに、ソリが合わないもんだね」
「いや、わたしだって分かってるよ。あんな妄言、命の取り合いをしてる人からすれば、ふざけてるって」
「……やっぱり、そう、ですよね」
ギネとノービル、両者とも心優しい人物なのだろう。サイヤ人にしては珍しい、他者を思いやれる奴ら。聞く限り、それはもう生きづらい人生を送ってきたであろうことは察せる。
ただ──
「──確かに、甘ったれた思考にも嫌悪はしてるんだろうけどさ。本心とはちょっと違うんじゃないか?」
「え?」
短い付き合いだが、言葉と拳で語り合ったのだ。少しは人間性も分かる。
それこそ、サイヤ人らしく力で他の意見をねじ伏せていれば、バーダックだって彼処までは言わなかっただろう。
「多分、バーダックがイラついてんのは────」
時間は進み、人が賑わう酒場の中。既に2人のサイヤ人が囲む卓の席に、バーダックは苛立ちを隠さず乱暴に腰掛ける。
「おう、遅かったじゃねぇか……なんだよ、何かあったか?」
「ああ? チッ、なんもねぇよ」
「………………
バーダックは卓上の骨付き肉を掴み、豪快に食らう。充分な塩気に噛みごたえのある食感、臭みの残った野性味のある味が癖になる一品だ。
普段の2割増しで肉を平らげてゆくバーダックの様子から何となく察した2人のサイヤ人は、料理がなくなる前に我先にと手を伸ばし、無言の争奪戦が始まるのだった。
「──フン……気に入らねぇ」
「なんだよ、お前がそんなに言うなんて珍しいじゃねぇか」
あらかた料理を平らげ、次の料理が来るまでの時間。
先ほどまで満足げにしていたとは思えぬほど荒れた雰囲気を醸し出すバーダックに対して、恰幅の良い男 パンブーキンは声をかける。
だが、聞けば原因は其処ではなかったようだ。
「気に入らねぇんだよ。ギネも、ノービルとかいうヤツも」
「おいおい、負けた腹いせに八つ当たりかい?」
「違う。気付いてねぇのか? ギネはご存知の通りだが、ノービルとかいうやつも、恐らくだが、戦闘力だけで言えばこのオレと同じぐらいはあるぞ」
「なっ、アイツもかい!?」
「それってぇと、俺達より強いってことじゃねぇか!」
「ああ、スカウトスコープで計った訳じゃねぇが……チッ、勿体ねぇな」
バーダックの言葉に、確たる証拠はない。だが、彼は肌感でその事実を理解していた。いや、戦闘力だけで言うのであれば、寧ろ負けているのは……それゆえに、バーダックは苛立ちを募らせていた。
この世界は、強い奴こそが絶対だ。相手を叩きのめし、言うことを聞かす。それが摂理なのだ。
だというのに、なんだあの体たらくは。
サイヤ人らしくない戦いに向かない性格。それなのに戦闘力だけは一丁前。オレの様に、毎度戦地に赴き、時おり死の淵から生還した訳でもない奴らが、何故あんなにも──
「──ハッ。まさか、な」
ふと、とある英雄伝説 が頭に浮かぶ。しかし、アレはただのお伽噺にすぎない。あり得るはずがないと一笑し、バーダックは肉を豪快に食らった。
ツフル人滅亡まで、残り4日。
お久しぶりでございまーす( ノ;_ _)ノ
またちょくちょく投稿していく……かも?