ニッコロ・マキャヴェッリ
君主論
【視点:竜宮院聖哉】
図書室の閉架書庫は、再び機械の微かな駆動音と、モニターが放つ冷たい青光だけの静寂に包まれた。
櫛田桔梗という名の、猛毒を含んだ小石は盤面に投げ込まれた。彼女の絶望と恐怖に歪んだ顔を思い出す必要はない。俺にとって彼女は、指定された座標へ正確に移動し、指定されたタイミングで炸裂するだけの安価な部品に過ぎない。
俺は自作の独立型PCのキーボードに両手を乗せ、モニターに展開されている数列の滝を冷徹な視線で見つめた。
画面上では、Cクラスの龍園翔が意図的に発生させている偽のポイント移動が、無数のノイズとなって流れ続けている。
奴は俺が仕掛けた『Project Tartarus』を、「自分の資金源とCクラスの相関図を暴くためのメタデータ抽出」だと正確に認識した。そして、その監視網をパンクさせるため、あるいは俺の分析プログラムの法則性を逆探知するために、偽の取引データを大量に流し込んでいる。
「……龍園翔。お前は確かに賢い。この魔力なき世界において、これほど早く、そして正確に『電子的な監視』の存在に気づき、論理的なカウンターを仕掛けてくる直感と行動力は評価に値する」
だが、賢すぎるがゆえに、自らが認識した「ロジック」の枠組みから抜け出せない。
人は、自分が理解できる範囲の脅威を見つけると、そこで思考を停止させ、その脅威に対する対処のみに全力を注ぐ生き物だ。
「俺が、お前がCクラスの独裁者であり、全ポイントを単独で掌握していることなど、とうの昔に把握していないとでも思ったか?」
Cクラスのリーダーが誰か。金庫番がいるのか否か。そんなものは、入学してからの1ヶ月間、彼らの教室の空気、視線の向き、歩行時の立ち位置のヒエラルキーを肉眼で観察するだけで容易に導き出せる事実だ。龍園がポイントを独占し、恐怖でクラスを支配している。そんな自明の理を確認するために、わざわざ学校の強固なネットワークにリスクを冒してアクセスし続けるなど、慎重さに欠ける愚行極まりない。
では、なぜ俺は『Project Tartarus』を起動し、わざわざ龍園の口座の通信に『0.2秒の遅延』を発生させたのか。
「お前の視線を、ネットワーク空間に釘付けにし、無駄なリソースを消費させるための、ただの目眩ましだ」
龍園翔は、暴力と知略を併せ持つ極めて危険な特異点だ。
もし俺が何の手も打たなければ、Dクラスの不自然なクラスポイント取得の事実に気づいた奴は、直感のままにDクラスの生徒たちへ物理的な探り――暴力や脅迫を用いた直接的な接触――を行っていただろう。
盤面を完全に掌握し、100%の勝率を確保するための領域の構築には時間がかかる。その準備期間中に、龍園のような予測不能な暴力をDクラスに向けられることは、システム崩壊の致命的なリスクとなり得る。
だからこそ、俺は龍園に見えないハッカーとの電脳戦という、奴の知的好奇心と警戒心を煽る偽の戦場を用意したのだ。
結果として、龍園はどう動いたか。
奴は監視網を攪乱することに躍起になり、ダミー口座の作成や取引の分散に時間を割いた。奴が深夜までスマートフォンを睨みつけ、無意味な1ポイントの送金を繰り返しているその隙に、俺は物理空間において、神室真澄と櫛田桔梗という本命の罠を仕掛けるための時間を完璧に稼ぎ出したのだ。
「これ以上のネットワーク監視は、管理者による定期ログ解析のリスクを高めるだけだ。電脳戦など、そもそも最初から存在しない」
俺は躊躇いなく『Project Tartarus』のメインプロセスを強制終了させ、図書室のルーターに噛ませていた傍受プログラムを物理的・論理的に自己消去した。自作のワイパーソフトが、数秒で俺の侵入の痕跡をすべてゼロの羅列で上書きし、電子の海へと葬り去る。
これで、龍園がどれだけネットワークを逆探知しようとも、行き着く先は完全な虚無だけだ。
「さあ、お前は次の一手をどう打つ?」
俺は胸元のロケットペンダントを服の上から強く握りしめた。
金属の冷たい感触が、俺の理性を極限まで研ぎ澄ませていく。
大女神イシスター様との契約。リスタルテの砕け散った魂を修復するための唯一の条件。この箱庭を完全掌握し、Aクラスとして卒業すること。
そのためには、Cクラスの暴君には俺の引いたレールの上で美しく自滅し、俺の支配下へと組み込まれてもらう必要がある。
「……神室真澄。そして櫛田桔梗。お前たちが部品足るか、特等席で見物させてもらおう」
*
【視点:龍園翔】
「……おい。どういうことだ?」
Cクラスの教室。
パイプ椅子に座る俺のスマートフォンに表示されていた、ダミー口座のトランザクション監視アプリ。
そこから、突如としてラグが消滅した。
何度ダミー送金を繰り返しても、処理は正常な速度で瞬時に完了する。
「敵が……消えた?」
俺は眉間を寄せ、親指の爪をガリッと噛んだ。
俺が仕掛けた無数のノイズ攻撃によって、相手の監視システムがパンクしたのか?
いや、違う。もしシステムがダウンしたのなら、ネットワーク自体に何らかの不具合が残るはずだ。だが、今の挙動はあまりにもクリーンすぎる。まるで、最初からそこに誰もいなかったかのように、綺麗に撤退しやがった。
(……俺の攪乱に気づいて、尻尾を巻いて逃げたか? それとも、最初からこれが目的だったのか?)
得体の知れない薄気味悪さが、背筋を這い上がる。
Dクラスの裏ボス。俺の口座を監視していたネズミ。
そいつの目的が俺の資金源を暴くことであったなら、俺のダミー口座作戦は完全に刺さったはずだ。だが、相手の撤退があまりにも鮮やかすぎる。
その時、教室の扉が勢いよく開き、石崎と小宮が息を切らして駆け込んで来た。
「龍園さん! 報告っす!」
「うるせえな、犬みたいに吠えんな。伊吹の監視はどうなった」
「そ、それが……! 龍園さんの読み通り、伊吹に接触してきた奴がいました!」
小宮の言葉に、俺の口角が自然と吊り上がる。
やはりな。ネットワーク上での小賢しい探り合いに見切りをつけ、物理的な切り崩しにかかってきたか。伊吹澪という、俺のクラスにおける最大の不協和音。あいつを刺激し、内部から俺の足元を崩す気だ。
「で? どこのどいつだ。Dクラスの影の薄いモブか? それとも三馬鹿の誰かをパシリに使ったか?」
「いえ、それが……Aクラスの神室真澄です」
「……は?」
俺の思考が、一瞬だけ停止した。
「神室だと? 坂柳の腰巾着が、なぜ伊吹に接触する?」
「直接話しかけたわけじゃないんです。昼休み、伊吹が特別棟の屋上付近にいた時、神室が通りがかって……わざとらしく、伊吹の足元に『小さな黒い箱』を落としていったんです」
「落とした? 伊吹はそれをどうした」
「拾って、中身を確認してました。……その時の伊吹の顔、尋常じゃなかったっす。まるで、信じられないものを見たって感じで。その後、すぐに箱をポケットに突っ込んで、寮の方へ走っていきました」
俺はパイプ椅子から立ち上がり、窓の外を見下ろした。
Aクラスの神室真澄。坂柳有栖の手足。
なぜ、Dクラスの裏ボスが仕掛けてくるはずのタイミングで、Aクラスの人間が動く?
そこへ、今度は近藤が教室に入ってきた。その顔もまた、切羽詰まったような表情をしている。
「龍園さん、こっちも異常事態です。……Dクラスの櫛田桔梗が、俺に声をかけてきたんです」
「櫛田? あの八方美人のビッチが?」
「はい。なんか、ひどく怯えた様子で……『Dクラスで居場所がなくて、龍園さんに相談したいことがある』って。明日の放課後、裏庭で会えないかって言われました」
俺は、思わず声を出して低く笑った。
ククッ……出来すぎている。あまりにも不自然だ。
俺がネットワークからの監視を断ち切った直後に、Aクラスの神室が伊吹に接触し、Dクラスの櫛田が俺の足元にすり寄ってくる。
(……見え透いた罠だ。俺の視線を、伊吹と櫛田という『二つのわかりやすい爆弾』に向けさせようとしている)
伊吹に渡された黒い箱の中身が何であれ、それは俺と伊吹を分断するための毒だ。櫛田が持ち込んでくる相談とやらも、俺をDクラスの内部抗争に巻き込むための罠に決まっている。
普通なら、この二つの火種をどう消すかに頭を悩ませるだろう。
だが、その罠を張っている奴は、致命的なミスを犯している。
「……神室真澄を使ったことだ」
神室は坂柳の命令で動いているのか、それとも別の誰かに脅されて動いているのかは知らねえが、あいつは口が堅い忠犬じゃねえ。恐怖と暴力を与えれば、簡単にゲロる安い女だ。
「……面白え」
俺は首をゴキリと鳴らし、獣のような笑みを浮かべた。
「石崎。小宮。近藤。お前ら、今すぐ神室真澄の行動パターンを洗い出せ。寮から出るタイミング、人気のない場所を通るルート、すべてだ。……見つけ次第、俺の前に引きずり出せ」
「えっ!? Aクラスの神室をですか!? さ、さすがにそれは……坂柳が黙っちゃいないんじゃ……」
「ビビってんじゃねえ! 坂柳が裏で糸を引いてようが関係ねえ。俺の陣地に土足で踏み込んだ以上、そいつが誰の駒であろうと容赦はしねえ。神室の口を物理的に割らせて、このふざけたゲームの黒幕の名前を吐かせてやる」
そして、櫛田桔梗。
あいつも泳がせる。俺にすり寄ってくる裏にどんな毒が仕込まれているか、すべて飲み込んでから、内側から食い破ってやる。
「隠れん坊は終わりだ、名無しのネズミ野郎。お前がどんな顔をしているのか、直接拝んでやるよ」
*
【視点:綾小路清隆】
Dクラスの教室は、放課後の気怠い空気に包まれていた。
中間テストを乗り切り、赤点退学者ゼロという奇跡に酔いしれる生徒たちの喧騒。だが、オレの目は、その喧騒から完全に孤立している一人の少年へ向けられていた。
竜宮院聖哉。
あの中間テストの前まで病弱な生徒を偽装し、教室の隅で突っ伏していた男は、今やその仮面を完全に捨て去っていた。
彼は背筋を伸ばし、堂々と文庫本に視線を落としている。だが、Dクラスの生徒たちは、まるで見えない結界でも張られているかのように、彼の半径数メートルには絶対に近づかない。
無理もない。あの日、全科目100点満点という暴力的な成績を突きつけ、三馬鹿をはじめとする生徒たちの弱みを完全に握り潰し、逆らえば即座に退学へと追い込むという絶対的な箝口令を敷いたのだ。
表向きの成績は、茶柱先生の権限(と彼が支払った莫大なポイント)によって全科目65点〜70点前後という平凡な数値に改ざんされている。だが、この教室にいる全員が、彼の異常性を骨の髄まで理解している。
首元に見えない爆弾のスイッチを握られたまま、誰もその事実を外部に漏らすことができない巨大な共犯関係。それが今のDクラスの正体だ。
(……それにしても、見事な支配だ)
オレは机に頬杖をつきながら、静かに思考を巡らせた。
恐怖による統治は、反発を生むのが常だ。だが竜宮院の支配には、感情的な隙が一切ない。彼は他者を人間として扱わず、完全にシステムの部品として管理している。その冷徹なまでの最適化は、ホワイトルームの教育理念すら彷彿とさせるものがある。
ふと、教室の前方に視線を移す。
クラスのアイドルであり、誰にでも平等に笑顔を振りまく存在――櫛田桔梗。
一見するといつも通りの笑顔を浮かべているものの、オレの目には、彼女の瞳の奥に隠しきれない極度の緊張と、得体の知れない恐怖が張り付いているのがわかった。
(……彼女の『善人』の仮面が、内側からヒビ割れ始めている)
櫛田が何かに怯えている。それは、単なる人間関係のトラブルなどではない。彼女の存在そのものを脅かす、決定的な何かを握られている人間の顔だ。
そして、その何かを握り、彼女を意のままに操れる人間など、このクラスには竜宮院しかいない。
(竜宮院。お前は今、何を仕掛けている?)
平田を通じてオレが配布させられた過去問。
マークシート読み取り機にオレの指紋付きで仕掛けさせられたチップ。
そして今、櫛田が背負わされている見えない重圧。
他クラスの動向も耳に入ってきている。Cクラスの龍園が、最近異常にピリピリとした空気を纏い、誰かを探し回っているという噂。
竜宮院の手法は、常に相手に一切の選択肢を与えない、完全な論理の暴力だ。
彼は決して運任せのギャンブルはしない。すべての要素を自分のコントロール下に置き、相手がどう動いても必ず自分の利益になるようにシステムを構築する。
彼が櫛田を動かしているなら、それはCクラスとの抗争において、すでに彼が盤面を支配し終えたことを意味する。
(オレは彼にとって『A級パーツ』らしい。だが、いつ、どのようにオレを投下するつもりなのか)
竜宮院が龍園と直接衝突する日は近い。
だが、その衝突すらも、竜宮院にとっては想定内の事象に過ぎないのだろう。
オレは、自分がいつ彼に引きずり出されるのかを静かに待ちながら、この異常なゲームの行く末を観察することにした。
*
【視点:神室真澄】
(……なんなのよ、あいつは)
夕暮れ時の帰り道。
私は、寮へと向かう人通りの少ない裏道を歩きながら、忌々しげに舌打ちをした。
Dクラスの、竜宮院聖哉。
坂柳がなぜあんな不気味な男を評価しているのかは知らない。だが、私にとっては最悪の疫病神だ。
私が駅前のコンビニで万引きをした事実を、なぜかあいつは知っていた。坂柳に握られているだけでも息苦しいのに、得体の知れない他クラスの男にまで首輪を握られるなんて、冗談じゃない。
『明日の昼休み、Cクラスの伊吹澪がよく利用する特別棟の屋上付近へ行け。そこで、彼女が視認できる位置に、俺が指定するある物を落としてこい』
あいつの指示通り、私は今日の昼、伊吹の目の前でわざとらしく黒い小箱を落としてやった。
中身は見ていない。あいつが開けたらリストを学校に提出すると脅してきたからだ。
(これで文句はないでしょ。……本当に、巻き込まれるのはごめんだわ)
足早に歩みを進め、寮まであと少しというところで――
私の前方に、巨人のような影が立ち塞がった。
「……っ」
思わず息を呑む。
Cクラスのアルベルト。その後ろから、石崎と小宮がニヤニヤと笑いながら近づいてくる。
そして、その後方。夕日を背に受けて、一人の男がゆっくりと歩み寄ってきた。
「よう。随分と急ぎ足じゃねえか、Aクラスのお嬢さん」
龍園翔。
その顔を見た瞬間、私の全身の血の気が引いた。
「な、何の用よ……退きなさいよ。私はAクラスよ?」
「Aクラスだぁ? そんな看板が俺に通用すると思ってんのか。……お前、今日の昼、うちの伊吹に随分と『面白えもん』を落としていってくれたらしいな?」
龍園の目が、完全に獲物を狩る蛇のそれだった。
「……な、なんのことかわからないわ」
「しらばっくれるなよ。俺は気が短いんだ」
龍園が顎をしゃくると、アルベルトが無言で私に近づき、逃げ道を完全に塞いだ。石崎たちが私の背後を囲む。完全に袋の鼠だ。
「さあ、吐け。お前が伊吹に落としたあの箱の中身と……それをやらせた『黒幕の名前』をな」
龍園の低く、暴力的な声が耳元で響く。
怖い。この男は、本気でここで私を殴る気だ。Aクラスだろうと女だろうと関係ない。この異常な暴力のプレッシャーに、私の脆いプライドは数秒と持たなかった。
(……坂柳、ごめんなさい。でも、私だって身を守らなきゃいけないのよ……!)
「い、言うわ……! 言うから、手を出さないで……!」
私は恐怖に震える声で、その名前を口にした。
「……Dクラスの、竜宮院……竜宮院聖哉よ……! あいつに脅されて、やっただけなの……!」
*
【視点:竜宮院聖哉】
第一ストレージのベッドの上に胡座をかき、俺はサブモニターに表示されるステータスバーを確認した。
『Target A (神室真澄):Cクラス監視網への接触完了。龍園一派による捕縛および情報漏洩フラグ、完了』
「……来たか」
俺は静かに呟いた。
龍園翔は今、俺が用意したわかりやすい餌に完璧に食いつき、暴力によって彼女の口を割らせた。
奴は今頃、神室から竜宮院聖哉という名前を引き出し、ネットワークの攻防に続く情報戦でも勝利したと確信して笑っていることだろう。
龍園が俺の名前を知る確率。それはもはや予測ではなく、確定事項となった。
普通の人間であれば、自分の正体が最も危険な敵にバレた時点でパニックに陥るか、防御の陣形を固めるだろう。
だが、俺の戦術において、それは真逆の意味を持つ。
「俺の名前がバレること自体が、お前を殺すための二重の罠の起動トリガーだ、龍園」
俺は神室真澄が口が軽く、暴力に屈しやすい人間であることを完全に計算に含めていた。
龍園は、俺の正体を知ったことで思考がクリアになり、ターゲットを俺一人に絞り込む。他のDクラスの生徒(堀北や平田、あるいは綾小路)への余計な干渉はこれで完全にシャットアウトされた。俺という明確な敵のボスの首を取ることだけに、奴の全意識が集中する。
だが、奴は気づいていない。
ターゲットを絞り込み、自分は真実にたどり着いたと錯覚したその瞬間こそが、人間の警戒心が最も薄れる瞬間であることに。
奴が俺を探り、俺を潰すためにクラスを動かそうとするその足元では、すでに致命的な爆弾のカウントダウンが始まっている。
神室が伊吹に落とした黒い小箱。
その中には、俺がCクラスの内部情報をハッキングして(という偽装で)作成した、『龍園翔が中間テストのペナルティとして切り捨てる予定のCクラス生徒リスト』の精巧な偽造データが入ったUSBメモリが収められている。
そこには伊吹自身の名前はもちろん、石崎や小宮たちの名前も含まれている。
龍園が俺に夢中になっている間に、伊吹の心に植え付けられた疑心暗鬼の種は、Cクラス内部に致命的な不和をもたらす。
さらにそこへ、俺に完璧にコントロールされた櫛田桔梗という猛毒が被害者としてすり寄り、龍園の思考を俺の望む方向へとさらに誘導する。
龍園が俺を追い詰めたと確信して牙を剥くその時、Cクラスという奴の牙城は、すでに内側から完全に崩落しているのだ。
俺の仕事は、目前の脅威に対処することではない。
脅威が発生する前に、その脅威の前提条件をすべて破壊し、相手が気づいた時にはすでに「100%俺が勝つ盤面」の中で身動きが取れなくなっている状態を作ること。
俺は静かに目を閉じ、脳内での最終シミュレーションを終了した。
さあ、来い龍園。
お前のその高慢なプライドが粉々に砕け散る瞬間を、俺は特等席で堪能させてもらう。
「レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)」